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第1章
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しおりを挟む「……いッ゙……」
次に目を開けた時、男達は居なかった。代わりに、カピカピになった下半身と軋む身体、悲鳴をあげている腰。
夢では無かったと、思い知らされる。とにかく帰らなければ。
今が何時かは分からない。
ただ、まだここに居ることが気づかれてないということはそう遅い時間では無いのだろうと決めつけ脱ぎ捨てられた下着と制服を着直して、ずるずると重い体を引きずって教室を出た誰にも会いたくなくてさっさと学校を出た。
あまり人通りのない道を選び、家に着く。
靴を脱いで、急いで風呂に飛び込んだ。頭から冷水を被り、必死に体を擦った。
消えない、消えない、消えない─……男達の感触、声、消えない。
プラスされる、記憶。
重なる男たち。
フラッシュバックが、止まない。
消えない過去として蓄積していく現実が、酷く重い。
『嫌だ』
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!」
ダンッとシャンプーのボトルを壁に投げつけ、泣いた。
呼吸が乱れる、構わない、死ぬかもしれない、構わない、寧ろ、
……死んでしまいたい。
誰も助けてくれなかった。誰も。一人だった、誰も居なかった。
いつも一人、あの時も今回も、……これからも、独りなのだろう。
分かっている、期待なんてしちゃいけない。
すればするだけ自分が惨めになる。
『嫌だ』
頭に響く自分の声ですら、今の自分を否定しているように思えてならない。
ゴシゴシとタオルで擦りすぎて、皮膚がめくれてしまった。それでもいい、構わない。
嫌なんだ。
見知らぬ男から与えられたのは、苦痛の筈なのに、自分は、感じてしまっていた。
……快感を、感じ、あろう事か、「もっと」と思ってしまった。嫌だ、嫌だ、醜い、自分は醜い。
もっと、血が流れればいい。
流れた血液から、同時に醜い己の細胞も流れていけばいい。
いつの間にか手に持っていた剃刀と、流血している腕。
シャワーの水が血を洗い流し、排水溝へと導いていった。
棄てられる己の一部を視覚化された事により安心感を覚えた。
落ち着いてきたところで胃が痛いことに気が付いた。
キリキリと軋む胃を抑えつつ、暫く冷たいシャワーを浴び続けた。
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