第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵

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第12話 意外とスケベ

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 まあ、そんな都合のいいこと、起こるはずないよな。大体、女だらけの異世界に飛ばされた時点で出来すぎって話だ。こんな露出の激しい美女ばかりで……運の値が高いのも納得だ。


「ま、なるようになるか」
「意外と前向きですね」
「そりゃ、魔法を使いたい気持ちはありますけど、ゴネても仕方ないんで」


 へこんでも駄々を捏ねても、駄目なものは駄目だ。それより、いい事やよかった事を考えた方がいいだろ。
 オメガさんは感心したように頷くと、無言で頭を撫でた。でっかいお姉さんに撫でられるのこそばゆい。
 2人と一緒に洞窟を出て、また建物の中に戻る。冷房がないから少し暑いけど、からっとした湿度のおかげで不快感はない。


「さーて、さっぱりしたところで、まずはイブキの寝泊まりする部屋を決めないとな。つっても、隊舎には泊められないが」
「なんでですか? 雨風を防げるなら、どこでもいいですよ」
「お前……餓えた狼の群れに力もない子羊を一匹放り込むと、どうなるくらいわかるだろう」


 呆れ顔で首を振るオメガさん。ミューレンさんも深く頷いた。
 あぁ……うん。多分、ゴリゴリに襲われるね。気絶しても許してくれなさそう。


「てな訳でミューレン、お前の個宅に泊めてやれ」
「えっ、私のですか……!?」


 まさかの提案に、ミューレンさんが動揺する。俺も内心、めちゃめちゃ焦っていた。一人部屋だと思っていたのに、まさかミューレンさんの所に転がり込むなんて……!


「ああ。さっきも言ったが、お前なら性欲に惑わされることもないだろう。さっきの取り決めがある以上、お前らがまぐわらなけりゃ、誰からも襲われることはないはずだ。護衛の意味も兼ねて、頼んだぞ」
「そ、それなら、総隊長の個宅でもいいのでは……?」
「アタイの家は全部がアタイ仕様だからな。イブキじゃ生活できねーよ。それに……」


 オメガさんの目が妖しく光り、俺の頬を指先で撫でてきた。そこから鎖骨、胸、腹と下がり、更に下腹部まで手が伸び……。


「アタイは半巨人族だ。ヒューマン族の雄とも……十分、ヤりたい盛りなんだよ♡」
「ヒェッ……」


 獲物を狙う獰猛な獣のような表情。この人、ヤろうと思ったらいつでもヤれる、みんなと同じ捕食者側だ。
 恐怖と興奮で体が変な反応を示していると、オメガさんはニカッと笑ってまた俺の頭を撫でた。


「冗談だ、冗談。心配すんな、襲わねーよ。アタイはまだ発情期に入ってないし、入ったとしても自分でどうにかできる」
「そ、そう……ですか……?」
「ああ。けど、発情期に入ったアタイには近付くなよ。誰も止められなくなるからな」


 オメガさんの忠告に、何度も頷く。
 そりゃそうだ。この巨体のオメガさんが本気を出したら、誰も止められないだろう。ホント、気をつけよ。


「んじゃ、ミューレン。後は頼んだぞ。本部施設を案内ついでに、個宅に連れてってやれ」
「ッ……は、はっ。わかりました」


 今まで呆然としていたミューレンさんが敬礼をし、総隊長室を出る。俺もオメガさんにお辞儀をして、慌てて着いて行った。
 扉が閉まり、廊下を進みながらそっと息を吐く。同時にミューレンさんも息を吐いているのが見え、お互い同時に顔を見合わせた。
 思い出されるのは、馬車での未遂事件。あの時は邪魔されちゃったけど……個宅ということは、個人の家ということ。邪魔は一切入らない、2人だけの空間。
 ミューレンさんも同じことを思ったのか、もじもじと内股に自分の手を挟んでいる。
 視線を逸らし、唇を噛んでから、上目遣いを向けてきた。
 急激に体温が上がり、心臓がうるさく高鳴ってきた。ごめん、オメガさん。ミューレンさんって、意外とスケベなんです。


「……と、とととととりあえず、他の施設を案内しますねっ。い、いいいいい家の方はその後にお連れします……!」
「で、ですねっ。は、はは。よ、よろしくお願いします……!」


 明らかにぎこちないやり取り。
 俺、今夜我慢できるかな……?
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