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第三章 世界樹の守護者
第42話 世界樹の守護者レオルステイル
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恐ろしさを目の前にしても怯むわけには行かなかった。
何せ、これからこの母と対峙して世界樹の守護者を辞める旨を言わなければならないのだ。
「多分もう、何となく察知しているとは思うけど、アタシは世界樹の守護者を辞める!もう辞める!元の鞘には母さんが戻って欲しい。でないとアタシは、本当に助けたい者も誰も助けられない無能に成り下がってしまう!!」
セレスは、世界樹の守護者になってからの150年間の思いの丈を言葉に込めて母にぶつけた。
レオルステイルは、ふぅ~っと溜息をつくと、「やっぱりね」と言いながらセレスの間近まで近づいた。
「知ってた。と言うか、見てしまったのじゃよ。ある時儂は、書架の2階の本棚の奥にある、扉の主しか通れぬ扉から出入りしていた時期があっての。お前たちは全く気づいて居なかったか、はてまたミカゲは気付いておったか分からんが、とにかくあの扉は儂が作って儂しか通れぬ扉じゃから活用していたのじゃ。そこでいつしか見てしまっての、お前が守護者を辞めたい辞めたいとミカゲに愚痴りまくっている所をの。だから、いつ儂の所に辞めたい旨を直接言いに来るのか~?と思っていたんじゃが、今日ようやくその日が来たって訳よの。」
そう言って少し申し訳無さそうな顔をした。
レオルステイルの見た目は母親らしくない少女の様な風貌をしているのに対して、娘の方が人間の20代半ばの様な見た目をしているのは、150年間の間にセレスの生命エネルギーの多くが世界樹に持っていかれてしまった所為だと言う事を、レオルステイルは気付いていた。
セレスはその事を何も不思議がっていないのが救いだとレオルステイルは思っていたが、しかし自分の身体から生み出した娘の身体の方が老いている事に対して、負い目を感じているのは事実だった。
せっかく、魔族と高位エルフの血を引いているのに、その力を世界樹なんぞに吸い取られて終わらせてはならないと、レオルステイルは思った。
「済まなかったの、この150年間はお前にとって苦難の日々だっただろう。儂の我儘でこんな所のちょっと大きいだけの木に生命力を吸われて申し訳無かった。儂は元々世界樹の守護者になるために生まれたエルフだったから、世界樹に縛り付けられていると言うよりは共存していると言う形で生き続けて来たのじゃが、お前と世界樹はそんな関係にはなれなかった訳だ。許せ。」
レオルステイルはそう言って、深々と頭を下げた。
それを見たセレスは、まさか母がそこまで反省しているとは思っていなかったので、かなり驚きを隠せなかった。
「ええ?!何?そ、そんなにアタシは世界樹に生命エネルギーを持っていかれていたのか?魔法が色々使えなくなったり、固有能力が使えなくなったりしてただけだと思っていたけど・・・・」
セレスは驚きながら自身に起きていた異変を口に出したが、その言葉を聞いたレオルステイルの口からは、
「お前の寿命もかなり削ってしまっていた様だ、本当に済まない。」
と、更に謝罪の言葉が出た。
「え?寿命??アタシは命を削って150年もあの木の守護者をやっていたのか?それってオカシくないか?何で母さんは寿命を削られていないのにアタシは削られているんだ?その辺りをもっと詳しく説明してくれよ!」
セレスは、自身に起きていた異変が自分の想像していた以上だった事に動揺して、レオルステイルに食いついた。
レオルステイルは、怒りと困惑で我を忘れかかって両肩を掴んで揺さぶって来る娘の頭を撫でながら、
「お前の怒りは尤もじゃ。特に命を削られていた事実、儂も先程知ったばかりじゃ。だから、出来れば削られた命の全てとは行かないにしろ、半分位は返還出来るように世界樹と交渉してみるつもりじゃ。だからと言って今日までのお前の苦しみが減るとは思えないし、この程度でこの母を赦す事なぞ出来んかも知れないが、その怒りは沈めてくれると儂は有難い。」
そう言ってセレスを抱きしめた。
セレスは、久しぶりに感じた母の温もりに、ようやく落ち着きを取り戻した。
そして、
「今はミカゲが世界樹の守護者代理をやってる。あの装置を使ってミカゲを守護者にしてみたんだが、実は驚いたことがあって、ミカゲには何も言わなかったけど守護者の設定をした時に何か拒絶反応の様な事が起こるかと思ったら、全く全然何も起きなかったんだ。まるで、元から世界樹の守護者だったかの様な、そんな感じのしっくりハマる?って感じの反応だったんだ。」
セレスはそう言うと、レオルステイルの返答を期待した。
どんな答えが出て来るのか?セレスには見当もつかなかったからだ。
「セレス、実はな、世界樹と言うのは元々竜を守護者に据える様に出来ている事は知っているな。他の国の世界樹は皆竜が守護者になっている。このメルヴィレッジの地にある世界樹だけはたまたまエルフが守護者になっているのは、この世界樹がこの大陸で一番古い世界樹だからじゃ。と言うか、もしかしたらこの世界で一番古い世界樹かも知れぬ。そう言う訳でたまたま儂が世界樹の守護者だった訳じゃが、本来は竜がやるモノなのじゃ。だからミカゲにその権利を移行しても全く抵抗が出ないのは、至極当たり前の事なのじゃよ。」
レオルステイルは、世界樹の守護者に竜が多い理由を語り始めた。
何せ、これからこの母と対峙して世界樹の守護者を辞める旨を言わなければならないのだ。
「多分もう、何となく察知しているとは思うけど、アタシは世界樹の守護者を辞める!もう辞める!元の鞘には母さんが戻って欲しい。でないとアタシは、本当に助けたい者も誰も助けられない無能に成り下がってしまう!!」
セレスは、世界樹の守護者になってからの150年間の思いの丈を言葉に込めて母にぶつけた。
レオルステイルは、ふぅ~っと溜息をつくと、「やっぱりね」と言いながらセレスの間近まで近づいた。
「知ってた。と言うか、見てしまったのじゃよ。ある時儂は、書架の2階の本棚の奥にある、扉の主しか通れぬ扉から出入りしていた時期があっての。お前たちは全く気づいて居なかったか、はてまたミカゲは気付いておったか分からんが、とにかくあの扉は儂が作って儂しか通れぬ扉じゃから活用していたのじゃ。そこでいつしか見てしまっての、お前が守護者を辞めたい辞めたいとミカゲに愚痴りまくっている所をの。だから、いつ儂の所に辞めたい旨を直接言いに来るのか~?と思っていたんじゃが、今日ようやくその日が来たって訳よの。」
そう言って少し申し訳無さそうな顔をした。
レオルステイルの見た目は母親らしくない少女の様な風貌をしているのに対して、娘の方が人間の20代半ばの様な見た目をしているのは、150年間の間にセレスの生命エネルギーの多くが世界樹に持っていかれてしまった所為だと言う事を、レオルステイルは気付いていた。
セレスはその事を何も不思議がっていないのが救いだとレオルステイルは思っていたが、しかし自分の身体から生み出した娘の身体の方が老いている事に対して、負い目を感じているのは事実だった。
せっかく、魔族と高位エルフの血を引いているのに、その力を世界樹なんぞに吸い取られて終わらせてはならないと、レオルステイルは思った。
「済まなかったの、この150年間はお前にとって苦難の日々だっただろう。儂の我儘でこんな所のちょっと大きいだけの木に生命力を吸われて申し訳無かった。儂は元々世界樹の守護者になるために生まれたエルフだったから、世界樹に縛り付けられていると言うよりは共存していると言う形で生き続けて来たのじゃが、お前と世界樹はそんな関係にはなれなかった訳だ。許せ。」
レオルステイルはそう言って、深々と頭を下げた。
それを見たセレスは、まさか母がそこまで反省しているとは思っていなかったので、かなり驚きを隠せなかった。
「ええ?!何?そ、そんなにアタシは世界樹に生命エネルギーを持っていかれていたのか?魔法が色々使えなくなったり、固有能力が使えなくなったりしてただけだと思っていたけど・・・・」
セレスは驚きながら自身に起きていた異変を口に出したが、その言葉を聞いたレオルステイルの口からは、
「お前の寿命もかなり削ってしまっていた様だ、本当に済まない。」
と、更に謝罪の言葉が出た。
「え?寿命??アタシは命を削って150年もあの木の守護者をやっていたのか?それってオカシくないか?何で母さんは寿命を削られていないのにアタシは削られているんだ?その辺りをもっと詳しく説明してくれよ!」
セレスは、自身に起きていた異変が自分の想像していた以上だった事に動揺して、レオルステイルに食いついた。
レオルステイルは、怒りと困惑で我を忘れかかって両肩を掴んで揺さぶって来る娘の頭を撫でながら、
「お前の怒りは尤もじゃ。特に命を削られていた事実、儂も先程知ったばかりじゃ。だから、出来れば削られた命の全てとは行かないにしろ、半分位は返還出来るように世界樹と交渉してみるつもりじゃ。だからと言って今日までのお前の苦しみが減るとは思えないし、この程度でこの母を赦す事なぞ出来んかも知れないが、その怒りは沈めてくれると儂は有難い。」
そう言ってセレスを抱きしめた。
セレスは、久しぶりに感じた母の温もりに、ようやく落ち着きを取り戻した。
そして、
「今はミカゲが世界樹の守護者代理をやってる。あの装置を使ってミカゲを守護者にしてみたんだが、実は驚いたことがあって、ミカゲには何も言わなかったけど守護者の設定をした時に何か拒絶反応の様な事が起こるかと思ったら、全く全然何も起きなかったんだ。まるで、元から世界樹の守護者だったかの様な、そんな感じのしっくりハマる?って感じの反応だったんだ。」
セレスはそう言うと、レオルステイルの返答を期待した。
どんな答えが出て来るのか?セレスには見当もつかなかったからだ。
「セレス、実はな、世界樹と言うのは元々竜を守護者に据える様に出来ている事は知っているな。他の国の世界樹は皆竜が守護者になっている。このメルヴィレッジの地にある世界樹だけはたまたまエルフが守護者になっているのは、この世界樹がこの大陸で一番古い世界樹だからじゃ。と言うか、もしかしたらこの世界で一番古い世界樹かも知れぬ。そう言う訳でたまたま儂が世界樹の守護者だった訳じゃが、本来は竜がやるモノなのじゃ。だからミカゲにその権利を移行しても全く抵抗が出ないのは、至極当たり前の事なのじゃよ。」
レオルステイルは、世界樹の守護者に竜が多い理由を語り始めた。
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