ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第九章 ヤマネの夜

予想外のプラン

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「仁助さん、ここ!」

 スマホの画面で、佑夏が、パークロッヂの公式サイトを見せてくれる。
 驚いたのは、彼女の次の一言だ。

「ねえ、明日、パークロッヂここで、もう一泊して、観て行こうよ!」

「え!?何言ってんの?佑夏ちゃん!?明日は教員採用試験きょうさいの合格発表だろ!?
 それに、もう、帰りの高速バス、予約してあるし。」

 時として、女という生き物は、思い立つと、男より行動が早い。

「おかん、ウチも行きたい~!」

 姫につられたか、理夢ちゃんは、ルミ子さんに駄々をこね初める。

「アホ、これ以上、亭主アレを一人にしとけるか。今度、三人で来る時や」

「しゃあない、分かった。絶対やで。」

 にべもなく、却下されてしまう理夢ちゃんだが、吉岡一家はお金には困っていないのだから、いつだって来れるだろう。
 ただ、売れっ子で、忙しいご主人のスケジュール調整は大変そうだ。

「理夢ちゃん、ごめ~ん!佑夏わたし、先、越しちゃいま~す!
 ねえねえ、仁助さん!お部屋、別々に取るから、いいでしょ?また、出直す方が大変だよ。」

「う、う~ん......。」

 まだ、決心がつかず、迷って変な声を出してしまう。

 宿泊費、乗馬料金は、どちらも並といったところ。
 一応、今の持ち合わせで、何とかなりそうだ。

「中原君、婚約者の言うことが聞けないの?佑夏ちゃんが、これだけ言ってくれてるのよ。」

 水野さん、あなたは関係無いでしょう?

 すると、再び、東山さんまで、

「中原さん、○○県から、またお出掛けになるのは、大変ですよ。
 せっかく、白沢さんも、こう言っているのですし、明日、行かれてはいかがですか?
 馬が好きなら、必ず、いい経験になります。」

「わ、分かりました。佑夏ちゃん、じゃあ、明日、行ってみようか?」

「やった~!電話予約だけみたい、今、かけてみる!外乗も付けるね。」

 結局は、押し切られてしまい、佑夏は廊下に出て行く。

 しかし、ここで、彼女に対し、初めて、僕は疑念を抱いてしまう。

 付き合ってもいない男と二人で泊まり?今回のヤマネツアーのような、団体旅行ではない。
 まともな女性のすることではないよ。
 
 潮崎一馬氏という相思相愛の男性がいながら、一体、どういうことだ?
 いくら、この後に僕には別れを告げるつもりだとしても、それじゃ、フッた男と浮気じゃないか?
 他の男と二人で泊まりなどと、潮崎氏に申し訳ないとは思わないのか?

 また、これだけ引っ張っておいて、一緒に宿泊までして、僕には「潮崎さんと一緒になるから、さようなら~。」などと、言うつもりだとしたら、いくら僕を異性として意識しておらず、ただの友達だと思っているからといって、あまりに配慮に欠ける行為と言わざるを得ない。

 これでは、僕と潮崎氏に対する二重の不貞ではないか。

 だが、潮崎氏については神野翠は僕に言った、「まだ分からない。ちゃんと、佑夏の氣持ちを確かめたのか?」、と。

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