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第7章
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律と文崇をそれぞれ、由伊の部屋、孝の部屋に寝かせて由伊家は緊急家族会議を開いた。
もう夜が明け、今は午前7時だ。
正直、疲れたし眠い。
父にも寝ていいといわれたが由伊たち兄妹は首を縦に振らなかった。
きっと自分と同じく、寝るに寝れないんだろう。
自分が寝ている間に何が起こるかわからなくて、怖い。
「お前たちには言ってなかったが、実は宮村さんを心配した俺と母さんで提案していたんだ。律くんを預からせてくれないか、と」
孝はコーヒーを飲みながら口を開いた。
真も寛貴も真剣に孝を見て話を聞いていた。
「宮村さんにはある事情があって、律くんのもとへは帰れないらしくてな。その間、律くんを家で面倒見たいと言ったんだ」
ある事情.......。
それは律くんの巻き込まれたという事件のことなのか。
「ちょうどよく家に部屋も余っているし。けれど、律くんは大人.......つまり父さんたちのことが苦手らしく、しかも、宮村さんと離れるのも律くんの精神衛生上よくないと判明してしまった。ただ、今律くんたちがいる家は危険らしいんだ」
「八方ふさがりよね……。私たちは、律くんは父親にネグレクトされてると思っていたから、すんなり来てくれるかと思っていたんだけど……」
京子は深いため息を吐いて、視線を下に向けた。
「あのさ、なんでそこまでしてあの人たちを守るの?そうやってびくびくしながら生きるのがあの人たちの運命なんでしょ?なら、あたしたちがどうこうしてしなくても変わらなくない?」
至極めんどくさそうに真は言った。
すると反論しようとした俺より早く、父さんが表情を険しくした。
「真。めんどくさいと思うのは勝手だが、人の運命は他人の介入によって良くも悪くも必ず変わるんだ。運命に抗おうと必死に諦めていない人が傍にいるなら手を伸ばすのが人情ってもんだと、父さんは思うぞ」
その言葉に真は押し黙る。
「確かに、他人によって自分たちのこれまでの生活が変わってしまうのはすごくストレスよね。父さんや母さんの思いを尊重して真や寛貴、陽貴を我慢させたいとは思わないわ。それはそれでまた別の案を考えるまでよ」
京子は真っすぐに子供たちを見つめた。
俺は家に律くんたちを呼ぶのは構わない。
だってそしたら、おはようからおやすみまで不謹慎だけど一緒に居られる。
そうなったら、律くんは俺を好きになってくれるのだろうか。
……そんなこと考えてどうする。
打算的に好きになってもらったって、嬉しくないんじゃないか。
「……お前たちの考えを聞かせてほしい」
静かにリビングに響く父の声は重く、沼のように深かった。
「俺は律くんたちを家に呼ぶのは、もちろん賛成。けど住まわせるのに納得いかない奴が居んなら、律くんが一人で不安な時家に来るようにしたらいいと思う。宮村さんもその時はここに帰ってくればいいし」
真っ先にそうて提案すると、孝は黙って頷いた。
「……あたしは反対。他人がプライベートな空間にいるってだけでストレスだし、あたしらの生活が乱れるのに納得いかない」
真は依然として否定派だった。
「寛貴は?」
由伊が発言するように促すとずっと黙っていた寛貴は口を開いた。
「俺らがここでどうこう決めてもしょうがなくね。結局は宮村さんたちの意思が尊重されるなら、賛成とか反対とか意味ないと思うけど」
バッサリと意見を告げた寛貴は「けど……」と続けた。
「真の気持ちも兄貴の気持ちも、父さんたちの気持ちも尊重されるべきだと思うよ。誰かが折れる生活は結局ずっとは続かねぇと思うし、そういうのが一番宮村さんたちの負担になるんじゃねぇの」
寛貴の言葉に皆が納得し頷いて、結局全ての話は宮村家が目覚め、自分たちの体も休まった後に冷静になって話す事にした。
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