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出会い編
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「それと、海賊相手にはいかなる法も秩序も存在しない。去年、ジョニー・スパローが捕まった件でわかっているはずだ。文句があれば、弁護士を立てて訴えるんだな、隻眼のレオン」
ジョニー・スパローはカリビアン・オブ・パイレーツ海賊団の船長である。去年新大陸で行われた大統領就任式の最中に、海のど真ん中から大砲をぶっ放して、あやうく大統領の白い家を粉々にするところであったが、見事に大ハズレし、新大統領の怒りの初仕事がジョニー・スパローの逮捕であった。その後恐怖のアルカトランズに送られたはずなのが、最近のパパラッチーズによると、カリブー海で日光浴をしているらしい。
「弁護士? お前は新大陸の阿呆か」
レオンはお話にならないというように手のあった銃弾をぽいっと捨てた。
「お前、爺さんの時も、俺に嫌がらせをしたな。思い出したぞ。俺のタイプじゃないから、すっかり忘れていた」
「お前のタイプではなくて光栄だ。海賊に好かれるのは、何とも虫唾が走る」
ハックフォードは冷ややかに言い返す。
レオンの右目が、まるでお前をぶっ潰すというかのように、可愛らしく獰猛に笑った。
「シィ、シィ、セニョール。だったら、もっと虫唾を走らせてやる」
レオンは銃を構える海軍兵士たちへ、くるりと向き直った。その足元に目をやり、ニヤッとすると、右手の親指とひとさし指でパッチンと指を鳴らす。すると、その右手に剣が出現した。
「……それは……」
ゼイゼイ言いながら上半身だけ這い出たバスターが、息を呑む。
「そう、ランスロットだ。この一騎打ちの代償に、貰っていく。返して欲しかったら、俺を追いかけて来い」
言いながら、首を横に振る。後ろから銃弾が飛んできた。
「野郎ども! 逃げろ!」
船長の号令で、海賊たちがいっせいにサンタ・マリア号へ飛び乗る。兵士たちと副官の銃口が火のように噴いた。
「バスター!」
その雨あられのような銃弾を軽々と避けながら、レオンは叫ぶ。
「俺を追いかけて来い!! そうしたらこの剣を返してやる!!」
手にしたランスロットを高々と掲げながら、帆船へ飛び込む。
「必ず、俺を追って来い!!」
とびきりのウィンクをした。
「待っている!!」
それから、帆船のマストの上で寝そべっていた魔術師を呼んだ。
「ヴァイオ!」
美少年の姿をした魔術師は、どっこらせーと爺さんように起き上がった。
「いきますよー」
枕にしていた魔術書を開き、再び唱える。
「オーライ! ググレアース! 起動せよ! 空間移動!!」
すると、光り出した本からぴかぴかな球体が、ぽんと飛び出てきた。球体は人の拳程度に小さかったが、ヴァイオがふーっと息を吹きかけると、みるみる大きく巨大に膨らんでいき、あっというまに帆船全体を呑み込んだ。
「うわあ!!」
海軍兵士たちはあまりの眩しさに目を両手で覆い、その場にしゃがみこむ。ハックフォードも顔に手をかざして光を避け、バスターも反射的に目を瞑った。
サンタ・マリア号を包み込んだ球体は、徐々に空間に吸い込まれるようにしぼんでいく。最後に消え失せた時には、サンタ・マリア号も影も形もなくなっていた。
静まり返ったロイヤル・ネルソン号の甲板で、兵士たちは事のなりゆきに唖然となっている。その間からバスターは頑張って抜け出すと、息荒くしてへりに近寄り、海賊船が浮かんでいた海を睨んだ。
「……くそっ」
逃げられたというのはわかった。悔しさで、へりを拳で叩いた。
「ご無事ですか? 閣下」
ハックフォードが銃を従卒に渡して、近寄ってきた。
バスターは怒りをもって振り返る。
「ハックフォード! あれは何だ! 我々は一騎打ちをしていたのだぞ! 背後から銃で狙うなど卑怯者のすることだ!」
「それでは、閣下は海賊のベッドのお相手を務めるおつもりだったのですか?」
副官は冷静に問い返す。
うっと、バスターは言葉に詰まった。
「……それとこれとは話が違う」
「同じです。あのままいけば、閣下は海賊に連れ去られ、昼と夜となく、海賊どもに遊ばれていたでしょう。しまいには、売春宿に叩き売られておしまいです」
涼しい顔をして問答無用で言う。
バスターはそこまではしないのではないかと、なぜか不思議と思った。だが口に出しはしなかった。
「それよりも、ランスロットです、閣下」
「――そうだ」
バスターは我に返った。
「ランスロットを奪われた! 大変なことだ!」
剣を掲げて逃げていったレオンの姿が瞼に甦ってくる。おのれ! と歯軋りが止まらない。
「一体あの男は何者なのだ! ただの海賊ではないぞ!」
「ただの海賊です、閣下。ですが、海の世界ではもっとも名の知られた男なのです。いわゆるスーパーセレブです」
ハックフォードはどこか感心めいた口調になる。
「海賊ながら、とにかく顔の広い男です。社交界は言うに及ばず、あらゆる政府機関や民間会社、アップルティーやマイクロソフトクリームといったカリスマ魔術師たちとも親交があります。マスコミはもとより、パパラッチーズとも良い関係を築いているという噂も漏れ聞いております。そのうちに、この戦いもスクープされるでしょう。おや? 早速、嗅ぎつけて来たようですね」
バスターはペラペラ、ペラペラという何やら物が回る音が次第に聞こえてきて、空を見上げた。ちょうどロイヤル・ネルソン号の上空を、見たこともない物体が重たそうに飛んでいった。
ジョニー・スパローはカリビアン・オブ・パイレーツ海賊団の船長である。去年新大陸で行われた大統領就任式の最中に、海のど真ん中から大砲をぶっ放して、あやうく大統領の白い家を粉々にするところであったが、見事に大ハズレし、新大統領の怒りの初仕事がジョニー・スパローの逮捕であった。その後恐怖のアルカトランズに送られたはずなのが、最近のパパラッチーズによると、カリブー海で日光浴をしているらしい。
「弁護士? お前は新大陸の阿呆か」
レオンはお話にならないというように手のあった銃弾をぽいっと捨てた。
「お前、爺さんの時も、俺に嫌がらせをしたな。思い出したぞ。俺のタイプじゃないから、すっかり忘れていた」
「お前のタイプではなくて光栄だ。海賊に好かれるのは、何とも虫唾が走る」
ハックフォードは冷ややかに言い返す。
レオンの右目が、まるでお前をぶっ潰すというかのように、可愛らしく獰猛に笑った。
「シィ、シィ、セニョール。だったら、もっと虫唾を走らせてやる」
レオンは銃を構える海軍兵士たちへ、くるりと向き直った。その足元に目をやり、ニヤッとすると、右手の親指とひとさし指でパッチンと指を鳴らす。すると、その右手に剣が出現した。
「……それは……」
ゼイゼイ言いながら上半身だけ這い出たバスターが、息を呑む。
「そう、ランスロットだ。この一騎打ちの代償に、貰っていく。返して欲しかったら、俺を追いかけて来い」
言いながら、首を横に振る。後ろから銃弾が飛んできた。
「野郎ども! 逃げろ!」
船長の号令で、海賊たちがいっせいにサンタ・マリア号へ飛び乗る。兵士たちと副官の銃口が火のように噴いた。
「バスター!」
その雨あられのような銃弾を軽々と避けながら、レオンは叫ぶ。
「俺を追いかけて来い!! そうしたらこの剣を返してやる!!」
手にしたランスロットを高々と掲げながら、帆船へ飛び込む。
「必ず、俺を追って来い!!」
とびきりのウィンクをした。
「待っている!!」
それから、帆船のマストの上で寝そべっていた魔術師を呼んだ。
「ヴァイオ!」
美少年の姿をした魔術師は、どっこらせーと爺さんように起き上がった。
「いきますよー」
枕にしていた魔術書を開き、再び唱える。
「オーライ! ググレアース! 起動せよ! 空間移動!!」
すると、光り出した本からぴかぴかな球体が、ぽんと飛び出てきた。球体は人の拳程度に小さかったが、ヴァイオがふーっと息を吹きかけると、みるみる大きく巨大に膨らんでいき、あっというまに帆船全体を呑み込んだ。
「うわあ!!」
海軍兵士たちはあまりの眩しさに目を両手で覆い、その場にしゃがみこむ。ハックフォードも顔に手をかざして光を避け、バスターも反射的に目を瞑った。
サンタ・マリア号を包み込んだ球体は、徐々に空間に吸い込まれるようにしぼんでいく。最後に消え失せた時には、サンタ・マリア号も影も形もなくなっていた。
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「……くそっ」
逃げられたというのはわかった。悔しさで、へりを拳で叩いた。
「ご無事ですか? 閣下」
ハックフォードが銃を従卒に渡して、近寄ってきた。
バスターは怒りをもって振り返る。
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「それでは、閣下は海賊のベッドのお相手を務めるおつもりだったのですか?」
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「……それとこれとは話が違う」
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バスターは我に返った。
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「一体あの男は何者なのだ! ただの海賊ではないぞ!」
「ただの海賊です、閣下。ですが、海の世界ではもっとも名の知られた男なのです。いわゆるスーパーセレブです」
ハックフォードはどこか感心めいた口調になる。
「海賊ながら、とにかく顔の広い男です。社交界は言うに及ばず、あらゆる政府機関や民間会社、アップルティーやマイクロソフトクリームといったカリスマ魔術師たちとも親交があります。マスコミはもとより、パパラッチーズとも良い関係を築いているという噂も漏れ聞いております。そのうちに、この戦いもスクープされるでしょう。おや? 早速、嗅ぎつけて来たようですね」
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