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ほんのり暖かい
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フランドレアの夏はとにかく蒸し暑い。
人々は汗を流して、道端では影になっている部分で休む人々が沢山いる。
それでも商売への熱は冷めないのがブランドレアの住民だ。今日も家の外では、商品の宣伝に勤しむ人々で溢れかえっていた。
そのような中。レージュはというと――。
「うぅ……寒いです……」
ベッドの中でミノムシのようにかけ布にくるまっていた。
全身がガタガタ震えて寒くて仕方がない。それなのに夏特有の熱気が頬を撫で続けていた。
やけど治しのポーションを全身に浴びたせいだ。
ポーションの副作用による風邪なので伝染る心配はないが、ダーレンとリゼの前でくしゃみや咳を繰り返すわけにはいかないので、治るまで自室にこもることにしたのだ。
お店は臨時休業。できるだけ早く治して、再開したい。
それにしても自室のベッドを使うのは久しぶりだ。最近はずっとダーレンの部屋で寝ているせいで、自室に戻る機会も少ない。
「くちゅん」
また一つくしゃみをする。びっくりしたのか、窓際のくぼんだ部分で眠っていたマシュが飛び上がって、そのまま地面に落ちた。
「マシュちゃん。大丈夫ですか?」
かけ布から半分体を出して、マシュに話しかけると、部屋の扉が開く。
「猫なんだから少しぐらい高い場所から落ちでも大丈夫だろ」
部屋に入ってきたのは皿を持ったダーレンであった。
皿の中身を見た瞬間、驚きのあまり言葉を失う。
「そのお皿に乗っているものは……?」
「あぁ、これか? 俺が作った」
星座が描かれたオシャレな皿の上にカットされたリンゴがのっている。ただのカットリンゴではない。
もはやアート作品と呼ぶべきレベルのものだ。
八枚の花弁を持つ花に、葉脈のある葉。見事な翼の生えた鶴が真ん中で堂々と、こちらを見あげている。
「凄すぎますよ。レストランで出せるレベルの作品ではないですか」
「作品だなんて大袈裟な」
ぜんぜん大袈裟じゃありませんから。
ふと、以前作った具材が不揃いのポトフを思い出した。
なんだ。ダーレンの方が包丁さばきが上手いではないか。
ダーレンはベッド脇にあるサイドテーブルに皿を置いて、自身は机の前にある椅子を引っ張り、レージュの横たわっているベッドの隣に座った。
「体調は?」
「寒気とくしゃみが少し。朝よりは良くなりましたが、まだお店は再開できそうにないです」
「そうか」
レージュが体を起こしてダーレンの手に触れようとすると、そっと抱きしめられた。彼の髪が頬に触れ、頭を撫でられる。
寒くて、寒くて仕方がないのに、全身へほんのり温かさが巡る。
「ダーレン様の手、暖かいです……」
「良かった。また風邪が治ったらレージュに見せたいものがあるんだ」
「サプライズでしょうか……?」
ダーレンがニヤリと笑いながら見下ろす。窓からさしこむ陽光に照らされた彼は、とても美しかった。
「そうだ、サプライズだ。風邪が治るまで見せてやることはできない。だから風邪なんてさっさと治せ」
「はいッ!」
元気よく返答する。
二人の微笑ましい風景を、クローゼット上に寝床を変えたマシュが見守っていた。
人々は汗を流して、道端では影になっている部分で休む人々が沢山いる。
それでも商売への熱は冷めないのがブランドレアの住民だ。今日も家の外では、商品の宣伝に勤しむ人々で溢れかえっていた。
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「うぅ……寒いです……」
ベッドの中でミノムシのようにかけ布にくるまっていた。
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「あぁ、これか? 俺が作った」
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「作品だなんて大袈裟な」
ぜんぜん大袈裟じゃありませんから。
ふと、以前作った具材が不揃いのポトフを思い出した。
なんだ。ダーレンの方が包丁さばきが上手いではないか。
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「寒気とくしゃみが少し。朝よりは良くなりましたが、まだお店は再開できそうにないです」
「そうか」
レージュが体を起こしてダーレンの手に触れようとすると、そっと抱きしめられた。彼の髪が頬に触れ、頭を撫でられる。
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「ダーレン様の手、暖かいです……」
「良かった。また風邪が治ったらレージュに見せたいものがあるんだ」
「サプライズでしょうか……?」
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「そうだ、サプライズだ。風邪が治るまで見せてやることはできない。だから風邪なんてさっさと治せ」
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