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第11話:永久睡眠
【37】永久睡眠(4)
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現実世界で幸せな日々が続いたある日、突然、誰かが私の家にやってきた。
インターホン越しに相手を見たお父さん曰く、『中高生くらいのイカツい男の子と、外国人の男の子と女の子』だそうだ。
そんな知り合い、いたっけ?
不審に思いつつ、玄関の扉を開ける。
「あっ...!あなたは...!」
「よっ!お前、カタリーナだろ?」
目の前にいたのは、レックス殿下と、アリーシャ様。それに宮藤くんだった。
3人とも、なんで現実世界に?
とりあえず私は、3人を家の中へ案内し、事情を聴いた。
3人の説明によると、この世界は夢の中の世界で、私は魔術で夢の中に閉じ込められたそうだ。
そんな私を起こすために、宮藤くんの魔法で3人とも私の夢の中に入ったようだ。
ちなみに私がワールドチェンジでVRゲームの世界と現実世界を行き来していた時、3人も私に巻き込まれるように世界を行き来していたみたい。
現実世界での私が誰なのか分からないせいで、探すのに苦労したそうだ。
3人の話を聞いた時は到底信じられなかったが、VRゲームの世界にいるはずの3人が現実世界にいる理由が皆目分からないため、納得せざるを得なかった。
夢の世界から目覚めるには、私が『起きたい』と強く願う必要があるらしい。
そのため、3人は宮藤くんの魔法で私の夢の中に入り、起きるように説得しに来たのだそうだ。
....3人には悪いけど、私、起きたくないのよね。
だって夢とはいえ、また日本に帰れたんだもの。
「夢の中のことなんざ、どうでもいいからさっさと帰るぞ!」
宮藤くんは、そんな私の気持ちを無視するように催促してきた。
「お願い!もう少しだけ夢の中に居させて!それまで自由に遊んでいいからさ。そうだ!一緒にゲームしない?ウチ、たくさんソフトがあるわよ。」
私はゲーム機を準備して、3人にコントローラーを渡した。
日本の実家のリビングで、ゆったりとしたソファに横一列に座って、テーブルにお菓子とジュースを置いて、特大テレビにゲーム画面を映し出して.....。
こんな風に友達と家で遊ぶのは、久しぶりだ。
「おぉ!スゲー!こんなにソフト持ってるなんて、さすが金持ちの家だな。」
「そんなことないわよ。フツーよ、フツー。」
「カタリーナの前世って、爵位はあったのかい?」
「いえ。そもそも、現代の日本には爵位という概念はありません。」
「そうなのですか?てっきり、男爵か子爵なのかと思っておりました。」
「アハハッ!アリーシャ様、大袈裟ですよ。ウチの規模で男爵だったら、きっと日本中は男爵だらけですよ。
それより宮藤くん、みんなで遊ぶんだしパーティー系のゲームにしない?」
「パーティー系のゲームって、どれ?」
「コレとか....コレもそうね。あっ!このゲームいいわね。コレにしましょ!」
その後、私達はしばらくの間みんなでゲームをして盛り上がった。
「うわぁ~!また負けちゃった。」
「次は絶対、カタリーナ潰す!」
「カタリーナ様、もう少し手加減してくださいよ。」
「ふふふ、無理ですよアリーシャ様。私、器用じゃないので手加減なんてできないですよ。」
この時間が、ずっと続けばいいのに。
「じゃあ、次で最後にしようか。結構遊んだから、カタリーナもそろそろ起きた方が良いだろうし。」
殿下は、そんな私の希望を打ち砕くような提案をした。
「それも、そうですわね。」
「すっかり忘れてた。じゃあ、勝っても負けてもこれが最後な。」
殿下の提案に、みんなも賛成みたいだ。
何とかして、流れを変えないと。
「それじゃあ、最後は違うゲームで遊ばない?ほら、『龍の御死事』とかどう?ヤクザがいっぱい出てくるから、宮藤くん好きなんじゃないかしら?」
「別に。今やってるゲームでいいだろ。」
「そうだね。僕も今のゲームがいいよ。」
「でも...」
「さぁカタリーナ様、始めますよ!」
「あっ!ちょっと...!」
別のゲームに誘導しようとするも虚しく、強引に最後のゲームが始まってしまった。
そして、あっさりみんなを倒して、すぐに終わった。
「あぁクソッ!またカタリーナの一人勝ちかよ!」
「ふふん♪悔しかったら、もう一回戦ってあげてもいいよ?」
「いや、いい。それよりさっさと帰るぞ。」
宮藤くん、何で今に限って聞き分けがいいのよ?!
煽ったらまた一緒にゲームしてくれるかな?という淡い期待は、見事に打ち砕かれた。
「じゃあさ、今度は外に出かけてみない?レックス殿下、アリーシャ様、この世界って、外にもたくさん面白いものがあるんですよ。遊園地に動物園、映画に屋内プール、ボウリング、カラオケ、漫画喫茶、スーパー銭湯に....」
「カタリーナ、もう....」
「あっ!そういえばあっちの世界にあるマンガって、ほとんど日本にある漫画のパクりなんですよ!だから漫画喫茶に行ったら、あっちの世界の漫画の続きが読めますよ。」
「カタリーナ様....」
「だいたい、マンガといいコーラといいスマドといい、ダイフク商会って日本文化パクり過ぎでしょ!絶対、ダイフク商会のトップは日本人よ。でもそのおかげで、あっちの世界の娯楽が増えてきてるから良い事ではあるんだけどね。」
「おい!!カタリーナ!!」
突然、宮藤くんは怒鳴って、私の話を無理矢理遮った。
私は反射的に、身体がビクッとなる。
「帰るぞ。」
私の気持ちなんかお構いなしに、強制的に切り上げようとしてくる。
「待ってよ!もうちょっとこの世界で遊びましょうよ!それにここだと、あっちの世界にも行けるのよ?ワールドチェンジ!」
すると世界は、地球から異世界へと変化した。
私はワールドチェンして、みんなをエセヴィラン公爵邸へと連れてきた。
「ワールドチェンジしたところで所詮、夢の中だろ?ここで何をしようが、全部まやかしじゃねえか。居るだけ時間の無駄だろ。」
「そんなことないわよ!だって、夢でも日本の家族や友達に会えるんだから。」
この世界がウソだなんて、とっくに分かってる。
でも、ここから出るのは絶対嫌!
だって、ここから出たら.....二度と日本のみんなに会えなくなるから。
「カタリーナ、昔の家族や友達が恋しい気持ちは否定しないよ。でも、僕はカタリーナと、今を生きたいよ。それじゃあ、駄目かな?」
殿下の説得に、少し心が揺らいだ。
確かに、殿下やアリーシャ様、それに向こうの世界のみんなと一緒に生きたい。
「カタリーナが前世のみんなと離れて悲しいように、僕もカタリーナがいなくなったら寂しいよ。」
殿下はズルい。
私が殿下に弱いことを知った上で、私の心を揺さぶってくる。
「私だって、二度とレックス殿下と会えなくなるのは嫌ですよ!でも、でも......日本のみんなと、もっと一緒に居たかった!」
こんなに早く死ぬなんて、思ってもいなかった。
そりゃ、いつかはみんなと別れるのは分かっていたわよ。
でもそれは、何年も、何十年も、ありふれた日常が過ぎていって、ちょっとずつ周りも変化していって.....そうやって小さな変化を受け止めながら、「別れが近づいている」っていう現実を少しずつ受け入れていくものだと思ってた。
当たり前のように、明日も、明後日も、みんながいると思っていた。
それが突然、二度と会えなくなるなんて....。
そんなの、受け入れられるワケがない。
「私は、カタリーナ様の気持ちが少し分かります。今の両親をどれだけ大切に思っていても、やっぱり実の両親のことが気になりますよね。今の両親と実の両親の、どっちが大事か?なんて比べられないですよ。比べられるようなモノでもありませんし。」
そういえばアリーシャ様って、養子なんだったっけ。
アリーシャ様もアリーシャ様で、複雑な気持ちだったんだ。
「あー、もう!ごちゃごちゃ考えたところで、日本に帰れるわけねえだろ!夢の中の日本は偽物なんだから、居るだけ無駄だろ。日本の奴らのことなんざ忘れて、さっさと帰るぞ!」
一方の宮藤くんは、相変わらず私の気持ちなんか無視して帰らせようとしてくる。
宮藤くんには申し訳ないが、彼のその態度に段々イラついてきた。
「そんな簡単に、忘れられるワケないでしょ!そういう宮藤くんは日本のこと、綺麗さっぱり忘れられるの?宮藤くんだって、前世が恋しくなったことくらい、絶対あるでしょ?」
「無いね!一度も!」
はぁ?
なんで口から出まかせを言ってまで、否定してくるの?!
そこまでして、私を起こしたいワケ?
いくら私を起こしたいからといっても、私の気持ちを一切理解する気のない彼の言い草には、流石に腹が立った。
「あらそう!じゃあ宮藤くんの人生は、とっても残念だったのね!日本が恋しくならないってことは、仲の良かった人も、好きなものも、大切な思い出も、何一つ無いってことでしょ?そんな寂しい人生を送っていたなんて、宮藤くん、とっても可哀想!」
「あぁ?!ンだと!!」
すると宮藤くんは、今まで見たことがないくらいに激昂して私の胸ぐらを掴んだ。
一瞬、殴られるのを覚悟したけど、レックス殿下とアリーシャ様が彼の両腕を押さえてくれたお陰で、殴られずに済んだ。
「放せっ!このアマぶっ殺す!!」
腕を押さえられた宮藤くんは、私を蹴ろうとする。
しかし、レックス殿下とアリーシャ様のおかげで、彼の蹴りは私に届かなかった。
流石の宮藤くんも、タッパのある二人の腕力には敵わないらしい。
「カタリーナ、早く彼に謝って!」
「そうですわ、カタリーナ様。さっきのは少し言い過ぎです。」
「別に、私は間違ったことは言っていませんよ。
彼が本当に、一度も前世を恋しく思っていないのなら、そういう事になりますよね?」
「やっぱりテメェは、ここで死ねよ!」
手を出せないものの、宮藤くんは殺人鬼のように目を尖らせて私を睨みつける。
ちょっと強めに煽っただけでここまでキレるなんて、宮藤くんは見た目通り、短気ね。
「クドージンさん、落ち着いて!ここはカタリーナの夢の中だよ?彼女に何かあったら現実の世界に戻れないかもしれないよ?」
「そうですわ!ここはクドージンさんの夢ではありませんから、クドージンさんの意思で起きることは出来ないのですよ!」
「俺の夢?それだ!」
すると宮藤くんは急に暴れるのをやめた。
「おい、カタリーナ。やっぱり俺も、夢でもいいから日本の家に帰りたくなった。だから、俺の家に行ってもいいか?」
前世が恋しくないっていうのは、嘘だったの?
と、意地悪な質問をしてみたくなったが、これ以上煽るのも良くない。
私は寛大な心で承諾し、みんなで宮藤くんの家へ行くことになった。
インターホン越しに相手を見たお父さん曰く、『中高生くらいのイカツい男の子と、外国人の男の子と女の子』だそうだ。
そんな知り合い、いたっけ?
不審に思いつつ、玄関の扉を開ける。
「あっ...!あなたは...!」
「よっ!お前、カタリーナだろ?」
目の前にいたのは、レックス殿下と、アリーシャ様。それに宮藤くんだった。
3人とも、なんで現実世界に?
とりあえず私は、3人を家の中へ案内し、事情を聴いた。
3人の説明によると、この世界は夢の中の世界で、私は魔術で夢の中に閉じ込められたそうだ。
そんな私を起こすために、宮藤くんの魔法で3人とも私の夢の中に入ったようだ。
ちなみに私がワールドチェンジでVRゲームの世界と現実世界を行き来していた時、3人も私に巻き込まれるように世界を行き来していたみたい。
現実世界での私が誰なのか分からないせいで、探すのに苦労したそうだ。
3人の話を聞いた時は到底信じられなかったが、VRゲームの世界にいるはずの3人が現実世界にいる理由が皆目分からないため、納得せざるを得なかった。
夢の世界から目覚めるには、私が『起きたい』と強く願う必要があるらしい。
そのため、3人は宮藤くんの魔法で私の夢の中に入り、起きるように説得しに来たのだそうだ。
....3人には悪いけど、私、起きたくないのよね。
だって夢とはいえ、また日本に帰れたんだもの。
「夢の中のことなんざ、どうでもいいからさっさと帰るぞ!」
宮藤くんは、そんな私の気持ちを無視するように催促してきた。
「お願い!もう少しだけ夢の中に居させて!それまで自由に遊んでいいからさ。そうだ!一緒にゲームしない?ウチ、たくさんソフトがあるわよ。」
私はゲーム機を準備して、3人にコントローラーを渡した。
日本の実家のリビングで、ゆったりとしたソファに横一列に座って、テーブルにお菓子とジュースを置いて、特大テレビにゲーム画面を映し出して.....。
こんな風に友達と家で遊ぶのは、久しぶりだ。
「おぉ!スゲー!こんなにソフト持ってるなんて、さすが金持ちの家だな。」
「そんなことないわよ。フツーよ、フツー。」
「カタリーナの前世って、爵位はあったのかい?」
「いえ。そもそも、現代の日本には爵位という概念はありません。」
「そうなのですか?てっきり、男爵か子爵なのかと思っておりました。」
「アハハッ!アリーシャ様、大袈裟ですよ。ウチの規模で男爵だったら、きっと日本中は男爵だらけですよ。
それより宮藤くん、みんなで遊ぶんだしパーティー系のゲームにしない?」
「パーティー系のゲームって、どれ?」
「コレとか....コレもそうね。あっ!このゲームいいわね。コレにしましょ!」
その後、私達はしばらくの間みんなでゲームをして盛り上がった。
「うわぁ~!また負けちゃった。」
「次は絶対、カタリーナ潰す!」
「カタリーナ様、もう少し手加減してくださいよ。」
「ふふふ、無理ですよアリーシャ様。私、器用じゃないので手加減なんてできないですよ。」
この時間が、ずっと続けばいいのに。
「じゃあ、次で最後にしようか。結構遊んだから、カタリーナもそろそろ起きた方が良いだろうし。」
殿下は、そんな私の希望を打ち砕くような提案をした。
「それも、そうですわね。」
「すっかり忘れてた。じゃあ、勝っても負けてもこれが最後な。」
殿下の提案に、みんなも賛成みたいだ。
何とかして、流れを変えないと。
「それじゃあ、最後は違うゲームで遊ばない?ほら、『龍の御死事』とかどう?ヤクザがいっぱい出てくるから、宮藤くん好きなんじゃないかしら?」
「別に。今やってるゲームでいいだろ。」
「そうだね。僕も今のゲームがいいよ。」
「でも...」
「さぁカタリーナ様、始めますよ!」
「あっ!ちょっと...!」
別のゲームに誘導しようとするも虚しく、強引に最後のゲームが始まってしまった。
そして、あっさりみんなを倒して、すぐに終わった。
「あぁクソッ!またカタリーナの一人勝ちかよ!」
「ふふん♪悔しかったら、もう一回戦ってあげてもいいよ?」
「いや、いい。それよりさっさと帰るぞ。」
宮藤くん、何で今に限って聞き分けがいいのよ?!
煽ったらまた一緒にゲームしてくれるかな?という淡い期待は、見事に打ち砕かれた。
「じゃあさ、今度は外に出かけてみない?レックス殿下、アリーシャ様、この世界って、外にもたくさん面白いものがあるんですよ。遊園地に動物園、映画に屋内プール、ボウリング、カラオケ、漫画喫茶、スーパー銭湯に....」
「カタリーナ、もう....」
「あっ!そういえばあっちの世界にあるマンガって、ほとんど日本にある漫画のパクりなんですよ!だから漫画喫茶に行ったら、あっちの世界の漫画の続きが読めますよ。」
「カタリーナ様....」
「だいたい、マンガといいコーラといいスマドといい、ダイフク商会って日本文化パクり過ぎでしょ!絶対、ダイフク商会のトップは日本人よ。でもそのおかげで、あっちの世界の娯楽が増えてきてるから良い事ではあるんだけどね。」
「おい!!カタリーナ!!」
突然、宮藤くんは怒鳴って、私の話を無理矢理遮った。
私は反射的に、身体がビクッとなる。
「帰るぞ。」
私の気持ちなんかお構いなしに、強制的に切り上げようとしてくる。
「待ってよ!もうちょっとこの世界で遊びましょうよ!それにここだと、あっちの世界にも行けるのよ?ワールドチェンジ!」
すると世界は、地球から異世界へと変化した。
私はワールドチェンして、みんなをエセヴィラン公爵邸へと連れてきた。
「ワールドチェンジしたところで所詮、夢の中だろ?ここで何をしようが、全部まやかしじゃねえか。居るだけ時間の無駄だろ。」
「そんなことないわよ!だって、夢でも日本の家族や友達に会えるんだから。」
この世界がウソだなんて、とっくに分かってる。
でも、ここから出るのは絶対嫌!
だって、ここから出たら.....二度と日本のみんなに会えなくなるから。
「カタリーナ、昔の家族や友達が恋しい気持ちは否定しないよ。でも、僕はカタリーナと、今を生きたいよ。それじゃあ、駄目かな?」
殿下の説得に、少し心が揺らいだ。
確かに、殿下やアリーシャ様、それに向こうの世界のみんなと一緒に生きたい。
「カタリーナが前世のみんなと離れて悲しいように、僕もカタリーナがいなくなったら寂しいよ。」
殿下はズルい。
私が殿下に弱いことを知った上で、私の心を揺さぶってくる。
「私だって、二度とレックス殿下と会えなくなるのは嫌ですよ!でも、でも......日本のみんなと、もっと一緒に居たかった!」
こんなに早く死ぬなんて、思ってもいなかった。
そりゃ、いつかはみんなと別れるのは分かっていたわよ。
でもそれは、何年も、何十年も、ありふれた日常が過ぎていって、ちょっとずつ周りも変化していって.....そうやって小さな変化を受け止めながら、「別れが近づいている」っていう現実を少しずつ受け入れていくものだと思ってた。
当たり前のように、明日も、明後日も、みんながいると思っていた。
それが突然、二度と会えなくなるなんて....。
そんなの、受け入れられるワケがない。
「私は、カタリーナ様の気持ちが少し分かります。今の両親をどれだけ大切に思っていても、やっぱり実の両親のことが気になりますよね。今の両親と実の両親の、どっちが大事か?なんて比べられないですよ。比べられるようなモノでもありませんし。」
そういえばアリーシャ様って、養子なんだったっけ。
アリーシャ様もアリーシャ様で、複雑な気持ちだったんだ。
「あー、もう!ごちゃごちゃ考えたところで、日本に帰れるわけねえだろ!夢の中の日本は偽物なんだから、居るだけ無駄だろ。日本の奴らのことなんざ忘れて、さっさと帰るぞ!」
一方の宮藤くんは、相変わらず私の気持ちなんか無視して帰らせようとしてくる。
宮藤くんには申し訳ないが、彼のその態度に段々イラついてきた。
「そんな簡単に、忘れられるワケないでしょ!そういう宮藤くんは日本のこと、綺麗さっぱり忘れられるの?宮藤くんだって、前世が恋しくなったことくらい、絶対あるでしょ?」
「無いね!一度も!」
はぁ?
なんで口から出まかせを言ってまで、否定してくるの?!
そこまでして、私を起こしたいワケ?
いくら私を起こしたいからといっても、私の気持ちを一切理解する気のない彼の言い草には、流石に腹が立った。
「あらそう!じゃあ宮藤くんの人生は、とっても残念だったのね!日本が恋しくならないってことは、仲の良かった人も、好きなものも、大切な思い出も、何一つ無いってことでしょ?そんな寂しい人生を送っていたなんて、宮藤くん、とっても可哀想!」
「あぁ?!ンだと!!」
すると宮藤くんは、今まで見たことがないくらいに激昂して私の胸ぐらを掴んだ。
一瞬、殴られるのを覚悟したけど、レックス殿下とアリーシャ様が彼の両腕を押さえてくれたお陰で、殴られずに済んだ。
「放せっ!このアマぶっ殺す!!」
腕を押さえられた宮藤くんは、私を蹴ろうとする。
しかし、レックス殿下とアリーシャ様のおかげで、彼の蹴りは私に届かなかった。
流石の宮藤くんも、タッパのある二人の腕力には敵わないらしい。
「カタリーナ、早く彼に謝って!」
「そうですわ、カタリーナ様。さっきのは少し言い過ぎです。」
「別に、私は間違ったことは言っていませんよ。
彼が本当に、一度も前世を恋しく思っていないのなら、そういう事になりますよね?」
「やっぱりテメェは、ここで死ねよ!」
手を出せないものの、宮藤くんは殺人鬼のように目を尖らせて私を睨みつける。
ちょっと強めに煽っただけでここまでキレるなんて、宮藤くんは見た目通り、短気ね。
「クドージンさん、落ち着いて!ここはカタリーナの夢の中だよ?彼女に何かあったら現実の世界に戻れないかもしれないよ?」
「そうですわ!ここはクドージンさんの夢ではありませんから、クドージンさんの意思で起きることは出来ないのですよ!」
「俺の夢?それだ!」
すると宮藤くんは急に暴れるのをやめた。
「おい、カタリーナ。やっぱり俺も、夢でもいいから日本の家に帰りたくなった。だから、俺の家に行ってもいいか?」
前世が恋しくないっていうのは、嘘だったの?
と、意地悪な質問をしてみたくなったが、これ以上煽るのも良くない。
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