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第5章
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しおりを挟む「じゃあ、案内したいところも終わったし自由解散で各々好きに見てまわりましょうか。お夕飯までには旅館に戻るように!」
じゃあ解散、というあっさりとしたセリフに各々動き出す。
けれど、橘の声が皆の動きを止めた。
「なあなあ折角やし、違う奴とも組まへん? こんな時しか仲良くなれへんやろ?」
橘の言葉に明らかにムッとする由伊。けれど、口は出さなかった。
「グッチョで決めて、グー組とチョキ組で分かれて前半後半動こうや!」
「わあいいね! 楽しそう!」
「同じメンバーだと確かに皆で来た意味無いもんね」
女の子たちは乗り気で、律たちの同意を嬉々として待つ。
「そうだね、そうしよう」
意外にも先に動いたのは、律よりも由伊だった。
皆が目を丸くする。
何だか今日の由伊は変だ。
いつもなら真っ先に知らない人と動くのは嫌がるタイプなのに。
いや由伊はいつもどこか変な感じだけど、今日は特に変だ。
驚いた橘に、「熱でもあるんか?」とおでこに手を当てられている。
「じゃ、じゃあ俺も.......」
律は慌てて皆の元へ行き、グッチョのジャンケンをした。
「グッチョーで、きめまーしょ」
全員ハモリ、手を出す。
すると、
「あ、俺グーや」
「俺も」
「私も」
橘、由伊、仲野さんがグー組で、
「私はチョキ」
「俺も」
「私も」
雨寺さん、俺、笹原さんがチョキ組だった。
「お、りっちゃんハーレムやん」
橘の台詞に、律は少し顔が熱くなる。
「そ、そんなんじゃないでしょ!」
強めに否定すると、「はい、可愛ええ可愛ええ」と投げやりに頭を撫でられた。
なんだそれ! 子供宥めるみたいに!!
少しムスッとすると、雨寺がこっそり律に話しかけてきた。
「私たちで大丈夫? 由伊くんと、私、交換しよっか?」
「えっ!? なんで!? 」
まさかのセリフに、雨寺は「あ、いや、由伊くんと宮村くん仲良しだから.......男1人はアレかなって思って.......」と少し視線を逸らしつつ言ってくれた。
ああ、なんだ。配慮してくれたのか.......。
てっきり、昨日の行為がバレたのかと思った。
「ううん。大丈夫だよ、折角皆できたんだし、俺皆とも話したい!」
そう言うと、雨寺も笹原も嬉しそうに頬を緩ませていた。
「じゃあ、各自自由行動ね! 十五時で区切りをつけてメンバー交代しましょうか。場所は追って連絡するね」
その言葉を合図に、みんなはそれぞれ行きたい方向に向かって歩き出した。
律達も観光パンフレットを見つつ、歩き出す。
「宮村くん、どこ行きたい? 私、ここのソフトクリーム気になってるんだよね~」
「俺、特に無いんだよね。笹原さんはどこかある?」
「.......強いていえば、お腹減った」
笹原の言葉に、律と雨寺は「確かに~」と声を合わせた。
そろそろお昼時だし、朝から歩きっぱなしだし疲れもあってそろそろ休憩がしたい。
「じゃあどこかに入ろうか。食べたいものある?」
2人に聞くと、「パスタ!」と2人でハモっていた。
律は「仲良しだね」と笑い、パスタのお店を探す。
「あ、ねぇここ有名らしいよ? イタリアンのレストラン」
「高いかな?」
「ううん、コスパも良くて有名なんだって。ファミリー向けって書いてあるからそこまで高くないと思うよ」
「じゃあそこにしよう!」
3人の意見が簡単に一致しトントン拍子に進んで行く。
目的のレストランをキョロキョロしながら探す。
不意に何かの視線を感じ、律は振り返る。
後ろはただの商店街があるだけで、特に怪しいと思う人物は目に入らなかった。
「どうしたの? 宮村くん、看板見っけた?」
雨寺に声をかけられ、「あ、ううん。見かけたような気がしたけど、なかった」と誤魔化すことにした。
.......今、誰かに見られてた気がするけど、気のせいかな?
「あ、看板みっけ!」
駆け寄る雨寺に、律は気を取り直して笹原と後を着いていく。
扉を開ければ、鈴の音と共に美味しい香りが漂ってきた。
もうお腹が最高にペコペコだ。
先程の視線は気にもせず、律達は店内へと入った。
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