124 / 305
第六章 幸福は義務
幸せのゴール!
しおりを挟む
「そやさかい、俺が森作ってることは秘密や。絶対、誰にも言うなって、おとんはいつも言うんです。
そやけど、ウチ、言うてまいました、アハハ!」
理夢ちゃんは、照れ笑いしている。
「確かに、売名行為と取られることもあるでしょうね。
しかし、こういった活動は、作品に生きるのではないですか?」
小林さんが、もっともなことを言う。
「ぴょんぴょん」の読む者の心を打つ、暖かな世界観。
こういう、作者の利己を超えた、自己犠牲の生き方があればこそ、だったのか。
「合氣道の心得にも、善行は人の見ていないところで積むものだという、陰徳という考え方がありますよ。」
などと、僕は武術家らしいことを言ってみる。
佑夏も、ニコニコして、
「私の卒論のテーマも、そういう、幸せについての本なんです。
ルミ子さん、素敵なご主人をお持ちですね♡いいな~!」
佑夏ちゃん、俺はどうなの?
「勢いで結婚しただけです。でなかったら、誰があないなオタクな漫画屋なんかと。」
ルミ子さんは、そう言うが、僕には心から旦那さんに惚れぬいているように見えてしまう。
何て言うか、「絶対に、この人しかいない。」というような熱い瞳だ。
が、その娘が冷やかす。
「二人でサッカー、観に行って結婚したんです。大阪でやった、ワールドカップの日本とチュニジアの試合。
日本点取った時は、二人で抱きおうて喜んだ言うてます。」
「ええ加減にせえ!いらんことばっかりベラベラと!」
まるで、少女のように頬を赤らめるルミ子さん。
ああ、この人、本当にご主人を愛しているんだな。
「ロマンチックですね~。日本のゴールでゴールイン!ですか。
それまでも、お付き合いしてたんですよね?
良かったじゃないですか。」
水野さん、横浜は代表戦も頻繁にあり、マリノスの試合だってある。
サッカー、好きなのかな?
「ホントです!憧れちゃうな~!」
佑夏が、結婚願望を口にするのは珍しい。
それにしても、恋愛ホルモンなど、とっくの昔に効力が切れているはずなのに、どうしてルミ子さんの吉岡夫妻は、良好な夫婦関係を続けていられるのか?
この二日間の小旅行から帰った後、このことについて、僕と佑夏は二人で話し合った。
それはおそらく、漫画の創作活動を通して、吉岡夫妻は、日々、新しい人間に生まれ変わっていっているのではないだろうか?
という話に、落ち着くことになるのである。
しかも、生物の命の森を育てるという、これ自体が作品のテーマになってもおかしくない、壮大なドラマの人生である。
日々、新たな発見だってあるだろう。
年を追うごとに、二人の愛、娘も加えた家族愛も深まるだろう。
そう言えば、日本一有名な妖怪漫画の作者の奥さんの書いた手記がベストセラーになり、朝の連ドラにまでなっている。
そやけど、ウチ、言うてまいました、アハハ!」
理夢ちゃんは、照れ笑いしている。
「確かに、売名行為と取られることもあるでしょうね。
しかし、こういった活動は、作品に生きるのではないですか?」
小林さんが、もっともなことを言う。
「ぴょんぴょん」の読む者の心を打つ、暖かな世界観。
こういう、作者の利己を超えた、自己犠牲の生き方があればこそ、だったのか。
「合氣道の心得にも、善行は人の見ていないところで積むものだという、陰徳という考え方がありますよ。」
などと、僕は武術家らしいことを言ってみる。
佑夏も、ニコニコして、
「私の卒論のテーマも、そういう、幸せについての本なんです。
ルミ子さん、素敵なご主人をお持ちですね♡いいな~!」
佑夏ちゃん、俺はどうなの?
「勢いで結婚しただけです。でなかったら、誰があないなオタクな漫画屋なんかと。」
ルミ子さんは、そう言うが、僕には心から旦那さんに惚れぬいているように見えてしまう。
何て言うか、「絶対に、この人しかいない。」というような熱い瞳だ。
が、その娘が冷やかす。
「二人でサッカー、観に行って結婚したんです。大阪でやった、ワールドカップの日本とチュニジアの試合。
日本点取った時は、二人で抱きおうて喜んだ言うてます。」
「ええ加減にせえ!いらんことばっかりベラベラと!」
まるで、少女のように頬を赤らめるルミ子さん。
ああ、この人、本当にご主人を愛しているんだな。
「ロマンチックですね~。日本のゴールでゴールイン!ですか。
それまでも、お付き合いしてたんですよね?
良かったじゃないですか。」
水野さん、横浜は代表戦も頻繁にあり、マリノスの試合だってある。
サッカー、好きなのかな?
「ホントです!憧れちゃうな~!」
佑夏が、結婚願望を口にするのは珍しい。
それにしても、恋愛ホルモンなど、とっくの昔に効力が切れているはずなのに、どうしてルミ子さんの吉岡夫妻は、良好な夫婦関係を続けていられるのか?
この二日間の小旅行から帰った後、このことについて、僕と佑夏は二人で話し合った。
それはおそらく、漫画の創作活動を通して、吉岡夫妻は、日々、新しい人間に生まれ変わっていっているのではないだろうか?
という話に、落ち着くことになるのである。
しかも、生物の命の森を育てるという、これ自体が作品のテーマになってもおかしくない、壮大なドラマの人生である。
日々、新たな発見だってあるだろう。
年を追うごとに、二人の愛、娘も加えた家族愛も深まるだろう。
そう言えば、日本一有名な妖怪漫画の作者の奥さんの書いた手記がベストセラーになり、朝の連ドラにまでなっている。
1
あなたにおすすめの小説
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる