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勇者と冥王のママは暁を魔王様と
第十章・開眼式典開幕3
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「ちちうえだ! ちちうえっ、ちちうえ~~!!」
嬉しくなってゼロスは駆けだした。
そしてハウストの足に飛びついてしがみつく。
「どうして?! どうしてここにいるの?! ちちうえだっ、ちちうえだ~!!」
興奮するゼロスにハウストは苦笑する。
どうしてと聞くが、ハウストからすればこちらの台詞だ。
ハウストは自分によじ登ろうとしているゼロスをひょいっと持ちあげると片腕で抱っこする。
「ちちうえっ、ちちうえ~~!」
「分かったから、はしゃぐな」
ぎゅっと首に抱きつくゼロスをハウストは構いながらもイスラを振り返る。
「面倒をかけたな。まさかゼロスと合流しているとは思わなかった。とりあえず、話しは後にしよう」
ハウストはそう言って右手に新たに大剣を出現させた。
残った怪物を片付けるのが先だ。
「ああ」とイスラも頷いて勇者の剣をビュッとひと振りして構える。
「うん!」とゼロスも大きく頷いてハウストの抱っこからぴょんっと飛び降りた。訓練用の剣を構えて準備万端だ。
魔王、勇者、冥王はそれぞれ武器を構え、背を向けあって怪物と対峙した。
「よ~しっ、こい! ぜったいまけないぞ~!」
冥王ゼロスが勇ましく声を上げた。
いつも垂れ気味の目尻がキリッとしている。絶対勝てると思っている時の顔だ。
だって、魔王の父上はとってもとっっても強い。勇者の兄上もすっごくすっっごく強い。そして冥王の自分もびっくりするほど強い。
「ちちうえ、ぼくつよいの! えいって、できるようになったよ!」
「ああ、見せてみろ」
ハウストは口元にニヤリとした笑みを刻む。
ゼロスが見違えるような成長を遂げたのは会ってすぐに分かった。おそらくイスラに徹底的に鍛えられたのだろう。
「行くぞ。油断するなよ」
ハウストが怪物を見据える。
今、背中を預けるのは勇者と冥王であり、二人の息子。悪い気はしなかった。
そして囲んでいた怪物がいっせいに襲い掛かってくる。
ハウストとイスラは見事な剣術と体術で怪物を撃退していく。
そんな二人の間でちっちゃいゼロスも一丁前な動きを見せて戦っていた。
大剣を扱い圧倒的な強さを見せつけるハウストと、完璧な剣捌きで格の違いを見せつけるイスラ。ちっちゃいゼロスは二人の間でちょろちょろしているように見えるが、「えいえいっ」と剣を振り回して戦って、怪物を一体、また一体と確実に仕留めていった。
そしてゼロスの前に一体の怪物が立ちはだかる。
全身が鋼の皮膚で覆われた、とっても硬そうな怪物だ。
ゼロスは剣を振り翳して立ち向かっていくが。
「やっつけてやる! っ、わあっ、おれた~!!」
パキーーンッ!!
甲高い音がして、折れた剣がくるくる回転しながら地面に突き刺さった。
今までの戦闘で酷使され続けた訓練用の剣がとうとう限界を迎えたのである。
「ど、どうしよ~! おれちゃった~!」
ゼロスは焦ってしまう。
そんなゼロスにイスラが声を上げる。
「ゼロス! 自分の力で剣を出せ!!」
「ああっ、そっか!」
ゼロスはハッとした。
そうだ、剣は自分の魔力で出現させるとイスラに教えてもらったことがある。父上も兄上も戦う時に剣を出現させていた。ゼロスも今がその時なのだ。
ゼロスは自分の剣をイメージする。
「うーん、うーん、ぼくのけん~。かっこよくて、つよい、ぼくのけん~っ」
さっそくイメージした。
できればブレイラが『素敵な剣ですね』とうっとりするような、かっこいい剣がいい。かっこいい模様とか、彫刻とか、装飾とか、いっぱい付いているとかっこいいかもしれない。
ゼロスが手の平にイメージと魔力を集中させると、ピカーッ! 眩い光が差した。
「でた! これがぼくのけん!!」
光が眩しすぎてまだ見えないけれど、たしかに剣が出現している。
光が徐々に収まって剣の全貌が見えたが、――――ちまっ。
「ち、ちっちゃい!!」
ゼロスはギョッとした。
ゼロスが出現させたのは柄部分はかっこいいゴテゴテ装飾の立派過ぎるものだったが、剣部分はゼロスの小指ほどのサイズだったのだ。
ちまっ、としたちっちゃい剣。もちろんこれでは戦えない。
見ていたイスラがすかさず怒鳴る。
「ゼロス! お前、かっこいいけど軽くて楽な剣がいいとか考えただろ!!」
「そ、そんなこと……」
ある。
重いと疲れるから軽いと嬉しいな、なんてイメージ中にちらっと思ってしまった……。
そんな分かりやすいゼロスの反応に、ハウストは「お前という奴は……」と戦闘中ながら呆れてしまう。
しかしイスラは容赦ない。ブレイラを助けだす為、ゼロスを徹底的に鍛えると決めているのだ。
「遊ぶなって言っただろ!」
「ご、ごめんなさい~~っ」
「今度は真面目にやり直せ!!」
「は、はいっ!」
イスラの怒声に押され、ゼロスはもう一度やり直しだ。
ゼロスは気合いを入れ直して神経と魔力を集中する。
剣が欲しい。父上のように強い剣、兄上のように折れない剣。
どんな困難も薙ぎ払い、どんな強敵も打ち砕く。大好きな人を、ブレイラを守れる剣が欲しい。それがゼロスの剣、冥王の剣!!
「でてこい!! ぼくのけん!!!!」
ゼロスの右手が光を放つ。
光が収まって、そこに出現した剣にゼロスは瞳を輝かせた。
「やったああっ、できた~~!! あにうえ、ちちうえ、できた!! じょうずにできた~~!!」
とうとう出来た!
ハウストの大剣やイスラの剣のようなゼロスの剣だ。
ゼロスは剣を握り、空に向かって高らかに掲げる。
「これが、ぼくのけん!!」
冥王の剣が太陽の下でキラリと輝いた。
昂揚するゼロスの姿にハウストとイスラも勝機を得る。
創世期を迎えたばかりの冥界は、四界の一角であるものの不安定な世界である。しかし今、冥王が剣を出現できるまでに成長した。
ハウストは力強く頷く。
「ゼロス、上出来だ!」
「うん! ぼく、すごい!」
ハウストに褒められてゼロスは胸を張る。
でも目の前にはまだ全身が鋼に覆われた怪物が残っていた。
イスラの鋭い檄が飛ぶ。
「ゼロス、次で決めろ!!」
「よ~しっ、やるぞ~!!」
ゼロスは剣を握って怪物を見据えた。
襲ってくる怪物に怯まず、剣を構えて立ち向かった。
そして。
「えええいっ!!」
冥王の剣が一閃し、光が弧を描く。
次の瞬間、ズドオォォン! 鋼の怪物がその場に崩れ落ちた。
見事に打ち勝ったのだ。
こうしてすべての怪物を撃退してゼロスは興奮でぴょんぴょんする。
「やった~! ぼく、つよい!!」
はしゃぐゼロスにハウストとイスラは苦笑する。
まだまだゼロスは未熟だが、とりあえず上出来だ。
「イスラ、ゼロス、よくここへ来たな」
ハウストが改めてイスラとゼロスを見た。
二人の息子の姿に、ハウストは表情にこそ出さないが内心どこか誇らしい。二人は明らかに一回り大きな成長を遂げていたのだ。
嬉しくなってゼロスは駆けだした。
そしてハウストの足に飛びついてしがみつく。
「どうして?! どうしてここにいるの?! ちちうえだっ、ちちうえだ~!!」
興奮するゼロスにハウストは苦笑する。
どうしてと聞くが、ハウストからすればこちらの台詞だ。
ハウストは自分によじ登ろうとしているゼロスをひょいっと持ちあげると片腕で抱っこする。
「ちちうえっ、ちちうえ~~!」
「分かったから、はしゃぐな」
ぎゅっと首に抱きつくゼロスをハウストは構いながらもイスラを振り返る。
「面倒をかけたな。まさかゼロスと合流しているとは思わなかった。とりあえず、話しは後にしよう」
ハウストはそう言って右手に新たに大剣を出現させた。
残った怪物を片付けるのが先だ。
「ああ」とイスラも頷いて勇者の剣をビュッとひと振りして構える。
「うん!」とゼロスも大きく頷いてハウストの抱っこからぴょんっと飛び降りた。訓練用の剣を構えて準備万端だ。
魔王、勇者、冥王はそれぞれ武器を構え、背を向けあって怪物と対峙した。
「よ~しっ、こい! ぜったいまけないぞ~!」
冥王ゼロスが勇ましく声を上げた。
いつも垂れ気味の目尻がキリッとしている。絶対勝てると思っている時の顔だ。
だって、魔王の父上はとってもとっっても強い。勇者の兄上もすっごくすっっごく強い。そして冥王の自分もびっくりするほど強い。
「ちちうえ、ぼくつよいの! えいって、できるようになったよ!」
「ああ、見せてみろ」
ハウストは口元にニヤリとした笑みを刻む。
ゼロスが見違えるような成長を遂げたのは会ってすぐに分かった。おそらくイスラに徹底的に鍛えられたのだろう。
「行くぞ。油断するなよ」
ハウストが怪物を見据える。
今、背中を預けるのは勇者と冥王であり、二人の息子。悪い気はしなかった。
そして囲んでいた怪物がいっせいに襲い掛かってくる。
ハウストとイスラは見事な剣術と体術で怪物を撃退していく。
そんな二人の間でちっちゃいゼロスも一丁前な動きを見せて戦っていた。
大剣を扱い圧倒的な強さを見せつけるハウストと、完璧な剣捌きで格の違いを見せつけるイスラ。ちっちゃいゼロスは二人の間でちょろちょろしているように見えるが、「えいえいっ」と剣を振り回して戦って、怪物を一体、また一体と確実に仕留めていった。
そしてゼロスの前に一体の怪物が立ちはだかる。
全身が鋼の皮膚で覆われた、とっても硬そうな怪物だ。
ゼロスは剣を振り翳して立ち向かっていくが。
「やっつけてやる! っ、わあっ、おれた~!!」
パキーーンッ!!
甲高い音がして、折れた剣がくるくる回転しながら地面に突き刺さった。
今までの戦闘で酷使され続けた訓練用の剣がとうとう限界を迎えたのである。
「ど、どうしよ~! おれちゃった~!」
ゼロスは焦ってしまう。
そんなゼロスにイスラが声を上げる。
「ゼロス! 自分の力で剣を出せ!!」
「ああっ、そっか!」
ゼロスはハッとした。
そうだ、剣は自分の魔力で出現させるとイスラに教えてもらったことがある。父上も兄上も戦う時に剣を出現させていた。ゼロスも今がその時なのだ。
ゼロスは自分の剣をイメージする。
「うーん、うーん、ぼくのけん~。かっこよくて、つよい、ぼくのけん~っ」
さっそくイメージした。
できればブレイラが『素敵な剣ですね』とうっとりするような、かっこいい剣がいい。かっこいい模様とか、彫刻とか、装飾とか、いっぱい付いているとかっこいいかもしれない。
ゼロスが手の平にイメージと魔力を集中させると、ピカーッ! 眩い光が差した。
「でた! これがぼくのけん!!」
光が眩しすぎてまだ見えないけれど、たしかに剣が出現している。
光が徐々に収まって剣の全貌が見えたが、――――ちまっ。
「ち、ちっちゃい!!」
ゼロスはギョッとした。
ゼロスが出現させたのは柄部分はかっこいいゴテゴテ装飾の立派過ぎるものだったが、剣部分はゼロスの小指ほどのサイズだったのだ。
ちまっ、としたちっちゃい剣。もちろんこれでは戦えない。
見ていたイスラがすかさず怒鳴る。
「ゼロス! お前、かっこいいけど軽くて楽な剣がいいとか考えただろ!!」
「そ、そんなこと……」
ある。
重いと疲れるから軽いと嬉しいな、なんてイメージ中にちらっと思ってしまった……。
そんな分かりやすいゼロスの反応に、ハウストは「お前という奴は……」と戦闘中ながら呆れてしまう。
しかしイスラは容赦ない。ブレイラを助けだす為、ゼロスを徹底的に鍛えると決めているのだ。
「遊ぶなって言っただろ!」
「ご、ごめんなさい~~っ」
「今度は真面目にやり直せ!!」
「は、はいっ!」
イスラの怒声に押され、ゼロスはもう一度やり直しだ。
ゼロスは気合いを入れ直して神経と魔力を集中する。
剣が欲しい。父上のように強い剣、兄上のように折れない剣。
どんな困難も薙ぎ払い、どんな強敵も打ち砕く。大好きな人を、ブレイラを守れる剣が欲しい。それがゼロスの剣、冥王の剣!!
「でてこい!! ぼくのけん!!!!」
ゼロスの右手が光を放つ。
光が収まって、そこに出現した剣にゼロスは瞳を輝かせた。
「やったああっ、できた~~!! あにうえ、ちちうえ、できた!! じょうずにできた~~!!」
とうとう出来た!
ハウストの大剣やイスラの剣のようなゼロスの剣だ。
ゼロスは剣を握り、空に向かって高らかに掲げる。
「これが、ぼくのけん!!」
冥王の剣が太陽の下でキラリと輝いた。
昂揚するゼロスの姿にハウストとイスラも勝機を得る。
創世期を迎えたばかりの冥界は、四界の一角であるものの不安定な世界である。しかし今、冥王が剣を出現できるまでに成長した。
ハウストは力強く頷く。
「ゼロス、上出来だ!」
「うん! ぼく、すごい!」
ハウストに褒められてゼロスは胸を張る。
でも目の前にはまだ全身が鋼に覆われた怪物が残っていた。
イスラの鋭い檄が飛ぶ。
「ゼロス、次で決めろ!!」
「よ~しっ、やるぞ~!!」
ゼロスは剣を握って怪物を見据えた。
襲ってくる怪物に怯まず、剣を構えて立ち向かった。
そして。
「えええいっ!!」
冥王の剣が一閃し、光が弧を描く。
次の瞬間、ズドオォォン! 鋼の怪物がその場に崩れ落ちた。
見事に打ち勝ったのだ。
こうしてすべての怪物を撃退してゼロスは興奮でぴょんぴょんする。
「やった~! ぼく、つよい!!」
はしゃぐゼロスにハウストとイスラは苦笑する。
まだまだゼロスは未熟だが、とりあえず上出来だ。
「イスラ、ゼロス、よくここへ来たな」
ハウストが改めてイスラとゼロスを見た。
二人の息子の姿に、ハウストは表情にこそ出さないが内心どこか誇らしい。二人は明らかに一回り大きな成長を遂げていたのだ。
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