ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第八章 天からの贈り物

幸せの婚約者

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「ねえ?私がどーしたの?中原くん?」

 佑夏が繰り返す。

 理夢ちゃんへの、今日だけ家庭教師もようやく終了したのか。
 すぐ後ろに、こちらの女子高生も続いている。

 助かった、というべきか?
 さすがに、本人を目の前にして、これ以上、突っ込んでくる人はいないだろう。

「い、いや。佑夏ちゃんは、東山先生のヤマネの話、すごく聞きたがってたから、もうそろそろ、来るだろう、って。」

 ふぅ~、九死に一生!

「あら、そーだったの?遅くなりました、すいませ~ん!東山先生、よろしくお願いしま~す♪」

「はい。お待ちしてました。」

 言葉を交わす、佑夏と東山さん。
 いよいよ、お待ちかねのヤマネのお話だ。

 やっと、変な恋バナから解放される。
 もう~、勘弁してくれ!

「白沢先生、うちの娘このアホ、勝手を言いまして、ほんまにすんまへん。」

 ルミ子さんが、立ち上がって、佑夏に歩み寄る。

「いーえー、私も楽しかったです!」

 相変わらず、指導を楽しむ姫の横に、理夢ちゃんが出てきて、

「おかん、白沢先生の授業、まるで魔法や!スラスラ、おつむに入ってくるわ。おもろおして、なかなか止められへんかった。」

 そりゃ、そうだろ。

 世界中から、日本未発売の教授法についての文献を、原著で取り寄せて、色々と、教え方の研究をしている佑夏だ。

 さらに、彼女本人の生徒へのサービス精神が、旺盛なんてもんじゃない。

 楽しくないはずはないんだ。

 理夢ちゃんの、あまりに、にこやかな笑顔に、ルミ子さんは色めきたち、

「何!?ホンマか!?白沢先生、これからも、オンラインでおたのもうします!」

「はーい!私で良かったら。」

 佑夏、家庭教師の生徒さん、一人ゲット。
 価格交渉を全くしてないが、佑夏の性格上、ぼったくりはあり得ないのは、吉岡親子も、分かっている。

 いや~、
 今や、オンラインで地球の裏側にだって教えられてしまう。
 ドラえもんの秘密道具で、数少ない、本当に実用化されたものがビデオ通話。

 紅茶を淹れ直して来ると言って、宿の女将さんが席を立ち、理夢ちゃんは、ルミ子さんの隣に座る。

 んん?

 みんな、氣を使って、僕の隣の席は、佑夏の為に空けておいてくれたが、姫が座ろうとすると........、

「佑夏ちゃん、ほら、もっと中原君にくっついて!」

 水野さんが佑夏の椅子を引き、さらに僕に近付ける。

 ぽか~ん、とする佑夏。

「あ、あの葵さん、何でしょう?」

 オイオイ、止めてくれよ、姫に変なこと、吹き込まないでくれ!

 しかし、僕の思惑を他所に、水野女史は止まらず、

「佑夏ちゃん、周りに遠慮し過ぎなのよ!もっと素直になって、中原君に甘えていいの!」

 ナースのこの言葉に、僕と山田さんを除く全員が頷く中、主賓の東山さんが、まさかの爆弾発言をしてくる。

「中原さん、白沢さん、私から一つ、提案があります。」

 は?

「今から、明日の解散まで、お二人は婚約者同士ということにしませんか?」

 はぁ~!?あなた、動物写真家が何、言ってんですか?恋愛カウンセラーもやってんですか!?
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