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第18話:武闘会
【76】武闘会(1)
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新学期が始まって数日後。
その日、夏休み開け早々に行った実力テストの結果が廊下に張り出されていた。
「うわぁ~!E評価かよ、クソッ。」
タクトはお粗末な結果を見て、ガクリと肩を落とした。
「お兄ちゃん、夏休みの課題もやってなかったんだから当然だよ。自業自得。」
励ますどころか辛辣な言葉をかけるのはライラだった。
「それでもE評価は酷いよ。タクトくん、剣技だけじゃなくて座学も頑張ろう。」
「うるせー、ゼル!テメェはD評価だろ。俺と大して変わらないクセに偉そうにすんじゃねぇ!」
むしろもっと頑張るべきなのはゼルだと思う。
曲がりなりにも30超えてるんだから、学生のテストで平均点くらいは取れよ。
「私はギリギリB評価かぁ。一応、平均以上で良かった。」
「ライラさんもB評価?実は僕もなんだ。もう少し頑張ればA評価になれたんだけどね。」
ライラもホリーもB評価なのか。
二人とも魔法が全然使えないから、テストも出来なさそうなイメージだった。
まぁ座学は魔法の才能とは関係ないし、真面目な2人がテストの点が良いのはある意味必然か。
「僕は学年3位か。もっと頑張らないとなぁ。」
「これだけの結果を残しているのに『もっと頑張る』だなんて、向上心が凄いですよ殿下。そんなところも素敵です♪私ももっと勉強しないとなぁ。」
「カタリーナちゃんだって、学年12位なの相当凄いよ。」
殿下とカタリーナはA評価か。
ま、妥当だな。
「ハッ!王族のクセに学年3位かよ。さすがは王族の恥だな。」
そんな中、急に喧嘩を売ってきたのはレオンと取り巻き連中だった。
「何よ、王族でもないのに偉そうに!そういうアンタはレックス殿下より成績いい取ったワケ?」
「おいブス。お前、まともに字も読めないのか?そこに俺様の名前があるのが分からないのか?」
レオンが指差した方をみると、そこにはレオンの名前があった。
レオンは学年2位。殿下よりも上だ。
「くっ!無駄に成績良いのが腹が立つ!」
「学年12位のアホなブスでも、俺様の偉大さが分かっただろう?」
「いいえ、ちっとも分かりませーん!学年12位のアホなので。アンタなんか全然凄くありませーん!」
レオンの成績が良いのがよほど悔しかったのか、カタリーナはいつも以上に苛立っていた。
「...ククク。」
ついに来た。
この時をどれ程楽しみにしていたことか。
「あれれー?そこにいるのって、もしかして残念貴族のレオン卿ですか?」
調子に乗ってるレオンを蔑むように笑ってやった。
するとさっきまで機嫌良くカタリーナ達を馬鹿にしていたレオンが、あからさまに不機嫌になった。
「そういう貴様は、成り上がり公爵家の半分平民じゃないか。穢らわしい血の分際で俺様に口ごたえするつもりか?」
「これはこれは失礼しました。穢らわしい身分で話しかけてしまい、すみません。ところで由緒正しい家柄のレオン卿は、実力テストでさぞかし素晴らしい成績を残されたのでしょうね?」
俺がそう言うと、レオンは悔しさのあまりに舌打ちをした。
無理もない。
なんせ学年首席は俺なんだから。
「あれー?由緒正しい優れた血筋のレオン卿が、まさかまた僕より下だなんて驚きです!
魔力測定で才能ナシと判定された半分平民の僕ですら学年首席になれたのに、不思議ですねぇ。
....もしかして、やっぱりレオン卿って貴族の中でも出来損ないのお馬鹿さんなのですか?」
煽りに煽りまくると、レオンは顔を真っ赤にして逃げるようにその場を去った。
奴の悔しそうな顔は最高だ。
さっきの煽り文句を言うために毎日徹夜で勉強した甲斐があった。
魔力測定での結果を聞いたときは最悪だったが、今となってはレオンを煽る材料になったからむしろ良かった。
「凄ぇな、フレイ!また学年首席かよ。」
「まぁ、この日のために毎日徹夜で勉強し続けましたからね。」
「フレイくん、そんなに頑張っていたんだ。なんだか意外よね。フレイくんって、深夜までスマドゲームしているイメージだったわ。」
「確かにゲームはしていますけど、勉強もちゃんとやっていますよ?」
「でしょうね。じゃないと学年首席になれるわけないわ。」
「それに勉強するのって楽しいじゃないですか。」
「はぁ?何言ってんの、お前?」
「だって、勉強でいい点とったらレオン卿が悔しがる顔が見れるんですよ?想像しただけで面白いじゃないですか。」
「......お前、相変わらずいい性格してるよな。」
「え、本当ですか?僕、性格が良いって初めて言われたかもしれません。」
「いや、いい性格って、性格がいいことじゃねーから!」
そんな談笑をしながら、俺達は教室へ戻った。
◆◆◆
今日の授業がひと通り終わり、ホームルームの時間になった。
「今日は来月の武闘会の個人競技に出るメンバーを決めるよ♪」
武闘会とは、いわゆる運動会みたいなものだ。
多種多様な競技があり、それぞれの競技でクラス対抗で競い合う。
そして競技での順位によってポイントが加算され、総合ポイントが一番高かったクラスが優勝する。
...と、これだけ聞くと運動会と同じだが、武闘会は運動会と違って魔法や魔術も使用できる。
武闘会には個人競技と団体競技があり、個人競技は代表者だけが出場し、団体競技はクラス全員での参加となる。
個人競技に出られるのはクラスで数人だけなので、出来れば参加してみたい。
シヴァは淡々と、黒板に個人競技と参加人数を箇条書きした。
・障害物競走(2名)
・属性魔法当て(3名)
・ドラゴンバスタ―(3名)
・多種目リレー(4名)
・バトルロワイアル(1名)
…と、ひと通り書き終えたところで、シヴァは俺達の方を向いて説明を始めた。
「個人競技は黒板に書いた5種目のみです。バトルロワイアル以外は重複して出場することもできるよ!まずはバトルロワイアルに誰が参加するか、みんなで決めようか。バトルロワイアルは一番ハードな競技だから、クラスで一番強い人が出場するのが良いかな。」
バトルロワイヤルは各クラスの代表者1名が集結し、戦闘不能になるまで戦い、最強の一人を決める競技だ。
兄さんの武闘会を観に行ったことがあるが、確かにバトルロワイアルは一番ハードで、一番盛り上がる競技だった。
面白そうだとは思うが、他の競技も気になる。
バトルロワイアルに参加したら他の競技に出られないし、ここは見送るか。
「バトルロワイアルの参加者は誰がいいかな?自薦・他薦オッケーだよ!」
「はいはーい!俺、参加しまーす!」
前のめりになりながら挙手したのは、タクトだった。
自信家のタクトらしい。
ま、タクトは座学はアレだがそれなりに戦えるし、妥当なんじゃね?
「タクトくんの他に立候補する人はいるー?」
すると今度はレオンが手を挙げた。
レオンがバトルロワイアルに出て万が一にでも活躍したら、益々俺達に対して調子に乗った態度を取ってきそうだ。
だからコイツには絶対参加してほしくない。
「レオンくんも立候補だね!」
「いえ、違います。ある人を推薦するために挙手しました。」
あのプライドの塊な俺様野郎が推薦、だと?!
意外な発言に思わず目が点になった。
「オッケー、推薦だね。誰を推薦するの?」
「フレイ・ライトニングくんを推薦します。」
はぁ?
よりによって俺かよ!
アイツに限って、俺の実力を認めたから推薦したのだとは思えない。
...何を企んでいやがる?
「彼は学年首席ですし、クラスで一番魔法の腕があります。魔物村で魔物が暴れたときに逃げ出すような臆病者ですが、潜在能力は一番高いと思ったので彼を推薦しました。」
レオンとその取り巻きは、ニヤニヤ笑いながら俺の方を見た。
なるほど、そういうことか。
アイツらは俺が戦えないと思っているから、俺に一番ハードな競技に出場させて恥をかかせようとしているんだ。
...その挑発、乗ってやるよ。
「推薦されたのでしたら仕方ありません。僕も参加します。」
「ハッ!強がっちゃって、かわいー!」
「尻尾撒いて逃げるなら今の内だぞ!」
「まぁまぁお前ら、そう言うな。ああ見えて奴はとっても優秀なんだぞ?なんせ、魔法の才能ゼロの半分平民なのに俺様よりも成績が良いんだからな。まさかそんな彼が、バトルロワイアルで他のクラスの連中にボコボコにされるわけがなかろう。」
レオンは俺を擁護するように取り巻きに諭しているが、半笑いで言っているから本心は真逆なのだろう。
むしろ他のクラスの連中にあっさり倒されると思っていそうだ。
「そうですね。なんせ僕は、由緒正しい貴族のレオン卿より座学も実技も優れていますから。バトルロワイアルで一人勝ちするのだって余裕です。」
煽られたら煽り返す。
それが俺の流儀だ。
「おいフレイ。そんなこと言って大丈夫か?お前、戦闘経験あんのかよ。」
むしろお前より戦闘経験豊富だ。
「大丈夫です。任せてください。」
「本当か?お前、いつもヤバくなった時どっかに逃げるじゃねぇか。」
「別に逃げてるわけじゃないですよ。戦うのが面倒だから避けてるだけです。」
「本当に、本当かぁ~?」
タクトは疑いの眼差しで俺を見つめる。
よっぽど戦えない奴って思われてんだな、俺。
「はいはーい!それじゃあ2人以外に立候補する人、いる?いなかったら多数決で決めるよ!」
シヴァが候補者を募るも、挙手する奴はいなかった。
ということはバトルロワイアルに出るのは俺かタクトのどちらかか。
「それじゃあ多数決を採るよ~♪まずはタクトくんがいい人は手を挙げて!」
するとタクトを含む半数近くが手を挙げた。
というか、ライラやカタリーナ達まで手を挙げてる。
「えっ、みんな...なぜですか?」
いつも一緒にいるのに誰も俺に入れてくれないなんて、少し裏切られた気分だ。
「だってフレイくん、どちらかといえば文化部っぽいもの。口喧嘩は強くてもガチの喧嘩は弱そうに見えるというか...。」
「カタリーナさんに同意。フレイくんには悪いけど、まともに戦っている姿が想像できないよ。」
カタリーナとゼルはいつか血反吐を吐くまでぶん殴ってやろう。
「僕はフレイくんが悪いというよりかは、タクトくんが強いのを知っているから投票したよ。タクトくんだったら絶対一番になれるよ。」
「へへっ。サンキューな、レックス!」
それだったら殿下は許してやるか。
「私はむしろ、フレイくんには他の個人競技にいっぱい出て欲しいから、あえてフレイくんに入れなかったの。」
「ライラさんも?実は僕も同じことを考えてたんだ。特に属性魔法当てとか、全属性の初級魔法が使えるフレイくんがいたら、かなり有利だからね。」
「障害物競走と多種目リレーも、色んな魔法が使える人が有利だからフレイくんが出てくれたら心強いもんね。」
「バトルロワイアルだけ出るより、他の種目に沢山出て活躍してくれた方が、いっぱいポイントを稼げそうだよね。1種目だけに固定されちゃうのは勿体無いよ。」
ライラとホリーがそこまで言うなら諦めてやってもいいか。
と一瞬思ったが、やっぱりダメだ。
ここで辞退したらレオンが調子に乗る。
「他にタクトくんがいいっていう人はいないね?それじゃあ、今度はフレイくんがいい人、手を挙げて!」
すると半数近くの生徒が手を挙げていた。
その中にはもちろん、レオンとその取り巻き連中も入っていた。
完全に票が割れたな。
「えーっと、13対14だから、ギリギリフレイくんの勝ちだね!」
「クソッ!」
選ばれなかったタクトは悔しそうに歯を食いしばった。
「おめでとーフレイくん!無事に選ばれて良かったねー!」
「せいぜい、バトルロワイアルで恥かかないようにね~!」
一方のレオンの取り巻きどもは、思惑通り俺が選ばれたことで調子に乗っていやがる。
「ありがとうございます。皆さんの期待に応えられるように頑張りますね!」
コイツらを黙らせるにはバトルロワイアルで結果を出すしかなさそうだ。
それまでの間コイツらが調子に乗って煽ってくるのをスルーするしかないが、それもバトルロワイアルまでの辛抱だ。
むしろバトルロワイアルで圧勝した後のレオン達を想像しただけで面白い。
「それじゃあ、他の個人競技のメンバーも決めていこっか♪」
残りの個人競技はそれほど揉めることなく、あっさりと決まった。
身体能力の高い殿下とタクト、それからレオンは、重複して個人競技に参加していた。
魔法がそこそこ使えるゼルやカタリーナも、個人競技に出るようだ。
魔法が苦手なライラとホリーは個人競技には出ないようだ。
「これで個人競技のメンバーは全員決まったね!今回参加できなかった子は来年またチャレンジしてね♪
それと個人競技に出れなくても学年優勝や総合優勝をしたらクラス全員の評価が上がるから、みんな気合い入れて頑張ろうね~♪」
こうして俺達は武闘会にむけて、各々身体や魔法を鍛え始めた。
その日、夏休み開け早々に行った実力テストの結果が廊下に張り出されていた。
「うわぁ~!E評価かよ、クソッ。」
タクトはお粗末な結果を見て、ガクリと肩を落とした。
「お兄ちゃん、夏休みの課題もやってなかったんだから当然だよ。自業自得。」
励ますどころか辛辣な言葉をかけるのはライラだった。
「それでもE評価は酷いよ。タクトくん、剣技だけじゃなくて座学も頑張ろう。」
「うるせー、ゼル!テメェはD評価だろ。俺と大して変わらないクセに偉そうにすんじゃねぇ!」
むしろもっと頑張るべきなのはゼルだと思う。
曲がりなりにも30超えてるんだから、学生のテストで平均点くらいは取れよ。
「私はギリギリB評価かぁ。一応、平均以上で良かった。」
「ライラさんもB評価?実は僕もなんだ。もう少し頑張ればA評価になれたんだけどね。」
ライラもホリーもB評価なのか。
二人とも魔法が全然使えないから、テストも出来なさそうなイメージだった。
まぁ座学は魔法の才能とは関係ないし、真面目な2人がテストの点が良いのはある意味必然か。
「僕は学年3位か。もっと頑張らないとなぁ。」
「これだけの結果を残しているのに『もっと頑張る』だなんて、向上心が凄いですよ殿下。そんなところも素敵です♪私ももっと勉強しないとなぁ。」
「カタリーナちゃんだって、学年12位なの相当凄いよ。」
殿下とカタリーナはA評価か。
ま、妥当だな。
「ハッ!王族のクセに学年3位かよ。さすがは王族の恥だな。」
そんな中、急に喧嘩を売ってきたのはレオンと取り巻き連中だった。
「何よ、王族でもないのに偉そうに!そういうアンタはレックス殿下より成績いい取ったワケ?」
「おいブス。お前、まともに字も読めないのか?そこに俺様の名前があるのが分からないのか?」
レオンが指差した方をみると、そこにはレオンの名前があった。
レオンは学年2位。殿下よりも上だ。
「くっ!無駄に成績良いのが腹が立つ!」
「学年12位のアホなブスでも、俺様の偉大さが分かっただろう?」
「いいえ、ちっとも分かりませーん!学年12位のアホなので。アンタなんか全然凄くありませーん!」
レオンの成績が良いのがよほど悔しかったのか、カタリーナはいつも以上に苛立っていた。
「...ククク。」
ついに来た。
この時をどれ程楽しみにしていたことか。
「あれれー?そこにいるのって、もしかして残念貴族のレオン卿ですか?」
調子に乗ってるレオンを蔑むように笑ってやった。
するとさっきまで機嫌良くカタリーナ達を馬鹿にしていたレオンが、あからさまに不機嫌になった。
「そういう貴様は、成り上がり公爵家の半分平民じゃないか。穢らわしい血の分際で俺様に口ごたえするつもりか?」
「これはこれは失礼しました。穢らわしい身分で話しかけてしまい、すみません。ところで由緒正しい家柄のレオン卿は、実力テストでさぞかし素晴らしい成績を残されたのでしょうね?」
俺がそう言うと、レオンは悔しさのあまりに舌打ちをした。
無理もない。
なんせ学年首席は俺なんだから。
「あれー?由緒正しい優れた血筋のレオン卿が、まさかまた僕より下だなんて驚きです!
魔力測定で才能ナシと判定された半分平民の僕ですら学年首席になれたのに、不思議ですねぇ。
....もしかして、やっぱりレオン卿って貴族の中でも出来損ないのお馬鹿さんなのですか?」
煽りに煽りまくると、レオンは顔を真っ赤にして逃げるようにその場を去った。
奴の悔しそうな顔は最高だ。
さっきの煽り文句を言うために毎日徹夜で勉強した甲斐があった。
魔力測定での結果を聞いたときは最悪だったが、今となってはレオンを煽る材料になったからむしろ良かった。
「凄ぇな、フレイ!また学年首席かよ。」
「まぁ、この日のために毎日徹夜で勉強し続けましたからね。」
「フレイくん、そんなに頑張っていたんだ。なんだか意外よね。フレイくんって、深夜までスマドゲームしているイメージだったわ。」
「確かにゲームはしていますけど、勉強もちゃんとやっていますよ?」
「でしょうね。じゃないと学年首席になれるわけないわ。」
「それに勉強するのって楽しいじゃないですか。」
「はぁ?何言ってんの、お前?」
「だって、勉強でいい点とったらレオン卿が悔しがる顔が見れるんですよ?想像しただけで面白いじゃないですか。」
「......お前、相変わらずいい性格してるよな。」
「え、本当ですか?僕、性格が良いって初めて言われたかもしれません。」
「いや、いい性格って、性格がいいことじゃねーから!」
そんな談笑をしながら、俺達は教室へ戻った。
◆◆◆
今日の授業がひと通り終わり、ホームルームの時間になった。
「今日は来月の武闘会の個人競技に出るメンバーを決めるよ♪」
武闘会とは、いわゆる運動会みたいなものだ。
多種多様な競技があり、それぞれの競技でクラス対抗で競い合う。
そして競技での順位によってポイントが加算され、総合ポイントが一番高かったクラスが優勝する。
...と、これだけ聞くと運動会と同じだが、武闘会は運動会と違って魔法や魔術も使用できる。
武闘会には個人競技と団体競技があり、個人競技は代表者だけが出場し、団体競技はクラス全員での参加となる。
個人競技に出られるのはクラスで数人だけなので、出来れば参加してみたい。
シヴァは淡々と、黒板に個人競技と参加人数を箇条書きした。
・障害物競走(2名)
・属性魔法当て(3名)
・ドラゴンバスタ―(3名)
・多種目リレー(4名)
・バトルロワイアル(1名)
…と、ひと通り書き終えたところで、シヴァは俺達の方を向いて説明を始めた。
「個人競技は黒板に書いた5種目のみです。バトルロワイアル以外は重複して出場することもできるよ!まずはバトルロワイアルに誰が参加するか、みんなで決めようか。バトルロワイアルは一番ハードな競技だから、クラスで一番強い人が出場するのが良いかな。」
バトルロワイヤルは各クラスの代表者1名が集結し、戦闘不能になるまで戦い、最強の一人を決める競技だ。
兄さんの武闘会を観に行ったことがあるが、確かにバトルロワイアルは一番ハードで、一番盛り上がる競技だった。
面白そうだとは思うが、他の競技も気になる。
バトルロワイアルに参加したら他の競技に出られないし、ここは見送るか。
「バトルロワイアルの参加者は誰がいいかな?自薦・他薦オッケーだよ!」
「はいはーい!俺、参加しまーす!」
前のめりになりながら挙手したのは、タクトだった。
自信家のタクトらしい。
ま、タクトは座学はアレだがそれなりに戦えるし、妥当なんじゃね?
「タクトくんの他に立候補する人はいるー?」
すると今度はレオンが手を挙げた。
レオンがバトルロワイアルに出て万が一にでも活躍したら、益々俺達に対して調子に乗った態度を取ってきそうだ。
だからコイツには絶対参加してほしくない。
「レオンくんも立候補だね!」
「いえ、違います。ある人を推薦するために挙手しました。」
あのプライドの塊な俺様野郎が推薦、だと?!
意外な発言に思わず目が点になった。
「オッケー、推薦だね。誰を推薦するの?」
「フレイ・ライトニングくんを推薦します。」
はぁ?
よりによって俺かよ!
アイツに限って、俺の実力を認めたから推薦したのだとは思えない。
...何を企んでいやがる?
「彼は学年首席ですし、クラスで一番魔法の腕があります。魔物村で魔物が暴れたときに逃げ出すような臆病者ですが、潜在能力は一番高いと思ったので彼を推薦しました。」
レオンとその取り巻きは、ニヤニヤ笑いながら俺の方を見た。
なるほど、そういうことか。
アイツらは俺が戦えないと思っているから、俺に一番ハードな競技に出場させて恥をかかせようとしているんだ。
...その挑発、乗ってやるよ。
「推薦されたのでしたら仕方ありません。僕も参加します。」
「ハッ!強がっちゃって、かわいー!」
「尻尾撒いて逃げるなら今の内だぞ!」
「まぁまぁお前ら、そう言うな。ああ見えて奴はとっても優秀なんだぞ?なんせ、魔法の才能ゼロの半分平民なのに俺様よりも成績が良いんだからな。まさかそんな彼が、バトルロワイアルで他のクラスの連中にボコボコにされるわけがなかろう。」
レオンは俺を擁護するように取り巻きに諭しているが、半笑いで言っているから本心は真逆なのだろう。
むしろ他のクラスの連中にあっさり倒されると思っていそうだ。
「そうですね。なんせ僕は、由緒正しい貴族のレオン卿より座学も実技も優れていますから。バトルロワイアルで一人勝ちするのだって余裕です。」
煽られたら煽り返す。
それが俺の流儀だ。
「おいフレイ。そんなこと言って大丈夫か?お前、戦闘経験あんのかよ。」
むしろお前より戦闘経験豊富だ。
「大丈夫です。任せてください。」
「本当か?お前、いつもヤバくなった時どっかに逃げるじゃねぇか。」
「別に逃げてるわけじゃないですよ。戦うのが面倒だから避けてるだけです。」
「本当に、本当かぁ~?」
タクトは疑いの眼差しで俺を見つめる。
よっぽど戦えない奴って思われてんだな、俺。
「はいはーい!それじゃあ2人以外に立候補する人、いる?いなかったら多数決で決めるよ!」
シヴァが候補者を募るも、挙手する奴はいなかった。
ということはバトルロワイアルに出るのは俺かタクトのどちらかか。
「それじゃあ多数決を採るよ~♪まずはタクトくんがいい人は手を挙げて!」
するとタクトを含む半数近くが手を挙げた。
というか、ライラやカタリーナ達まで手を挙げてる。
「えっ、みんな...なぜですか?」
いつも一緒にいるのに誰も俺に入れてくれないなんて、少し裏切られた気分だ。
「だってフレイくん、どちらかといえば文化部っぽいもの。口喧嘩は強くてもガチの喧嘩は弱そうに見えるというか...。」
「カタリーナさんに同意。フレイくんには悪いけど、まともに戦っている姿が想像できないよ。」
カタリーナとゼルはいつか血反吐を吐くまでぶん殴ってやろう。
「僕はフレイくんが悪いというよりかは、タクトくんが強いのを知っているから投票したよ。タクトくんだったら絶対一番になれるよ。」
「へへっ。サンキューな、レックス!」
それだったら殿下は許してやるか。
「私はむしろ、フレイくんには他の個人競技にいっぱい出て欲しいから、あえてフレイくんに入れなかったの。」
「ライラさんも?実は僕も同じことを考えてたんだ。特に属性魔法当てとか、全属性の初級魔法が使えるフレイくんがいたら、かなり有利だからね。」
「障害物競走と多種目リレーも、色んな魔法が使える人が有利だからフレイくんが出てくれたら心強いもんね。」
「バトルロワイアルだけ出るより、他の種目に沢山出て活躍してくれた方が、いっぱいポイントを稼げそうだよね。1種目だけに固定されちゃうのは勿体無いよ。」
ライラとホリーがそこまで言うなら諦めてやってもいいか。
と一瞬思ったが、やっぱりダメだ。
ここで辞退したらレオンが調子に乗る。
「他にタクトくんがいいっていう人はいないね?それじゃあ、今度はフレイくんがいい人、手を挙げて!」
すると半数近くの生徒が手を挙げていた。
その中にはもちろん、レオンとその取り巻き連中も入っていた。
完全に票が割れたな。
「えーっと、13対14だから、ギリギリフレイくんの勝ちだね!」
「クソッ!」
選ばれなかったタクトは悔しそうに歯を食いしばった。
「おめでとーフレイくん!無事に選ばれて良かったねー!」
「せいぜい、バトルロワイアルで恥かかないようにね~!」
一方のレオンの取り巻きどもは、思惑通り俺が選ばれたことで調子に乗っていやがる。
「ありがとうございます。皆さんの期待に応えられるように頑張りますね!」
コイツらを黙らせるにはバトルロワイアルで結果を出すしかなさそうだ。
それまでの間コイツらが調子に乗って煽ってくるのをスルーするしかないが、それもバトルロワイアルまでの辛抱だ。
むしろバトルロワイアルで圧勝した後のレオン達を想像しただけで面白い。
「それじゃあ、他の個人競技のメンバーも決めていこっか♪」
残りの個人競技はそれほど揉めることなく、あっさりと決まった。
身体能力の高い殿下とタクト、それからレオンは、重複して個人競技に参加していた。
魔法がそこそこ使えるゼルやカタリーナも、個人競技に出るようだ。
魔法が苦手なライラとホリーは個人競技には出ないようだ。
「これで個人競技のメンバーは全員決まったね!今回参加できなかった子は来年またチャレンジしてね♪
それと個人競技に出れなくても学年優勝や総合優勝をしたらクラス全員の評価が上がるから、みんな気合い入れて頑張ろうね~♪」
こうして俺達は武闘会にむけて、各々身体や魔法を鍛え始めた。
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王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
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ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
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ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
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「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
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「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
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