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手加減って難しいですね
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「なんだお前は。俺たちとやる気か?」
「そちらも、やる気なら俺は全然構わないが?」
陽光に照らされたダーレンの髪はキラキラと輝いていて、皇子という身分にふさわしい出で立ちはどこか神々しかった。
ダーレンから放たれる威圧感に気圧されたのか、男たちは奥歯を噛み締めながら浮遊している男を睨んでいた。
手を出したくとも、下手に攻撃するべきではないと本能が判断したのだろう。
「俺から提案だ。本当に俺たちが魔力持ちかどうか確認しに来たなら、魔力を測定するための神器ぐらい持っているだろう?」
「当たり前じゃないか!」
男の一人が、手のひらサイズのクリスタルを取り出す。これは注がれた魔力の量に応じて色が変化する精霊石だ。
精霊石はかなりの高級品であるり、実物は初めて見た。
「ほら、これに魔力を注いでみろ」
男は宝石をリゼに渡した。
精霊石は魔力量に応じて、緑、黄色、青、赤、紫、白の順番に色が変化する。
リゼが言われた通り呪文を唱えて、魔力を精霊石に注ぐと、色は青と赤が混ざった色まで変化した。
色の変化としては真ん中ぐらいだが、魔術師の平均魔力量は黄色なので、かなり高い方である。
「次はお前だ」
次に精霊石が回ってきたのはレージュだった。
どっ、どうしよう。
たぶん、私が魔力を注いだら紫か白になると思うけど……あまりにも魔力量が多すぎて追放された聖女だってバレないかなぁ……。
助けを求めてダーレンの方を見たが「大丈夫だから」とでも言わんばかりに、ニッコリと微笑まれた。
「なんだぁ、お前は魔力がねぇのか?」
「いや、むしろ逆で……」
「つべこべ言ってないでさっさとやれ!」
「はっ、はい!」
レージュが慌てて魔力を注ぐと、精霊石は白い光を放つ。あまりにも光が強すぎたせいで、反射的に目を閉じてしまった。
男たちが「なんだこれは!」と困惑が混じった叫び声をあげた途端――。
パリンという音と共に精霊石が粉砕する。必然的に光も消え失せた。
「え、どういうことでしょうか?」
やってしまった!
またもや手加減に失敗してしまったのだ。
レージュが目を見開きながら困惑していると、トンっとダーレンが肩に手を置いた。
「お前の魔力量が多すぎて、安物の精霊石じゃ耐えられなくなったみたいだな」
「安物だと? こいつは二万リコもしたんだそ?」
「でも実際問題、壊れちまっただろ?」
得意げに笑うダーレン。
見るからにおかんむりな男たちは、彼を指さしながら大声をあげた。
「じゃあ、弁償しろ。安物でも俺たちにとっては貴重な品だ」
「ふーん、だったら俺はお前たちがレージュを娼館に売りつけようとしていたことを、役人に言いつけるけど?」
「はぁ、無駄だな。貴族様は俺たちのような平民の相手なんてしな……」
再び男たちの表情が強ばる。
理由はダーレンの手に持った品を見たからだ。
彼の手にあったのはブローチ。
銀色の縁に紅蓮の宝石がはめ込まれた品だ。
「竜紅石……」
男の一人が震える唇で言葉を放つ。
竜紅石ならレージュも聖女であったごろに、なんどか見たことがある。
最高級の魔法石と言われていて、上級貴族や皇族、一部の商人ぐらいしか所有できない。ゆえに古代より『権力の象徴』として扱われていた。
「もっ、申し訳ございませんでした。どうかお許しください!」
目前に並んだ屈強な男たちが、一斉に頭を下げて立ち去っていく。
仕方あるまい。
彼らはダーレンが人間の貴族でも、商人でもないことを知らないからだ。
「さぁて、虫も居なくなったことだし……」
ダーレンは少々不快そうな顔をしながらレージュの頬に触れた。
「レージュ、風呂入れ」
「どうしてでしょう?」
もしかして臭うのかしら?
慌てて服の匂いを嗅いでみたが、洗濯水に混ぜた香草の軽やかな香りしかしない。
「あいつら、お前に触っただろ。奴らの匂いがして不快だ」
「すごい。ダーレン様は鼻が良いのですね。まるで、い……いえ、なんでもありません」
「今、犬って言おうとしただろ?」
「申しわけございません。私のような出来損ないが失礼な真似を」
怒らせただろうか?
レージュは少々怯えた顔で、ダーレンを見上げたが、彼は怒るどころか優しげな表情で笑っていた。
「べつに良いよ」
頭をそっと撫でられる。
これだと、私が犬になってしまったような……。
「そちらも、やる気なら俺は全然構わないが?」
陽光に照らされたダーレンの髪はキラキラと輝いていて、皇子という身分にふさわしい出で立ちはどこか神々しかった。
ダーレンから放たれる威圧感に気圧されたのか、男たちは奥歯を噛み締めながら浮遊している男を睨んでいた。
手を出したくとも、下手に攻撃するべきではないと本能が判断したのだろう。
「俺から提案だ。本当に俺たちが魔力持ちかどうか確認しに来たなら、魔力を測定するための神器ぐらい持っているだろう?」
「当たり前じゃないか!」
男の一人が、手のひらサイズのクリスタルを取り出す。これは注がれた魔力の量に応じて色が変化する精霊石だ。
精霊石はかなりの高級品であるり、実物は初めて見た。
「ほら、これに魔力を注いでみろ」
男は宝石をリゼに渡した。
精霊石は魔力量に応じて、緑、黄色、青、赤、紫、白の順番に色が変化する。
リゼが言われた通り呪文を唱えて、魔力を精霊石に注ぐと、色は青と赤が混ざった色まで変化した。
色の変化としては真ん中ぐらいだが、魔術師の平均魔力量は黄色なので、かなり高い方である。
「次はお前だ」
次に精霊石が回ってきたのはレージュだった。
どっ、どうしよう。
たぶん、私が魔力を注いだら紫か白になると思うけど……あまりにも魔力量が多すぎて追放された聖女だってバレないかなぁ……。
助けを求めてダーレンの方を見たが「大丈夫だから」とでも言わんばかりに、ニッコリと微笑まれた。
「なんだぁ、お前は魔力がねぇのか?」
「いや、むしろ逆で……」
「つべこべ言ってないでさっさとやれ!」
「はっ、はい!」
レージュが慌てて魔力を注ぐと、精霊石は白い光を放つ。あまりにも光が強すぎたせいで、反射的に目を閉じてしまった。
男たちが「なんだこれは!」と困惑が混じった叫び声をあげた途端――。
パリンという音と共に精霊石が粉砕する。必然的に光も消え失せた。
「え、どういうことでしょうか?」
やってしまった!
またもや手加減に失敗してしまったのだ。
レージュが目を見開きながら困惑していると、トンっとダーレンが肩に手を置いた。
「お前の魔力量が多すぎて、安物の精霊石じゃ耐えられなくなったみたいだな」
「安物だと? こいつは二万リコもしたんだそ?」
「でも実際問題、壊れちまっただろ?」
得意げに笑うダーレン。
見るからにおかんむりな男たちは、彼を指さしながら大声をあげた。
「じゃあ、弁償しろ。安物でも俺たちにとっては貴重な品だ」
「ふーん、だったら俺はお前たちがレージュを娼館に売りつけようとしていたことを、役人に言いつけるけど?」
「はぁ、無駄だな。貴族様は俺たちのような平民の相手なんてしな……」
再び男たちの表情が強ばる。
理由はダーレンの手に持った品を見たからだ。
彼の手にあったのはブローチ。
銀色の縁に紅蓮の宝石がはめ込まれた品だ。
「竜紅石……」
男の一人が震える唇で言葉を放つ。
竜紅石ならレージュも聖女であったごろに、なんどか見たことがある。
最高級の魔法石と言われていて、上級貴族や皇族、一部の商人ぐらいしか所有できない。ゆえに古代より『権力の象徴』として扱われていた。
「もっ、申し訳ございませんでした。どうかお許しください!」
目前に並んだ屈強な男たちが、一斉に頭を下げて立ち去っていく。
仕方あるまい。
彼らはダーレンが人間の貴族でも、商人でもないことを知らないからだ。
「さぁて、虫も居なくなったことだし……」
ダーレンは少々不快そうな顔をしながらレージュの頬に触れた。
「レージュ、風呂入れ」
「どうしてでしょう?」
もしかして臭うのかしら?
慌てて服の匂いを嗅いでみたが、洗濯水に混ぜた香草の軽やかな香りしかしない。
「あいつら、お前に触っただろ。奴らの匂いがして不快だ」
「すごい。ダーレン様は鼻が良いのですね。まるで、い……いえ、なんでもありません」
「今、犬って言おうとしただろ?」
「申しわけございません。私のような出来損ないが失礼な真似を」
怒らせただろうか?
レージュは少々怯えた顔で、ダーレンを見上げたが、彼は怒るどころか優しげな表情で笑っていた。
「べつに良いよ」
頭をそっと撫でられる。
これだと、私が犬になってしまったような……。
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