保魂の賢者 ~死人の魂を操ることが出来る能力に目覚めた僕は変わり果てた世界を救う~

わたあめめろん

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 そのまま後ろにぱたりと倒れ、湯船の中に頭から落ちていった。ぼちゃんと音を立ててそのままぶくぶくと水面に泡を立てて沈んでいった。晴也は自分の首を優しくなでる。すると、ひりひりとした痛みが昇ってくる。本日二度目の死を覚悟した瞬間だった。
「お、お姉さま!何か叫び声が聞こえてきましたわ!どうされたのですか?」
 悲痛な叫び声を聞いたのか、今日子が浴場に駆け込んできた。
「ああ、晴也様。お、お姉さまの叫び声が聞こえましたわ!何かあったのですか?」
 今日子は血の気が引いた真っ青な顔で湯船に顔を近づけ、その中に手を伸ばした。
「まあ、大変ですわお姉!お姉さま、お姉さま、この中にいるのですか?早く手を掴んでください」
 こうして今日子がお姉さまと呼ぶ人物を引き上げると、タイルに仰向けにした。
「大変ですわ。息をしていません」
 今日子はすぐに自分の服から杖を取り出し、天に向かって仰ぎだした。
「お姉さまを助けて、神様お願いいたします」
 杖の先から、何やら魔法じみた光を灯し、額に当てたが、姉はなかなか息を吹き返さない。しかし、胸元を見ると、微かな心臓の鼓動に気付く。事の重大性を感じながら立ち尽くしていると、いきなり今日子が頬をぶってきた。ぶたれた部分が赤くじーんと腫れてしまった。
「なんで倒れている女の子の胸を凝視しているんですか、そんなことをしている暇があったら早く外に運びますわよ」
「は、はいい」
 晴也は今日子とともに少女の体を抱え、風呂場から上がった。そして、涼しい空間で仰向けにした。今日子はすぐに自身の中指につけていた太い指輪に向かって話し始めた。
「大変、お姉ちゃんがお風呂場で倒れてた!至急、明護(めいご)さんお風呂場まで」
 そう言った瞬間、部屋の外から風が舞った時のような爽やかな音がし、たちまちその風は入り口の戸を貫通して晴也たちの前に現れた。晴也よりも二倍は身長のある人型の人物だったが、顔は全体が白い紙のようなもので覆われていて、素顔を見ることはできない。服装は真っ黒な布のローブを纏い、大きなフードが頭頂部をも隠すまさに、正体不明の化け物であった。
明日香あすかがどうした?」
 野太い低音が語り掛ける。そこで、この場のただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、明護とよばれた化け物は倒れた少女の額に手を当てた。そして、舐めまわすように体を観察した後、そっと腕を組んだ。
「妙だな。これは、水に溺れた症状ではない。何者かに呪縛されている。原因は不明だがな。大丈夫だ。命に別状はないだろう。ただ、呪いを解かなければ目覚めない」
「そ、そんな、お姉さまが目覚めないかもしれないの、、、?」
「心配するな。周りに原因はあるはずだ。落ち着いて探すぞ」
 そして、化け物は脱衣室を見まわす。そこで、晴也と目が合った。すかさず今日子に尋ねる。
「こいつは誰だ?まさか、主宰が言っていた救世主とはこいつのことか?」
「はい。この方がこの混沌を解決してくれる救世主様の晴也様です」
「あ、あんまりよく分からないけど、まあ、よろしくお願いします」
 そう言って晴也はそっと頭を下げた。その時に首からぶら下げられたネックレスが小さく音を立てながらきらりと青白く
 光った気がした。
「おう、よろしく。俺の名前は明護。この屋敷の救急隊員のようなものだ。何かあったら気軽に呼んでくれ」
 二人は軽く挨拶を交わすとすぐに明日香の方を向いた。
「しかし、これはどうしたものかな。何か、手掛かりがあるはずなのだが」
 明護は周りを見回しているが特に何も見つけられないようだった。
「くそ、何も見つからないな。、、、ん?」
 明護は晴也がつけているネックレスに目をやった。不気味な光に何やら嫌なものを感じたのかもしれない。すると、明護はネックレスに顔を近づけ、まじまじと観察した。
「ちょっと、これを外してもらえないか?」
「わかりました」
 晴也は、ネックレスを首から外して、明護に手渡した。 
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