わらしな生活(幼女、はじめました)

隆駆

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比丘尼塚伝説編⑩

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「おい。その軽蔑しきった目をやめろ」
「いや~……。こればっかりはねぇ」

古い付き合いとはいえ、物的証拠を見つけてしまった以上、性犯罪者を見る眼差しになるのはどうしても否めない。

つか、ロリコン滅べ?

「誰がロリコンだ!誰がっ!!」
「源太郎」
「ちげぇよ!!!」
『きゅ………』

あ、ハムちゃんまでもが源太郎から距離をとった。
その行動に地味にショックを受ける源太郎。
ですが自業自得です。

「人を犯罪者扱いするんじゃない!!第一コイツはちゃんと成人してるっ!!」
「え~??じゃあものすごく童顔な人ってこと?」

それはそれで美味しいが、今見た限りではどう見てもーーーーーーーー。

「返せっ!!」
「あ」

もういちどよく顔を見てみようとスマホを手にとったところで、あっさり源太郎に奪い取られた。
そしてそのスマホを大事そうに袈裟の懐にしまい込む源太郎。

残念。もうちょっとよく見たかったのに。

「源太郎、成人してるって、その子いくつ?」
「うるせぇ!人んちの事情に首突っ込んでんじゃねぇよっ!コイツはその、長いこと特殊な環境にいたせいで、見た目の成長が遅れてるだけだっ」
「とくしゅなかんきょう」

ついオウム返しになってしまうその疑問だらけの言葉。
特殊な環境ってなんだ。
そもそも質問の答えになっていないのだが、健全な成長が阻害されるような環境、といえば………。

「まさか、親に虐待されてた子を見つけて助け出してきた、とかじゃないよね?」

全体的に幼く小柄な理由がそれだとしたら泣けるんだが。
できればこれは否定して欲しいと思いつつ問いかけると、「それは…」と、なんとも歯切れの悪い答え。

まさかのビンゴか。

「美少女を虐待するなんて許せん。源太郎許すまじ!!」
「そこでなぜ俺が!?」
「いや、こんな可愛い子に愛されてるとか羨ましすぎて」
「ぐっ……」

ちらりと見ただけだが、どうみてもラブラブ。
お腹を撫でてる姿は見ているこちらが恥ずかしくなってくるくらい愛されてるオーラ全開だった。
控え目に言って羨ましい。

「くそっ!!俺の話はもういいだろっつ!!そのうち会わせてやるからとりあえず今は忘れろ!!」
「え~」
「え~じゃない!!」

忘れろ、と言われてもこんなインパクトのある話をそんなすぐに忘れられるわけがない。
なかなか無茶をいうものだと思いつつ、いつか会わせてやるという言葉を信じ、ひとまず話題を元に戻すことに。
というか、どうして源太郎がここに来ているのかはわかったが、なぜ今ここに現れたのかは謎のままだ。
テレビ局側のオブザーバーということはつまり、源太郎もまた隣の旅館に一緒に泊まっているということだろうし……。
近くにいるから挨拶がわりに顔を見に来た、ということなのだろうか?

「あちらでも夜にはもてなしの宴会くらい開く予定なのでは?
こんな場所で一人抜け出しては、怪しんでくれといって言えるようなものですよ?」

勝手な行動を咎める竜児に、「それなら問題ねぇよ」と源太郎。

「こっちは昨日の夕方から現地入りしてるからな。
宴会ならもうやった。
二日酔いでグダグダな所で昼にもまた飲ませたからな。すっかり出来上がって今日は仕事どころじゃねぇよ」
「ありゃりゃ」

源太郎としては早速足止め役の任を果たしたということだろうが、それでいいのかテレビ局。

「でもその割には酒臭くないよね、源太郎。
お坊さんってお酒ダメなんだっけ?」

酔い潰すと言う割りには自分では飲まなかったのか。

「あのな。嫁の妊娠中に俺だけが他所で酒は飲めねぇだろうが。次に口にすんのは子供の祝い酒と決めてるんだ」
「真面目か」

だが、源太郎は意外といい旦那さんな事がわかった。
幸せだね、奥さん。

「んで、自分は飲まずに相手にさんざん飲ませて潰したってことか。
ゲスト扱いの人間に勧められちゃ、向こうは断れないだろうしな。
うまくやったじゃないか、ゲンゴロウ」

うんうん、と満足そうな賢治。

「おい賢治っ!だからその名前はやめろと何度言ったらーーーーー」

不服そうに噛み付いた源太郎だが、昔からこの要求が通ったことは一度もない。

「はいはい。わかったわかった。
で、こっちに来たのはタカ子への顔見せか?それともなにか新しい情報でも?」
「聞いて差し上げますのでさっさと話してください。旅の疲れでタカ子も眠そうにしていますし、早く休ませたいので」

しれっと話す竜児に「あぁ?」と
時計を見れば、時刻はまだ2時すぎ。

「………まだ昼の3時前なんだが?」
「どうでもいいからさっさと話せよ、源太郎」

こういう時だけちゃんと本名で呼ぶあたりあざとい賢治。
だが、ここで争ったところで勝ち目はないと悟ったのか、溜息を吐きつつようやく今回の要件へ。

「こいつへの顔見せってのもあるが、一つ追加でわかったことがあったんで、その連絡だな」
「何がわかったんだ?」
「ここまで来るくらいですから、有益な情報でしょうね?」
「ーーーーだからお前ら、ちょっと待てって!!」

一気にまくし立てられ、「人の話を最後まで聞け!」と怒鳴りつける源太郎。

「能書きは結構。結論からどうぞ」
「ぐっ……」

明らかに不満げな態度の源太郎だが、両サイドからの圧力に負け、渋々といった様子で要件を口にする。


「………今回の件だが、どうやら弥勒の結縁者が絡んでるって噂があるようだ」
「血縁者………?」
「違う。縁を結ぶと書いてけちえん、だ」

高瀬の勘違いは予測済みだったのか、すぐさま訂正されはしたものの、正直意味がわからない。

だがそれはこの場で高瀬だけのようで、「やはりですか」と渋い顔の竜児。

「まぁ、予測済みだな」と呟く賢治の様子からしても、二人共しっかりその意味をわかっているのは聞くまでもない。

「予測済みってことは、あれか?まさかお前ら、例の奴と既にどっかで?」

…………例の奴?

「ええ。予期せぬ遭遇でしたが」
「ちっ。ってことはな、お前ら」
「でしょうね。そうではないかとは正直疑っていました」
「そうそう。だからタカ子をこんな田舎まで連れてきたんだもんな」
「田舎は余計だ馬鹿者。この土地の人間に失礼だろうが」
「あぁ源太郎の実家よりは都会だよな、確かに」
「うるせぇ、ほっとけ!!」
「で、ぽかんとした顔してどうした?タカ子」

「え?」

話題から一人置き去りにされた挙句、なぜか突然一点に集まる視線。

いや、だってさっきから誰も説明してくれないし。
さっぱり意味がわからないのだが、誰か早く説明してくれないものか。
とりあえず気になったところから聞いてみよう。

「まずその、、ってのはなんなの?」

そんな人と知り合いになった覚えはこれっぽっちもないのだが。

「タカ子の場合はまず、”結縁者”の意味を知るところから始めたほうが良さそうですね。
結縁とは本来仏教用語で、仏教関係者がとある特定の神や仏と文字通り縁を結ぶことを意味します」
「この場合、弥勒ってのは弥勒菩薩の略語だな」
「縁を結ぶ…」

それは確かに、読んで字のごとくなのだがそれが今回の件と一体何の関係があるのか。

「弥勒菩薩ってのは、56億7千万年後、世界の終焉とともに多くの人間を救済すると信じられている未来仏だ。
いくら興味のないお前でも、名前くらいは聞いたことがあるだろう?」
「56億ってまた、ずいぶん先だね………」

なんだか途方も無い数字が出てきた。
だが確かに、その名前には聞き覚えがある。

「う~ん、なんか上品な感じに頬を手を当ててる仏像だっけ?国宝であったよね、そんなの」
「お前の言ってるのは広隆寺の木造弥勒菩薩半跏像もくぞうみろくぼさつはんかぞうだな。
まぁ、間違っちゃいないが」

概ね正解、ということだ。
つまり弥勒とは、高瀬ですら名前を知っているくらいのメジャーどころということ。

「で、その弥勒菩薩さんと縁を結んだってどういうこと?」
「それを今から説明すると長くなるぞ」
「え~」

じゃあやめようかな、眠いし。

「とりあえず手短にお願いします」

お昼寝したいし、お風呂入りたい。 

「…………まぁいい。
簡単に言うならは、弥勒菩薩に請願を立てて、弥勒の眷属となったんだ」
「眷属……って」

それって、私とピーちゃんみたいな関係のことを言うんだよね?

「まぁ、大きな意味ではそうだな。
今回の場合は特に、力を持つ存在の庇護下に入ってその力を借りる代償として、そいつの為に働く義務ってのが発生するわけだ。
そして弥勒の場合はそれが、遠い未来でなければ目覚めることのない自らに代わり、その力を借りて衆生救済を行うことを意味する」

衆生救済しゅじょうきゅうさい、とはなんぞ?????

分からない単語だらけで頭がパンクしそうですっ!!
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