ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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第十四章 礼拝堂で

真相?

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 優しい佑夏ちゃんは、誰とでもたくさんお話したい、分け隔ての無い人だ。

 だが、僕は少しでも、恋人の潮崎さんとの時間を多くとって欲しい。
 真帆さんの一件を聞いてから、今まで以上に、彼女の幸福を強く願うようになり、ますます、そう思える。

 このところ、姫との接触を早めに切り上げるのは、そういう意味だったんだけど?

「だって、佑夏ちゃんは、潮崎さんと付き合ってるじゃないか。俺の為に、潮崎さんと一緒の時間、邪魔しちゃ悪いだろ?」

 僕が、こう言った時の、翠の驚きようは、想像以上。

「佑夏が!?潮崎さんと、付き合ってる!?お前、何言ってんだ!?」

 何、そんなに驚いてる?

「違うのか?」

「当たり前だろ!何処を、どうやったら、そんな考えが出てくんだよ!?」

 翠の予想外の反応に、今度はこっちが驚いてしまう。
 彼女は繰り返す。

「中原、いつから、そう思ってたんだよ!?」

「去年、屋久島のライブの後、佑夏ちゃんは、潮崎さんと二人だけで、種子島に泊まったんだろ?」

「バカか!?ありゃ、スタッフの人や、客と一緒に30人くらいで、ゾロゾロ行ったんだよ!
 潮崎さんとは、ほとんど話す暇も無かったって言ってたぞ!」

 ええ!?そうだったのか!?

 ついさっきまで晴れていた空がどんよりと曇り、まだ残暑が厳しいとはいえ、真夏とは違うヒンヤリとした風が背筋を冷やす。

 しかし、屋久島から、電話でハッキリ、彼女は........。

「あの時、佑夏ちゃん、電話で俺に言ったんだよ。“一馬さんと一緒にいたい。一馬さんに近づいて行きたい“って。」

 翠は、心底、呆れたように

「そりゃ、貧困教育の先輩として、って意味だろ!?ちゃんと本人に確かめたのか!?」

 ああ、言われてみれば........。俺はまだ、終わっていないのか?

 やや強い風が吹き、木々の間でゴォーッ、といった唸りを上げる中、翠は悲痛ささえ感じられる目で、僕に訴えてくる。

「中原!佑夏は、種子島でな~!」

「何だよ?」

「い、いや。直接、アイツに聞け。」

 ?僕が聞き返すと、なぜか翠は答えずに下を向いてしまう。

 しかし、親友の翠がこう言うのだから、本当に佑夏と潮崎さんは付き合っていなかったのだろうか?
 いやいや、どう見ても、ヤマネ姫は「一馬LOVE」にしか見えないが?

「潮崎さんが日本に来ると、いつも一緒に、佑夏ちゃんはサーフィンに行ってるじゃないか?
 やっぱり、付き合ってるんだろ?」

 僕が口に出した疑問。いや、誰だって、そう思うはず。

 翠は再び、キッした表情で僕を見据える。



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