「女のくせに強すぎて可愛げがない」と言われ婚約破棄された追放聖女は薬師にジョブチェンジします

紅城えりす☆VTuber

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ツガイってなんでしょうか?

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 だいたい風呂から出た後というものは、体がポカポカするものだが、今日ばかりはクシャミがでるほど体が冷えていた。

 うわぁー、お風呂の氷を消すのに時間がかかっちゃった。寒すぎる。

 タオルで濡れた神を拭きながら廊下に飾ってある絵画を見る。
 星空に照らされた川の絵は、近づくと水面の部分がキラキラと光った。高級品である精霊石の岩絵具が使ってある。

 ほかにも、この家には高価なものがチラホラ並んでいた。身一つで追放されたレージュとは違い、ダーレンはそれなりの財産を抱えて人界に来たのかもしれない。

「ずいぶんと長い風呂だったな」

 伏せていた顔を上げると、つまらなそうな表情を浮かべたダーレンが居た。

「ダーレン様ッ!」

 驚きのあまり大きな声で彼の名前を呼んでしまった。
 ダーレンは無表情のままレージュの手を握る。

「冷たいな。ちゃんと風呂入ったのか?」

「入りました」

「そのわりには体が冷えているが。次からは俺が体を洗ってやるべきか」

「いっ、いや。待ってください。私は子供ではないですから、お風呂は一人で入れます!」

「お前何歳だ?」

「二十歳です」

「なんだ、まだ二十か?」

 帝国での成人年齢は19歳だ。
 法律から見ても、もう私は大人だ。
 もしや、魔界だと成人年齢が違うのか?

「ダーレン様はおいくつなんですか?」

「今年で250」

「ひゃく、ごじゅう!?」

 空いた口が塞がらないレージュをダーレンが、ニヤケながら見つめる。

「人はすぐに死ぬからな。驚くのも無理はない」

 ダーレンはレージュの手を引き、廊下を歩き始めた。

「さっさと夕食とるそ。せっかく連れてきたのに、死なれたら困る」

「いや、死なれたらって……」

「お前は全身痩せてるからな。ずっと、ろくに飯も食べられていなかっただろう?」

 その通りだ。牢に入れられてから、栄養のある食事を与えられることは無かった。

 日を重ねるごとに全身がやせ衰え、傷だらけになっていったのだ。

「助けていただいたお礼はどのように返せば良いのでしょう……?」

「俺としてはお前がツガイになってくれれば、それで良い」

 ツガイ。そういえば彼が私をここに連れてきたときに放っていた言葉だ。

「先ほどからおっしゃっているツガイとはなんでしょう?」

「俺たち魔族が子孫を残すときに生殖する相手だ。ツガイは世界でたった一人。神に選ばれた運命の相手だ」

 生殖という言葉を聞いた途端――どきりと胸が高鳴る。
 驚きと、恐怖と、困惑が混じった感情が身を包んだが、不思議と嫌悪感は感じなかった。

「人間社会だと夫婦という呼び方をする関係だと祖国に居たごろ使用人から聞いたことがある」

「ですけど……おそらく、ダーレン様がイメージしていらっしゃるツガイと人間界の夫婦は少し違うものなのではないかと」

「どの辺が違う?」

「人間界では、その……子供を産んだりするのはある程度仲良くなってからなんですよ……」

「なるほど、分かった」

 ダーレンは片方の耳飾りを外した。

 銀色のチェーンに、深い蒼色の魔法石がついた綺麗な耳飾りだ。一目で高級品だと分かる。

「これをやる。持っとけ」

「はっ、はい。ありがとうございます」

「代わりに俺以外の男から装飾品は貰うな」

 レージュが貰った耳飾りをつけると、ダーレンに両手を握られる。

「ツガイからお前たちの言う夫婦になれるよう俺は努力する。不満なことがあればなんでも言え」

「私なんかで本当に良いのてしょうか……」

 産まれてから強すぎる魔法の才を与えられ、結局は力を制御できず家族はおろか国民の期待を答えられなかった私なんかが……。
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