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第11話:永久睡眠
【40】永久睡眠・余談B
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ーーー15年前、とある場所にて。
....ここは?
気づけば俺は、見覚えのあるボロアパートにいた。
部屋の間取りや窓から見える景色は、俺の知っているあのボロアパートと同じだったが、部屋の内装に違和感があった。
部屋の中は物が多いものの、綺麗に片付いている。
「迅、夜ご飯ができたわよ。」
するとキッチンから朗らかな笑顔の女が、皿を持ってリビングにやってきた。
その女の顔に見覚えがある。俺の母親だった女だ。
不機嫌な顔しか記憶にないからか、女の笑顔が不気味で仕方ない。
女は持ってきた料理を机に置いて、俺の顔をまじまじと見つめた。
「迅、どうしたの?何だか元気が無さそうだけど...?今日は迅の大好きなハンバーグよ。」
俺に優しく話しかけるこの女は、本当に母親だったあの女か?
「.....テメェ、今更母親ヅラして何のつもりだ?」
喋ると同時に、自分の声の違和感に気づいた。
声変わりする前の声になっている。
よく身体を見回すと、俺は小学生くらいに若返っていた。
「母親ヅラ、なんて酷い言い草ね。私は正真正銘、迅の母親よ。」
「うるせぇ!お前なんざ、血が繋がってるだけの他人だ!お前みたいなクソババア、さっさと消えちまえ!」
俺は、女が持ってきた皿を、女の顔面に投げつけた。
すると女は皿を取って顔をタオルで拭くと、俺に怒るどころか、そっと抱きしめた。
「迅、何か嫌なことでもあった?さっきから変よ。お母さんに話してみてちょうだい。」
変なのはお前の方だ。
さっきから、なぜ怒らない?
「ただいまー!」
その時、突然玄関の扉の開く音とともに男の声が響いた。
コイツも見覚えがある。
俺の父親だった男だ。
男は仕事帰りだからか、キッチリとしたスーツを着ていた。
俺の記憶にある、だらしない服装でビール臭い父親とは似ても似つかない。
「あなた、おかえり!今日ね、迅の様子が少し変なのよ。」
「ん?どうした、迅?」
その男は俺に近づくと、怒鳴ったり蹴ったりせずに、俺の目を見て優しく話しかけた。
「何か悩みでもあるのか?言ってみろ。」
コイツもコイツで変だ。
今更父親ヅラされても不愉快でしかない。
「...変なのはお前らの方だろ。今更改心して、いい親になったつもりか?言っておくが、お前らが俺をサンドバッグみたいにボロクソに扱ったこと、一生忘れねぇからな!いつかお前らに倍返ししてやるから、覚悟しておけよ!」
俺が怒鳴ると、二人はキョトンとして顔を見合わせた。
「迅、さっきから何の話をしているの?私達が迅を殴ったことなんて、一度もないじゃない。」
「お前、寝ぼけて変な夢でも見たんじゃないか?」
「変な夢?」
その言葉で、この不気味な空間にいる時よりも前の記憶を振り返る。
確かあの時は、異世界で勇者サマとやらと戦っていた。
その時に、勇者サマのお仲間のおっさんが、変な術を俺に向けてきて、うっかりそれを喰らってしまって....。
そこからの記憶がない。
ということは、ここは、おっさんの術で見ている幻の世界か?
「....なるほどな。確かに変な夢だ。」
「迅?」
「どんな夢を見たんだ?」
「お前らクソ親が、虐待を一切しない夢。」
「それのどこが変なの?」
「当たり前のことじゃないか。」
「虐待しないのが当たり前?よく言うぜ、お前ら。俺が死にかけて病院に運ばれるまで、散々蹴ったり殴ったりしてきたくせに。」
「だから迅、さっきから何と勘違いしているんだ?俺達が、大好きな一人息子のお前にそんな酷いことをするはずないだろ?」
「そうよ!ちゃんと思い出して。私達が今までどれだけ迅を愛していたか。変な勘違いに惑わされないで。」
二人は俺に諭すように、優しく抱きしめた。
その暖かさは、今までに感じたことのない、不思議な感覚だった。
その不思議な感覚は、もっと感じていたいと思う程に中毒性があった。
....もしかして俺の記憶の方が、おかしいのか?
俺は冷静に、過去の記憶を振り返ってみる。
子どもの頃はコイツらに虐待されて。
死にかけて病院に運ばれた後は、養護施設に入って。
養護施設に入ってからは、学校で毎日クソみたいな嫌がらせをされて。
それから、それからーーーー。
「ちゃんと思い出して、ようやくわかった。」
「本当か?」
「良かったわ。やっと私達がどれだけ愛していたか、思い出してくれて。」
「ハッ!違ぇよ!」
「え?」
「お前らが偽物だってことが、よくわかったってことだよ!」
この世界は、俺がこの世界から出ようと思わないように、あのおっさんが作った罠だ。
大好き?
愛してる?
そんな小説や漫画にしか出てこない概念を出せば、俺がずっとここにいるとでも思ったのか?
こんな、絵に描いたような幸せな家庭に俺を当てがえば、俺が満足して夢から出てこないと思っているのか?
ふざけやがって。
愛も友情も、この世に存在しないんだよ。
この世界にある愛や友情は、全部まやかしだ。
それを理解できない奴らは、世間知らずの馬鹿だ。
俺は、まやかしの家族愛に騙されるほど馬鹿じゃない。
俺は今更、愛情や友情を期待してしまうほど、世間知らずなガキじゃない。
「迅、お願い!私達がどれだけ迅を好きか、思い出して!」
「そうだ!今度3人で旅行に行こう。そしたら嫌なことも忘れるぞ。」
「うるさい、黙れ!」
消えろ。
消えろ、消えろ!
俺は偽物の両親に、部屋にある家具を片っ端から投げつけて消そうとした。
こんな夢、さっさと醒めろ!
あんなおっさんの胸糞悪い術に、いつまでも拘束されてたまるか!
俺は何度も、この悪夢から出たいと叫んだ。
そしたらーーーーー。
気づけば俺は目を覚まし、勇者サマ達と再び戦い始めた。
....ここは?
気づけば俺は、見覚えのあるボロアパートにいた。
部屋の間取りや窓から見える景色は、俺の知っているあのボロアパートと同じだったが、部屋の内装に違和感があった。
部屋の中は物が多いものの、綺麗に片付いている。
「迅、夜ご飯ができたわよ。」
するとキッチンから朗らかな笑顔の女が、皿を持ってリビングにやってきた。
その女の顔に見覚えがある。俺の母親だった女だ。
不機嫌な顔しか記憶にないからか、女の笑顔が不気味で仕方ない。
女は持ってきた料理を机に置いて、俺の顔をまじまじと見つめた。
「迅、どうしたの?何だか元気が無さそうだけど...?今日は迅の大好きなハンバーグよ。」
俺に優しく話しかけるこの女は、本当に母親だったあの女か?
「.....テメェ、今更母親ヅラして何のつもりだ?」
喋ると同時に、自分の声の違和感に気づいた。
声変わりする前の声になっている。
よく身体を見回すと、俺は小学生くらいに若返っていた。
「母親ヅラ、なんて酷い言い草ね。私は正真正銘、迅の母親よ。」
「うるせぇ!お前なんざ、血が繋がってるだけの他人だ!お前みたいなクソババア、さっさと消えちまえ!」
俺は、女が持ってきた皿を、女の顔面に投げつけた。
すると女は皿を取って顔をタオルで拭くと、俺に怒るどころか、そっと抱きしめた。
「迅、何か嫌なことでもあった?さっきから変よ。お母さんに話してみてちょうだい。」
変なのはお前の方だ。
さっきから、なぜ怒らない?
「ただいまー!」
その時、突然玄関の扉の開く音とともに男の声が響いた。
コイツも見覚えがある。
俺の父親だった男だ。
男は仕事帰りだからか、キッチリとしたスーツを着ていた。
俺の記憶にある、だらしない服装でビール臭い父親とは似ても似つかない。
「あなた、おかえり!今日ね、迅の様子が少し変なのよ。」
「ん?どうした、迅?」
その男は俺に近づくと、怒鳴ったり蹴ったりせずに、俺の目を見て優しく話しかけた。
「何か悩みでもあるのか?言ってみろ。」
コイツもコイツで変だ。
今更父親ヅラされても不愉快でしかない。
「...変なのはお前らの方だろ。今更改心して、いい親になったつもりか?言っておくが、お前らが俺をサンドバッグみたいにボロクソに扱ったこと、一生忘れねぇからな!いつかお前らに倍返ししてやるから、覚悟しておけよ!」
俺が怒鳴ると、二人はキョトンとして顔を見合わせた。
「迅、さっきから何の話をしているの?私達が迅を殴ったことなんて、一度もないじゃない。」
「お前、寝ぼけて変な夢でも見たんじゃないか?」
「変な夢?」
その言葉で、この不気味な空間にいる時よりも前の記憶を振り返る。
確かあの時は、異世界で勇者サマとやらと戦っていた。
その時に、勇者サマのお仲間のおっさんが、変な術を俺に向けてきて、うっかりそれを喰らってしまって....。
そこからの記憶がない。
ということは、ここは、おっさんの術で見ている幻の世界か?
「....なるほどな。確かに変な夢だ。」
「迅?」
「どんな夢を見たんだ?」
「お前らクソ親が、虐待を一切しない夢。」
「それのどこが変なの?」
「当たり前のことじゃないか。」
「虐待しないのが当たり前?よく言うぜ、お前ら。俺が死にかけて病院に運ばれるまで、散々蹴ったり殴ったりしてきたくせに。」
「だから迅、さっきから何と勘違いしているんだ?俺達が、大好きな一人息子のお前にそんな酷いことをするはずないだろ?」
「そうよ!ちゃんと思い出して。私達が今までどれだけ迅を愛していたか。変な勘違いに惑わされないで。」
二人は俺に諭すように、優しく抱きしめた。
その暖かさは、今までに感じたことのない、不思議な感覚だった。
その不思議な感覚は、もっと感じていたいと思う程に中毒性があった。
....もしかして俺の記憶の方が、おかしいのか?
俺は冷静に、過去の記憶を振り返ってみる。
子どもの頃はコイツらに虐待されて。
死にかけて病院に運ばれた後は、養護施設に入って。
養護施設に入ってからは、学校で毎日クソみたいな嫌がらせをされて。
それから、それからーーーー。
「ちゃんと思い出して、ようやくわかった。」
「本当か?」
「良かったわ。やっと私達がどれだけ愛していたか、思い出してくれて。」
「ハッ!違ぇよ!」
「え?」
「お前らが偽物だってことが、よくわかったってことだよ!」
この世界は、俺がこの世界から出ようと思わないように、あのおっさんが作った罠だ。
大好き?
愛してる?
そんな小説や漫画にしか出てこない概念を出せば、俺がずっとここにいるとでも思ったのか?
こんな、絵に描いたような幸せな家庭に俺を当てがえば、俺が満足して夢から出てこないと思っているのか?
ふざけやがって。
愛も友情も、この世に存在しないんだよ。
この世界にある愛や友情は、全部まやかしだ。
それを理解できない奴らは、世間知らずの馬鹿だ。
俺は、まやかしの家族愛に騙されるほど馬鹿じゃない。
俺は今更、愛情や友情を期待してしまうほど、世間知らずなガキじゃない。
「迅、お願い!私達がどれだけ迅を好きか、思い出して!」
「そうだ!今度3人で旅行に行こう。そしたら嫌なことも忘れるぞ。」
「うるさい、黙れ!」
消えろ。
消えろ、消えろ!
俺は偽物の両親に、部屋にある家具を片っ端から投げつけて消そうとした。
こんな夢、さっさと醒めろ!
あんなおっさんの胸糞悪い術に、いつまでも拘束されてたまるか!
俺は何度も、この悪夢から出たいと叫んだ。
そしたらーーーーー。
気づけば俺は目を覚まし、勇者サマ達と再び戦い始めた。
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