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「申し訳ございません、マルシュア様。お世話になります」
朝礼後、ルリアーナが急いでマルシュアの元に走ると、満面の笑みを浮かべたマルシュアがルリアーナの腕をひっぱり引き寄せた。
「ルリアーナが我が家に来たら、一緒に何をしましょうか? 美容に一緒にパジャマパーティーもいいわね。あ、あと、お茶会をしたいと思っていたの! 紹介したい方がいらっしゃるから、ぜひお会いになって?」
「まぁ! 素敵ですわ!」
「マルシュア様のあの作戦を実行なさるのですね!?」
「わたくし、ルリアーナを着飾りたいと思っていましたの」
「え、それはわたくしの権利ですわ!」
にこにことあれこれ話すマルシュアの姿に盛り上がる友人たち。そんな姿を見てため息をついたアストライオスが現れ、ルリアーナに言った。
「うちの馬車を手配してあるから、それを使って必要な荷物を取ってうちに置いてから学園に戻ってくるぞ。デシャンティ先生が陛下にお伝えして、貴族会を通じて事情を知ったダンテ伯爵たちが家に戻るよりも早くな?」
「あの、ありがとうございます。ただ、ミイアとマットとライマー……あ、わたくし付きの使用人とその友人のことが心配なのですが……」
そんな心配をするルリアーナに、アストライオスがそっと近づき耳打ちする。
「……まだ言うには早いと思ったが、もうすでにダンテ伯爵家には我が家の密偵を送り込んである。安全の確保には努めよう」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに感謝したルリアーナに、少し嫉妬の色を滲ませたアストライオスは、自分の感情に首を傾げるのであった。
⭐︎⭐︎⭐︎
「ミイア、何かあったら連絡してちょうだい」
「大丈夫です。ルリアーナ様。あの女の本性は屋敷内でも一部ばれてきております。私たちになにかするよりもそちらの方が重要になっておりますので、意外と過ごしやすいんですよ?」
「あ、あぁー、ルリアーナ様……お気をつけて」
「マット、今日はやけに口数少ないわね? あ、もしかしてわたくしがいなくなって寂しい?」
「あ、いや、それは、あ、俺、ライマー探してくるよ」
「もうライマーはこちらに向かっているって執事が言っていたけど?」
なぜかついてきたアストライオスが見守る中、ルリアーナは使用人たちに別れを告げた。
「ルリアーナさまぁ!」
走ってきたライマーに、ルリアーナは微笑む。眉間に皺を寄せていたアストライオスの表情はライマーをみて若干和らいだようだ。
「ライマー! これからは、あなたが畑の管理を頼むわ。怪我の調子は大丈夫?」
「はい! あの日ルリアーナ様に会って頭を撫でてもらってから、痛みが引いてすぐによくなったんです!」
「あ、おい、ライマー、」
マットが声を発する直前になぜか周囲の温度が下がった。
「え、あ、ひぃ! こ、この度は私めが大変申し訳ございませんでしたぁ!」
アストライオスの方を見て思わずそう叫んだライマーに、眉間のシワが深くなっていたアストライオスが反論した。
「……なんだ? 別に怒ってない」
そう言ったアストライオスに、マットは頭を抱え、ミイアはニヤニヤと笑った。怯えて震えるライマーに近寄り、ルリアーナが優しく頭を撫でた。
「大丈夫よ。アストライオス様は大変お優しいお方なの。怒ってなんかいないわ」
ルリアーナが頭を撫でるたび、アストライオスの眉間のシワが深くなり、ライマーの顔に怯えが濃くなる。マットとライマーはルリアーナに向かって必死に首を振った。
「どうしたの? あ、マットも撫でられたいのかしら」
その一言で解放されたライマーは勢いよくミイアの後ろに隠れ、マットは勢いよく首を振り、ミイアが苦笑した。
「ルリアーナ様。ご当主様たちがご帰宅なさる前に行かなくてはならなかったのではないでしょうか? 私どもは大丈夫なので、早くお逃げくださいませ。どうぞ、ルリアーナ様をよろしくお願いいたします」
ミイアがそう言って、アストライオスに向かって頭を下げた。つられてマットとライマーも頭を下げた。その姿を見て、アストライオスが笑ってルリアーナの手をとった。
「皆の安全も君の安全も私が保証しよう。では、ダンテ伯爵夫妻に会う前に、我が家へ行くとするか」
マットとミイア、そしてライマーに見送られながら、ルリアーナはダンテ伯爵家を去ったのだった。
朝礼後、ルリアーナが急いでマルシュアの元に走ると、満面の笑みを浮かべたマルシュアがルリアーナの腕をひっぱり引き寄せた。
「ルリアーナが我が家に来たら、一緒に何をしましょうか? 美容に一緒にパジャマパーティーもいいわね。あ、あと、お茶会をしたいと思っていたの! 紹介したい方がいらっしゃるから、ぜひお会いになって?」
「まぁ! 素敵ですわ!」
「マルシュア様のあの作戦を実行なさるのですね!?」
「わたくし、ルリアーナを着飾りたいと思っていましたの」
「え、それはわたくしの権利ですわ!」
にこにことあれこれ話すマルシュアの姿に盛り上がる友人たち。そんな姿を見てため息をついたアストライオスが現れ、ルリアーナに言った。
「うちの馬車を手配してあるから、それを使って必要な荷物を取ってうちに置いてから学園に戻ってくるぞ。デシャンティ先生が陛下にお伝えして、貴族会を通じて事情を知ったダンテ伯爵たちが家に戻るよりも早くな?」
「あの、ありがとうございます。ただ、ミイアとマットとライマー……あ、わたくし付きの使用人とその友人のことが心配なのですが……」
そんな心配をするルリアーナに、アストライオスがそっと近づき耳打ちする。
「……まだ言うには早いと思ったが、もうすでにダンテ伯爵家には我が家の密偵を送り込んである。安全の確保には努めよう」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに感謝したルリアーナに、少し嫉妬の色を滲ませたアストライオスは、自分の感情に首を傾げるのであった。
⭐︎⭐︎⭐︎
「ミイア、何かあったら連絡してちょうだい」
「大丈夫です。ルリアーナ様。あの女の本性は屋敷内でも一部ばれてきております。私たちになにかするよりもそちらの方が重要になっておりますので、意外と過ごしやすいんですよ?」
「あ、あぁー、ルリアーナ様……お気をつけて」
「マット、今日はやけに口数少ないわね? あ、もしかしてわたくしがいなくなって寂しい?」
「あ、いや、それは、あ、俺、ライマー探してくるよ」
「もうライマーはこちらに向かっているって執事が言っていたけど?」
なぜかついてきたアストライオスが見守る中、ルリアーナは使用人たちに別れを告げた。
「ルリアーナさまぁ!」
走ってきたライマーに、ルリアーナは微笑む。眉間に皺を寄せていたアストライオスの表情はライマーをみて若干和らいだようだ。
「ライマー! これからは、あなたが畑の管理を頼むわ。怪我の調子は大丈夫?」
「はい! あの日ルリアーナ様に会って頭を撫でてもらってから、痛みが引いてすぐによくなったんです!」
「あ、おい、ライマー、」
マットが声を発する直前になぜか周囲の温度が下がった。
「え、あ、ひぃ! こ、この度は私めが大変申し訳ございませんでしたぁ!」
アストライオスの方を見て思わずそう叫んだライマーに、眉間のシワが深くなっていたアストライオスが反論した。
「……なんだ? 別に怒ってない」
そう言ったアストライオスに、マットは頭を抱え、ミイアはニヤニヤと笑った。怯えて震えるライマーに近寄り、ルリアーナが優しく頭を撫でた。
「大丈夫よ。アストライオス様は大変お優しいお方なの。怒ってなんかいないわ」
ルリアーナが頭を撫でるたび、アストライオスの眉間のシワが深くなり、ライマーの顔に怯えが濃くなる。マットとライマーはルリアーナに向かって必死に首を振った。
「どうしたの? あ、マットも撫でられたいのかしら」
その一言で解放されたライマーは勢いよくミイアの後ろに隠れ、マットは勢いよく首を振り、ミイアが苦笑した。
「ルリアーナ様。ご当主様たちがご帰宅なさる前に行かなくてはならなかったのではないでしょうか? 私どもは大丈夫なので、早くお逃げくださいませ。どうぞ、ルリアーナ様をよろしくお願いいたします」
ミイアがそう言って、アストライオスに向かって頭を下げた。つられてマットとライマーも頭を下げた。その姿を見て、アストライオスが笑ってルリアーナの手をとった。
「皆の安全も君の安全も私が保証しよう。では、ダンテ伯爵夫妻に会う前に、我が家へ行くとするか」
マットとミイア、そしてライマーに見送られながら、ルリアーナはダンテ伯爵家を去ったのだった。
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