300 / 305
最終章 湖面の誓い
祝福
しおりを挟む
「佑夏ちゃん、俺からも、お願いがあるんだけど......。」
「え?」
涙が溢れる、美しい瞳が僕を見上げる。
「あのさ、その”仁助さん”って呼び方、もう元の”中原くん”に戻さないで欲しいんだ。」
「どうして?」
「このタカラガイ、俺と佑夏ちゃんの物にしないか?」
僕は、二つの貝殻が入った、彼女に持たれたままの掌を、彼女の目の高さに上げる。
「ええ!?鈴村さんは?」(千尋に申し訳ないと、言いたげな表情)
「鈴村さんは、ただの俺の弟子だよ。武術の世界じゃ、師匠は教え子に手を出したり、しないもんだって。
でも、そんな仕来りなんか無くてもさ、俺は鈴村さんを、どうするつもりも無いよ。」
「そ、そうなの?」
ハッと、目を見開き、驚くヤマネ姫。
「うん。俺こそ発表見たら、言おうと思ってたんだ。俺、ずっと、君のことが......。」
お互い、両手で繋がったまま、僕は、全てを佑夏に話す。
知り合って二年目から、君に特別な感情が芽生えたこと、
(まさか、ぽん太の口から、彼女がアイツを保護した経緯を聞いたのが決定打となった、と言っても、到底、信じてもらえないだろうから、デブ猫や、従妹の幼児の世話をかいがいしくしてくれる優しい心に打たれて、という表現で。)
だけど、教員採用試験に向けて頑張っている君を見て、余計な負担はかけたくなくて、発表を見るまで、胸に秘めておくことにしていたことも、何もかも.....。
佑夏の大粒の涙が、さらにドッと流れ出し、湖の光を浴びた笑顔が煌めく
「ずっと、待っててくれたの......?二年も.........?仁助さん.........、嬉しい..........!」
僕の掌を握っていた手を離し、彼女は、両手を広げて僕の胸の中に飛び込んでくる。
タカラガイを右手に持ち換え、ヤマネ姫の細い背中に両腕をそっと回し、僕は、髪の真帆さんの白い貝殻に軽く、額を付ける。
「真帆さん、今まで、この子を守ってくれて、ありがとうございます。
これからは、俺が彼女の側にいます、貴女も、俺達とずっと一緒にいて下さい。」
と、感謝と誓いを込めて.......。
「あ!真帆姉ちゃん!」
佑夏が、こめかみに手を当てる。これは、潮の香り。
と、彼女の髪の白い貝殻が光を放ち、温かい白い波が流れ出して、僕達をグルグル包み込んでいく。
今は、僕にも、佑夏にも真帆さんの波がハッキリ見える。
春に見た、無数のシーグラスは、さらに量を増して輝いている、真帆さんが、僕達二人を祝福してくれているのか.......。
こうして、僕と佑夏は結ばれたのである。
「え?」
涙が溢れる、美しい瞳が僕を見上げる。
「あのさ、その”仁助さん”って呼び方、もう元の”中原くん”に戻さないで欲しいんだ。」
「どうして?」
「このタカラガイ、俺と佑夏ちゃんの物にしないか?」
僕は、二つの貝殻が入った、彼女に持たれたままの掌を、彼女の目の高さに上げる。
「ええ!?鈴村さんは?」(千尋に申し訳ないと、言いたげな表情)
「鈴村さんは、ただの俺の弟子だよ。武術の世界じゃ、師匠は教え子に手を出したり、しないもんだって。
でも、そんな仕来りなんか無くてもさ、俺は鈴村さんを、どうするつもりも無いよ。」
「そ、そうなの?」
ハッと、目を見開き、驚くヤマネ姫。
「うん。俺こそ発表見たら、言おうと思ってたんだ。俺、ずっと、君のことが......。」
お互い、両手で繋がったまま、僕は、全てを佑夏に話す。
知り合って二年目から、君に特別な感情が芽生えたこと、
(まさか、ぽん太の口から、彼女がアイツを保護した経緯を聞いたのが決定打となった、と言っても、到底、信じてもらえないだろうから、デブ猫や、従妹の幼児の世話をかいがいしくしてくれる優しい心に打たれて、という表現で。)
だけど、教員採用試験に向けて頑張っている君を見て、余計な負担はかけたくなくて、発表を見るまで、胸に秘めておくことにしていたことも、何もかも.....。
佑夏の大粒の涙が、さらにドッと流れ出し、湖の光を浴びた笑顔が煌めく
「ずっと、待っててくれたの......?二年も.........?仁助さん.........、嬉しい..........!」
僕の掌を握っていた手を離し、彼女は、両手を広げて僕の胸の中に飛び込んでくる。
タカラガイを右手に持ち換え、ヤマネ姫の細い背中に両腕をそっと回し、僕は、髪の真帆さんの白い貝殻に軽く、額を付ける。
「真帆さん、今まで、この子を守ってくれて、ありがとうございます。
これからは、俺が彼女の側にいます、貴女も、俺達とずっと一緒にいて下さい。」
と、感謝と誓いを込めて.......。
「あ!真帆姉ちゃん!」
佑夏が、こめかみに手を当てる。これは、潮の香り。
と、彼女の髪の白い貝殻が光を放ち、温かい白い波が流れ出して、僕達をグルグル包み込んでいく。
今は、僕にも、佑夏にも真帆さんの波がハッキリ見える。
春に見た、無数のシーグラスは、さらに量を増して輝いている、真帆さんが、僕達二人を祝福してくれているのか.......。
こうして、僕と佑夏は結ばれたのである。
0
あなたにおすすめの小説
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
