ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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最終章 湖面の誓い

もう一度、ヤマネと

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 再び、八島ヶ原湿原に戻って来た僕達は、湿原にあるヒュッテで昼食となる。

 楽しかったこの二日間の日程も、そろそろ終わりに近づいている。

 佑夏ら、女性達は、とっくに連絡先は交換しているようだ。
 それが、彼女達の会話から伺える。

 このメンバーとも、もうすぐお別れか。昨日会ったばかりだというのに、何だか名残惜しいよ~!
 だって、全員、凄くいい人ばっかりなんだって!

 そんな感傷に浸る中、やはり、先ほどのカフェのように、外のテラス席で、八島ヶ原湿原を見ながら、それぞれが、カレーやピラフなどを、思い思いに食べる。

 僕はカレー。

 こんなところで食べるランチだから、せいぜい、スキー場のゲレンデ食レベル(スキー、やったことないが、マズイと聞く)だろうと、期待していなかったにも関わらず、意外にも牛肉がゴロゴロ入っていて、美味い!

 まあ、山小屋食にしては、であるけどね。

 食べ終わる頃、東山さんから、驚くべき発表が。

「皆さん、昨日と今日で、皆さんとご一緒させていただきまして、私はあなた方を信用しました。

 ヤマネが現在、営巣していて、中に入っている木をお教えてしても大丈夫かと思います。」

 軽いどよめきが起きて、ディーンフジオカ添乗員が、ややホッと表情をしている。

 おそらく、事前に彼らで打ち合わせをして、客に怪しげな人物が混じっていたら、ヤマネの営巣木は教えずに、ここで終了にするつもりだったのだろう。

 さらに、東山さんが注意点を述べる。

「今から、昨日行きましたヤマネの森に、もう一度、参ります。

 二つ、私と約束して下さい。

 まず、木に触らないこと、もう一つは、声を立てないこと、よろしいでしょうか?」

 もちろん、「嫌だ」なんて言う者など、一人もいるはずはない。

 こうして、僕達は再び、昨日見た、ヤマネの森に向かうのである。

 距離的には、大したことはなく、到着まで、さして時間はかからない。

 何だか、この場所にも、既に僕は愛着を感じ始めている。

「あの木です。」

 小声で、東山さんが指し示したのは、ちょうど中央あたりにある楢の木。

 直径50㎝くらいか?大木というほどではないが、この中では大きな方だ。

 今、この木から5mほど離れ、僕達は、遠巻きに並んでヤマネの営巣木を見ている。

「あの洞の中に、ヤマネがいます。」

 地上から2mのあたりに、縦長の洞がある。
 キツツキがつついて出来たのでなく、自然に出来上がった物みたいだな。

 確かに、安全性は高い、ヤマネとは頭のいい生き物だ。

「一人ずつ、近付いて、見て下さい。全員で行ってはヤマネが怯えます。」

 東山さんの言葉に、ヤマネを刺激しないように、無言で僕達は顔を見合わせる。

 誰から行く?
 


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