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キーワードは『妖精』
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アーデルハイドは戸惑った。
『わたし、妖精さんなの』
そう名乗った生き物が、トリである。
トリの降臨である。
「えっと……アンタ誰?」
『見ての通り、妖精さんだよ? 見た目は賢く見えるフクロウの姿を採用しています』
「おい……神と見分けがつかん」
アーデルハイドがアーモンド形の目を吊り上げて抗議すると、トリは戸惑ったように首を傾げた。
可愛い。
アーデルハイドは、神を見た時とは違う胸のときめきを覚えた。
神を見た時には、あの胸肉美味しそう、とチラッと思ったことを思い出した。
いま目の前にいる妖精を名乗るトリさんは、フクロウの姿をしているが可愛い。
これは妖精さんということで正解なのだろうか?
アーデルハイドは悩んだ。
『あのね、それでね。いまね、妖精たちでお茶会をしているの。アーデルハイドが良い子なので、お招きしようと思って来たの。ねぇ、アーデルハイド。来ない?』
トリが首を反対側に傾げた。
可愛い。
この女の子たらしが。
アーデルハイドは心の中で毒づいた。
アーデルハイドは七歳。
乗馬服をこよなく愛する女の子だ。
同年代の女子たちが、ドレスだの宝石だのと騒ぎ立てるのをよそに、広大な侯爵家の庭を所せましと飛び回ることを日常としている。
ところがこのアーデルハイド。
可愛い物には目がない。
そんなアーデルハイドの前に、可愛い妖精のトリの降臨である。
しかもお茶会に誘われたのだ。
断る理由があろうか?
いや、ない。
「行くっ!」
遠くで教育係のミス・ローハイドが、アーデルハイドを呼ぶ声がしたが、そんなものは無視だ。
ミス・ローハイドは可愛くない。
アーデルハイドにとって、可愛いは優先されるものなのだ。
『では、わたしの背中に乗ってください』
あろうことか、妖精は自分の背に乗れという。
アーデルハイドは鼻血を吹きそうだった。
ヨチヨチとおぼつかない足取りで背中を向ける妖精。
「えっと……どうやって乗るの?」
フクロウ型の背中は広いが、どちらかというと縦型である。
サイズが大きければ跨がれるかもしれないが、妖精はアーデルハイドとさして大きさは変わらない。
『ん~、おんぶでいいですか?』
「承知したっ!」
アーデルハイドはペイと妖精の背中に飛びついた。
『あー……足は回されちゃうと翼が広げられません』
「あっ、ああ。すまない」
アーデルハイドは翼の上に回した足を解いた。
「んー……足も使わないと、腕だけだと不安定だ」
『それなら、翼を広げてから足でもつかまっててください』
「あ、そうかっ」
妖精が横に翼を広げると、アーデルハイドはその下を通すように足を回してギュッとつかまった。
『落ちないように気を付けてくださいねー』
「はーい」
元気に返事をしたアーデルハイドを乗せて、妖精は飛び立った。
「アーデルハイドさま⁉ アーデルハイドさま⁉」
ミス・ローハイドの頭上を飛んでいるのだが、彼女がアーデルハイドに気付くことはなかった。
『妖精は、普通の人間には見えないのです」
「そうなんだ。でも、わたしは人間だよ?」
『今のアーデルハイドは妖精と一体化しているから、人間から見えないの』
「そうなんだ」
妖精って便利だな。
アーデルハイドはそんなことを思いながら、ミス・ローハイドを置き去りにして妖精のお茶会へと向かった。
『わたし、妖精さんなの』
そう名乗った生き物が、トリである。
トリの降臨である。
「えっと……アンタ誰?」
『見ての通り、妖精さんだよ? 見た目は賢く見えるフクロウの姿を採用しています』
「おい……神と見分けがつかん」
アーデルハイドがアーモンド形の目を吊り上げて抗議すると、トリは戸惑ったように首を傾げた。
可愛い。
アーデルハイドは、神を見た時とは違う胸のときめきを覚えた。
神を見た時には、あの胸肉美味しそう、とチラッと思ったことを思い出した。
いま目の前にいる妖精を名乗るトリさんは、フクロウの姿をしているが可愛い。
これは妖精さんということで正解なのだろうか?
アーデルハイドは悩んだ。
『あのね、それでね。いまね、妖精たちでお茶会をしているの。アーデルハイドが良い子なので、お招きしようと思って来たの。ねぇ、アーデルハイド。来ない?』
トリが首を反対側に傾げた。
可愛い。
この女の子たらしが。
アーデルハイドは心の中で毒づいた。
アーデルハイドは七歳。
乗馬服をこよなく愛する女の子だ。
同年代の女子たちが、ドレスだの宝石だのと騒ぎ立てるのをよそに、広大な侯爵家の庭を所せましと飛び回ることを日常としている。
ところがこのアーデルハイド。
可愛い物には目がない。
そんなアーデルハイドの前に、可愛い妖精のトリの降臨である。
しかもお茶会に誘われたのだ。
断る理由があろうか?
いや、ない。
「行くっ!」
遠くで教育係のミス・ローハイドが、アーデルハイドを呼ぶ声がしたが、そんなものは無視だ。
ミス・ローハイドは可愛くない。
アーデルハイドにとって、可愛いは優先されるものなのだ。
『では、わたしの背中に乗ってください』
あろうことか、妖精は自分の背に乗れという。
アーデルハイドは鼻血を吹きそうだった。
ヨチヨチとおぼつかない足取りで背中を向ける妖精。
「えっと……どうやって乗るの?」
フクロウ型の背中は広いが、どちらかというと縦型である。
サイズが大きければ跨がれるかもしれないが、妖精はアーデルハイドとさして大きさは変わらない。
『ん~、おんぶでいいですか?』
「承知したっ!」
アーデルハイドはペイと妖精の背中に飛びついた。
『あー……足は回されちゃうと翼が広げられません』
「あっ、ああ。すまない」
アーデルハイドは翼の上に回した足を解いた。
「んー……足も使わないと、腕だけだと不安定だ」
『それなら、翼を広げてから足でもつかまっててください』
「あ、そうかっ」
妖精が横に翼を広げると、アーデルハイドはその下を通すように足を回してギュッとつかまった。
『落ちないように気を付けてくださいねー』
「はーい」
元気に返事をしたアーデルハイドを乗せて、妖精は飛び立った。
「アーデルハイドさま⁉ アーデルハイドさま⁉」
ミス・ローハイドの頭上を飛んでいるのだが、彼女がアーデルハイドに気付くことはなかった。
『妖精は、普通の人間には見えないのです」
「そうなんだ。でも、わたしは人間だよ?」
『今のアーデルハイドは妖精と一体化しているから、人間から見えないの』
「そうなんだ」
妖精って便利だな。
アーデルハイドはそんなことを思いながら、ミス・ローハイドを置き去りにして妖精のお茶会へと向かった。
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