素質があると言われたサマナーの僕は、10歳になっても才能が開花しなかったので、辺境の村に派遣され、スローライフを送ることになった。

からとあき

文字の大きさ
11 / 30
駆け出し編

魔導歴781年5月3日 その5

しおりを挟む
 夕食を済ませた僕とダリアさんは、夜の空気に包まれながら村長の家へと向かった。
村長の家には大勢が集まれる大きな部屋があり、長いテーブルのまわりには椅子がずらりと並んでいる。
やがてニムロスさん、建築士のジョナサンさん、その息子のジョンソンさん、ジョナサンさんの奥さんピュラーさん、ジュンさん、僕、ダリアさん、そしてジガースさんが顔をそろえ、全員が席に着いたところで集会が始まった。
村長であるジガースさんが口火を切る。

「みんなよく集まってくれた。今日の議題は家畜召喚についてと、今後の村の方針、新入村者についてだ。まずは新入村者の上級鑑定士のダリアさんだ」

ダリアさんが立ち上がり、落ち着いた声で自己紹介をした。

「上級鑑定士のダリアだ。しばらくサマナー・リグの屋敷に専属鑑定士として世話になる予定で、サマナー・リグ以外からも鑑定を、まあ物にもよるが1回10レルクで受ける。よろしく頼む」

 その言葉が終わると、ジョナサンさんが手を叩き、ほかの皆も続いてダリアさんを歓迎する拍手を送った。
僕も手を叩き、ダリアさんの入村を喜んだ。
少し間を置いて、次の議題へうつる。

「次は家畜召喚についてだ。これについては、サマナー・リグから説明してもらおう」

「え?」

 突然振られて驚いたものの、今日の出来事を伝えればいいのだと自分に言い聞かせる。僕は立ち上がって皆に一礼した。

「今日、ダリアさんに鑑定してもらったところ、家畜召喚で召喚できるニワトリの数が増えていました。今までは、10羽だったのが12羽になっていました。今後も増える予定です」

 簡潔に今日の鑑定結果を報告した。

「あら。それは助かるわね」

 僕の言葉に場がざわつき、ピュラーさんが明るい声で喜びを表した。
その反応にほっとしつつ、ジガースさんが話を引き継ぐのを聞いた。

「そういうことで、ニワトリの配分を決めたいと思う。現在は、ジョナサン家に2羽、ニムロスさんに1羽、俺に1羽、サマナー・リグに1羽、残りはフォレストで10羽。ここからの配分で、現段階で2羽余るのだが、この2羽をフォレストに配分したいと思っている。その理由は、夏に向けて冒険者が増え食事の提供量を増やし、冒険者のレルクを村に落とさせたいからだ。いままでは冒険者の持ち込んだ物を安く調理していたが、それを改善したい」

 なるほど、と僕はうなずく。ジョナサンさんがジガースさんに賛同した。

「なるほど。うちはかまわないぜ。なあ母さん」

「ええ。かまいませんよ。3羽ほしいですが、2羽でも十分食べられえますからね」

 隣にいたピュラーさんが柔らかく答えた。
そのやり取りを聞きながら、僕は自分の取り分をどうするか考える。

「ありがとう。それで、次の13羽め以降についてなんだが、俺は1羽で十分だから他皆で分けてほしい」

そう告げるジガースさんに、ニムロスさんも同調する。

「私も1羽でいいわよ」

 二人がそう言うので、僕は少し考え込んだ。ダリアさんと僕との分をどうすべきか迷っていたのだ。
もしかしたら今後入居者が増えるかもしれない、僕が考えている横でジガースさんは続ける。

「なら、ジョナサン、ジュン、サマナー・リグで分けてくれ。補足として今後村民が増えたら、増えた分は優先してそちらに回していくこと、増えた分のレルクは今まで通りサマナー・リグに支払うので一度俺に集めるということを念頭に置いておいてくれ」

「わかった。」

 ジョナサンさんが承諾する。
続いてジュンさんが僕たちに目を向けた。

「今回、私達から2羽貰ったので、次はお二人で」

「うちは3羽あればいいから、先に1羽貰って次からは、ジュンとサマナー殿でわけたらいい」

「それでいいですか?」

 ジガースさんが改めて皆に問う。
僕は異存がなかったので、はっきりと答えた。

「それでおねがいします」

 こうして配分が決まったところで、ジガースさんが別の議題に進もうとした。

「では次の議題に」

 けれども僕は、思い出したことがあって慌てて声をあげた。

「ちょっと待ってください」

 ジガースさんが首をかしげる。

「なにか他にあったかな?」

 僕は先ほど思い出したことを伝えた。

「ニワトリについてなんですが、寿命が48時間で25時間に1個卵を産みます」

 その途端、周りから驚きの声が上がった。

「卵だと!?」

「卵!」

 僕は自分の報告でこんなに騒ぎになるとは思わず、肩をすくめる。

「それは知らなかった」

 ジガースさんがそう言い、僕は理由を説明した。

「あの後ニワトリ自体を見てもらって知りました」

「なるほど」

 とジガースさんがうなずく。それを受けて別の提案が飛び出した。

「なら卵を産んでから調理したほうがいいな」

「卵の寿命はわかりませんが」

 ダリアさんが少し心配そうに続ける。
するとピュラーさんが家庭の知恵を披露した。

「常温で卵は4日ぐらいもつわよ」

 僕は実験を申し出る。

「なら、卵が4日間消えないか実験して見ます」

「それはありがたい」

 ジガースさんが感謝を示す。

「卵が手に入れば色々なものがつくれるわ~。あの子たちも喜ぶわね」

 ピュラーさんは色々な卵料理を思い浮かべているのか目を輝かせた。
僕はさらに付け加えた。

「それと、家畜召喚をしていくと肉の質が上がるみたいです」

「確かに今日のは美味かったな」

 ジガースさんが確かめるように言った。

「ランクがどこまで上がるかわかりませんが、今はランク3です」

 僕はランクについての情報を共有する。

「そうか、そうなると値を上げたほうがいいな」

 それを聞いたジョンソンさんが値段の話を切り出した。

 「そうだな。出来高で値を変えないのは失礼だ」

 他の人も頷く。

「今、1羽2レルクだから、ランク5毎に3レルク増やすのはどうか?」

 ジガースさんが具体的な案を示した。

「俺はいいぜ、母さんはどうだ?」

 ジョナサンさんが奥さんの意見を求める。

「かまいませんよ、美味しい物にはそれなりの価値をつけないと」

 ピュラーさんが落ち着いた声で答えた。
ジュンさんも賛同する。

「私もいいです。冒険者に提供するときに金額を上げます」

 僕は補足した。

「ランクの調整もできます。あらかじめいってもらわないといけませんが、ランク5でレルクが上がるなら、ランク4で召喚とかもできます」

「それなら、持ち合わせのない冒険者もたすかります。ランクが5になった時に相談させてください」

 ジュンさんが前向きに返す。

「はい」

 僕はうなずき、この話もまとまったと思った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜

☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。 しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。 「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。 書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。 だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。 高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。 本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。 その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...