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第10話 倫理観 vs 本能
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……洗われました、隅々を。もうお婿に行けない。
石鹸の効能なのか、全身ツルツルピカピカの状態で温泉へ。こんなにツルツルになったの、人生で初めてかもしれない。
肩まで湯に浸かり、目を閉じる。今はお風呂大好き民族として、温泉に没頭しよう。
それにしても、いい湯加減だ。熱すぎず、ぬるすぎず。超適温な上に、肌にまとわりついてくる感じがする。石鹸と同じで、この温泉も肌に良さそうだ。こんな温泉に毎日入ってたら、そりゃあ皆さん肌がモチツルになる訳だ。
滝の音や木々の擦れる音、小鳥のさえずりまで聞こえるし……チルい。こりゃあ、いつまでも入っていられるなぁ。
「おぉ……これが男。ちょっとゴツゴツしているのね」
「アタシも初めて見た……ちょっとドキドキするわ」
「ねぇ、坊や。ちょっとお話があるんだけど、私の部屋に来ない?」
「私の部屋に、ふわふわトロトロの美味しいお菓子があるの。一緒にどうかしら♡」
……訂正。全然チルくない。
薄目を開けると、湯の中はもちろん、岩場にも腰を掛けて誘惑してくるお姉様方が。やめて、本当に耐えられないから。
「ええいっ。散れ、散れ! 総隊長が先程ルールを決めたばかりだろう!」
俺の隣にいたミューレンさんが、両手を広げて立ち上がる。せめて大事な所は隠して立ち上がってください。
因みにオメガさんは、俺たちみたいに浅瀬じゃなくて、滝壷に近い所にいる。体格的に、深い所に行かないと体が全部入らないからな。仕方ない。
彼女の防御にブーブーと文句が上がるが、何人かは余裕そうな微笑みを見せていた。
「ええ、勿論。私たちは手を出さないわよ」
「手を出したくなるよう、仕向けるだけです」
「立派なものをお持ちなのは、ミューレン様だけと思わないでくださいね」
いいのか、それで。
チラッとオメガさんを見るが、肩まで湯に浸かってとろけている。こっちには気付いていないみたいだ。自分で安全って言ったんですから、統率くらいはしてくださいよ。
美女たちが少し俺から距離を取ってくれたおかげで、ようやく気兼ねなく温まれる。極楽、極楽。
「申し訳ありません、イブキ様。でも許してやってください。彼女たちも生物ですので、種を残したいという気持ちが強いのです」
「あはは……まあ、俺も男だから、気持ちはわかります」
健全な男子高校生を自負している身からすると、男1人に対して数百人の美女なんて、ハーレム天国以外の何物でもない。
けど、流れに身を任せていいのか……現代社会で培われた倫理観と、男が持つ本来の本能が、せめぎ合っている。
「あ……そう言えば聞きたかったんですけど、この世界の人類はどうやって数を保ってるんですか? 男が3万人、女が6千万人もいたら、物理的に厳しいと思うんですが」
「正直、減っていっているというのが現状です。亜人の中には、一度に5人、6人と産む種族もいます。ですがヒューマン族は基本2人で、多くて2人か3人。そのほとんどが女として生まれるのですから」
なるほど……数を産んでも、男が少ないのは変わりないから、必然的に人口が減ってしまうってことか。
「男の集められている都市部には、数万人の女が暮らしています。そしてその中に、母官と呼ばれる上流階級の女たちがいます。母官は数ヶ月に一度、女の妊娠・出産を確認した後、都市部の女と各村、町、地方都市にいる女の入れ替えを行うらしいです」
入れ替え……。
「六華隊の方々も、その対象になるってことですか?」
「それが……騎士は対象外と言いますか。私たちは各土地や人々を護るためにいるので、替えの利かない存在なんです。なので頻繁に入れ替えの話しが来ることはありません。ここ十数年で、一回あったとは聞いています」
へぇ……意外と考えているんだな。
そりゃそうだ。もし一年に何回も数十人単位で招集されていたら、隊の編成や訓練にも支障が出る。それでは護れるものも護れない。
「という事情があり、騎士たちは男に飢えているので、決して一人で出歩かないように。いいですね?」
「あ、はい」
めちゃめちゃ釘を刺された。部屋に行くと思ってるんだなぁ。……ちょっと揺らいだのは秘密だ。
少しミューレンさんから視線を逸らす。その時。湯から上がったオメガさんが、こっちに歩いてくるのが見えた。だから前! 前隠して!
「おーう。イブキ、楽しんでるか?」
「は、はい。気持ちいいです」
「ガハハハ! そいつぁ良かった!」
豪快に笑い、俺の隣に座る。全然嵩が足りないから、半身浴みたいになっている。
「あ、そうだ。ミューレン、イブキの能力値は調べてんのか?」
「まだです。湯から上がったら、魔晶空間へお連れしようかと」
「わかった。アタイも一緒に行くぜ。男はどんなもんかと、気になるからな」
……魔晶空間?
石鹸の効能なのか、全身ツルツルピカピカの状態で温泉へ。こんなにツルツルになったの、人生で初めてかもしれない。
肩まで湯に浸かり、目を閉じる。今はお風呂大好き民族として、温泉に没頭しよう。
それにしても、いい湯加減だ。熱すぎず、ぬるすぎず。超適温な上に、肌にまとわりついてくる感じがする。石鹸と同じで、この温泉も肌に良さそうだ。こんな温泉に毎日入ってたら、そりゃあ皆さん肌がモチツルになる訳だ。
滝の音や木々の擦れる音、小鳥のさえずりまで聞こえるし……チルい。こりゃあ、いつまでも入っていられるなぁ。
「おぉ……これが男。ちょっとゴツゴツしているのね」
「アタシも初めて見た……ちょっとドキドキするわ」
「ねぇ、坊や。ちょっとお話があるんだけど、私の部屋に来ない?」
「私の部屋に、ふわふわトロトロの美味しいお菓子があるの。一緒にどうかしら♡」
……訂正。全然チルくない。
薄目を開けると、湯の中はもちろん、岩場にも腰を掛けて誘惑してくるお姉様方が。やめて、本当に耐えられないから。
「ええいっ。散れ、散れ! 総隊長が先程ルールを決めたばかりだろう!」
俺の隣にいたミューレンさんが、両手を広げて立ち上がる。せめて大事な所は隠して立ち上がってください。
因みにオメガさんは、俺たちみたいに浅瀬じゃなくて、滝壷に近い所にいる。体格的に、深い所に行かないと体が全部入らないからな。仕方ない。
彼女の防御にブーブーと文句が上がるが、何人かは余裕そうな微笑みを見せていた。
「ええ、勿論。私たちは手を出さないわよ」
「手を出したくなるよう、仕向けるだけです」
「立派なものをお持ちなのは、ミューレン様だけと思わないでくださいね」
いいのか、それで。
チラッとオメガさんを見るが、肩まで湯に浸かってとろけている。こっちには気付いていないみたいだ。自分で安全って言ったんですから、統率くらいはしてくださいよ。
美女たちが少し俺から距離を取ってくれたおかげで、ようやく気兼ねなく温まれる。極楽、極楽。
「申し訳ありません、イブキ様。でも許してやってください。彼女たちも生物ですので、種を残したいという気持ちが強いのです」
「あはは……まあ、俺も男だから、気持ちはわかります」
健全な男子高校生を自負している身からすると、男1人に対して数百人の美女なんて、ハーレム天国以外の何物でもない。
けど、流れに身を任せていいのか……現代社会で培われた倫理観と、男が持つ本来の本能が、せめぎ合っている。
「あ……そう言えば聞きたかったんですけど、この世界の人類はどうやって数を保ってるんですか? 男が3万人、女が6千万人もいたら、物理的に厳しいと思うんですが」
「正直、減っていっているというのが現状です。亜人の中には、一度に5人、6人と産む種族もいます。ですがヒューマン族は基本2人で、多くて2人か3人。そのほとんどが女として生まれるのですから」
なるほど……数を産んでも、男が少ないのは変わりないから、必然的に人口が減ってしまうってことか。
「男の集められている都市部には、数万人の女が暮らしています。そしてその中に、母官と呼ばれる上流階級の女たちがいます。母官は数ヶ月に一度、女の妊娠・出産を確認した後、都市部の女と各村、町、地方都市にいる女の入れ替えを行うらしいです」
入れ替え……。
「六華隊の方々も、その対象になるってことですか?」
「それが……騎士は対象外と言いますか。私たちは各土地や人々を護るためにいるので、替えの利かない存在なんです。なので頻繁に入れ替えの話しが来ることはありません。ここ十数年で、一回あったとは聞いています」
へぇ……意外と考えているんだな。
そりゃそうだ。もし一年に何回も数十人単位で招集されていたら、隊の編成や訓練にも支障が出る。それでは護れるものも護れない。
「という事情があり、騎士たちは男に飢えているので、決して一人で出歩かないように。いいですね?」
「あ、はい」
めちゃめちゃ釘を刺された。部屋に行くと思ってるんだなぁ。……ちょっと揺らいだのは秘密だ。
少しミューレンさんから視線を逸らす。その時。湯から上がったオメガさんが、こっちに歩いてくるのが見えた。だから前! 前隠して!
「おーう。イブキ、楽しんでるか?」
「は、はい。気持ちいいです」
「ガハハハ! そいつぁ良かった!」
豪快に笑い、俺の隣に座る。全然嵩が足りないから、半身浴みたいになっている。
「あ、そうだ。ミューレン、イブキの能力値は調べてんのか?」
「まだです。湯から上がったら、魔晶空間へお連れしようかと」
「わかった。アタイも一緒に行くぜ。男はどんなもんかと、気になるからな」
……魔晶空間?
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