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第19話:鉱山探索
【84】鉱山探索(3)
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人里から離れて、風の音くらいしか聞こえない、静かな夜のアスオ鉱山。
街灯が一切存在しないため、星の明かりが届かない鉱山内は闇と言っても過言ではなかった。
昼間は観光客がそこそこいたが、今は人っこ一人見当たらない。
鉱山の入り口には『営業時間外のため立ち入り禁止』と書かれた看板が立っていた。
「うわぁ。なんだか心霊スポットみたい。幽霊とか出そうで、ちょっと怖いわね。」
「シンレイスポット?ユウレイ?」
「こっちの世界風に言えば、『魔物』と『魔物の生息地』みたいなものね。正確に言えば全然違うけど、本質的には多分同じよ。」
いや、全然違うだろ!
「へー。それはともかく、中に入るぞ。」
「待って。中は真っ暗だけど、2人とも明かりになるようなものは持ってきたの?」
「大丈夫。それなら魔法で炎を出せばいいだろ?」
「火は駄目よ!洞窟の中で火を使っていたら、酸欠になるかもしれないし。」
「サンケツ?」
「要するに、息ができなくなるってことよ。」
へー。知らなかった。
というか、どこで聞いた知識だよ。
「だったらコレならどうだ?初級光魔法!」
するとタクトの手の平に、小さな光の球が現れた。
「それなら僕も!」
ゼルはタクトの真似をするように初級光魔法を繰り出す。
タクトの初級光魔法は拳大程度の大きさなのに対し、ゼルのは人の頭くらいの大きさはあった。
「なんだよ。お前の方が得意なんだったら、別に俺が出す必要ねーじゃん。」
「そんなことないよ。鉱山の中は暗いから光源は多いに越したことはないし。」
「そうよそうよ。2人とも初級光魔法が使えて助かったわ。私、光魔法って全然使えないのよね。」
「そういやカタリーナって、光属性が不適正だもんな。仕方ねぇよ。」
「逆にこの場にフレイくんがいたら、鉱山中が明るくなったかもね。」
「いや、アイツの場合は光が眩しすぎて逆に全然見えねぇだろ。」
「確かにキメイラ帝国の時も、武闘会の時も、光が強すぎて目が開けられなかったわよね。」
思わぬところで俺の話題が出で、虚をつかれた。
まぁ、陰口じゃねえから別にいいけど。
「それより、光もあるわけだし、早く入ろう。」
「あぁ。」
「そうね。」
3人は『立入禁止』の看板を無視して、初級光魔法の明かりを頼りに鉱山の中へと入っていった。
3人はしばらく、黙々と道なりに進んだ。
「この辺は、昼間に見学した場所だよね?このまま進んだら出口に行くけど、2人とも、何か気になる場所でもあるの?」
「えぇ。もう少しでその場所に辿り着くはずよ。」
「つーか、もう着いたぞ。」
タクトは、立入禁止の看板の立った細い横道を指差した。
そういえばあったな、そんな道。
昼間に鉱山見学に行ったばかりなのに、タクトが指差すまですっかり忘れていた。
「こっちの道に何かありそうだって、俺の勘が言ってる。」
「私の勘も!」
「勘って....2人とも根拠もなくここに来たの?」
ゼルは呆れて言葉を失った。
「だって手がかりが全然無いんだもの。」
「シナリオにも正確な場所が書いてないんだったら、勘で探すしかねーだろ。」
「それに、こういう時の女の勘は当たるのよ!信じなさい。」
何が『女の勘』だ。
傍から見ている俺ですら、2人の話を聞いているのがアホらしくなってきた。
2人は勘を信じて、立入禁止の看板をどけて横道を進む。
ゼルはもはや呆れて質問する気もなくなったのか、小さくため息をついて2人の後についていった。
「...にしても、足場が悪ぃな、ここ。」
「そりゃあ、立入禁止にしているくらいだからね。」
『当たり前だ』と言わんばかりの呆けた顔で、ゼルはタクトの小言にツッコむように答えた。
「身軽な服装にしていて正解だわ。こんなところ、いつもの服装だと移動しづらい上にボロボロになるわ。」
「確かに、貴族令嬢の服装って、無駄にヒラヒラしていて動きづらそうだよね。」
「だな!それにカタリーナは貴族令嬢って柄じゃねえだろ。今の格好の方がお似合いだ。」
「タクトくん.....頭、圧縮しようか?」
「ハハハ....冗談、真に受けるなよ。」
3人は雑談も交えつつ、前へと足を運ぶ。
道は進むにつれて細くなっていった。
「ここで行き止まりか。」
3人が行き着いた先は崖になっていた。
どおりで立入禁止になっているわけだ。
「え?なんで?」
タクトの後ろにいたカタリーナは、前方が見えづらいからか、タクトの背中に乗っかるようにして前を覗こうとする。
だが、そのせいでタクトがバランスを崩し、2人揃って崖から落ちてしまった。
「タクトくん!カタリーナさん!」
ゼルは落ちた2人を追いかけるように崖から飛び降りた。
....2人の後を追うより、一旦外に出てロープを持っていくなり応援を呼ぶなりした方が良いんじゃないか?
「....痛ぇ。おいカタリーナ!急に押すんじゃねーよ!」
「ごめんごめん。押す気はなかったの。」
崖はそこまで高くなかったのか、2人とも落ちたのに平気そうだ。
「2人とも、大丈夫?」
程なくしてゼルも落ちてきて、2人と合流した。
「あぁ。それより、こっからどうする?」
「戻ろうと思っても、この崖は反ってるから登るのは難しそうよ。それにこの暗闇の中、初級光魔法程度の明かりで足場を確認しながら登るのはちょっと危ないわ。仕方ないから、ここから戻れる道を探しましょう。」
3人は初級光魔法を使って、辺りを探索した。
「あれ?なんだろう。」
すると、棺のような形の大きくて黒い謎の物体を見つけた。
「これって、魔法石の塊か?」
「いやいや、どう見ても人工的に作られた何かよ。こんな綺麗な直方体の鉱石が、自然に存在するわけがないわ。」
3人はその物体を調べる。
「あ?何だこりゃ?」
「あっ!コレって...!」
タクトが見つけたのは、丸みがあって華やかなマークだった。
そのマークは種のようにも華のようにも見える。
それにしても、どこかで見覚えのあるマークだ。
「これ、聖ソラトリク教団のシンボルだよ!」
「えっ!」
「何っ?!」
俺が思い出す前に、ゼルが答えを言った。
ということは、この黒い物体は聖ソラトリク教団の物か?
「でも、なんでそんな物がこんなところに...?」
「やっぱりアスオ鉱山は教団と無関係じゃなかったのよ!これがその証拠よ。」
「だな!これ、持って帰って調べてみようぜ!」
「持って帰るって....どうやって?」
「そんなの、帰り道を探しながら考えりゃいいだろ。ほらゼル!そっちの端、持てよ。」
「了解。」
タクトとゼルは黒い物体を持ち上げる。
すると突然、黒い物体から奇妙な声が聞こえてきた。
『オブジェクトの移動を検知しました。周囲情報のオブザベーションを開始します。』
3人は突然の声に驚き、タクトとゼルは思わず黒い物体を手放した。
「な、何の音だ?!」
「音というより、声って感じね。何て言っているのかしら?」
「確か教団って異世界人の集団なんだよね?....ということは、もしかして異世界語?」
3人は黒い物体に警戒していると、程なくして再び喋り出した。
『危険種BKM-1147が2体、未確認生命体を1体確認しました。未確認生命体は新たにHYF-5098として新種登録しました。危険種2体は排除します。』
奇妙な声が喋り終えると、黒い物体から、タクトとカタリーナの眉間に当てるように、白い光が一直線に出てきた。
その瞬間、白い光から放たれた何かが2人の脳天に突き刺した。
2人は悲鳴をあげることなく、その場に崩れるように倒れた。
むしろその様子を見ていたゼルの方が、悲鳴をあげて取り乱した。
「タクトくん!カタリーナさん!」
ゼルは2人を起こそうとするが、2人はぐったりとしたまま動かない。
『危険種2体の排除が完了しました。今から生命体HYF-5098の脳波を刺激し、対話が可能か確認します。』
さっきの奇妙な声が再び喋り出したと思ったら、今度はゼルが不審な顔をして頭を押さえ始めた。
「な、なんだ?この声...。」
俺には何も聞こえないが、ゼルには何かが聞こえるらしい。
「敵対する気はない?ふざけるな!2人をこんな風にしたクセに!お前らの言う事なんか信じられるか!」
ゼルは黒い物体を睨んでそう怒鳴ると、勢いよく蹴飛ばした。
流石厄災の魔王なだけあってその威力は凄まじく、かなりの重量がありそうな黒い物体は勢いよく吹っ飛び、大きな音を立てて岩壁にぶつかった。
『交渉が決裂しました。生命体HYF-5098は準危険種として登録情報を更新しました。今から準危険種HYF-5098を排除します。』
奇妙な声とともに、黒い物体はゼルに向けて先程の白い光を当てた。
だがゼルは光をすぐに躱し、黒い物体に向かって魔法攻撃を仕掛けた。
ゼルの魔法攻撃の威力はそれなりに強かったが、黒い物体は傷一つついていない。
黒い物体は白い光を複数出して、ゼルに照準を定める。
ゼルはその光を全て避けようとしたが、避けきれずに光の餌食となってしまった。
光線による攻撃を喰らったゼルは、変身用のペンダントが砕けたのか、厄災の魔王の姿へ戻った。
そして戻ったのも束の間、光線によってゼルの身体はバラバラに切断された。
だがゼルは、そんな攻撃をものともせずに動き出し、自身の身体をくっつけ始める。
一応、肉体は不死身だから、この程度の攻撃で死なないのは当然だ。
『準危険種HYF-5098の生態情報を更新します。排除方法を変更します。』
すると黒い物体は、なぜか四方八方に光線を当てて、あたり構わず攻撃しだした。
ゼルはその攻撃を喰らっても死ぬことはなかったが、光線による攻撃は鉱山内に深刻なダメージを与えたようで、鉱山は崩れ落ちて3人は黒い物体と一緒に埋もれてしまった。
黒い物体はコレを狙って、あの杜撰な攻撃を仕掛けたのか?
いや、それはないか。
黒い物体自身も埋もれているし、狙ってやったのだったら、ただの自滅だ。
そんなことより、もうそろそろ3人を助けるか。
俺は3人を崩れた鉱山の中から魔法で探して取り出した。
街灯が一切存在しないため、星の明かりが届かない鉱山内は闇と言っても過言ではなかった。
昼間は観光客がそこそこいたが、今は人っこ一人見当たらない。
鉱山の入り口には『営業時間外のため立ち入り禁止』と書かれた看板が立っていた。
「うわぁ。なんだか心霊スポットみたい。幽霊とか出そうで、ちょっと怖いわね。」
「シンレイスポット?ユウレイ?」
「こっちの世界風に言えば、『魔物』と『魔物の生息地』みたいなものね。正確に言えば全然違うけど、本質的には多分同じよ。」
いや、全然違うだろ!
「へー。それはともかく、中に入るぞ。」
「待って。中は真っ暗だけど、2人とも明かりになるようなものは持ってきたの?」
「大丈夫。それなら魔法で炎を出せばいいだろ?」
「火は駄目よ!洞窟の中で火を使っていたら、酸欠になるかもしれないし。」
「サンケツ?」
「要するに、息ができなくなるってことよ。」
へー。知らなかった。
というか、どこで聞いた知識だよ。
「だったらコレならどうだ?初級光魔法!」
するとタクトの手の平に、小さな光の球が現れた。
「それなら僕も!」
ゼルはタクトの真似をするように初級光魔法を繰り出す。
タクトの初級光魔法は拳大程度の大きさなのに対し、ゼルのは人の頭くらいの大きさはあった。
「なんだよ。お前の方が得意なんだったら、別に俺が出す必要ねーじゃん。」
「そんなことないよ。鉱山の中は暗いから光源は多いに越したことはないし。」
「そうよそうよ。2人とも初級光魔法が使えて助かったわ。私、光魔法って全然使えないのよね。」
「そういやカタリーナって、光属性が不適正だもんな。仕方ねぇよ。」
「逆にこの場にフレイくんがいたら、鉱山中が明るくなったかもね。」
「いや、アイツの場合は光が眩しすぎて逆に全然見えねぇだろ。」
「確かにキメイラ帝国の時も、武闘会の時も、光が強すぎて目が開けられなかったわよね。」
思わぬところで俺の話題が出で、虚をつかれた。
まぁ、陰口じゃねえから別にいいけど。
「それより、光もあるわけだし、早く入ろう。」
「あぁ。」
「そうね。」
3人は『立入禁止』の看板を無視して、初級光魔法の明かりを頼りに鉱山の中へと入っていった。
3人はしばらく、黙々と道なりに進んだ。
「この辺は、昼間に見学した場所だよね?このまま進んだら出口に行くけど、2人とも、何か気になる場所でもあるの?」
「えぇ。もう少しでその場所に辿り着くはずよ。」
「つーか、もう着いたぞ。」
タクトは、立入禁止の看板の立った細い横道を指差した。
そういえばあったな、そんな道。
昼間に鉱山見学に行ったばかりなのに、タクトが指差すまですっかり忘れていた。
「こっちの道に何かありそうだって、俺の勘が言ってる。」
「私の勘も!」
「勘って....2人とも根拠もなくここに来たの?」
ゼルは呆れて言葉を失った。
「だって手がかりが全然無いんだもの。」
「シナリオにも正確な場所が書いてないんだったら、勘で探すしかねーだろ。」
「それに、こういう時の女の勘は当たるのよ!信じなさい。」
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傍から見ている俺ですら、2人の話を聞いているのがアホらしくなってきた。
2人は勘を信じて、立入禁止の看板をどけて横道を進む。
ゼルはもはや呆れて質問する気もなくなったのか、小さくため息をついて2人の後についていった。
「...にしても、足場が悪ぃな、ここ。」
「そりゃあ、立入禁止にしているくらいだからね。」
『当たり前だ』と言わんばかりの呆けた顔で、ゼルはタクトの小言にツッコむように答えた。
「身軽な服装にしていて正解だわ。こんなところ、いつもの服装だと移動しづらい上にボロボロになるわ。」
「確かに、貴族令嬢の服装って、無駄にヒラヒラしていて動きづらそうだよね。」
「だな!それにカタリーナは貴族令嬢って柄じゃねえだろ。今の格好の方がお似合いだ。」
「タクトくん.....頭、圧縮しようか?」
「ハハハ....冗談、真に受けるなよ。」
3人は雑談も交えつつ、前へと足を運ぶ。
道は進むにつれて細くなっていった。
「ここで行き止まりか。」
3人が行き着いた先は崖になっていた。
どおりで立入禁止になっているわけだ。
「え?なんで?」
タクトの後ろにいたカタリーナは、前方が見えづらいからか、タクトの背中に乗っかるようにして前を覗こうとする。
だが、そのせいでタクトがバランスを崩し、2人揃って崖から落ちてしまった。
「タクトくん!カタリーナさん!」
ゼルは落ちた2人を追いかけるように崖から飛び降りた。
....2人の後を追うより、一旦外に出てロープを持っていくなり応援を呼ぶなりした方が良いんじゃないか?
「....痛ぇ。おいカタリーナ!急に押すんじゃねーよ!」
「ごめんごめん。押す気はなかったの。」
崖はそこまで高くなかったのか、2人とも落ちたのに平気そうだ。
「2人とも、大丈夫?」
程なくしてゼルも落ちてきて、2人と合流した。
「あぁ。それより、こっからどうする?」
「戻ろうと思っても、この崖は反ってるから登るのは難しそうよ。それにこの暗闇の中、初級光魔法程度の明かりで足場を確認しながら登るのはちょっと危ないわ。仕方ないから、ここから戻れる道を探しましょう。」
3人は初級光魔法を使って、辺りを探索した。
「あれ?なんだろう。」
すると、棺のような形の大きくて黒い謎の物体を見つけた。
「これって、魔法石の塊か?」
「いやいや、どう見ても人工的に作られた何かよ。こんな綺麗な直方体の鉱石が、自然に存在するわけがないわ。」
3人はその物体を調べる。
「あ?何だこりゃ?」
「あっ!コレって...!」
タクトが見つけたのは、丸みがあって華やかなマークだった。
そのマークは種のようにも華のようにも見える。
それにしても、どこかで見覚えのあるマークだ。
「これ、聖ソラトリク教団のシンボルだよ!」
「えっ!」
「何っ?!」
俺が思い出す前に、ゼルが答えを言った。
ということは、この黒い物体は聖ソラトリク教団の物か?
「でも、なんでそんな物がこんなところに...?」
「やっぱりアスオ鉱山は教団と無関係じゃなかったのよ!これがその証拠よ。」
「だな!これ、持って帰って調べてみようぜ!」
「持って帰るって....どうやって?」
「そんなの、帰り道を探しながら考えりゃいいだろ。ほらゼル!そっちの端、持てよ。」
「了解。」
タクトとゼルは黒い物体を持ち上げる。
すると突然、黒い物体から奇妙な声が聞こえてきた。
『オブジェクトの移動を検知しました。周囲情報のオブザベーションを開始します。』
3人は突然の声に驚き、タクトとゼルは思わず黒い物体を手放した。
「な、何の音だ?!」
「音というより、声って感じね。何て言っているのかしら?」
「確か教団って異世界人の集団なんだよね?....ということは、もしかして異世界語?」
3人は黒い物体に警戒していると、程なくして再び喋り出した。
『危険種BKM-1147が2体、未確認生命体を1体確認しました。未確認生命体は新たにHYF-5098として新種登録しました。危険種2体は排除します。』
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2人は悲鳴をあげることなく、その場に崩れるように倒れた。
むしろその様子を見ていたゼルの方が、悲鳴をあげて取り乱した。
「タクトくん!カタリーナさん!」
ゼルは2人を起こそうとするが、2人はぐったりとしたまま動かない。
『危険種2体の排除が完了しました。今から生命体HYF-5098の脳波を刺激し、対話が可能か確認します。』
さっきの奇妙な声が再び喋り出したと思ったら、今度はゼルが不審な顔をして頭を押さえ始めた。
「な、なんだ?この声...。」
俺には何も聞こえないが、ゼルには何かが聞こえるらしい。
「敵対する気はない?ふざけるな!2人をこんな風にしたクセに!お前らの言う事なんか信じられるか!」
ゼルは黒い物体を睨んでそう怒鳴ると、勢いよく蹴飛ばした。
流石厄災の魔王なだけあってその威力は凄まじく、かなりの重量がありそうな黒い物体は勢いよく吹っ飛び、大きな音を立てて岩壁にぶつかった。
『交渉が決裂しました。生命体HYF-5098は準危険種として登録情報を更新しました。今から準危険種HYF-5098を排除します。』
奇妙な声とともに、黒い物体はゼルに向けて先程の白い光を当てた。
だがゼルは光をすぐに躱し、黒い物体に向かって魔法攻撃を仕掛けた。
ゼルの魔法攻撃の威力はそれなりに強かったが、黒い物体は傷一つついていない。
黒い物体は白い光を複数出して、ゼルに照準を定める。
ゼルはその光を全て避けようとしたが、避けきれずに光の餌食となってしまった。
光線による攻撃を喰らったゼルは、変身用のペンダントが砕けたのか、厄災の魔王の姿へ戻った。
そして戻ったのも束の間、光線によってゼルの身体はバラバラに切断された。
だがゼルは、そんな攻撃をものともせずに動き出し、自身の身体をくっつけ始める。
一応、肉体は不死身だから、この程度の攻撃で死なないのは当然だ。
『準危険種HYF-5098の生態情報を更新します。排除方法を変更します。』
すると黒い物体は、なぜか四方八方に光線を当てて、あたり構わず攻撃しだした。
ゼルはその攻撃を喰らっても死ぬことはなかったが、光線による攻撃は鉱山内に深刻なダメージを与えたようで、鉱山は崩れ落ちて3人は黒い物体と一緒に埋もれてしまった。
黒い物体はコレを狙って、あの杜撰な攻撃を仕掛けたのか?
いや、それはないか。
黒い物体自身も埋もれているし、狙ってやったのだったら、ただの自滅だ。
そんなことより、もうそろそろ3人を助けるか。
俺は3人を崩れた鉱山の中から魔法で探して取り出した。
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