転生魔王の正体は?ーー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですーー

サトウミ

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第18話:武闘会

【81】武闘会(6)

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最悪だ。

あの貴族モドキのフレイが、バトルロワイアルで優勝してしまった。
フレイが大恥をかいてレオン様の機嫌が良くなる算段だったのに、読みが外れた。

ただでさえレオン様は闘技場に来てから機嫌が悪いというのに。
きっと我々に内緒で使っていた黄金のガラケーを無くしたせいだろう。
取り巻き一同で密かに探していたが、結局見つからなかった。

「レオン卿、見てました~?貴方の期待通り、優勝しましたよー。推薦、ありがとうございました。」
案の定、フレイのカスがレオン様を煽りに来やがった。

フレイだけは本当に貴族籍から除籍されて欲しい。
こんな品のない奴が同じ公爵家だと思われるのは屈辱でしかない。
穢れた血が半分でも混ざっていると、ここまで無教養な野蛮人のようになるのだと思うと、鳥肌が立つ。

「あんなの、勝ったうちに入らねぇよ!」
「お前がたまたま運良く生き残っていたから勝てただけだろ!」

「運も実力のうちですからね。それとも貴方達はアリーシャさんやエレブン先輩から逃げ切れるほどの実力をお持ちなのでしょうか?」

卑しい血筋の分際で、いちいち口ごたえしてくるのが鬱陶しい。

「そもそもアリーシャ嬢やエレブン先輩が負けた相手は、謎の黒髪のガキだろ!関係ない第三者が介入した時点で、この結果は無効だ!」

俺はあの時、見ていた。
頭痛が始まるとともに急に眩しい光がなくなったから、頭を押さえながらアリーナへ目を向けた。
そしたら突然、謎の男が魔術を使って現れて、アリーシャ嬢とエレブン先輩を投げ飛ばしていた。
あの男はレックス殿下達と面識がありそうだったが、一体何者だったのだ?

「それは確かに一理あるわね。宮藤くんの手を借りて勝つなんて、フェアじゃないわ。」

俺の意見を肯定してくれたのはカタリーナ嬢だった。
敵対派閥のトップの娘はいえ、これ程の美女が相手だと悪態がつけられないから困る。

レオン様はよく毎度の如く『ブス』と言えたものだ。
彼女がブスだとすれば、世界中のほとんどの女性がブスになる。
それ程に彼女は気品があって美しい。
これはお世辞ではなく客観的な事実だ。

それでも彼女に見惚れることなく『ブス』と罵れるレオン様は、派閥の鏡だ。

「確かにフェアじゃないけど、彼がどの競技にどれくらい干渉していたかを説明するのは難しいんじゃないかな?それこそ、彼自身をここに呼び出さないと分からないよ。」
カタリーナ嬢に意見したのはレックス殿下だった。

殿下自体は悪い人ではないが、顔を見るたびに彼を王族として受け入れたくない自分が拒絶反応を起こす。
そもそも先王が奇行に走らなければ長男であるドカス様が予定通りに王になっていたはずだし、そしたら必然的にその息子であるレオン様が次期国王になっていたはずだ。

前例のない王位継承に加えて、平民との間に生まれた庶子。
これほどに異質な存在を、次期国王候補として受け入れられるわけがない。

「確かにそうですね。宮藤くんの居場所を捜索するのは至難の業ですし。」
「それに干渉度合いによっては、今日の武闘会自体が無かったことになるかもしれませんからね。今の結果を素直に受け入れましょう。」

フレイが都合のいいように話をまとめようとしているのは癪だが、反論が思いつかない。

「ハッ!あの黒髪頭の協力がなければ、お前如きがバトルロワイアルで優勝できるはずがないからな。せいぜい、黒髪頭に感謝するんだな。このビビりの半分平民が。」

レオン様は吐き捨てるようにフレイに悪態をついてその場を去った。
俺達取り巻き一同も、レオン様について行くようにレックス殿下達から離れた。

フレイのせいでレオン様はいつも以上にピリピリしている。
どうしたものか。
いつもならフレイやタクト・ブレイブの悪口でも言って気を紛らわせるが、今それをすると逆効果だ。

「そ、そういえばレオン様。これ、落ちてました。」
取り巻きの1人がレオン様にあるものを差し出した。
黄金に輝くそれは、レオン様が無くしたガラケーだった。

よりにもよって、今ガラケーを出すなんて馬鹿じゃないのかコイツは。
ガラケーはアーロン卿フレイの祖父の主力商品だぞ!

レオン様は渡されたガラケーを、無表情で受け取った。
ガラケーはよく見ると、画面が割れてヒビが入っていた。
....これは、怒っているのか?

「よくやった。褒めてやる。」
良かった。怒っていない。

「このガラケーを分析して、これ以上の通信機器を我がコーキナル家が売り出せば、目障りなアーロン卿やダイフク商会の鼻をあかすことができるな。」

流石はレオン様。
我々に隠れて使っていたのは敵商品を分析するためだったのだろう。
我々がガラケーを欲しがらないように、あえて目に触れないように配慮していたのだ。
派閥内の『敵商品だけどガラケーやスマドが欲しい』という潜在的な要望に応えるため、商品開発に勤しんでいたのだ、きっと。

「それは素晴らしいです、レオン様。ぜひその通信機器事業に僕の家からも出資させてください!」
「私も出資します!」

レオン様の話に、取り巻き一同は目をキラキラと輝かせていた。
みんな内心ではガラケーやスマドが欲しかったんだろうな。

取り巻き一同のリアクションを見て、さっきまで顰めっ面だったレオン様は口角を上げて嬉しそうにした。

「おう、お前ら。褒めてやる。出資を受けたからにはガラケーやスマドのような安っぽい道具にはしないぞ。高貴な家柄の人間が持つに相応しい、高性能で気品ある道具を開発してやるからな!」

「素晴らしいです!」
「最高です!レオン様!」

この時、レオン様どころか取り巻き一同も、今日一番にテンションが上がったのは言うまでもなかった。
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