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25.作りたいもの
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責任者の男性に案内されて工房へ。金属を溶かして加工しているだろうから町工場の鉄工所みたいな雰囲気を想像してたんだけど、全然違っていた。熱気はあるものの、職人たちが机に向かって大きめのスプレーペンみたいなものを持って作業している。
「あの手に持っているものは?」
「イーサグラムを組み込んだ器具でございます」
なるほど、ペンと言うよりグルーガンみたいなものね。そんなに大きくないイーサグラムのプレートの場合、ああやってイーサを通しやすい物質をプレート上の溝に流し込んで作るんだとか。グルーガンみたいなものは鉄を柔らかくして加工するイーサグラムが仕込んであって、溶かす事なく流し込めるらしい。そんなイーサラムあるの!?
「もっと大きなプレートの場合はどうされるのですか?」
「それは奥の工房ですがご覧になりますか? 少々熱いですが」
「ええ、是非」
そうそう、私が期待していたのはそっちよ! 更に奥に行くと雰囲気がガラリと変わり、期待通りの光景が。ここでは炉を使って金属を溶かし、それを型に流してイーサグラムの模様部分を作るらしい。
「模様だけを?」
「はい。プレートに使う金属は線部よりも融点が低いものばかりで。鉄の場合は先程の様に柔らかくして流し込めるのですが、ミスリルとなると柔らかくするイーサラムがございませんので、溶かして型に入れるのです」
なるほどなあ。模様だけを先に鋳造してプレートに嵌め込むって分けね。それであんなに線が太めだったわけだ。でも歩留まりは悪そうだなあ。しかしこれで大体の課題は見えたし、私が前世の知識から想像していた方法を試せば小型化もできるかも知れないわ。
一通り見学を終えて再び応接室へ。
「いかがだったでしょうか? ご満足頂けましたか?」
「ええ、それはもう。我が国の技術力の高さを実感致しました」
「それはようございました。今後も技術の向上に邁進してまいります」
「期待しておりますわ。ところで、いくつか作って頂きたいものがあるのですが」
「何なりと」
メモを取り出し欲しい物を説明すると、流石に驚いた様子の男性。しばらく待つように言い残して部屋を出ていき、戻ってくるといかにも職人風の男性と一緒だった。コソコソと職人に説明する。
「嬢ちゃん……いや、姫様、こんなもので一体何を?」
「少し思いついたことがありまして、やってみようかと」
「そうですかい。鉄でならある程度細いものは作ったことはありやすが、ミスリルとなると……しばらく時間を頂きやすが宜しいですかい」
「ええ。残りのものはどうかしら?」
「残りのものはまあ、問題なくできると思いやす」
「ありがとう。楽しみにしているわ」
よし! これで第一段階はクリアだわ。上手く行ったらイーサグラム界に革新が起こるんだからね。特許取りたいぐらいだわ。
責任者と職人の男性に礼を言って応接室を出て、最後に店員の女性にももう一度声を掛ける。店員の間で既に話が広まっているのか、店員たちが妙にざわついていたわね。
「あんなもの、何に使うんだ?」
「研究よ、研究。レオも馬車にくっついてる浮遊移動体を知ってるでしょう?」
「あのゴツい円盤みたいなの? 革新的だとは思うけど、イーサ効率が悪いから大変だって御者がボヤいてたぜ」
「そうよね。王族や貴族の見栄だけで乗ってる様な乗り物だもの。でも、あれがもっと小さくなったらどう? 人が一人乗れるぐらいの……そうね、そういう板状のものがあって移動できたら」
「そんなもの、作れるのか!? そりゃまあ、短距離移動なら楽そうだよな」
「でしょ? 城だって結構広いし、見回りに歩き回るのも大変そうだもの。鎧も重そうだし」
私の頭の中にあるのは『宙に浮いてるスケートボード』の様なもの。かの有名なフューチャーにバックする映画にでてきたあれよ! エマの記憶を辿ってあの浮遊移動体を知った時にビビッと来たのよ。前世ではオタクだったけど運動が嫌いだったわけじゃない。小学生の時は一時スケボーにハマってたし、高校、大学の時は家族や友達とスキー場に行ってスノボで滑ってた。王女の姿で流石にスケボーはマズイかも知れないけど、その場合はハンドルを付けて電動キックボード的な感じでもいい。とにかく、浮いてるボードに乗ってみたい!
そうなると問題は小型化。ボード自体は作れるだろうけど、問題はデカいイーサグラムのプレートを如何に小さくするか。そこで思いついたのが前世のプリント基板。個人で回路を組む時はユニバーサル基板を買ってきてはんだ付けしたりするけど、あんな感じで小型化できないかと思ったわけ。その為には銅線に相当する、イーサを通す金属線が必要になる。どこまで細くできるか分からないけれど、曲げてプレートに貼り付けられればまずは問題ない。
「それ、俺も乗れるかな!?」
「もちろん。レオやレジナルドなら運動神経もいいでしょうし、直ぐに乗れる様になると思うわよ。本当は雪山を滑ったりするものなんだけどね」
「雪山って……エマはいつ滑ったんだ?」
「はっ! ほ、本で読んだのよ!」
危ない、危ない。そうだ、イグレシアスにも雪山はあるけど王族はまず行かないし、ましてやボードに乗って斜面を滑走したりはしない。どうやらスキーに似たものはあるみたいだけど、遊びで使うと言うより生活用具らしいし。
とにかくこれで計画は進められそう。この世界でやるべきは死を回避して破滅ルートから脱却することだけど、これぐらいの楽しみがあってもバチは当たらないわよね?
「あの手に持っているものは?」
「イーサグラムを組み込んだ器具でございます」
なるほど、ペンと言うよりグルーガンみたいなものね。そんなに大きくないイーサグラムのプレートの場合、ああやってイーサを通しやすい物質をプレート上の溝に流し込んで作るんだとか。グルーガンみたいなものは鉄を柔らかくして加工するイーサグラムが仕込んであって、溶かす事なく流し込めるらしい。そんなイーサラムあるの!?
「もっと大きなプレートの場合はどうされるのですか?」
「それは奥の工房ですがご覧になりますか? 少々熱いですが」
「ええ、是非」
そうそう、私が期待していたのはそっちよ! 更に奥に行くと雰囲気がガラリと変わり、期待通りの光景が。ここでは炉を使って金属を溶かし、それを型に流してイーサグラムの模様部分を作るらしい。
「模様だけを?」
「はい。プレートに使う金属は線部よりも融点が低いものばかりで。鉄の場合は先程の様に柔らかくして流し込めるのですが、ミスリルとなると柔らかくするイーサラムがございませんので、溶かして型に入れるのです」
なるほどなあ。模様だけを先に鋳造してプレートに嵌め込むって分けね。それであんなに線が太めだったわけだ。でも歩留まりは悪そうだなあ。しかしこれで大体の課題は見えたし、私が前世の知識から想像していた方法を試せば小型化もできるかも知れないわ。
一通り見学を終えて再び応接室へ。
「いかがだったでしょうか? ご満足頂けましたか?」
「ええ、それはもう。我が国の技術力の高さを実感致しました」
「それはようございました。今後も技術の向上に邁進してまいります」
「期待しておりますわ。ところで、いくつか作って頂きたいものがあるのですが」
「何なりと」
メモを取り出し欲しい物を説明すると、流石に驚いた様子の男性。しばらく待つように言い残して部屋を出ていき、戻ってくるといかにも職人風の男性と一緒だった。コソコソと職人に説明する。
「嬢ちゃん……いや、姫様、こんなもので一体何を?」
「少し思いついたことがありまして、やってみようかと」
「そうですかい。鉄でならある程度細いものは作ったことはありやすが、ミスリルとなると……しばらく時間を頂きやすが宜しいですかい」
「ええ。残りのものはどうかしら?」
「残りのものはまあ、問題なくできると思いやす」
「ありがとう。楽しみにしているわ」
よし! これで第一段階はクリアだわ。上手く行ったらイーサグラム界に革新が起こるんだからね。特許取りたいぐらいだわ。
責任者と職人の男性に礼を言って応接室を出て、最後に店員の女性にももう一度声を掛ける。店員の間で既に話が広まっているのか、店員たちが妙にざわついていたわね。
「あんなもの、何に使うんだ?」
「研究よ、研究。レオも馬車にくっついてる浮遊移動体を知ってるでしょう?」
「あのゴツい円盤みたいなの? 革新的だとは思うけど、イーサ効率が悪いから大変だって御者がボヤいてたぜ」
「そうよね。王族や貴族の見栄だけで乗ってる様な乗り物だもの。でも、あれがもっと小さくなったらどう? 人が一人乗れるぐらいの……そうね、そういう板状のものがあって移動できたら」
「そんなもの、作れるのか!? そりゃまあ、短距離移動なら楽そうだよな」
「でしょ? 城だって結構広いし、見回りに歩き回るのも大変そうだもの。鎧も重そうだし」
私の頭の中にあるのは『宙に浮いてるスケートボード』の様なもの。かの有名なフューチャーにバックする映画にでてきたあれよ! エマの記憶を辿ってあの浮遊移動体を知った時にビビッと来たのよ。前世ではオタクだったけど運動が嫌いだったわけじゃない。小学生の時は一時スケボーにハマってたし、高校、大学の時は家族や友達とスキー場に行ってスノボで滑ってた。王女の姿で流石にスケボーはマズイかも知れないけど、その場合はハンドルを付けて電動キックボード的な感じでもいい。とにかく、浮いてるボードに乗ってみたい!
そうなると問題は小型化。ボード自体は作れるだろうけど、問題はデカいイーサグラムのプレートを如何に小さくするか。そこで思いついたのが前世のプリント基板。個人で回路を組む時はユニバーサル基板を買ってきてはんだ付けしたりするけど、あんな感じで小型化できないかと思ったわけ。その為には銅線に相当する、イーサを通す金属線が必要になる。どこまで細くできるか分からないけれど、曲げてプレートに貼り付けられればまずは問題ない。
「それ、俺も乗れるかな!?」
「もちろん。レオやレジナルドなら運動神経もいいでしょうし、直ぐに乗れる様になると思うわよ。本当は雪山を滑ったりするものなんだけどね」
「雪山って……エマはいつ滑ったんだ?」
「はっ! ほ、本で読んだのよ!」
危ない、危ない。そうだ、イグレシアスにも雪山はあるけど王族はまず行かないし、ましてやボードに乗って斜面を滑走したりはしない。どうやらスキーに似たものはあるみたいだけど、遊びで使うと言うより生活用具らしいし。
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