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しおりを挟むディーゼルはベルの望み通りにしたくないと思った。
ディーゼルの妻アイリスに目をつけられたくないから愛人だと思われたくない。だから家に来てほしくないというのはわかるが、そういうわけにはいかない。
「妻にはカイルを認知する時に浮気をしたことは話すつもりだから、ベルのことも知られるのは仕方がない。」
「いえ、待って。カイルを認知してくれるにしても、今わざわざ話す必要はないと思います。奥様がまだ子供が産めないと決まったわけではないでしょう?」
確かにそうだが、四年もできなかったのに今後できるのか?
結婚当初も、スタイルが崩れるから子供は一人しか産む気はないと言っていたし、あるいはカイルの存在を打ち明ければ自分は産まなくて済むと喜ぶ可能性も……
いや、その反面、夫に浮気されたという事実が妻のプライドを傷つけ、どうなるか。
「カイルが15歳になるまで妻に隠しておくのは不可能だ。両親もカイルに会いたがっているから、毎回どこかで隠れて会っていてもいずれバレることになる。
妻に子ができれば、もちろんその子が跡継ぎになるが、カイルも私の子だと認めたい。」
ベルは困った顔になっていた。
彼女はただ、カイルの存在を知ってもらった上で15歳まで秘匿されるか、親族から養子を選ぶならそれでいいという考えでしかなかったのだろう。
「ベル、君に提示できるのは二択だ。これは、侯爵である父の決定だ。
一つ目は、カイルを認知して私と妻の元で育てる。
二つ目は、カイルを認知した上で君が手元で育て、私の愛人になる。」
二択を聞いたベルは驚いていた。
それはそうだろう。彼女の望みとは全く違うのだから。
一つ目だと自分の手元で育てられない。
二つ目だと妻アイリスに目をつけられる上、ディーゼルの愛人だと認識される。
「そんな……、ひどいわ。こんなことなら隠したままでいればよかった。」
そうだろうな。
いくらベル本人が子爵とは言え、侯爵の決定に逆らえない。
逆らったとしても、カイルの存在を明らかにされたら逆らう意味もなくなるのだから。
「……奥様は、結婚前の一夜の浮気でできた子を認知するだけで、今は疚しい関係ではないと説明すればわかってくださるでしょうか?」
「私が家を訪れれば君は愛人と認識されるだろう。それに実際に愛人になってもらいたい。」
「え!?」
「君は私の子を妊娠できた。つまり、また子を望めるかもしれない。両親もそれを望んでいる。」
「子供を?愛人になれって、いえ、それもだけれど、家はダメだって言ったでしょう?」
どうしてそんなに家に入られることを嫌がるんだ?
恋人はいないと言ったくせに、家の中に誰かいるのか?
それとも、何かあるのか?
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