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第四章 ソルフゲイルの謀略
第56話 実行
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ハヤテの如くにソラ・ルデ・ビアスの書架の階段を省略して1階に降り立ち、勢いでドアを開けて外に出て行ったミカゲは、コレットを背負ったまま道を走らず中空を滑空するかのように飛翔してコレットの家に向かう。
竜の羽根を出さずに飛翔する事が出来るのは、ミカゲの思考と身体の連携が取れている証拠だった。
翼はあくまでも竜の身体にあった方が見栄えの良いパーツと言う認識を持つ人の方が多いと思われるが、当のミカゲの意識下で飛翔能力のコントロールが出来てさえいれば、翼があろうが無かろうが飛べると言う認識で固まる。
そんな状態でミカゲが急いでいる背中で、コレットはヒヤヒヤしつつも楽しんでいた。
一介の、ちょっと家柄が良いだけの魔道士の役職で満足していたり、あの時の陰謀にそのまま嵌められていたならば、こんな体験をする事は無かったのだ。
それに、たまたま書架の方に誘導されて進んでいたとしても、この出会いは運命と言うよりは革命的だともコレットは思っていた。
ミカゲの背中タクシーの速度はかなり速かったので、メルビレッジの首都の近くにあるコレットの家までは想像以上に早く着いた。
コレットの家の玄関先でミカゲは立ち止まり、背中におぶっていたコレットを降ろした。
「ココからは普通に私が家に帰る感じで入るけど、もし既に誰かに気付かれていたり別の問題が発生している場合を想定して、ミカゲに頼みたいことがあるんだけど?」
コレットは、セレスには想像(予知?)が及ばない可能性が高い不慮の出来事を想定して、ミカゲに相談を持ち掛けた。
「私の家、ちょっと権力とかそう言うのに固執している人が多いの。なので、今私が家に入って家族の誰かに会ってしまった場合、そのまま家から出られなくなる可能性があるんです。だから、出来ればそんな状況から脱出できるアイテムか、皆か誰かにその状況を知らせる事ができる方法を教えて欲しいの!」
ミカゲはもう少し気楽なお願いだと思って聞いて居たら、実はけっこ切羽詰まった話だったので、少しうーんと考え始めた。
ただ、今はそんなに考えている時間は無いので、ポンっと手を叩いた後に、上着のポケットからコレットの手のひらほどの竜の鱗を取り出し、何やら魔法をかけた。
碧き蒼き氷炎の鱗よ、我は汝なり汝は我なり
我の替わりに この者を守護せよ
汝の主たる我御影の名において 命ずる
青い鱗は一瞬輝きを見せた後、また普通の青い鱗に戻ったのを確認した後、ミカゲはコレットの掌に鱗を置いた。
「もし、コレットが身の危険を感じたら、あちしの名前をこの鱗に叫ぶんだち。そしたら鱗はあちしになって、またコレットを背負って書架に戻るんだち!」
ミカゲはそう言って、コレットを勇気づけた。
これからやらねばならない任務の、達成を願った。
コレットは鱗を大事そうに上着の胸ポケットに入れると、
「ありがとうミカゲ!じゃあ私、行ってくる!」
そう言って、自分の家に入った。
ミカゲはコレットの家の前から、世界樹の繋がりを持つ者だけが出来る意識伝達方法で、レオルステイルにコレットが家に入った事を伝えた。
コレットは家の玄関のドアを恐る恐る開けると、
「た、ただいま戻りました。」
と、小さな声で言った。
しかし、家の中からはあまり人の気配が無く、ちょっと不気味な雰囲気さえ感じられる。
「おかしいな、いつもこの時間なら侍従のクレアが出てきて、「お嬢様!一体いつまでフラフラされてるんですか!!」とか言ってくる筈なんだけど・・・・」
言いながらでも、今回の作戦には都合が良いかな?とコレットは、『アリエルシアの弓』が展示してある場所に近づいた。
玄関から近い距離だったのが救い?と言うか、今は非常に助かった気分だった。
作戦通りに、まずは『アリエルシアの弓』が現物かどうかを確認する。
本物またはそれに近いシロモノなら、コレット程の魔力があれば確認できる筈だった。
「あれ?オカシイな?」
いつもは、燦燦と輝かしいまでに魔力の波を感じられる程の弓だった筈なのに、どうにも『アリエルシアの弓』の形をした偽物の弓の様になっていた。
いや、確かにこの弓自体は本物なのだが、弓に封じられていた魔力がすっかり抜かれている様な状態になっているのだ。
「何?どうなってるの?」
コレットは、作戦開始の合図を出さずに、誰も出てこない家の中を散策し始めた。
もしかして、弓がちょっとオカシくなってしまった事に誰か気付いているかも知れないと、そう思ったからだ。
コレットの家の家柄は割と良い事もあり、家は家と言うより屋敷で、屋敷と言うよりも少し小さい城の様な雰囲気もあるので、かなりの部屋数があったし、それらの部屋を管理したり食事を作ったりするために多くの侍従が勤めていた。
居た筈なのに、昨日までは確実に家族と侍従合わせて15人は存在していた筈なのに、誰もコレットに気付いて声をかけに来ない状況に、コレットは段々と恐怖感を滲ませていた。
「どうしたの?みんな、どこ?私はさっき帰ってきましたよ?」
一つ一つ、部屋のドアを開けて誰かいないかを確認して行くが、部屋の中には誰の姿も見えず、誰の存在感も感じられなかった。
家族の、母親や父親の部屋も開けてみたが、そこにはしばらく誰も帰って来ていない家主の居ない家の様な状態になっていた。
「何が、どうなっているの?」
コレットは、『アリエルシアの弓』すり替え作戦よりも、今のこの自分の家の状況がどうなっているのか?を把握する事の方が、優先順位が高くなっている事に気付かず家の中を探索し続けた。
竜の羽根を出さずに飛翔する事が出来るのは、ミカゲの思考と身体の連携が取れている証拠だった。
翼はあくまでも竜の身体にあった方が見栄えの良いパーツと言う認識を持つ人の方が多いと思われるが、当のミカゲの意識下で飛翔能力のコントロールが出来てさえいれば、翼があろうが無かろうが飛べると言う認識で固まる。
そんな状態でミカゲが急いでいる背中で、コレットはヒヤヒヤしつつも楽しんでいた。
一介の、ちょっと家柄が良いだけの魔道士の役職で満足していたり、あの時の陰謀にそのまま嵌められていたならば、こんな体験をする事は無かったのだ。
それに、たまたま書架の方に誘導されて進んでいたとしても、この出会いは運命と言うよりは革命的だともコレットは思っていた。
ミカゲの背中タクシーの速度はかなり速かったので、メルビレッジの首都の近くにあるコレットの家までは想像以上に早く着いた。
コレットの家の玄関先でミカゲは立ち止まり、背中におぶっていたコレットを降ろした。
「ココからは普通に私が家に帰る感じで入るけど、もし既に誰かに気付かれていたり別の問題が発生している場合を想定して、ミカゲに頼みたいことがあるんだけど?」
コレットは、セレスには想像(予知?)が及ばない可能性が高い不慮の出来事を想定して、ミカゲに相談を持ち掛けた。
「私の家、ちょっと権力とかそう言うのに固執している人が多いの。なので、今私が家に入って家族の誰かに会ってしまった場合、そのまま家から出られなくなる可能性があるんです。だから、出来ればそんな状況から脱出できるアイテムか、皆か誰かにその状況を知らせる事ができる方法を教えて欲しいの!」
ミカゲはもう少し気楽なお願いだと思って聞いて居たら、実はけっこ切羽詰まった話だったので、少しうーんと考え始めた。
ただ、今はそんなに考えている時間は無いので、ポンっと手を叩いた後に、上着のポケットからコレットの手のひらほどの竜の鱗を取り出し、何やら魔法をかけた。
碧き蒼き氷炎の鱗よ、我は汝なり汝は我なり
我の替わりに この者を守護せよ
汝の主たる我御影の名において 命ずる
青い鱗は一瞬輝きを見せた後、また普通の青い鱗に戻ったのを確認した後、ミカゲはコレットの掌に鱗を置いた。
「もし、コレットが身の危険を感じたら、あちしの名前をこの鱗に叫ぶんだち。そしたら鱗はあちしになって、またコレットを背負って書架に戻るんだち!」
ミカゲはそう言って、コレットを勇気づけた。
これからやらねばならない任務の、達成を願った。
コレットは鱗を大事そうに上着の胸ポケットに入れると、
「ありがとうミカゲ!じゃあ私、行ってくる!」
そう言って、自分の家に入った。
ミカゲはコレットの家の前から、世界樹の繋がりを持つ者だけが出来る意識伝達方法で、レオルステイルにコレットが家に入った事を伝えた。
コレットは家の玄関のドアを恐る恐る開けると、
「た、ただいま戻りました。」
と、小さな声で言った。
しかし、家の中からはあまり人の気配が無く、ちょっと不気味な雰囲気さえ感じられる。
「おかしいな、いつもこの時間なら侍従のクレアが出てきて、「お嬢様!一体いつまでフラフラされてるんですか!!」とか言ってくる筈なんだけど・・・・」
言いながらでも、今回の作戦には都合が良いかな?とコレットは、『アリエルシアの弓』が展示してある場所に近づいた。
玄関から近い距離だったのが救い?と言うか、今は非常に助かった気分だった。
作戦通りに、まずは『アリエルシアの弓』が現物かどうかを確認する。
本物またはそれに近いシロモノなら、コレット程の魔力があれば確認できる筈だった。
「あれ?オカシイな?」
いつもは、燦燦と輝かしいまでに魔力の波を感じられる程の弓だった筈なのに、どうにも『アリエルシアの弓』の形をした偽物の弓の様になっていた。
いや、確かにこの弓自体は本物なのだが、弓に封じられていた魔力がすっかり抜かれている様な状態になっているのだ。
「何?どうなってるの?」
コレットは、作戦開始の合図を出さずに、誰も出てこない家の中を散策し始めた。
もしかして、弓がちょっとオカシくなってしまった事に誰か気付いているかも知れないと、そう思ったからだ。
コレットの家の家柄は割と良い事もあり、家は家と言うより屋敷で、屋敷と言うよりも少し小さい城の様な雰囲気もあるので、かなりの部屋数があったし、それらの部屋を管理したり食事を作ったりするために多くの侍従が勤めていた。
居た筈なのに、昨日までは確実に家族と侍従合わせて15人は存在していた筈なのに、誰もコレットに気付いて声をかけに来ない状況に、コレットは段々と恐怖感を滲ませていた。
「どうしたの?みんな、どこ?私はさっき帰ってきましたよ?」
一つ一つ、部屋のドアを開けて誰かいないかを確認して行くが、部屋の中には誰の姿も見えず、誰の存在感も感じられなかった。
家族の、母親や父親の部屋も開けてみたが、そこにはしばらく誰も帰って来ていない家主の居ない家の様な状態になっていた。
「何が、どうなっているの?」
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