チートな魔力を持て余す転生者のオレが召喚した勇者はロリなロボット生命体⁈ 宇宙魔族を撃退したら幼馴染とラブラブになれたので結果オーライです!

天田れおぽん

文字の大きさ
14 / 33

楽しいお部屋選び 2

しおりを挟む
 足元は動かないが、周囲がグルグル回ると目が回る。

「ちょっ……待って、待って家っ」

 真っ先に悲鳴を上げたのはアニカだ。

 アニカは三半規管が弱い。

 乗り物酔いもしやすいタイプだ。

 だから転移魔法陣も得意ではなくて、すぐに酔って気持ちが悪くなってしまう。

 そんな所も可愛い。

 今は自分で移動する分には平気になったが、他人の転移魔法陣で連れていかれるのはいまだ苦手らしい。

 そんなアニカに「ルドの転移なら平気」とか言われてしまったりしたらもう……。

 たまらねぇなぁって感じだか、オレはコミュ障なので必要最低限しか一緒に移動したことはない。

 一番長く一緒に転移魔法陣を使ったのは、地元から王都に出てきたときか。

 あの時は楽しかったなぁ――――

『アニカさま、私のことは、どうぞ気軽にライと呼んでください』

 家っ! オレの楽しい過去回想を遮るでないっ!

「あー……ライ? もうちょっと回転速度を下げてくれるかな?」

『はい、心得ましたアニカさま』

 家の言葉を合図にギュンギュン回って何が何やら分からない状態から、物の形がなんとか見えるくらいの回転速度に落ちていく。

「お家だぁ~」

 レイが何か知らんがキャッキャし始めた。

 ロボット生命体の動体視力をもってしても確認不可能な回転速度だったんかいっ。

『レイさま。これはお部屋ですよ』

「おへや?」

 唐突にロボット生命体への教育が始まったぞ。

『家とは人の住むための建物です。建物全体を家、その家の中を区切って作ったそれぞれその空間のことを部屋と呼びます。ですからこの屋敷の場合、家とはライのことになりますね』

『そうですよ、レイちゃん。お家は私です。お部屋というのは皆さんが寝る場所です』

「そうなんだー。なら、ワタシのお部屋はみちっぱただね?」

 違う~。みちっぱたは部屋じゃない~。

 教育成果でるどころか混乱を招きそう~。

「あ~、スピード落ちたら部屋の中が見えるようになったね」

 アニカが興味深げに現れては消える部屋の様子を眺めている。

『アニカさま。気になるお部屋があったら言ってください。アニカさまのお部屋も模様替えできますよ』

「そうなんだ~。どうしようかなぁ、今の部屋も気に入ってるし」

『ありがとうございます、アニカさま。嬉しいです』

 普通に会話してるけど、初めてだよね?

 今までは家の声を遮断してたから、アニカが一方的に要求だしたりしていただけだよね?

 アレ? オレの知らない間に意思疎通してた? くらい自然な会話が成立している。

「今までは私が命令するだけだったもんね。改めてよろしく、ライ」

『こちらこそ、よろしくお願いします。アニカさま』

 うん、やっぱり今までは会話なしだったようだ。

 アニカのコミュ力すげぇ。

 素晴らしい。好き。

 でもライとコミュニケーションとれてると思うとムカつくから、また会話できないようにしようかな。

 アニカは振り返るとコミュ力をレイに向けた。

「レイちゃんは、どんなお部屋がいいかな?」

「うんとね、うんとね……わかんない」

 アニカが次々と流れていく部屋を指さして聞くと、レイは首を傾げた。

「可愛いお部屋がいいかなぁ? レイちゃんみたいに可愛いお部屋」

「ワタシみたいに? レイちゃん、カワイイ?」

「うん、とっても可愛いよ」

 アニカの言葉に、レイが照れてモジモジしている。

 その間にも次から次へといろんなタイプの部屋が流れていった。

 家、少しは空気読んで部屋のサンプル出せよ。

 全部流していったら、決まるモノも決まらないだろ?

「そういえば、レイちゃんはウサギが好きなんだったけ?」

「うん。ウサギ、すき。ウサギのお家、カワイイ」

『こういうのかな?』

 シュルシュル流れていた部屋がトンッと止まった。

 そこに現れたのはウサギ小屋。

「あっ、ウサギだ! カワイイッ!」

 レイがぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。

 白いウサギも跳ねている。

 タミーさんの眉毛も跳ね上がる。

 ですよねぇ~。

 ウサギはカワイイですけど、ウサギ小屋を屋敷内に作るわけにもいかないですよねぇ~。

 現代ならともかく、魔法は使えても中世風の世界だから飼育セットとかありませんし。

 衛生面とか、臭いとか、難しい問題がいろいろとありますよねぇ~。

「あー、ダメダメ。それは部屋じゃなくて小屋だから」

 ウサギ小屋に飛び込んでいこうとするレイを、アニカが抱きしめるようにして止めた。
 
 アニカは腕の中にバタバタしているレイを閉じ込めたまま、天井を見上げて言った。

「ライ、ウサギのモチーフを使った部屋を出してみて」

『はい、承知しましたアニカさま』

 アニカの指示に従って、ライがウサギ模様を使った可愛い部屋をだし始めた。

「うわぁ……カワイイ」

 うんうん、レイの目がキラキラ輝いているよ。

 そうね、そういうことだよね。

 ウサギ小屋よりもウサギ模様を使った子供部屋の方が可愛いし、屋敷内にあっても安心安全。

 タミーさんもニッコリだ。

「ウサギ柄の白いレースのカーテンに、天蓋付きのベッドか。やるじゃない、ライ」

『ありがとうございます、アニカさま』

 褒められて家もまんざらではないようだ。

 ベッドの形がウサギの形だったり、窓枠の形がウサギだったり、壁一面がウサギ柄だったりとバラエティ豊かなラインナップでウサギモチーフの部屋が現れては消えた。

「えっとぉ……えっとぉ……」

 選択肢が多すぎてレイは戸惑っているようだ。

『どのお部屋も可愛くて素敵ですね、ライ。でも種類が多すぎてレイさまには決められないかもしれません』

『セツ、そうなのですか? でも部屋はひとつに決めなくても、日替わりで用意できますよ』

『あら、便利ですね』

『ふふ。なんといっても私は魔法の家ですから』

 以上、AIと魔法の家の会話をお届けしました。

 とかなんとか言っているうちに、レイの目が回り始めたようだ。

 ピンクと白の可愛らしい幼児体型ロボットが、フラフラしている。

「ああ、レイちゃんが目を回してるっ。幼児だから三半規管が弱いのかしら?」

 アニカが慌てているが、ロボット生命体にも三半規管があるのか?

 その辺はよくわからないな。

「それでしたら、今日はアニカさまが適当な部屋を決めて差し上げればよろしいのでは?」

 タミーさんが言う。

 ナイスアシストだ、タミーさん。
 
 さすがお手伝いさんだけのことはある。

「私の趣味で決めちゃうか……ライ、ちょっと止めて。ん~、この部屋はどうかな? レイちゃんは、この部屋好き?」

 アニカが選んだのは、白とピンクとウサギ柄でできた可愛らしい子供部屋だ。

 白い窓枠の上部にはウサギが飛び跳ねているような細工がついていて、白いレースのカーテンにもウサギが飛び跳ねている。

 壁紙は草木や花も描かれている白っぽいパステル調のもので、こちらは茶色っぽいウサギが跳ねている。

 ベッドは天蓋がついているけど普通の形をしている。

 柔らかそうな毛足の長い絨毯は淡いピンク色だ。

 所々に置かれている小物もウサギモチーフのもので、子供が乗って遊ぶタイプの木製おもちゃもウサギの形になっている。

「カワイイッ! レイちゃんスキ!」

「それはよかった」

 一応、部屋は決まったようだ。

 アニカは子供の扱いも上手いな。

 彼女と家庭を築いたらこんな感じの……。

 と想像したらボンッと火を吹いたように思考回路が焼き切れた。

「さぁさ、お部屋が決まったなら私はお食事の準備でもしましょうかね」

 タミーさんは終始ニコニコしている。

 なにげに強いなこの人。

 順応力たかっ。

「レイさまはお疲れでしょうから、少し昼寝なさったらいかがです? 起きたらどんな食べ物がお好きか、一緒に試してみましょうね」

「ん……ねる」

 レイは目元を丸みのある手を丸めてこすりながら、小さなベッドにゴロンと寝そべった。

 部屋の可愛さも相まって、まるでドールハウスみたいだ。

 オレたちは何となくウフフと笑いながらレイの部屋となった可愛らしい子供部屋を後にした。

 そして、タミーさんが子供部屋の白いドアを閉めるのを眺めていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...