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第7章
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「っくそ!なんで見つかんねぇんだよ!!」
家を出てから一時間は走った。
行ったことのある場所、興味を持っていた場所、自分が知る限り全部探した。
学校にだって忍び込んだ。
でも、何処にも居ない。
律くんが、居ない。
絶望で、頭も心も黒く染まる。
後は何処を探せばいい?
どこに行けば良い?
彼の行きそうな場所が分からない。
こんなにも大好きで大切なのに、なんで彼の行動が分からないんだ。
愛しているのに、どうして彼の事が分からないんだ。
こんなんじゃ、好きだと言える資格がない。
大切な時に、そばに居られない奴なんて要らないじゃないか。
冷たい空気が肺が痛む。
足も震える。
.......どうしよう、どこに行こう、どうすれば─.......
「くたばんの早すぎヘタレ兄貴」
「い゛っ」
真にバシンっと背中を叩かれ、由伊はぱちくりと目を丸くする。
真はゼェゼェと苦しそうに息をしながら由伊をキッと睨み上げてきた。
「ハル兄が言ったんじゃん!大切だって、死なせたくないってだからあたしも寛貴も着いて来たんだよ。真っ先に諦めてどうすんの?まだ一時間しか探してないよ、まだ行けるとこ馬鹿ほどあんだろ!」
真のセリフに、ハッとする。
そうだよ、たった一時間で何へばってんだ俺の馬鹿。
やるべき事を全てやってから考えろ。
今は走れ、名を呼んで叫んで、走るしか無いんだ。
「ごめん、真。ありがとう!」
真の頭をくしゃりと撫でると、真は「髪崩れるしぃ!」とキレながらも呆れたように笑ってくれた。
だけど、このままがむしゃらに走っててもどうしようも無い。
結局、疲れただけになる。
律くんの行きそうな場所.......。
もし、もしも、律くんが本当に"最期"を考えているとしたら、何処に行く?
.......俺なら、何処に行くだろうか。
もし俺が死ぬなら、最期に目に入れる景色は律くんがいい。
律くんに看取られて死にたい。
律くんに殺されて死ねるなら、それが本望だ。
律くんがいいけど、.......もし、会えなかったら。
会うことが出来なかったら、何処へ行く?
俺は、.......律くんと行った思い出の場所に行きたい。
律くんの笑顔が見れたあの場所に、行きたいと思う。
もしも、律くんと同じ想いであれば.......
否、同じ気持ちであったら、どんなに良くて、どんなに残酷か。
そこに居て欲しいと思うのと同時に、.......少しだけ、居て欲しくないとも思った。
.......律くん、そこは暗くて深くて冷たい、寂しい場所だよ。
キミの最期には、相応しくない。
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