10 / 145
第5話:レックス殿下の誕生日パーティ
【10】レックス殿下の誕生日パーティ(2)
しおりを挟む
ホールに着いた俺とカタリーナは、少し離れた場所にあるテーブルで立食しながら、殿下とアリーシャを眺めていた。
「いいわね....。悪くない雰囲気よ!」
楽しそうに談笑する二人を見てほくそ笑むカタリーナ。
「はぁ。いつ見ても美しいお二人だわ。レックス殿下もアリーシャ様も、ハリウッドスター顔負けのルックスよね。あの二人の尊さはもはや人間国宝級よ!あの二人から生まれた子どもは、世界一の美男美女になるに違いないわ!」
コイツ、殿下だけじゃなくアリーシャに対しても、そんなことを思っていたのか。
「確かに、美しいお二人ではありますが.....」
「でしょ?絵画では表せないくらい輝いているお二人でしょ!」
別にそこまでは言っていない。
「ただ、ここからだと、お二人が何を話しているかわかりませんね。フォージー侯爵のように耳が良ければ聞こえるのかもしれませんが。」
「仕方ないわよ。これ以上近づいたら、気づかれちゃうわ。」
むしろあれだけガン見して、殿下達に気づかれていないのが不思議だ。
カタリーナが二人を眺めてうっとりしていると、案の定、殿下達がこちらに気づいた。
「あっ、目が合っちゃった!」
そりゃ、あれだけジロジロ見てたら、目が合うだろ。
こちらに気づいた二人は、俺達の方へと向かって歩いてくる。
「再びお会いできて光栄です、カタリーナ様。」
俺達と殿下達は、軽く挨拶をした。
「私達、ちょうどカタリーナ様のことを話していたところなんです。」
「えっ!私のことですか?」
「あぁ。カタリーナはいつも、天真爛漫で可愛いという話をしていたんだ。」
きっっっっっしょ!
歯の浮くような臭いセリフを平然と言う殿下に、思わず鳥肌が立つ。
いくら社交辞令とは言え、度が過ぎたお世辞は聞いてて胸焼けを起こしそうだ。
「そ、そんな、可愛いだなんて!お二人の美しさに比べたら私なんかその辺に生えている雑草に群がるアブラムシみたいなものです!」
カタリーナは茹で蛸のように顔を真っ赤にしながら、独特な言い回しで卑下する。
「フフッ。そういうところが可愛らしいよ。」
うわぁ。
.....もう、俺帰っていい?
するとそこに、使用人が飲み物を運びにきた。
黒くてプクプクと小さな泡を出す飲み物。
これは.....。
「コーラだ!」
カタリーナは、運ばれてきた飲み物を手に取って、グイッと飲み込んだ。
「この飲み物は、確かドーワ侯国で最近流行しているという噂の飲み物ですね。」
「泡が吹き出す飲み物だなんて、不思議だね。」
殿下とアリーシャも、目新しい飲み物に興味深々な様子で、一口飲んだ。
炭酸飲料ってこの世界じゃ珍しいのか?
思えば、この世界で炭酸飲料を見たのは、今日が初めてかもしれない。
口の中でシュワシュワする時の感覚は、結構クセになる。
俺は久しぶりのコーラに少しテンションが上がり、コーラを一気に飲み干した。
「っ!?」
初めて味わうその食感に、殿下とアリーシャは顔をしかめた。
「口の中が、パチパチする...!」
「空気が喉に詰まる感じがしますね。」
「炭酸飲料って、シュワシュワするから好き嫌い分かれますよね。」
戸惑いながら飲む殿下とアリーシャのリアクションは、初々しい感じがして面白い。
「そういえばカタリーナ様、フレイ様と親しげに話しておられましたが、どのようなご関係なのですか?」
「ただの顔見知りです。」
カタリーナが余計なことを言い出す前に、食い気味に俺が答えた。
ここで『思い人』だの何だの言って、殿下に誤解されて睨まれたくはない。
「『ただの顔見知り』って.....フレイくん、いくら何でも、それはちょっと寂しいわよ。
以前、ライトニング公爵邸へ挨拶に行った際に、彼と知り合いました。それ以来、ときどきライトニング邸へ遊びに行く仲です。」
ひとまずは『フレイとカタリーナは恋仲』という気持ち悪い誤解を避けることができた。
「そうなんです。カタリーナさんがライトニング邸に来るのも、探している人がいるからで、決してやましい関係ではありません。」
俺は駄目押しで、カタリーナとの関係を否定した。
「フレイくん、私のこと手伝ってくれる気ゼロじゃん.....。」
カタリーナはそんな俺に呆れた様子だった。
「その『探している人』とは、一体、誰のことだい?」
「それは、悪漢からカタリーナさんを助けた人のことです。以前、ライトニング領を馬車で案内していた時に、カタリーナさんが悪漢に襲われまして。その時に悪漢からカタリーナさんを助けた人が、未だに見つからないので、探しているのです。」
「まぁ!カタリーナ様、大丈夫でしたか?とんだ災難でしたね。」
「助けてくれた方のおかげで、何事もありませんでした。」
「カタリーナが無事で良かったよ。もし会うことがあれば、僕からもお礼させてくれないか?」
ほう。
王子サマのお礼って何だろう。
あの姿で会う気はないが、ちょっと気になる。
「はい、是非!ちなみに、その『助けてくれた人』というのが特殊なのです。」
「特殊?」
「はい。その人は黒目黒髪で、彫りが浅い顔立ちの人なのですが、何というか....言葉では表せないと言いますか」
「?黒目・黒髪・彫りが浅いという特徴だけしたら、数は多くないとは思いますが、さほど特殊には感じませんが?」
「あぁ。ですよね、アリーシャ様。実物を見ないと、そう思いますよね。一応、彼はキメイラ帝国に住んでいるらしいのですが、『亜人』という感じでもないのです。殿下とアリーシャ様は、そういった特徴を持つ人....もしくは種族に心当たりはありますか?」
「種族、ですか?!目や髪の色が統一されている種族なんて聞いたことがありません。亜人にもさまざまな種族がいますが、彫りの浅い顔立ちの種族なんて、存じ上げませんわ。」
「それに、種族という括りを抜きにしても、黒目黒髪で彫りの浅い顔の人なんて、見たことがないよ。」
殿下とアリーシャの返答に、カタリーナは落胆した。
「そう、ですか.....では、この世界とは異なる世界へ行ける魔法や魔術について、何か聞いたことはありますでしょうか?」
ん???
何で急に異世界の話になるんだ?
その話、今、関係ある??
案の定、殿下とアリーシャも目が点になっていた。
「異世界、ですか?」
「えっと、カタリーナ?さっきまでの話と、何か関係があるのかな?」
「はい!関係大アリです!だって、もしかしたら彼は、異世界人かもしれないんです!」
はい?
異世界人かもしれない??
あながち間違いでもないが、なぜその発想になる?
殿下とアリーシャは、あまりにも突拍子もない話に、キョトンとする。
その空気を察したカタリーナは、慌てて弁明し出した。
「あ!...えっと、私がそう思うのは、彼の目鼻立ちや服装が、この世界のどの人種にも当てはまらないからなんです。今まで彫りの浅い顔立ちの人を何人か見かけましたが、彼くらい彫りの浅い人はいませんでした。『比較的彫りの浅い顔立ちの人が多い』と言われている種族ですら、彼に比べたら彫りが深いです。それに彼が着ていた服装も、様々な服屋さんを調べても見つかりませんでした。だから、もしかしたら異世界からやって来たんじゃないかって思ったんです。」
なるほどな、カタリーナなりに理由があって、そう思ったのか。
いつも変なことを仕出かすから、それが平常運転なのかと思っていた。
カタリーナの説明を聞いた殿下達も、少しは納得できた様子で、口を開き始めた。
「それで異世界の魔法について聞かれていたのですね。ですが、私は異世界に関係する魔法も魔術も存じ上げません。お力になれず、すみません。」
「僕も、そういった魔法について全然知らないよ。ごめんね。でも....」
殿下は少し複雑そうな顔で、俯いた。
「でも?」
「......兄上なら、何か知っているかもしれないよ。なんせ、兄上は、天才だから。」
殿下がそう言うと、カタリーナもアリーシャも少し気まずそうにした。
「フレイくんは知らないかもしれないけど、僕の兄上であるショーン殿下は数千年に一人の天才なんだ。あの王立ディシュメイン魔法学園を、弱冠5歳で卒業した人なんだ。」
「それは凄いですね。聖女と名高いセージャ叔母さんですら、卒業したのは10歳ですから、ショーン殿下は、よほど卓越した才能があるようですね。」
俺も一度、王立ディシュメイン魔法学園の卒業試験を受けたことがあるから分かるが、あの試験で卒業できる奴は頭がおかしい。
聖女サマが卒業できるレベルなら、俺だったら余裕じゃん!と思っていた時期が俺にもあった。
卒業試験は金さえあれば誰でも受けられるとは言え、卒業試験は、普通に入学して卒業するよりも何十倍もハードな試験内容らしい。
そうとは知らず、ろくに勉強せずに一次試験を受けた俺は、見事テストを白紙で提出して試験に落ちた。
「あぁ。兄上はこの国始まって以来の天才だよ。」
そりゃレックス殿下が複雑そうな顔をするワケだ。
そんな天才が第一王子だったら、次期国王はショーン殿下で確実じゃないか。
「すみません、カタリーナさん。殿下には申し訳ないですが、殿下が王位を継承するのって難しくないですか?」
殿下に聞こえないように、カタリーナに耳打ちする。
「それが、そうとも言えないのよ。なんせ、ショーン殿下は原因不明の病気を患っていて.....」
するとカタリーナは話の途中で、急に目をカッと見開いて口を塞いだ。
もしかして殿下に聞かれていたのか?
と思って、殿下の方を見る。
すると、殿下も急に口を押さえて、倒れ込んでしまった。
何があった?
その光景に驚く間も無く、急に異常な吐き気と息苦しさに襲われた。
あっ、コレやばいヤツだ。
俺は咄嗟に回復魔法を使った。
多少の気持ち悪さと息苦しさは感じたものの、立てなくなる程でもなかった。
改めて周りを見る。
殿下とアリーシャとカタリーナは、血を吐いて倒れていた。
ホール内は阿鼻叫喚とし、うるさい悲鳴が飛び交う。
3人を心配して、たくさんの大人達が駆けつけた。
そんな中、父さんと母さんが俺の方へと駆け寄る。
「フレイ、フレイっ...!」
「フレイ、大丈夫か!」
「父さん、母さん、大丈夫ですよ。」
二人は、安堵した様子で俺を抱きしめる。
....暑苦しいが、嫌いじゃない。
「フレイ、お前も殿下達と一緒に休みなさい。」
「絶対に、安静にするのよ?」
「はい。」
俺は父さんたちに連れられる形で休憩室へ行き、殿下達と一緒にベットで横になった。
「いいわね....。悪くない雰囲気よ!」
楽しそうに談笑する二人を見てほくそ笑むカタリーナ。
「はぁ。いつ見ても美しいお二人だわ。レックス殿下もアリーシャ様も、ハリウッドスター顔負けのルックスよね。あの二人の尊さはもはや人間国宝級よ!あの二人から生まれた子どもは、世界一の美男美女になるに違いないわ!」
コイツ、殿下だけじゃなくアリーシャに対しても、そんなことを思っていたのか。
「確かに、美しいお二人ではありますが.....」
「でしょ?絵画では表せないくらい輝いているお二人でしょ!」
別にそこまでは言っていない。
「ただ、ここからだと、お二人が何を話しているかわかりませんね。フォージー侯爵のように耳が良ければ聞こえるのかもしれませんが。」
「仕方ないわよ。これ以上近づいたら、気づかれちゃうわ。」
むしろあれだけガン見して、殿下達に気づかれていないのが不思議だ。
カタリーナが二人を眺めてうっとりしていると、案の定、殿下達がこちらに気づいた。
「あっ、目が合っちゃった!」
そりゃ、あれだけジロジロ見てたら、目が合うだろ。
こちらに気づいた二人は、俺達の方へと向かって歩いてくる。
「再びお会いできて光栄です、カタリーナ様。」
俺達と殿下達は、軽く挨拶をした。
「私達、ちょうどカタリーナ様のことを話していたところなんです。」
「えっ!私のことですか?」
「あぁ。カタリーナはいつも、天真爛漫で可愛いという話をしていたんだ。」
きっっっっっしょ!
歯の浮くような臭いセリフを平然と言う殿下に、思わず鳥肌が立つ。
いくら社交辞令とは言え、度が過ぎたお世辞は聞いてて胸焼けを起こしそうだ。
「そ、そんな、可愛いだなんて!お二人の美しさに比べたら私なんかその辺に生えている雑草に群がるアブラムシみたいなものです!」
カタリーナは茹で蛸のように顔を真っ赤にしながら、独特な言い回しで卑下する。
「フフッ。そういうところが可愛らしいよ。」
うわぁ。
.....もう、俺帰っていい?
するとそこに、使用人が飲み物を運びにきた。
黒くてプクプクと小さな泡を出す飲み物。
これは.....。
「コーラだ!」
カタリーナは、運ばれてきた飲み物を手に取って、グイッと飲み込んだ。
「この飲み物は、確かドーワ侯国で最近流行しているという噂の飲み物ですね。」
「泡が吹き出す飲み物だなんて、不思議だね。」
殿下とアリーシャも、目新しい飲み物に興味深々な様子で、一口飲んだ。
炭酸飲料ってこの世界じゃ珍しいのか?
思えば、この世界で炭酸飲料を見たのは、今日が初めてかもしれない。
口の中でシュワシュワする時の感覚は、結構クセになる。
俺は久しぶりのコーラに少しテンションが上がり、コーラを一気に飲み干した。
「っ!?」
初めて味わうその食感に、殿下とアリーシャは顔をしかめた。
「口の中が、パチパチする...!」
「空気が喉に詰まる感じがしますね。」
「炭酸飲料って、シュワシュワするから好き嫌い分かれますよね。」
戸惑いながら飲む殿下とアリーシャのリアクションは、初々しい感じがして面白い。
「そういえばカタリーナ様、フレイ様と親しげに話しておられましたが、どのようなご関係なのですか?」
「ただの顔見知りです。」
カタリーナが余計なことを言い出す前に、食い気味に俺が答えた。
ここで『思い人』だの何だの言って、殿下に誤解されて睨まれたくはない。
「『ただの顔見知り』って.....フレイくん、いくら何でも、それはちょっと寂しいわよ。
以前、ライトニング公爵邸へ挨拶に行った際に、彼と知り合いました。それ以来、ときどきライトニング邸へ遊びに行く仲です。」
ひとまずは『フレイとカタリーナは恋仲』という気持ち悪い誤解を避けることができた。
「そうなんです。カタリーナさんがライトニング邸に来るのも、探している人がいるからで、決してやましい関係ではありません。」
俺は駄目押しで、カタリーナとの関係を否定した。
「フレイくん、私のこと手伝ってくれる気ゼロじゃん.....。」
カタリーナはそんな俺に呆れた様子だった。
「その『探している人』とは、一体、誰のことだい?」
「それは、悪漢からカタリーナさんを助けた人のことです。以前、ライトニング領を馬車で案内していた時に、カタリーナさんが悪漢に襲われまして。その時に悪漢からカタリーナさんを助けた人が、未だに見つからないので、探しているのです。」
「まぁ!カタリーナ様、大丈夫でしたか?とんだ災難でしたね。」
「助けてくれた方のおかげで、何事もありませんでした。」
「カタリーナが無事で良かったよ。もし会うことがあれば、僕からもお礼させてくれないか?」
ほう。
王子サマのお礼って何だろう。
あの姿で会う気はないが、ちょっと気になる。
「はい、是非!ちなみに、その『助けてくれた人』というのが特殊なのです。」
「特殊?」
「はい。その人は黒目黒髪で、彫りが浅い顔立ちの人なのですが、何というか....言葉では表せないと言いますか」
「?黒目・黒髪・彫りが浅いという特徴だけしたら、数は多くないとは思いますが、さほど特殊には感じませんが?」
「あぁ。ですよね、アリーシャ様。実物を見ないと、そう思いますよね。一応、彼はキメイラ帝国に住んでいるらしいのですが、『亜人』という感じでもないのです。殿下とアリーシャ様は、そういった特徴を持つ人....もしくは種族に心当たりはありますか?」
「種族、ですか?!目や髪の色が統一されている種族なんて聞いたことがありません。亜人にもさまざまな種族がいますが、彫りの浅い顔立ちの種族なんて、存じ上げませんわ。」
「それに、種族という括りを抜きにしても、黒目黒髪で彫りの浅い顔の人なんて、見たことがないよ。」
殿下とアリーシャの返答に、カタリーナは落胆した。
「そう、ですか.....では、この世界とは異なる世界へ行ける魔法や魔術について、何か聞いたことはありますでしょうか?」
ん???
何で急に異世界の話になるんだ?
その話、今、関係ある??
案の定、殿下とアリーシャも目が点になっていた。
「異世界、ですか?」
「えっと、カタリーナ?さっきまでの話と、何か関係があるのかな?」
「はい!関係大アリです!だって、もしかしたら彼は、異世界人かもしれないんです!」
はい?
異世界人かもしれない??
あながち間違いでもないが、なぜその発想になる?
殿下とアリーシャは、あまりにも突拍子もない話に、キョトンとする。
その空気を察したカタリーナは、慌てて弁明し出した。
「あ!...えっと、私がそう思うのは、彼の目鼻立ちや服装が、この世界のどの人種にも当てはまらないからなんです。今まで彫りの浅い顔立ちの人を何人か見かけましたが、彼くらい彫りの浅い人はいませんでした。『比較的彫りの浅い顔立ちの人が多い』と言われている種族ですら、彼に比べたら彫りが深いです。それに彼が着ていた服装も、様々な服屋さんを調べても見つかりませんでした。だから、もしかしたら異世界からやって来たんじゃないかって思ったんです。」
なるほどな、カタリーナなりに理由があって、そう思ったのか。
いつも変なことを仕出かすから、それが平常運転なのかと思っていた。
カタリーナの説明を聞いた殿下達も、少しは納得できた様子で、口を開き始めた。
「それで異世界の魔法について聞かれていたのですね。ですが、私は異世界に関係する魔法も魔術も存じ上げません。お力になれず、すみません。」
「僕も、そういった魔法について全然知らないよ。ごめんね。でも....」
殿下は少し複雑そうな顔で、俯いた。
「でも?」
「......兄上なら、何か知っているかもしれないよ。なんせ、兄上は、天才だから。」
殿下がそう言うと、カタリーナもアリーシャも少し気まずそうにした。
「フレイくんは知らないかもしれないけど、僕の兄上であるショーン殿下は数千年に一人の天才なんだ。あの王立ディシュメイン魔法学園を、弱冠5歳で卒業した人なんだ。」
「それは凄いですね。聖女と名高いセージャ叔母さんですら、卒業したのは10歳ですから、ショーン殿下は、よほど卓越した才能があるようですね。」
俺も一度、王立ディシュメイン魔法学園の卒業試験を受けたことがあるから分かるが、あの試験で卒業できる奴は頭がおかしい。
聖女サマが卒業できるレベルなら、俺だったら余裕じゃん!と思っていた時期が俺にもあった。
卒業試験は金さえあれば誰でも受けられるとは言え、卒業試験は、普通に入学して卒業するよりも何十倍もハードな試験内容らしい。
そうとは知らず、ろくに勉強せずに一次試験を受けた俺は、見事テストを白紙で提出して試験に落ちた。
「あぁ。兄上はこの国始まって以来の天才だよ。」
そりゃレックス殿下が複雑そうな顔をするワケだ。
そんな天才が第一王子だったら、次期国王はショーン殿下で確実じゃないか。
「すみません、カタリーナさん。殿下には申し訳ないですが、殿下が王位を継承するのって難しくないですか?」
殿下に聞こえないように、カタリーナに耳打ちする。
「それが、そうとも言えないのよ。なんせ、ショーン殿下は原因不明の病気を患っていて.....」
するとカタリーナは話の途中で、急に目をカッと見開いて口を塞いだ。
もしかして殿下に聞かれていたのか?
と思って、殿下の方を見る。
すると、殿下も急に口を押さえて、倒れ込んでしまった。
何があった?
その光景に驚く間も無く、急に異常な吐き気と息苦しさに襲われた。
あっ、コレやばいヤツだ。
俺は咄嗟に回復魔法を使った。
多少の気持ち悪さと息苦しさは感じたものの、立てなくなる程でもなかった。
改めて周りを見る。
殿下とアリーシャとカタリーナは、血を吐いて倒れていた。
ホール内は阿鼻叫喚とし、うるさい悲鳴が飛び交う。
3人を心配して、たくさんの大人達が駆けつけた。
そんな中、父さんと母さんが俺の方へと駆け寄る。
「フレイ、フレイっ...!」
「フレイ、大丈夫か!」
「父さん、母さん、大丈夫ですよ。」
二人は、安堵した様子で俺を抱きしめる。
....暑苦しいが、嫌いじゃない。
「フレイ、お前も殿下達と一緒に休みなさい。」
「絶対に、安静にするのよ?」
「はい。」
俺は父さんたちに連れられる形で休憩室へ行き、殿下達と一緒にベットで横になった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる