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第3章 公爵令嬢、みんなの胃袋を掴みます
16. 満足させるために
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賄いでナポリタンを出してた日の翌朝。
今日もマリエットは朝早くから準備を始め、料理長の補佐についていた。
朝の賄いは商人から仕入れたパンが出されることになっており、料理人の出番は無いものの、今夜はパーティーが開かれる予定で、その準備で大忙しだ。
昨日は厨房に多くても三人しか居なかったのに、今日は料理人全員が揃っている。
ちなみに、王宮仕えの料理人はマリエットを入れて七人で、そのうち女性はアンナとマリエットの二人だけ。
(王宮仕えの人は女性が多いはずだけれど、ここでは肩身が狭くなるわね……)
一体どんな料理をしてきたのか分からないが、男性の料理人は立派な体躯をしており、広いはずの厨房が窮屈になっている。
「マリエットさん、こっちの野菜も切って貰いたい!」
「分かりました!」
「アンナさんはこの肉を味付けまで頼む」
「マリエットさん、この味付けなんだが……」
そんな中でマリエットは矢継に指示を出され、一つ一つ確実にこなす。
昨夜の賄いで腕が認められたようで、初日の朝よりも任される仕事が多かったが、大量の賄いを用意した後だから苦ではない。
「――言われた通りに作りました!」
「早いな。もしかして、マリエットさんは出来る口か?」
「新人の私には分かりません……」
「ははっ、そりゃそうか。この感じ、将来が楽しみだ」
「ありがとうございます!」
「それじゃあ、次はこれを煮込んで欲しい」
「分かりました」
こうしてマリエット達は手分けして食事の用意を進め、一時間ほど経つと予定通り朝食を完成させることが出来た。
今日の朝食は鶏肉を使ったスープとサラダにふわふわのパンという、普段通りの組み合わせだ。
「味見、してみるか?」
「良いのですか?」
「味見も仕事だからな」
言われるままにスープを口に含むと、程よい塩味が広がる。
肉汁の味も活かされている上に、肉はとても柔らかい。一方で野菜は苦みが無いのはもちろんのこと、仄かな甘みと程よい歯応えがあった。
「……美味しいと思います。ですが、塩味が少し強すぎるかもしれません」
「どれどれ……。確かに少し濃いな。陛下は好まれるが、王妃殿下には少し薄めたものを用意しよう」
「一人一人の好みも把握しているのですか?」
グルース公爵家では料理人が自分たちの好みを把握していたことを思い出し、マリエットは問いかける。
「もちろん。陛下は濃い味を、王妃殿下も濃い方を好まれるが、陛下よりは薄い。テオドール王太子殿下は薄くても濃くても喜ばれるが、クロード第二王子殿下は陛下と同じで、フランシス第三王子殿下は薄味以外なら喜ばれる。カトリーヌ王女殿下は王太子殿下に好みが近い。他にも甘さ辛さも好みが分かれているから、場合によっては一人一人味付けを変えることも大切だ」
どうやら、料理長はマリエットが思っていた以上に細かく好みを把握しているらしい。
とても聞いただけでは覚えきれないものの、頭には入れておいた方が良いだろう。
「王家の皆様にお出しするのは、こんなに大変なのですね……」
「ああ、確かに大変だ。だが、その分喜んで頂けたときは嬉しいから、頑張れる」
「料理長、それでいつもダイニングを覗き見していたんですね」
「いや、反応を見て次に活かすという意味もある。というわけで、俺は今から様子を見にいってくる」
料理長の言っていることは一理あるとマリエットは思った。
けれど、一人一人の好みに合わせて味を変えることは手間がかかるため、全員に好まれる味付けを考えた方が良いのかもしれない。
全員に同じ味を出して、全員を満足させられれば……レシピスキルの使い手として自信にもなるはずだ。
(新人のうちは多少好みを外しても許されるはずよ。今はレシピスキルを信じましょう)
何が最善なのかはまだ分からないが、マリエットは新人という立場を利用することに決めた。
「よし、俺達は朝食を済ませて、今のうちにパーティーの用意をしよう」
「「はいっ!」」
今日もマリエットは朝早くから準備を始め、料理長の補佐についていた。
朝の賄いは商人から仕入れたパンが出されることになっており、料理人の出番は無いものの、今夜はパーティーが開かれる予定で、その準備で大忙しだ。
昨日は厨房に多くても三人しか居なかったのに、今日は料理人全員が揃っている。
ちなみに、王宮仕えの料理人はマリエットを入れて七人で、そのうち女性はアンナとマリエットの二人だけ。
(王宮仕えの人は女性が多いはずだけれど、ここでは肩身が狭くなるわね……)
一体どんな料理をしてきたのか分からないが、男性の料理人は立派な体躯をしており、広いはずの厨房が窮屈になっている。
「マリエットさん、こっちの野菜も切って貰いたい!」
「分かりました!」
「アンナさんはこの肉を味付けまで頼む」
「マリエットさん、この味付けなんだが……」
そんな中でマリエットは矢継に指示を出され、一つ一つ確実にこなす。
昨夜の賄いで腕が認められたようで、初日の朝よりも任される仕事が多かったが、大量の賄いを用意した後だから苦ではない。
「――言われた通りに作りました!」
「早いな。もしかして、マリエットさんは出来る口か?」
「新人の私には分かりません……」
「ははっ、そりゃそうか。この感じ、将来が楽しみだ」
「ありがとうございます!」
「それじゃあ、次はこれを煮込んで欲しい」
「分かりました」
こうしてマリエット達は手分けして食事の用意を進め、一時間ほど経つと予定通り朝食を完成させることが出来た。
今日の朝食は鶏肉を使ったスープとサラダにふわふわのパンという、普段通りの組み合わせだ。
「味見、してみるか?」
「良いのですか?」
「味見も仕事だからな」
言われるままにスープを口に含むと、程よい塩味が広がる。
肉汁の味も活かされている上に、肉はとても柔らかい。一方で野菜は苦みが無いのはもちろんのこと、仄かな甘みと程よい歯応えがあった。
「……美味しいと思います。ですが、塩味が少し強すぎるかもしれません」
「どれどれ……。確かに少し濃いな。陛下は好まれるが、王妃殿下には少し薄めたものを用意しよう」
「一人一人の好みも把握しているのですか?」
グルース公爵家では料理人が自分たちの好みを把握していたことを思い出し、マリエットは問いかける。
「もちろん。陛下は濃い味を、王妃殿下も濃い方を好まれるが、陛下よりは薄い。テオドール王太子殿下は薄くても濃くても喜ばれるが、クロード第二王子殿下は陛下と同じで、フランシス第三王子殿下は薄味以外なら喜ばれる。カトリーヌ王女殿下は王太子殿下に好みが近い。他にも甘さ辛さも好みが分かれているから、場合によっては一人一人味付けを変えることも大切だ」
どうやら、料理長はマリエットが思っていた以上に細かく好みを把握しているらしい。
とても聞いただけでは覚えきれないものの、頭には入れておいた方が良いだろう。
「王家の皆様にお出しするのは、こんなに大変なのですね……」
「ああ、確かに大変だ。だが、その分喜んで頂けたときは嬉しいから、頑張れる」
「料理長、それでいつもダイニングを覗き見していたんですね」
「いや、反応を見て次に活かすという意味もある。というわけで、俺は今から様子を見にいってくる」
料理長の言っていることは一理あるとマリエットは思った。
けれど、一人一人の好みに合わせて味を変えることは手間がかかるため、全員に好まれる味付けを考えた方が良いのかもしれない。
全員に同じ味を出して、全員を満足させられれば……レシピスキルの使い手として自信にもなるはずだ。
(新人のうちは多少好みを外しても許されるはずよ。今はレシピスキルを信じましょう)
何が最善なのかはまだ分からないが、マリエットは新人という立場を利用することに決めた。
「よし、俺達は朝食を済ませて、今のうちにパーティーの用意をしよう」
「「はいっ!」」
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