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20.調査結果
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タイミングの良いことに、アカデミーでの初日を終えて王宮に戻ると、仕事を依頼しておいた諜報部の男性が資料を持って部屋を訪れる。
「姫様、こちらが調査結果でございます」
「有り難う……結構分厚いわね」
「お読み頂ければお分かりになると思いますが、面白いことが色々と分かりました」
「それは楽しみだわ……この内容については誰かに話した?」
「いえ、この内容は姫様だけにお伝えしております。この情報をどうするかはご判断ください」
「そうさせてもらうわ、お疲れ様でした。また協力してもらうかも知れないけれど、その時はよろしくね」
「はっ。それでは」
彼が部屋を出てから念のため入り口の鍵を掛け、報告書に目を通す。まずはインファンテの王妃、アナスタシア様。彼女に関してはこれまでの扉の中で得た知識とほぼ同様。一人っ子のレジナルド王子を溺愛気味で、そのお陰でレジナルド王子もマザコン……いや、体の弱い王妃の事を気遣う母親想いの王子と言うべきかな。今回は療養目的で彼に付いてきたってことだったけど、他国で王子一人に生活させるのは心配だったのだろう。
「たしか前の扉の中ではエマが養○酒みたいなのを贈ってたわね」
あれは王宮……と言うか両親御用達の薬用酒だったはず。王都の外れにある湖の畔に王家の別荘もあるし、あそこは環境も王都内よりはいいはず。あそこにお誘いするのも良いかも知れない。
次はマシュー王子のお付の騎士、サイモン・ダウニング。フォーセット王国の侯爵家の出身で、マシュー王子の幼馴染。王子と同い年ながら、小さい頃から王子を守るお兄さん的な存在らしい。マシュー王子も彼のことは深く信頼していて、常に行動を共にしているらしい。まあそれはアカデミーの様子を見てても自明で、なんならイチャイチャしてる感もあったもんなあ。
前の扉の中ではどちらかと言うとエマがマシュー王子に入れ込んでいた感じで、王子の方は研究の話をしてくれるエマに興味を持ってはいたものの、多分恋愛感情ではなかったのだろう。友達ぐらいの感覚だったに違いない。この世界にBLなんて概念があるかどうか分からないけど同性愛の例はありそうだし、二人の仲を許容する態度を示せば命を狙われる様なことはないかな? 私はもちろんBLは大好物ですからね!
そして最後はユージーン王子のお姉さん的存在であるカーラ・グッドール。彼女に関する報告を読み始めて、驚き過ぎて声が出てしまった。
「マジか!?」
なるほど、諜報部の彼が『面白い』と言ったわけが良く分かった。いや、面白いとかそんなレベルじゃないわね。これはイグレシアス王国にとっても非常に重要な内容だわ。カーラ自身はこのことを知っているのだろうか。知っていたとすれば、イグレシアス王国のアカデミーに入学することには色々と想いがあっただろうな。変に恨みを買ってここでも殺害されてしまうと元も子もないから、周りに話すタイミングは慎重に選ばないとなあ。
最後の報告を読んでこの報告書の重要性は俄然高くなった。とにかく今は誰にも見せずに私の胸だけに留めておくことにしよう。保管も厳重にしなければ……と、なると保管しておける場所は、あそこか。そうとなれば早速。
書類を封筒に戻して大事に抱え部屋を出ると、専属メイドのバーバラが。
「姫様、どこかへ行かれるのですか?」
「ええ、ちょっと蔵書室に用事があって。直ぐに戻るわ」
「かしこまりました。王様がアカデミーのことを聞きたいと仰っておりましたが」
「有り難う、分かったわ。蔵書室から直接向かいます」
「はい」
バーバラは私が十二歳の時にメイドとして雇われて、それ以降ずっとエマの専属として働いてくれている。キビキビと仕事もこなしてくれて、エマのことも良く分かってくれているのでついつい頼ってしまう存在。それぐらいエマは信頼していたのね。アカデミーなど入学準備など彼女が手助けしてくれたことも多いんだけど、エマの中に入った私としてはまだ少し警戒している。彼女が何か悪いと言うわけではなく、殺害されないために真に信用できるのは両親とレオぐらいなのよね。警戒していることが態度に出ちゃうのも嫌だから、その辺りの調整には気を使ってはいるけど。
そんなことを考えながら蔵書室へ。ここに入れるのは王家の人間と、あとはごく限られた高官のみ。そしてこの部屋の一番奥の本棚の、ある位置の本をずらすと壁にスイッチの様なものがあって、押し込むと『ガコンッ』と何か外れる様な音。これで棚の横にある人一人程の幅の壁が動く様になり、その向こうに通路が現れる。誰が何のために作ったのか知らないけれど、おそらく長い間使われていなかった通路だと思う。エマは子供の頃ここを発見し、自分の秘密のスペースとして両親にも告げていなかった。
入ってすぐの場所に置いてあったイーサラムのランプに灯りをつけ奥に進むと、何回か曲がって開けた空間にたどり着く。そこには蔵書室に入り切らなかったのか、またはわざと隠したであろう古びた本の棚と、そして絵画を並べた棚。この絵画だってきっと有名な画家が書いたものだろうから、持ち出して売れば結構なお金になるわよね……すぐ足が付きそうだからやらないけど。あとは剣とか壺とか結構な数の骨董品が詰め込まれている。きっと何代も前の王家の人間が置いたものなんだろう。今はちょっとバタバタしててきっちり見てる暇もないけれど、落ち着いたら絶対鑑定団ごっこしなければ。
部屋の一角には大きな宝箱が置いてあって、これはエマ専用。昔から彼女の宝物はここに収められている。イーサグラムが刻まれた鍵が取り付けてあって、私しか持っていない別のイーサグラムプレートを翳すと開く仕組み。カードサイズのこのイーサグラムプレートは私が常に持ち歩いているから、これを開けられるのは私だけなのよ。今回の書類もそこに収め、改めて部屋の中を見渡す。静かだし十分な広さもある。テーブルも椅子もあって作業台まであるから、私専用の秘密基地としては非常に魅力的だわ。アカデミーも始まったことだしイーサラムの研究もしてみたいから、積極的にここを活用しよう。
「姫様、こちらが調査結果でございます」
「有り難う……結構分厚いわね」
「お読み頂ければお分かりになると思いますが、面白いことが色々と分かりました」
「それは楽しみだわ……この内容については誰かに話した?」
「いえ、この内容は姫様だけにお伝えしております。この情報をどうするかはご判断ください」
「そうさせてもらうわ、お疲れ様でした。また協力してもらうかも知れないけれど、その時はよろしくね」
「はっ。それでは」
彼が部屋を出てから念のため入り口の鍵を掛け、報告書に目を通す。まずはインファンテの王妃、アナスタシア様。彼女に関してはこれまでの扉の中で得た知識とほぼ同様。一人っ子のレジナルド王子を溺愛気味で、そのお陰でレジナルド王子もマザコン……いや、体の弱い王妃の事を気遣う母親想いの王子と言うべきかな。今回は療養目的で彼に付いてきたってことだったけど、他国で王子一人に生活させるのは心配だったのだろう。
「たしか前の扉の中ではエマが養○酒みたいなのを贈ってたわね」
あれは王宮……と言うか両親御用達の薬用酒だったはず。王都の外れにある湖の畔に王家の別荘もあるし、あそこは環境も王都内よりはいいはず。あそこにお誘いするのも良いかも知れない。
次はマシュー王子のお付の騎士、サイモン・ダウニング。フォーセット王国の侯爵家の出身で、マシュー王子の幼馴染。王子と同い年ながら、小さい頃から王子を守るお兄さん的な存在らしい。マシュー王子も彼のことは深く信頼していて、常に行動を共にしているらしい。まあそれはアカデミーの様子を見てても自明で、なんならイチャイチャしてる感もあったもんなあ。
前の扉の中ではどちらかと言うとエマがマシュー王子に入れ込んでいた感じで、王子の方は研究の話をしてくれるエマに興味を持ってはいたものの、多分恋愛感情ではなかったのだろう。友達ぐらいの感覚だったに違いない。この世界にBLなんて概念があるかどうか分からないけど同性愛の例はありそうだし、二人の仲を許容する態度を示せば命を狙われる様なことはないかな? 私はもちろんBLは大好物ですからね!
そして最後はユージーン王子のお姉さん的存在であるカーラ・グッドール。彼女に関する報告を読み始めて、驚き過ぎて声が出てしまった。
「マジか!?」
なるほど、諜報部の彼が『面白い』と言ったわけが良く分かった。いや、面白いとかそんなレベルじゃないわね。これはイグレシアス王国にとっても非常に重要な内容だわ。カーラ自身はこのことを知っているのだろうか。知っていたとすれば、イグレシアス王国のアカデミーに入学することには色々と想いがあっただろうな。変に恨みを買ってここでも殺害されてしまうと元も子もないから、周りに話すタイミングは慎重に選ばないとなあ。
最後の報告を読んでこの報告書の重要性は俄然高くなった。とにかく今は誰にも見せずに私の胸だけに留めておくことにしよう。保管も厳重にしなければ……と、なると保管しておける場所は、あそこか。そうとなれば早速。
書類を封筒に戻して大事に抱え部屋を出ると、専属メイドのバーバラが。
「姫様、どこかへ行かれるのですか?」
「ええ、ちょっと蔵書室に用事があって。直ぐに戻るわ」
「かしこまりました。王様がアカデミーのことを聞きたいと仰っておりましたが」
「有り難う、分かったわ。蔵書室から直接向かいます」
「はい」
バーバラは私が十二歳の時にメイドとして雇われて、それ以降ずっとエマの専属として働いてくれている。キビキビと仕事もこなしてくれて、エマのことも良く分かってくれているのでついつい頼ってしまう存在。それぐらいエマは信頼していたのね。アカデミーなど入学準備など彼女が手助けしてくれたことも多いんだけど、エマの中に入った私としてはまだ少し警戒している。彼女が何か悪いと言うわけではなく、殺害されないために真に信用できるのは両親とレオぐらいなのよね。警戒していることが態度に出ちゃうのも嫌だから、その辺りの調整には気を使ってはいるけど。
そんなことを考えながら蔵書室へ。ここに入れるのは王家の人間と、あとはごく限られた高官のみ。そしてこの部屋の一番奥の本棚の、ある位置の本をずらすと壁にスイッチの様なものがあって、押し込むと『ガコンッ』と何か外れる様な音。これで棚の横にある人一人程の幅の壁が動く様になり、その向こうに通路が現れる。誰が何のために作ったのか知らないけれど、おそらく長い間使われていなかった通路だと思う。エマは子供の頃ここを発見し、自分の秘密のスペースとして両親にも告げていなかった。
入ってすぐの場所に置いてあったイーサラムのランプに灯りをつけ奥に進むと、何回か曲がって開けた空間にたどり着く。そこには蔵書室に入り切らなかったのか、またはわざと隠したであろう古びた本の棚と、そして絵画を並べた棚。この絵画だってきっと有名な画家が書いたものだろうから、持ち出して売れば結構なお金になるわよね……すぐ足が付きそうだからやらないけど。あとは剣とか壺とか結構な数の骨董品が詰め込まれている。きっと何代も前の王家の人間が置いたものなんだろう。今はちょっとバタバタしててきっちり見てる暇もないけれど、落ち着いたら絶対鑑定団ごっこしなければ。
部屋の一角には大きな宝箱が置いてあって、これはエマ専用。昔から彼女の宝物はここに収められている。イーサグラムが刻まれた鍵が取り付けてあって、私しか持っていない別のイーサグラムプレートを翳すと開く仕組み。カードサイズのこのイーサグラムプレートは私が常に持ち歩いているから、これを開けられるのは私だけなのよ。今回の書類もそこに収め、改めて部屋の中を見渡す。静かだし十分な広さもある。テーブルも椅子もあって作業台まであるから、私専用の秘密基地としては非常に魅力的だわ。アカデミーも始まったことだしイーサラムの研究もしてみたいから、積極的にここを活用しよう。
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