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第7話:アリーシャ嬢の誕生日パーティ
【17】アリーシャ嬢の誕生日パーティ(1)
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「はぁ...また今年も落ちた...。」
破滅フラグ回避のために毎年受けている、王立ディシュメイン魔法学園の卒業試験。
その結果が返ってきたのは、つい昨日のことだった。
毎年この試験を受けているのは、学歴が欲しいからじゃない。
王立ディシュメイン魔法学園に行きたくないからだ。
私の予想ではほぼ100%、乙女ゲームの舞台になる学校のハズだ。
そして順当に入学したら、乙女ゲームのヒロインと対峙することになる。
だから卒業して学校に行かなくても良くなれば、ヒロインと会うこともなく、高い確率で破滅フラグが回避できるハズ。
「一番確実な破滅フラグ回避方法なんだけどなぁ~」
卒業試験の内容は、控えめに言って、狂っている。
なんせ、順当に入学して卒業した生徒ですら、解くのが難しい問題ばかりらしい。
...卒業生が解けないような問題、出さないでよと運営に問い詰めたい。
まぁ、でも、卒業試験があるだけマシよね。
『程度の低い学校にわざわざ通うのが面倒だから、行かなくても良い制度を作れ』とごねた古の天才王族さんには、感謝しないと。
でなきゃ未だに、破滅フラグの回避策がないまま行き詰まっていたもの。
....でも悠長に「試験落ちた」なんて、言っている場合じゃなくなってきたのも事実。
15歳になったら、基本的にこの国の貴族は王立ディシュメイン魔法学園に入学する。
私は今年で12歳。
今年落ちたということは、残るチャンスはあと2回。
たったの、あと、2回。
.......受かる気がしないわ。
「はぁ。せめて宮藤くんが乙女ゲームを知っていたらなぁ。」
唯一、会ったことのある元・日本人。
彼、どうみてもチンピラ系の人だから、乙女ゲームを知っているかなんて期待はしていなかった。
それでも、ちょっとは何か知ってて欲しかったなぁ...。
そもそも彼って、いつからこの世界にいるの?
この世界を滅ぼしかけたという『厄災の魔王』が、彼なのよね?
ということは彼は、乙女ゲームの魔王キャラに転生したってことなのかしら?
厄災の魔王がいたのは私が生まれる前だから、少なくとも12年以上前から、この世界にいるってことになる。
もし乙女ゲームのヒロインが私と同い年だったとしたら、攻略対象だとは考えにくい。年が離れ過ぎている。
だったら厄災の魔王は、原作ではどんな立ち回りのキャラだったのかしら?
世界の大半が滅びるシナリオは、乙女ゲームの強制力による避けられない運命だったのか、それとも宮藤くん自らの意思でシナリオ通りの行動をとったのか。
あるいは、原作には厄災に魔王なんて存在しなくて、彼は元々物語に登場しないモブだった可能性もある。
「あぁ~~!もう、わかんないっ!」
不確定要素が多すぎて、推測しようにも推測できない。
「カタリーナ様、どうかなされました?」
そう声をかけてくれたのは、アリーシャ様だった。
この世界に『世界で最も美しい顔ランキング』なんてものがあれば、間違いなく1位になっていたであろう美少女。
おまけにスラリと背の高く、モデル顔負けのプロポーションの持ち主で、この世の美を集約させたかのような存在だ。
今日はそんな彼女の誕生日で、彼女の家であるフォージー家で誕生日パーティに呼ばれていたのだった。
「実は昨日、王立ディシュメイン魔法学園の卒業試験に、また落ちまして...。」
「それは、残念でしたね。」
「試験内容がアレですから、まぁ、仕方ないですよね。毎年あれだけ試験を受ける人がいるのに、合格する人がいる年の方が珍しいくらいですから。」
今年は珍しく合格した人がいたらしいが、それでも一人だけだ。
.....正直、卒業試験って必要ある?
「すみません、せっかくの誕生日なのに残念な話をしてしまって。」
「いえいえ、お気になさらずに。カタリーナ様は、勉強熱心で素晴らしいです。」
「勉強熱心、という程でもないのですよね....。ただ単に学校へ行きたくないから受けているだけ、と言いますか.....」
「学校に行きたくないのですか?」
「『行きたくない』と言うと誤解がありそうですが、別に学校が嫌と言うわけではないのです。むしろ、魔法の学校なんて漫画みたいで面白そうだと思います。」
「マンガ?それは、もしかして最近ドーワ侯国で話題になっている、絵本のような書物のことでしょうか?」
「はい。恐らくはその書物です。」
ドーワ侯国って、そんな物まであるの?
コーラもドーワ侯国にあったし、絶対ドーワ侯国に転生者がいるでしょ。
「カタリーナ様は、学校が嫌いではないのですよね?では、なぜ学校へ行きたくないのでしょうか?」
「それは....」
「学校へ行くと『破滅』しちゃうから、ですよね?」
そう言って現れたのは、フレイ君だった。
彼は唯一、私が転生者であることを知っている人物だ。
そして仮の婚約者であり、推定・攻略対象の一人でもある。
心なしか、上機嫌のように見えるけど、気のせいかしら?
「破滅、ですか?」
「はい。『学校に通うと、ふしだらな女生徒に因縁をつけられて、国外追放させられる』とカタリーナさんは考えているようです。」
乙女ゲームのヒロインを『ふしだら』って!
まぁ、乙女ゲームが理解できないと、そういう認識になっちゃうのかしら?
「間違いではないけど......フレイ君、もうちょっとマシな言い方はないの?」
「では、どう言うのが正しいのでしょうか?」
「そう聞かれると、難しいわね.....」
「すみません、お二人の話が今ひとつ、理解できないのですが」
「それは仕方ないですよ、アリーシャさん。なんせ、これは僕達だけの、秘密のお話ですから。ね?カタリーナさん。」
「えぇ、まぁそうね。」
今日のフレイ君はやけに機嫌が良さそうで、逆に不気味に感じる。
「そういえば、あれから破滅フラグを回避する方法について、何か思いつきましたか?」
「いいえ、全く。今年もまた卒業試験に落ちたし....」
「そうですか。でしたら、いっそのこと宮藤迅さんに、もう一度確認してみるのはどうですか?」
しれっと難しいことを提案してくるわね。
「『宮藤くんに会う』って.....。彼、この世界のことを知らないんだから、聞いたところで無駄でしょ。」
「もしかしたら、前の時は質問の意図がわからなくて、条件反射で『知らない』と言っただけかもしれませんよ?」
「仮にそうだとしても、彼がどこにいるかわからないと、聞きたくても聞けないわ。」
第一、彼とは殿下の誕生日パーティ以来、会っていない。
毎回、ピンチの時に偶然彼が現れるだけで、意図的に彼と会えた試しがない。
....もしかして、私がわざと死にかけたら、彼は助けに現れるのかしら?
いえ、それはないわね。
彼の性格的に、何か理由でもない限りは助けてくれなさそう。
ん?
でも、もし仮にそうだったら、今まで私を助けてくれたのは、何か理由があってのことなの?
彼に、私を助ける理由があるようには見えない。
ということは、ああ見えて実は、困った人を放って置けない、良い人なのかも?
前に亜人の人達に襲われた時、何だかんだで彼らのことも助けていたし。
....じゃあ、私がピンチになったフリをすれば、ワンチャン現れるかも?
「宮藤迅さんって、毎回カタリーナさんが危ない目に遭っている時に現れますよね?もしかしたら、わざと危ない目に遭うフリをすれば、誘き出せるのではないのでしょうか?」
「フレイ君も、そう思う?」
フレイ君も同じことを考えていたようだ。
「カタリーナ様、どのような理由であれ、わざと危ない目に遭うのは感心しませんわ。万が一にでもカタリーナ様の身に何かあったら、私、悲しいです。」
物騒なことを話していたからか、アリーシャ様に反対されてしまった。
「アリーシャ様、ご心配ありがとうございます。」
「どうせ死んでも、宮藤迅さんがきっと生き返らせてくれるから、大丈夫ですよ。多分。」
一方のフレイ君は、私の身を案ずる気配は一ミリもない。
つくづく思うけど、彼ってドライよね。
彼のご両親のロバート様とアネッサ様は、あんなに慈愛に満ちた人達なのに。
遺伝子の抵抗かしら?
「むしろ、本当に死んでしまうくらいが、丁度いいのかもしれませんね。」
「それ、本気で言ってる?」
ここまでくると、ドライを通り越して、非情だ。
まぁ、冗談だとは思うけど。
「おや、何やら物騒な単語が聞こえてきましたね。フレイ卿?」
そこに現れたのは、フォージー侯爵だった。
破滅フラグ回避のために毎年受けている、王立ディシュメイン魔法学園の卒業試験。
その結果が返ってきたのは、つい昨日のことだった。
毎年この試験を受けているのは、学歴が欲しいからじゃない。
王立ディシュメイン魔法学園に行きたくないからだ。
私の予想ではほぼ100%、乙女ゲームの舞台になる学校のハズだ。
そして順当に入学したら、乙女ゲームのヒロインと対峙することになる。
だから卒業して学校に行かなくても良くなれば、ヒロインと会うこともなく、高い確率で破滅フラグが回避できるハズ。
「一番確実な破滅フラグ回避方法なんだけどなぁ~」
卒業試験の内容は、控えめに言って、狂っている。
なんせ、順当に入学して卒業した生徒ですら、解くのが難しい問題ばかりらしい。
...卒業生が解けないような問題、出さないでよと運営に問い詰めたい。
まぁ、でも、卒業試験があるだけマシよね。
『程度の低い学校にわざわざ通うのが面倒だから、行かなくても良い制度を作れ』とごねた古の天才王族さんには、感謝しないと。
でなきゃ未だに、破滅フラグの回避策がないまま行き詰まっていたもの。
....でも悠長に「試験落ちた」なんて、言っている場合じゃなくなってきたのも事実。
15歳になったら、基本的にこの国の貴族は王立ディシュメイン魔法学園に入学する。
私は今年で12歳。
今年落ちたということは、残るチャンスはあと2回。
たったの、あと、2回。
.......受かる気がしないわ。
「はぁ。せめて宮藤くんが乙女ゲームを知っていたらなぁ。」
唯一、会ったことのある元・日本人。
彼、どうみてもチンピラ系の人だから、乙女ゲームを知っているかなんて期待はしていなかった。
それでも、ちょっとは何か知ってて欲しかったなぁ...。
そもそも彼って、いつからこの世界にいるの?
この世界を滅ぼしかけたという『厄災の魔王』が、彼なのよね?
ということは彼は、乙女ゲームの魔王キャラに転生したってことなのかしら?
厄災の魔王がいたのは私が生まれる前だから、少なくとも12年以上前から、この世界にいるってことになる。
もし乙女ゲームのヒロインが私と同い年だったとしたら、攻略対象だとは考えにくい。年が離れ過ぎている。
だったら厄災の魔王は、原作ではどんな立ち回りのキャラだったのかしら?
世界の大半が滅びるシナリオは、乙女ゲームの強制力による避けられない運命だったのか、それとも宮藤くん自らの意思でシナリオ通りの行動をとったのか。
あるいは、原作には厄災に魔王なんて存在しなくて、彼は元々物語に登場しないモブだった可能性もある。
「あぁ~~!もう、わかんないっ!」
不確定要素が多すぎて、推測しようにも推測できない。
「カタリーナ様、どうかなされました?」
そう声をかけてくれたのは、アリーシャ様だった。
この世界に『世界で最も美しい顔ランキング』なんてものがあれば、間違いなく1位になっていたであろう美少女。
おまけにスラリと背の高く、モデル顔負けのプロポーションの持ち主で、この世の美を集約させたかのような存在だ。
今日はそんな彼女の誕生日で、彼女の家であるフォージー家で誕生日パーティに呼ばれていたのだった。
「実は昨日、王立ディシュメイン魔法学園の卒業試験に、また落ちまして...。」
「それは、残念でしたね。」
「試験内容がアレですから、まぁ、仕方ないですよね。毎年あれだけ試験を受ける人がいるのに、合格する人がいる年の方が珍しいくらいですから。」
今年は珍しく合格した人がいたらしいが、それでも一人だけだ。
.....正直、卒業試験って必要ある?
「すみません、せっかくの誕生日なのに残念な話をしてしまって。」
「いえいえ、お気になさらずに。カタリーナ様は、勉強熱心で素晴らしいです。」
「勉強熱心、という程でもないのですよね....。ただ単に学校へ行きたくないから受けているだけ、と言いますか.....」
「学校に行きたくないのですか?」
「『行きたくない』と言うと誤解がありそうですが、別に学校が嫌と言うわけではないのです。むしろ、魔法の学校なんて漫画みたいで面白そうだと思います。」
「マンガ?それは、もしかして最近ドーワ侯国で話題になっている、絵本のような書物のことでしょうか?」
「はい。恐らくはその書物です。」
ドーワ侯国って、そんな物まであるの?
コーラもドーワ侯国にあったし、絶対ドーワ侯国に転生者がいるでしょ。
「カタリーナ様は、学校が嫌いではないのですよね?では、なぜ学校へ行きたくないのでしょうか?」
「それは....」
「学校へ行くと『破滅』しちゃうから、ですよね?」
そう言って現れたのは、フレイ君だった。
彼は唯一、私が転生者であることを知っている人物だ。
そして仮の婚約者であり、推定・攻略対象の一人でもある。
心なしか、上機嫌のように見えるけど、気のせいかしら?
「破滅、ですか?」
「はい。『学校に通うと、ふしだらな女生徒に因縁をつけられて、国外追放させられる』とカタリーナさんは考えているようです。」
乙女ゲームのヒロインを『ふしだら』って!
まぁ、乙女ゲームが理解できないと、そういう認識になっちゃうのかしら?
「間違いではないけど......フレイ君、もうちょっとマシな言い方はないの?」
「では、どう言うのが正しいのでしょうか?」
「そう聞かれると、難しいわね.....」
「すみません、お二人の話が今ひとつ、理解できないのですが」
「それは仕方ないですよ、アリーシャさん。なんせ、これは僕達だけの、秘密のお話ですから。ね?カタリーナさん。」
「えぇ、まぁそうね。」
今日のフレイ君はやけに機嫌が良さそうで、逆に不気味に感じる。
「そういえば、あれから破滅フラグを回避する方法について、何か思いつきましたか?」
「いいえ、全く。今年もまた卒業試験に落ちたし....」
「そうですか。でしたら、いっそのこと宮藤迅さんに、もう一度確認してみるのはどうですか?」
しれっと難しいことを提案してくるわね。
「『宮藤くんに会う』って.....。彼、この世界のことを知らないんだから、聞いたところで無駄でしょ。」
「もしかしたら、前の時は質問の意図がわからなくて、条件反射で『知らない』と言っただけかもしれませんよ?」
「仮にそうだとしても、彼がどこにいるかわからないと、聞きたくても聞けないわ。」
第一、彼とは殿下の誕生日パーティ以来、会っていない。
毎回、ピンチの時に偶然彼が現れるだけで、意図的に彼と会えた試しがない。
....もしかして、私がわざと死にかけたら、彼は助けに現れるのかしら?
いえ、それはないわね。
彼の性格的に、何か理由でもない限りは助けてくれなさそう。
ん?
でも、もし仮にそうだったら、今まで私を助けてくれたのは、何か理由があってのことなの?
彼に、私を助ける理由があるようには見えない。
ということは、ああ見えて実は、困った人を放って置けない、良い人なのかも?
前に亜人の人達に襲われた時、何だかんだで彼らのことも助けていたし。
....じゃあ、私がピンチになったフリをすれば、ワンチャン現れるかも?
「宮藤迅さんって、毎回カタリーナさんが危ない目に遭っている時に現れますよね?もしかしたら、わざと危ない目に遭うフリをすれば、誘き出せるのではないのでしょうか?」
「フレイ君も、そう思う?」
フレイ君も同じことを考えていたようだ。
「カタリーナ様、どのような理由であれ、わざと危ない目に遭うのは感心しませんわ。万が一にでもカタリーナ様の身に何かあったら、私、悲しいです。」
物騒なことを話していたからか、アリーシャ様に反対されてしまった。
「アリーシャ様、ご心配ありがとうございます。」
「どうせ死んでも、宮藤迅さんがきっと生き返らせてくれるから、大丈夫ですよ。多分。」
一方のフレイ君は、私の身を案ずる気配は一ミリもない。
つくづく思うけど、彼ってドライよね。
彼のご両親のロバート様とアネッサ様は、あんなに慈愛に満ちた人達なのに。
遺伝子の抵抗かしら?
「むしろ、本当に死んでしまうくらいが、丁度いいのかもしれませんね。」
「それ、本気で言ってる?」
ここまでくると、ドライを通り越して、非情だ。
まぁ、冗談だとは思うけど。
「おや、何やら物騒な単語が聞こえてきましたね。フレイ卿?」
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