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浅略! 第三王子
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浅はかな策略。
それを浅略と呼ぶ。
戦略でもなく、策略でもなく、浅くて思慮が足りない甘々な考えの上に立てられた作戦など、戦いを始める前から結果は見えている。
だが第三王子だったクラウスには、知恵もなければ力もなかった。
あるのは、甘い声でしなだれかかる男爵令嬢との間にある甘々な関係だけだ。
「クラウスさまぁ~。私たち、どうすればよいのでしょうね?」
「そうだなぁ……」
男爵位を与えられて王宮を追い出されたクラウスは、小さな屋敷に移り住んだ。
王宮とは比べ物にならないほど粗末な屋敷ではあるが、男爵令嬢である恋人とは身分も釣り合うから問題はない。
が、金も力もないのでは生活が成り立たない。
領地を与えられたといっても、暮らしていくのがやっとの財政状態だ。
使用人も満足に雇えない。
こんな状況では、愛しい恋人との結婚もままならないという状況である。
だが――――
「私に良い作戦がある」
良いと悪いの判断が正しくできれば元が付くこともなかった第三王子は、オンポロ屋敷の一室で愛しい恋人を抱き寄せると自信満々にその耳元で囁いた。
「あの魔女に毒を盛ろう」
「えっ⁈ ボニータを殺すのですか?」
驚いて問う男爵令嬢に、クラウスは首を横に振った。
「いや、違う」
クラウスは小さな小瓶を2つ胸元から出すと、粗末なテーブルの上に並べた。
「私が王宮を追い出される直前に、母上から頂いたものだ。こちらの瓶に入っているピンク色のが毒、そしてこちらの瓶に入っている青いのが毒消しだ」
「まぁ……」
男爵令嬢はテーブルの側でみをかがめ、小瓶をしげしげと眺めた。
クラウスはピンク色の瓶に右手の人差し指を置いた。
「ボニータに、まず毒を飲ませ……」
次に青い液体の入った瓶に右手の人差し指を置きなおした。
「そして毒消しを使って助ける」
「まぁ」
男爵令嬢は大きく息を呑み、赤い瞳のはまった目を大きく見開いた。
そして、表情をキラキラと輝かせて言う。
「魔女の命を救って、恩人となるのですね」
「そうだ。そうやって恩を売り、ボニータを私の良いように動かせる駒にするのさ」
「クラウスさま、悪賢い~。素敵~」
男爵令嬢は手を叩きながらキャッキャッとはしゃぎながら、クラウスをうっとりと見つめた。
「ふふ、照れるなぁ」
だらしなくニヤつくクラウスに、男爵令嬢は問いかけた。
「でも、毒はどうやって飲ませるのですか?」
「そこでキミの出番だよ、レイラ」
「私、ですか?」
クラウスの言葉にキョトンとした表情を浮かべた男爵令嬢は、小首を傾げて彼を見上げた。
ピンク色の髪がサラサラと音を立てて左に流れて落ちる。
ボニータのくちゃくちゃに絡まっているくせの強い紫の髪とはまるで違う。
彼は恋人のサラサラの髪やソバカスのない肌、賢すぎないところが大好きだった。
(ボニータとは大違いだ)
クラウスはニッコリと笑みを浮かべて、愛しい恋人の前にピンク色の小瓶を差し出すと、こう告げた。
「この毒をボニータに盛ってくれないか?」
「ボニータに……え? どうやって?」
男爵令嬢は手渡されたピンク色の小瓶を受け取ってまじまじと見つめた。
「やり方は任せるよ。ボニータは森の中にある屋敷へ帰ったけど、そこまで転移で連れて行ってくれる魔法士は確保した」
「まぁ……どうしましょう」
小瓶を見つめて何かを考えているらしき男爵令嬢は、上の空のつぶやきのような返事をした。
「なに、簡単さ。この液体をボニータに飲ませればいいだけだ」
クラウスの頭には、敵とも言える男爵令嬢から受け取った飲み物をボニータが拒否するという考えすらないようだ。
そのことはレイラにもわかっていた。
愛しいクラウスは、頭が良くない。
だが、彼女の頭には既に計略が浮かんでいた。
「ねぇ、クラウスさま。この毒は、食べ物に混ぜても効果があるのかしら?」
「ああ。熱が加わってもダメになったりしない毒だと聞いている」
「だったら……」
レイラは愛しくも愚かな元第三王子の耳元で、自分の計画を囁いた。
それからしばらくの後。
男爵令嬢の姿は森にあった。
魔女の屋敷の前で、ブォーンブォーンという騒々しい音と共に立っていた。
手には大きなバスケット。
その中にはバターをたっぷり使ったパイや甘い香りのカップケーキ、カラフルなアイシングで飾られたクッキーなどが詰まっている。
男爵令嬢は大きな声でボニータに呼び掛けた。
「ボニータァ~! 森の魔女さぁ~ん!」
「何しに来た、男爵令嬢!」
ボニータは屋敷の窓から外を見て叫んだ。
「私ぃぃぃ、アナタにおわびがしたくてぇぇぇぇぇ!」
「詫びなど要らんっ!」
静かな森の中をブォーンブォーンという音と、二人の大声が響き渡る。
魔法士は両手で耳をふさぎながら男爵令嬢の横に立っていた。
「だってぇぇぇぇぇぇ、私ぃぃぃ、素敵なぁぁぁぁ、クラウス様をぉぉぉ、アナタからぁぁぁぁ、うばっちゃってぇぇぇぇ」
「アレのどこが素敵なんだボケェ! かまわんっ! のしつけてくれてやるっ!」
男爵令嬢はわざとらしい泣くそぶりを見せながら叫ぶ。
「それじゃぁぁぁぁぁ私の気がぁぁぁぁすまないのぉぉぉぉ」
「もうっ! うるさいっ! 早く帰れっ!」
お菓子のたっぷり詰まったバスケットを男爵令嬢はその場に置いた。
「お詫びの品をぉぉおぉ、ココにぃぃぃぃ置いていくからぁぁぁ、受け取ってえぇぇぇ!」
男爵令嬢は見え透いた泣く芝居を続けながら、魔法士と共に転移魔法陣の中へと消えていった。
「一体、なんだったんだ」
屋敷から出てきたボニータは、バスケットの中をのぞいた。
「ふんっ。なによ、こんなもの」
そこには王宮では珍しくもないが、今となってはボニータが手に入れにくい食べ物の数々が詰まっていた。
甘いお菓子は大好きだ。
捨ててしまうのは惜しい。
ボニータはちょっとだけ悩む素振りを見せた後、自分に言い聞かせるようにつぶやく。
「ん……あの女からだと思いとムカつくけど、食べ物に罪はないし……腹痛の薬はもちろん毒消しの薬もあるから、まぁいいか」
ボニータは草の上に置かれていたバスケットを持ちあげると、それをもって屋敷の中へと戻っていった。
それを浅略と呼ぶ。
戦略でもなく、策略でもなく、浅くて思慮が足りない甘々な考えの上に立てられた作戦など、戦いを始める前から結果は見えている。
だが第三王子だったクラウスには、知恵もなければ力もなかった。
あるのは、甘い声でしなだれかかる男爵令嬢との間にある甘々な関係だけだ。
「クラウスさまぁ~。私たち、どうすればよいのでしょうね?」
「そうだなぁ……」
男爵位を与えられて王宮を追い出されたクラウスは、小さな屋敷に移り住んだ。
王宮とは比べ物にならないほど粗末な屋敷ではあるが、男爵令嬢である恋人とは身分も釣り合うから問題はない。
が、金も力もないのでは生活が成り立たない。
領地を与えられたといっても、暮らしていくのがやっとの財政状態だ。
使用人も満足に雇えない。
こんな状況では、愛しい恋人との結婚もままならないという状況である。
だが――――
「私に良い作戦がある」
良いと悪いの判断が正しくできれば元が付くこともなかった第三王子は、オンポロ屋敷の一室で愛しい恋人を抱き寄せると自信満々にその耳元で囁いた。
「あの魔女に毒を盛ろう」
「えっ⁈ ボニータを殺すのですか?」
驚いて問う男爵令嬢に、クラウスは首を横に振った。
「いや、違う」
クラウスは小さな小瓶を2つ胸元から出すと、粗末なテーブルの上に並べた。
「私が王宮を追い出される直前に、母上から頂いたものだ。こちらの瓶に入っているピンク色のが毒、そしてこちらの瓶に入っている青いのが毒消しだ」
「まぁ……」
男爵令嬢はテーブルの側でみをかがめ、小瓶をしげしげと眺めた。
クラウスはピンク色の瓶に右手の人差し指を置いた。
「ボニータに、まず毒を飲ませ……」
次に青い液体の入った瓶に右手の人差し指を置きなおした。
「そして毒消しを使って助ける」
「まぁ」
男爵令嬢は大きく息を呑み、赤い瞳のはまった目を大きく見開いた。
そして、表情をキラキラと輝かせて言う。
「魔女の命を救って、恩人となるのですね」
「そうだ。そうやって恩を売り、ボニータを私の良いように動かせる駒にするのさ」
「クラウスさま、悪賢い~。素敵~」
男爵令嬢は手を叩きながらキャッキャッとはしゃぎながら、クラウスをうっとりと見つめた。
「ふふ、照れるなぁ」
だらしなくニヤつくクラウスに、男爵令嬢は問いかけた。
「でも、毒はどうやって飲ませるのですか?」
「そこでキミの出番だよ、レイラ」
「私、ですか?」
クラウスの言葉にキョトンとした表情を浮かべた男爵令嬢は、小首を傾げて彼を見上げた。
ピンク色の髪がサラサラと音を立てて左に流れて落ちる。
ボニータのくちゃくちゃに絡まっているくせの強い紫の髪とはまるで違う。
彼は恋人のサラサラの髪やソバカスのない肌、賢すぎないところが大好きだった。
(ボニータとは大違いだ)
クラウスはニッコリと笑みを浮かべて、愛しい恋人の前にピンク色の小瓶を差し出すと、こう告げた。
「この毒をボニータに盛ってくれないか?」
「ボニータに……え? どうやって?」
男爵令嬢は手渡されたピンク色の小瓶を受け取ってまじまじと見つめた。
「やり方は任せるよ。ボニータは森の中にある屋敷へ帰ったけど、そこまで転移で連れて行ってくれる魔法士は確保した」
「まぁ……どうしましょう」
小瓶を見つめて何かを考えているらしき男爵令嬢は、上の空のつぶやきのような返事をした。
「なに、簡単さ。この液体をボニータに飲ませればいいだけだ」
クラウスの頭には、敵とも言える男爵令嬢から受け取った飲み物をボニータが拒否するという考えすらないようだ。
そのことはレイラにもわかっていた。
愛しいクラウスは、頭が良くない。
だが、彼女の頭には既に計略が浮かんでいた。
「ねぇ、クラウスさま。この毒は、食べ物に混ぜても効果があるのかしら?」
「ああ。熱が加わってもダメになったりしない毒だと聞いている」
「だったら……」
レイラは愛しくも愚かな元第三王子の耳元で、自分の計画を囁いた。
それからしばらくの後。
男爵令嬢の姿は森にあった。
魔女の屋敷の前で、ブォーンブォーンという騒々しい音と共に立っていた。
手には大きなバスケット。
その中にはバターをたっぷり使ったパイや甘い香りのカップケーキ、カラフルなアイシングで飾られたクッキーなどが詰まっている。
男爵令嬢は大きな声でボニータに呼び掛けた。
「ボニータァ~! 森の魔女さぁ~ん!」
「何しに来た、男爵令嬢!」
ボニータは屋敷の窓から外を見て叫んだ。
「私ぃぃぃ、アナタにおわびがしたくてぇぇぇぇぇ!」
「詫びなど要らんっ!」
静かな森の中をブォーンブォーンという音と、二人の大声が響き渡る。
魔法士は両手で耳をふさぎながら男爵令嬢の横に立っていた。
「だってぇぇぇぇぇぇ、私ぃぃぃ、素敵なぁぁぁぁ、クラウス様をぉぉぉ、アナタからぁぁぁぁ、うばっちゃってぇぇぇぇ」
「アレのどこが素敵なんだボケェ! かまわんっ! のしつけてくれてやるっ!」
男爵令嬢はわざとらしい泣くそぶりを見せながら叫ぶ。
「それじゃぁぁぁぁぁ私の気がぁぁぁぁすまないのぉぉぉぉ」
「もうっ! うるさいっ! 早く帰れっ!」
お菓子のたっぷり詰まったバスケットを男爵令嬢はその場に置いた。
「お詫びの品をぉぉおぉ、ココにぃぃぃぃ置いていくからぁぁぁ、受け取ってえぇぇぇ!」
男爵令嬢は見え透いた泣く芝居を続けながら、魔法士と共に転移魔法陣の中へと消えていった。
「一体、なんだったんだ」
屋敷から出てきたボニータは、バスケットの中をのぞいた。
「ふんっ。なによ、こんなもの」
そこには王宮では珍しくもないが、今となってはボニータが手に入れにくい食べ物の数々が詰まっていた。
甘いお菓子は大好きだ。
捨ててしまうのは惜しい。
ボニータはちょっとだけ悩む素振りを見せた後、自分に言い聞かせるようにつぶやく。
「ん……あの女からだと思いとムカつくけど、食べ物に罪はないし……腹痛の薬はもちろん毒消しの薬もあるから、まぁいいか」
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