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第十二章 3月11日
呪詛
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だが、僕の声は、もう佑夏の耳に入ってはいない。
彼女は、両手で真帆さんの白い貝殻を頬に押し当て、声を上げて泣き始める。
「う、う、う、うわぁー!!!真帆姉ちゃんー!!!真帆姉ちゃんー!!!」
佑夏の膝の上にいたぽん太が、次の動きを察知して、脇に除けると、この僕の大事な女性は、手は頬に当てたまま、とうとう頭から自分の膝の上に倒れ込み、ありったけの悲しみを吐き出している。
潮崎さん、ちょっとだけ、すいません。
僕は、彼女の背中に手を当てて、顔を近づけ、
「佑夏ちゃん、氣にすること無いよ、氣にすること無いって!それが、真帆さんの命の長さで、生まれる前から決まってたんだよ。」
と、慰めにもならない戯言を言うのが、精一杯だ。
こんな時に、氣付いてしまったが、佑夏が男性に交際を申し込まれて、「何年か信頼を築いてから」と返事をするのは、真帆さんのこともあるからじゃないだろうか?
これは、知り合って日の浅い人間にするような話ではない。
僕にも、出会ってからもうすぐ、三年になる今、ようやく話してくれている。
おそらく、潮崎さんにも、まだ話してはいないだろう。
彼女は、時間をかけて、男を品定めしようとか、そういう人では決してない。
しかし、これは佑夏と交際するのであれば、知っておかなければならない、避けて通れない事実だ。
(体目当てなんて男は、その時点で論外だな。)
ぽん太の台詞を思い出す。
だから、彼女は、何年かかけて信頼を育て、きちんと真帆さんのことも話した上で、お付き合いしたい、となるんじゃないか?
もっとも、真帆さんについては、何も知らずに、潮崎さんは、佑夏と付き合っているが、あれだけ魅力のある人なら、特別なのも、当然かもしれない。
あ、泣き崩れている彼女の声が、収まってきている。
なんとか、落ち着いてくれたのか?
しかし、佑夏の口から漏れて来たのは、普段の、明るく朗らかな彼女からは想像もできない、恐ろしい呪詛の呟きである。
佑夏は、ブツブツと何やら不気味な声を出しながら、上半身を起こす。
まるで、この世に怨念を残して死んだ亡霊が、恨み言を呟いているように。
潮崎さんの愛の力によって、大きくなった目を、さらに大きく見開いて、佑夏は虚空を見つめて言葉を吐く。
「.......そうよ......。私、もう、生きてちゃいけないのよ.......。どうして、私だけ生きてるの?
......真帆姉ちゃん、暗くて、冷たい海の底で、独りで泣いてるわ.......。
........私、行かなきゃ......。真帆姉ちゃんの所へ........。」
危険な精神状態だ!これはマズイ!
もし、このまま、正氣に戻らず、自殺なんかしてしまったら!?
彼女は、両手で真帆さんの白い貝殻を頬に押し当て、声を上げて泣き始める。
「う、う、う、うわぁー!!!真帆姉ちゃんー!!!真帆姉ちゃんー!!!」
佑夏の膝の上にいたぽん太が、次の動きを察知して、脇に除けると、この僕の大事な女性は、手は頬に当てたまま、とうとう頭から自分の膝の上に倒れ込み、ありったけの悲しみを吐き出している。
潮崎さん、ちょっとだけ、すいません。
僕は、彼女の背中に手を当てて、顔を近づけ、
「佑夏ちゃん、氣にすること無いよ、氣にすること無いって!それが、真帆さんの命の長さで、生まれる前から決まってたんだよ。」
と、慰めにもならない戯言を言うのが、精一杯だ。
こんな時に、氣付いてしまったが、佑夏が男性に交際を申し込まれて、「何年か信頼を築いてから」と返事をするのは、真帆さんのこともあるからじゃないだろうか?
これは、知り合って日の浅い人間にするような話ではない。
僕にも、出会ってからもうすぐ、三年になる今、ようやく話してくれている。
おそらく、潮崎さんにも、まだ話してはいないだろう。
彼女は、時間をかけて、男を品定めしようとか、そういう人では決してない。
しかし、これは佑夏と交際するのであれば、知っておかなければならない、避けて通れない事実だ。
(体目当てなんて男は、その時点で論外だな。)
ぽん太の台詞を思い出す。
だから、彼女は、何年かかけて信頼を育て、きちんと真帆さんのことも話した上で、お付き合いしたい、となるんじゃないか?
もっとも、真帆さんについては、何も知らずに、潮崎さんは、佑夏と付き合っているが、あれだけ魅力のある人なら、特別なのも、当然かもしれない。
あ、泣き崩れている彼女の声が、収まってきている。
なんとか、落ち着いてくれたのか?
しかし、佑夏の口から漏れて来たのは、普段の、明るく朗らかな彼女からは想像もできない、恐ろしい呪詛の呟きである。
佑夏は、ブツブツと何やら不気味な声を出しながら、上半身を起こす。
まるで、この世に怨念を残して死んだ亡霊が、恨み言を呟いているように。
潮崎さんの愛の力によって、大きくなった目を、さらに大きく見開いて、佑夏は虚空を見つめて言葉を吐く。
「.......そうよ......。私、もう、生きてちゃいけないのよ.......。どうして、私だけ生きてるの?
......真帆姉ちゃん、暗くて、冷たい海の底で、独りで泣いてるわ.......。
........私、行かなきゃ......。真帆姉ちゃんの所へ........。」
危険な精神状態だ!これはマズイ!
もし、このまま、正氣に戻らず、自殺なんかしてしまったら!?
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