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不覚! 魔女倒れる!
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王宮での暮らしは退屈で窮屈。
そんな中でボニータの生活に色を添えてくれていたのは――――
「わー、アップルパイだぁ。表面つやつやで、この網目が絶妙に食欲をそそる~。カップケーキもきつね色にこんがり焼けてて美味しそう。アイシングもピンクにブルーとカラフルねー。カラフルだと、かえってシンプルな白いのが美味しそうに見えるのってなんでだろ? フィナンシェにマドレーヌにクッキー……あ、マシュマロもあるっ。甘い物最高っ!」
甘いお菓子だ。
王宮での食事は美味しくて、唯一の楽しみだったといって言っていい。
なかでもボニータが気に入っていたのは、甘いお菓子だった。
ボニータは、ホクホク顔でバスケットを室内に持ち込んだ。
そして男爵令嬢の置いていったバスケットの中身をテーブルの上に並べ、ひとつひとつ確認しながらはしゃいでいた。
「あぁ、この甘い匂いがたまらんっ。砂糖もバターも高級品の匂いがする。男爵令嬢は正直、好きでも嫌いでもないけど……お菓子は大好きっ」
森に居ても、材料そのものは手に入るだろう。
しかし、森の屋敷では満足に料理を作ることはできないだろう。
「そもそも料理なんて習ってこなかったし。師匠は何でもシチューにしちゃう派だったからなぁ。ここでお菓子なんて作れないから、買ってくるしかないなと思ってたけど……まさかプレゼントして貰えるとは」
ボニータは紅茶を淹れ、その横に腹痛の薬と毒消しを並べた。
「食べ物に罪はないし、油断しすぎなきゃ大丈夫でしょ」
並べたお菓子をしげしげと見比べて、どれから食べるかボニータは悩んだ。
「悩むのも楽しみのひとつだよね。んー、どれからいこうかな。残ったのは魔法収納庫に入れとけば日持ちするし。クッキーやマドレーヌなんかは、もともと日持ちがするもんね。やっぱりアップルパイからかなぁ~」
アップルパイはホールで入っていた。
今日食べる分をナイフで切り分ける。
切った時の感触でボニータは分かった。
コレは当たりのアップルパイだ。
ボニータはニコニコしながらアップルパイを白い皿に盛った。
アップルパイにはリンゴがゴロゴロ入っていて、シナモンの良い香りがした。
「これは美味しいやつ」
ボニータは嬉々としてアップルパイにフォークを入れた。
サクッとした手応えと共に一口分のアップルパイが切り分けられる。
「いっただきまーす」
アップルパイを口にしたボニータは全身を震えさせた。
「うっ……うまいッ!」
震えさせて、喜びを表現した。
リンゴはしっかり火が通っているのに煮崩れしてなくて食べ応えがある。
ジャムではなく、リンゴを食べてますよ、というのがはっきりとわかるのだ。
酸味の強いリンゴにあまぁ~いカスタードクリームが合う。
パイ生地もサクサクしていて、高級なバターの味がする。
「うまぁ~。もう一口」
サクッとアップルパイを一口食べては震え。
「あぁっ、紅茶との組み合わせも最高」
紅茶を一口飲んでは震え。
感動しながら食べ進めているうちに気付く。
「あっ……コレ、ヤバいやつだ……」
体がしびれて来た。
コレは毒だ。
しかし、気付いたときには既に遅く、あえなく魔女は倒れていた。
椅子から転がり落ちた魔女は、床に転がってあっという間に意識を失ったのだ。
腹痛の薬も、毒消しも、飲む暇すらない。
(事前に飲んでおくべきだったか……)
倒れる瞬間にボニータは薄っすらと思ったが、その意識もすぐに消えてなくなっていく。
それだけ毒は強く、ボニータは油断していたのだ。
ボニータは、自分が毒を盛られたってたいしたことにはならないと、自分の薬でなんとかなると慢心していた。
その慢心の招いた結果は、思いのほか深刻だった。
最悪なことに、毒は魔女の既にかけた魔法にまで作用したのだ。
既にかけた魔法のなかには、重要なものも混ざっている。
ボニータの知らぬところで、瘴気から国をしっかり守っていた結界にほろびが生じはじめていた。
そんな中でボニータの生活に色を添えてくれていたのは――――
「わー、アップルパイだぁ。表面つやつやで、この網目が絶妙に食欲をそそる~。カップケーキもきつね色にこんがり焼けてて美味しそう。アイシングもピンクにブルーとカラフルねー。カラフルだと、かえってシンプルな白いのが美味しそうに見えるのってなんでだろ? フィナンシェにマドレーヌにクッキー……あ、マシュマロもあるっ。甘い物最高っ!」
甘いお菓子だ。
王宮での食事は美味しくて、唯一の楽しみだったといって言っていい。
なかでもボニータが気に入っていたのは、甘いお菓子だった。
ボニータは、ホクホク顔でバスケットを室内に持ち込んだ。
そして男爵令嬢の置いていったバスケットの中身をテーブルの上に並べ、ひとつひとつ確認しながらはしゃいでいた。
「あぁ、この甘い匂いがたまらんっ。砂糖もバターも高級品の匂いがする。男爵令嬢は正直、好きでも嫌いでもないけど……お菓子は大好きっ」
森に居ても、材料そのものは手に入るだろう。
しかし、森の屋敷では満足に料理を作ることはできないだろう。
「そもそも料理なんて習ってこなかったし。師匠は何でもシチューにしちゃう派だったからなぁ。ここでお菓子なんて作れないから、買ってくるしかないなと思ってたけど……まさかプレゼントして貰えるとは」
ボニータは紅茶を淹れ、その横に腹痛の薬と毒消しを並べた。
「食べ物に罪はないし、油断しすぎなきゃ大丈夫でしょ」
並べたお菓子をしげしげと見比べて、どれから食べるかボニータは悩んだ。
「悩むのも楽しみのひとつだよね。んー、どれからいこうかな。残ったのは魔法収納庫に入れとけば日持ちするし。クッキーやマドレーヌなんかは、もともと日持ちがするもんね。やっぱりアップルパイからかなぁ~」
アップルパイはホールで入っていた。
今日食べる分をナイフで切り分ける。
切った時の感触でボニータは分かった。
コレは当たりのアップルパイだ。
ボニータはニコニコしながらアップルパイを白い皿に盛った。
アップルパイにはリンゴがゴロゴロ入っていて、シナモンの良い香りがした。
「これは美味しいやつ」
ボニータは嬉々としてアップルパイにフォークを入れた。
サクッとした手応えと共に一口分のアップルパイが切り分けられる。
「いっただきまーす」
アップルパイを口にしたボニータは全身を震えさせた。
「うっ……うまいッ!」
震えさせて、喜びを表現した。
リンゴはしっかり火が通っているのに煮崩れしてなくて食べ応えがある。
ジャムではなく、リンゴを食べてますよ、というのがはっきりとわかるのだ。
酸味の強いリンゴにあまぁ~いカスタードクリームが合う。
パイ生地もサクサクしていて、高級なバターの味がする。
「うまぁ~。もう一口」
サクッとアップルパイを一口食べては震え。
「あぁっ、紅茶との組み合わせも最高」
紅茶を一口飲んでは震え。
感動しながら食べ進めているうちに気付く。
「あっ……コレ、ヤバいやつだ……」
体がしびれて来た。
コレは毒だ。
しかし、気付いたときには既に遅く、あえなく魔女は倒れていた。
椅子から転がり落ちた魔女は、床に転がってあっという間に意識を失ったのだ。
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倒れる瞬間にボニータは薄っすらと思ったが、その意識もすぐに消えてなくなっていく。
それだけ毒は強く、ボニータは油断していたのだ。
ボニータは、自分が毒を盛られたってたいしたことにはならないと、自分の薬でなんとかなると慢心していた。
その慢心の招いた結果は、思いのほか深刻だった。
最悪なことに、毒は魔女の既にかけた魔法にまで作用したのだ。
既にかけた魔法のなかには、重要なものも混ざっている。
ボニータの知らぬところで、瘴気から国をしっかり守っていた結界にほろびが生じはじめていた。
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