ai -Iと蛇-

みやの

文字の大きさ
85 / 101
第7章

11

しおりを挟む







律と文崇をそれぞれ、由伊の部屋、孝の部屋に寝かせて由伊家は緊急家族会議を開いた。

もう夜が明け、今は午前7時だ。
正直、疲れたし眠い。

父にも寝ていいといわれたが由伊たち兄妹は首を縦に振らなかった。
きっと自分と同じく、寝るに寝れないんだろう。
自分が寝ている間に何が起こるかわからなくて、怖い。

「お前たちには言ってなかったが、実は宮村さんを心配した俺と母さんで提案していたんだ。律くんを預からせてくれないか、と」

孝はコーヒーを飲みながら口を開いた。
真も寛貴も真剣に孝を見て話を聞いていた。

「宮村さんにはある事情があって、律くんのもとへは帰れないらしくてな。その間、律くんを家で面倒見たいと言ったんだ」

ある事情.......。
それは律くんの巻き込まれたという事件のことなのか。

「ちょうどよく家に部屋も余っているし。けれど、律くんは大人.......つまり父さんたちのことが苦手らしく、しかも、宮村さんと離れるのも律くんの精神衛生上よくないと判明してしまった。ただ、今律くんたちがいる家は危険らしいんだ」

「八方ふさがりよね……。私たちは、律くんは父親にネグレクトされてると思っていたから、すんなり来てくれるかと思っていたんだけど……」

京子は深いため息を吐いて、視線を下に向けた。

「あのさ、なんでそこまでしてあの人たちを守るの?そうやってびくびくしながら生きるのがあの人たちの運命なんでしょ?なら、あたしたちがどうこうしてしなくても変わらなくない?」

至極めんどくさそうに真は言った。
すると反論しようとした俺より早く、父さんが表情を険しくした。

「真。めんどくさいと思うのは勝手だが、人の運命は他人の介入によって良くも悪くも必ず変わるんだ。運命に抗おうと必死に諦めていない人が傍にいるなら手を伸ばすのが人情ってもんだと、父さんは思うぞ」

その言葉に真は押し黙る。

「確かに、他人によって自分たちのこれまでの生活が変わってしまうのはすごくストレスよね。父さんや母さんの思いを尊重して真や寛貴、陽貴を我慢させたいとは思わないわ。それはそれでまた別の案を考えるまでよ」

京子は真っすぐに子供たちを見つめた。

俺は家に律くんたちを呼ぶのは構わない。
だってそしたら、おはようからおやすみまで不謹慎だけど一緒に居られる。
そうなったら、律くんは俺を好きになってくれるのだろうか。

……そんなこと考えてどうする。

打算的に好きになってもらったって、嬉しくないんじゃないか。

「……お前たちの考えを聞かせてほしい」

静かにリビングに響く父の声は重く、沼のように深かった。

「俺は律くんたちを家に呼ぶのは、もちろん賛成。けど住まわせるのに納得いかない奴が居んなら、律くんが一人で不安な時家に来るようにしたらいいと思う。宮村さんもその時はここに帰ってくればいいし」

真っ先にそうて提案すると、孝は黙って頷いた。

「……あたしは反対。他人がプライベートな空間にいるってだけでストレスだし、あたしらの生活が乱れるのに納得いかない」

真は依然として否定派だった。

「寛貴は?」

由伊が発言するように促すとずっと黙っていた寛貴は口を開いた。

「俺らがここでどうこう決めてもしょうがなくね。結局は宮村さんたちの意思が尊重されるなら、賛成とか反対とか意味ないと思うけど」

バッサリと意見を告げた寛貴は「けど……」と続けた。

「真の気持ちも兄貴の気持ちも、父さんたちの気持ちも尊重されるべきだと思うよ。誰かが折れる生活は結局ずっとは続かねぇと思うし、そういうのが一番宮村さんたちの負担になるんじゃねぇの」

寛貴の言葉に皆が納得し頷いて、結局全ての話は宮村家が目覚め、自分たちの体も休まった後に冷静になって話す事にした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

処理中です...