いちばん好きな人…

麻実

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恋人よ

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季節は巡り、再びの春の日。

雪子の背丈でも届きそうな、桜の枝が目の前にある。
触れようか触れまいか、七分咲きの桜が雪子を誘う。

触れてはいけない、どうしていけないの?そんなことを考える。

「私に触れて」
桜が誘う。
「ううん。駄目よ」

桜のことを考えているはずなのに、いつの間にか隆道のことを思っている。

隆道さんは、誰のものでもなかったわ。
だから、恋してしまったの。

誰かのものだったら雪子は恋をしなかったの?

夫が他の奥さんを大事にして、一%も雪子のことを思っていなかったから、隆道さんに恋をすることを選んだの。

誰も悲しい思いをしていないのですもの。私も幸せな思いをして良いわよね。
ううん!私も幸せになりたかったの。
その相手が隆道さん。


それだけのこと。





スマホを見ていた隆道が言った。
「今年もポール・マッカートニーの来日公演があるよ」
「あら!何処で?」
「東京ドーム」
「わたし、東京ドームに行ったことないわ」
小首を傾げて雪子が言う。
「行ってみる?」
「行きたいわ!」
「よし! 申し込もう」

隆道さんもビートルズが好きだったのね。嬉しいわ。
まだまだ知らないことがたくさんね。

子供のような笑顔をみせる隆道を、恋する女の眼差しで見詰める雪子。



.:*:・'°☆。.:*:・'°☆・゜・・゜・.:*:・'°



雪子は、自分がビートルズを大好きだったことを思いだした・・・。



                                 fin  
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