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キーワードは『あこがれ』
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アーデルハイドは悩んでいた。
今日、王立学園で出された宿題が「あこがれ」についてだったからである。
彼女は膝を抱えて庭に座り、揺れるリンゴの実を眺めながら考えた。
アーデルハイドは七歳の侯爵令嬢である。
「公爵令嬢だとノブレス・オブリージュが半端なくてシンドイし、伯爵令嬢だと地位が上の令嬢の顔色を窺わなきゃいけなくてシンドイ。侯爵令嬢って丁度いいのでは?」
実際、王立学園での伯爵令嬢の扱いはエグイ。
公爵令嬢は取り巻きを引き連れてホホホッと高笑いしているが、自分についてくる人達への気遣いくらいしなければザマァされる。
とてもメンドクサイとアーデルハイドは思った。
「見た目も……私はこのくらいでいいな?」
アーデルハイドは整った顔をしている。
金色の長い髪はメイドたちのお手入れによりキラキラであるし、青い瞳のはまった目は大きなアーモンド形だ。
ちなみにまつ毛は金色で目立たないもののバサバサである。
貴族女性は幼くても、美しいドレスやキラキラした宝石が好きだが、アーデルハイドはそれらを欲しいと思ったことはない。
「ドレスは嫌いだから乗馬服を着てるし」
アーデルハイドのドレス嫌いは社交界でも有名だ。
幼いこともあるし何よりも似合うので、アーデルハイドが男装していても、誰も、何も言わない。
「何をしているのですかっ、アーデルハイドさま!」
教育係であるミス・ローハイドが、アーデルハイドを見つけて甲高い声を上げた。
「宿題をほったらかしてサボっているなんて、淑女にあるまじき行いっ! キチンとやらなければ、お困りになるのはアーデルハイドさまご自身なのですよ⁉」
アーデルハイドはチロンとミス・ローハイドを見た。
「ん……代わりにやっといてよ、ミス・ローハイド」
「ダメに決まっているではありませんかっ。馬鹿なことをおっしゃってないで、さっさと宿題をしてくださいましっ」
「ちぇっ」
アーデルハイドは不満げに口を尖らせながらも立ち上がり、パンパンと両手で尻についた汚れを払った。
そしてなんとなく右手のひらを見た。
今も変わらずそこにあるキラキラした星印は、トリの降臨以降、アーデルハイドの望みを叶え続けた。
アーデルハイドの人生にとって「あこがれ」とは、求めるものではなく実現していくものだ。
しかしそれをそのまま書いたら、妬みや嫉妬を買うのは同然のことだろう。
「人生って難しいなぁ……」
アーデルハイドは呟いた。
そして自分の前を歩く、たっぷり不満をもっていて「あこがれ」ているものが沢山ありそうなミス・ローハイドを、人生で初めて羨ましいと思った。
今日、王立学園で出された宿題が「あこがれ」についてだったからである。
彼女は膝を抱えて庭に座り、揺れるリンゴの実を眺めながら考えた。
アーデルハイドは七歳の侯爵令嬢である。
「公爵令嬢だとノブレス・オブリージュが半端なくてシンドイし、伯爵令嬢だと地位が上の令嬢の顔色を窺わなきゃいけなくてシンドイ。侯爵令嬢って丁度いいのでは?」
実際、王立学園での伯爵令嬢の扱いはエグイ。
公爵令嬢は取り巻きを引き連れてホホホッと高笑いしているが、自分についてくる人達への気遣いくらいしなければザマァされる。
とてもメンドクサイとアーデルハイドは思った。
「見た目も……私はこのくらいでいいな?」
アーデルハイドは整った顔をしている。
金色の長い髪はメイドたちのお手入れによりキラキラであるし、青い瞳のはまった目は大きなアーモンド形だ。
ちなみにまつ毛は金色で目立たないもののバサバサである。
貴族女性は幼くても、美しいドレスやキラキラした宝石が好きだが、アーデルハイドはそれらを欲しいと思ったことはない。
「ドレスは嫌いだから乗馬服を着てるし」
アーデルハイドのドレス嫌いは社交界でも有名だ。
幼いこともあるし何よりも似合うので、アーデルハイドが男装していても、誰も、何も言わない。
「何をしているのですかっ、アーデルハイドさま!」
教育係であるミス・ローハイドが、アーデルハイドを見つけて甲高い声を上げた。
「宿題をほったらかしてサボっているなんて、淑女にあるまじき行いっ! キチンとやらなければ、お困りになるのはアーデルハイドさまご自身なのですよ⁉」
アーデルハイドはチロンとミス・ローハイドを見た。
「ん……代わりにやっといてよ、ミス・ローハイド」
「ダメに決まっているではありませんかっ。馬鹿なことをおっしゃってないで、さっさと宿題をしてくださいましっ」
「ちぇっ」
アーデルハイドは不満げに口を尖らせながらも立ち上がり、パンパンと両手で尻についた汚れを払った。
そしてなんとなく右手のひらを見た。
今も変わらずそこにあるキラキラした星印は、トリの降臨以降、アーデルハイドの望みを叶え続けた。
アーデルハイドの人生にとって「あこがれ」とは、求めるものではなく実現していくものだ。
しかしそれをそのまま書いたら、妬みや嫉妬を買うのは同然のことだろう。
「人生って難しいなぁ……」
アーデルハイドは呟いた。
そして自分の前を歩く、たっぷり不満をもっていて「あこがれ」ているものが沢山ありそうなミス・ローハイドを、人生で初めて羨ましいと思った。
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