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招かれざる客
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「田中様がお見えです」
受け付けから電話が入り、徹夫は応接室に向かう。
「田中君、いつもは直接事務所迄来るのになあ」
独り言を言いながら応接室まで足を運ぶと、見知らぬ男性がいた。
長身で徹夫より十歳は年下か。男の癖になんだか色気がある奴だ。
「田中です。はじめまして」
男性は立ち上がって挨拶をしたが、 何故か名刺は出さない。
座るように促して向かい合った。
「佳代がお世話になっています」
血の気が引いた。佳代の旦那か!
「随分色々な所に連れて行っていただいたそうで」
にやりと笑う。
「う、うぅ」
「私は水商売をしているもので、休みが取れなくて。休みが取れてもあんなおばさんとは旅行に行きたくないしねえ。おっと失礼。
まあこれからも佳代と、おっと佳代さんと仲良くどうぞ。
私はもう離婚する予定でね」
「はぁ?」
そんなことは聞いてない、というか、
此のところ、佳代から誘いがなく焦れていた所だ。
「あ、これ、慰謝料の請求書ね。宜しく」
い、慰謝料。あれだけ佳代にお金を使って、まだお金を払うのかよ。
「ちょっと待ってください。どうして分かったんだよ」
「コンビニのレシートですよ。あり得ない時間に缶ビールとウーロン茶をいつも買っている」
そうだ!ホテルの部屋で先ず乾杯するのが習慣だ。
「飲み物くらいは出させてよ」
と、佳代がいつも払っていた。
「貴方がウーロン茶だそうですね」
笑いを含んだ声だった。
なんだよ。飲めなくて悪かったな。女は飲んだら色っぽくて可愛いんだよ。
「甘いものがお好きとか」
徹夫を上から下まで眺めてそう言った。
腹の当たりで一瞬、笑いを堪えていたのは気のせいか?
佳代の旦那は
満面の笑みを浮かべて出て行った。
⭐
「おい!佳代!どういうことだよ。旦那が慰謝料請求しに来たぞ」
電話の向こうでは、佳代が喚いている。
「ずっと知ってたって。僕も好きな人がいるから離婚ね!って。
もうずっと ちっとも構ってくれないから、くれないからーー‼」
要するに、旦那が佳代のことを疎ましがってて俺に押し付けてたってことか?
佳代は俺のことを好きじゃあなかったのか?
徹夫は目の前の饅頭を、パクっと口に入れた。
受け付けから電話が入り、徹夫は応接室に向かう。
「田中君、いつもは直接事務所迄来るのになあ」
独り言を言いながら応接室まで足を運ぶと、見知らぬ男性がいた。
長身で徹夫より十歳は年下か。男の癖になんだか色気がある奴だ。
「田中です。はじめまして」
男性は立ち上がって挨拶をしたが、 何故か名刺は出さない。
座るように促して向かい合った。
「佳代がお世話になっています」
血の気が引いた。佳代の旦那か!
「随分色々な所に連れて行っていただいたそうで」
にやりと笑う。
「う、うぅ」
「私は水商売をしているもので、休みが取れなくて。休みが取れてもあんなおばさんとは旅行に行きたくないしねえ。おっと失礼。
まあこれからも佳代と、おっと佳代さんと仲良くどうぞ。
私はもう離婚する予定でね」
「はぁ?」
そんなことは聞いてない、というか、
此のところ、佳代から誘いがなく焦れていた所だ。
「あ、これ、慰謝料の請求書ね。宜しく」
い、慰謝料。あれだけ佳代にお金を使って、まだお金を払うのかよ。
「ちょっと待ってください。どうして分かったんだよ」
「コンビニのレシートですよ。あり得ない時間に缶ビールとウーロン茶をいつも買っている」
そうだ!ホテルの部屋で先ず乾杯するのが習慣だ。
「飲み物くらいは出させてよ」
と、佳代がいつも払っていた。
「貴方がウーロン茶だそうですね」
笑いを含んだ声だった。
なんだよ。飲めなくて悪かったな。女は飲んだら色っぽくて可愛いんだよ。
「甘いものがお好きとか」
徹夫を上から下まで眺めてそう言った。
腹の当たりで一瞬、笑いを堪えていたのは気のせいか?
佳代の旦那は
満面の笑みを浮かべて出て行った。
⭐
「おい!佳代!どういうことだよ。旦那が慰謝料請求しに来たぞ」
電話の向こうでは、佳代が喚いている。
「ずっと知ってたって。僕も好きな人がいるから離婚ね!って。
もうずっと ちっとも構ってくれないから、くれないからーー‼」
要するに、旦那が佳代のことを疎ましがってて俺に押し付けてたってことか?
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徹夫は目の前の饅頭を、パクっと口に入れた。
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