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狙う者
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ある朝。アレンの元に意外な知らせが届いた。
「殿下、こちらをご覧ください」
「これは……」
いや、知らせというより、ある一枚の新聞記事というべきか。宰相であるファヴが持ってきた記事を見たアレンは目を見開きながら「そんな……まさか……」と声を漏らした。
それもそのはず身一つで国外追放されたはずのレージュが、綺麗な服を着て、薬師になって、よりにもよって『商業の街、フランドレアで一番優秀な薬師』の称号を手に入れていたのだ。
森の中で魔獣に襲われて死んだ可能性も考えていだか、写真の中で笑っているレージュは聖女であったごろよりも幸せそうであった。
かつて青白かった肌も今ではバラ色に染まってふっくらとしている。キラキラと輝く宝石がつい髪飾りなんてどこにもない、下ろした髪は、艶やかで美しかった。
ふと、レージュの隣に二人の人物が写っていることに気づく。一人は女で質素な黒いワンピースを着ている。もう一人は男だ。白い髪に青い毛が混じっていて、社交界に出れば確実に淑女たちからモテるであろう容姿を持ち合わせている。
この男は誰だ?
やけにレージュとの距離が近くないか?
なんだ、その満足気な顔は。
アレンは胸に手を当てながら顔を歪ませた。
胸が苦しい。僕は……悔しいのか?
「これで先代聖女の行方が掴めましたな。あの女を秘密裏に捕らえて我が国に連れ戻しましょう。抵抗されては面倒ですから、徹底的に痛めつけて屈服させるのです」
「それ以上、言うなッ!」
気づけばアレンは腹の底から湧き出た声を叫んでいた。
「レージュは傷つけるな」
「おや、殿下はあの女を醜いバケモノだと罵っていたではないですか。いまさら女に同情するつもりですか?」
「いや、違う……俺はただ、どのような形であれヴァルニアのために尽くしてくれる存在を痛めつけるような真似はするなと言いたいのだ」
これはただの言い訳だと、アレンは自覚していた。レージュが傷つくところを想像しただけで、胸が苦しくなる。
俺はどうしてしまったんだ……。
「元聖女の身柄をどう捕まえるかはともかく、この作戦は秘密裏に行う必要がありますな」
「工作員を使うしかあるまいな」
首をかしげるアレンに対してファヴは、はははと高笑いをした。
「それでしたら私に策がありますぞ。初めから口が無い者に女を捕まえさせれば良いのです。そうすれば、秘密が漏れる心配もないでしょう」
***
「あら、この子がレージュねぇ……」
「のほほんとした顔してて、見るだけで腹立つでしょ?」
レージュがニコニコと笑っている写真がのった新聞を見ていた人物は、ほかにもいた。イゼルマとリリアだ。
聖女のために用意された巨大な浴室。ロマネスク様式の広い部屋に、水面にはバラの花弁が浮いている。
イゼルマとリリアは足だけを浴槽に突っ込みながら、新聞を眺めていた。
「まぁ、お隣にいる人は……まさかねぇ」
「アンタの知り合いなの?」
「知っているわ。あたしの古い知人よ」
「ということはレージュと一緒にいる二人組も魔族?」
なによ。レージュも魔族から力を借りているじゃないの。
「ずいぶんと仲が良さそうね」
「ふふっ、そうね。レージュが彼の本性を見たら、きっと幻滅するでしょうねぇ……」
口元を歪ませるリリア。
イゼルマは「気に入らない」と言いながら、新聞を浴槽の中に投げ捨てた。
「殿下、こちらをご覧ください」
「これは……」
いや、知らせというより、ある一枚の新聞記事というべきか。宰相であるファヴが持ってきた記事を見たアレンは目を見開きながら「そんな……まさか……」と声を漏らした。
それもそのはず身一つで国外追放されたはずのレージュが、綺麗な服を着て、薬師になって、よりにもよって『商業の街、フランドレアで一番優秀な薬師』の称号を手に入れていたのだ。
森の中で魔獣に襲われて死んだ可能性も考えていだか、写真の中で笑っているレージュは聖女であったごろよりも幸せそうであった。
かつて青白かった肌も今ではバラ色に染まってふっくらとしている。キラキラと輝く宝石がつい髪飾りなんてどこにもない、下ろした髪は、艶やかで美しかった。
ふと、レージュの隣に二人の人物が写っていることに気づく。一人は女で質素な黒いワンピースを着ている。もう一人は男だ。白い髪に青い毛が混じっていて、社交界に出れば確実に淑女たちからモテるであろう容姿を持ち合わせている。
この男は誰だ?
やけにレージュとの距離が近くないか?
なんだ、その満足気な顔は。
アレンは胸に手を当てながら顔を歪ませた。
胸が苦しい。僕は……悔しいのか?
「これで先代聖女の行方が掴めましたな。あの女を秘密裏に捕らえて我が国に連れ戻しましょう。抵抗されては面倒ですから、徹底的に痛めつけて屈服させるのです」
「それ以上、言うなッ!」
気づけばアレンは腹の底から湧き出た声を叫んでいた。
「レージュは傷つけるな」
「おや、殿下はあの女を醜いバケモノだと罵っていたではないですか。いまさら女に同情するつもりですか?」
「いや、違う……俺はただ、どのような形であれヴァルニアのために尽くしてくれる存在を痛めつけるような真似はするなと言いたいのだ」
これはただの言い訳だと、アレンは自覚していた。レージュが傷つくところを想像しただけで、胸が苦しくなる。
俺はどうしてしまったんだ……。
「元聖女の身柄をどう捕まえるかはともかく、この作戦は秘密裏に行う必要がありますな」
「工作員を使うしかあるまいな」
首をかしげるアレンに対してファヴは、はははと高笑いをした。
「それでしたら私に策がありますぞ。初めから口が無い者に女を捕まえさせれば良いのです。そうすれば、秘密が漏れる心配もないでしょう」
***
「あら、この子がレージュねぇ……」
「のほほんとした顔してて、見るだけで腹立つでしょ?」
レージュがニコニコと笑っている写真がのった新聞を見ていた人物は、ほかにもいた。イゼルマとリリアだ。
聖女のために用意された巨大な浴室。ロマネスク様式の広い部屋に、水面にはバラの花弁が浮いている。
イゼルマとリリアは足だけを浴槽に突っ込みながら、新聞を眺めていた。
「まぁ、お隣にいる人は……まさかねぇ」
「アンタの知り合いなの?」
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「ということはレージュと一緒にいる二人組も魔族?」
なによ。レージュも魔族から力を借りているじゃないの。
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「ふふっ、そうね。レージュが彼の本性を見たら、きっと幻滅するでしょうねぇ……」
口元を歪ませるリリア。
イゼルマは「気に入らない」と言いながら、新聞を浴槽の中に投げ捨てた。
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