転生魔王の正体は?ーー厄災の魔王は転生後、正体を隠して勇者の子どもや自称悪役令嬢を助けるようですーー

サトウミ

文字の大きさ
92 / 145
第20話:舞踏会

【92】舞踏会(7)

しおりを挟む
演劇の物語は、殿下演じるマリシャスが厄災の魔王を討伐しに行くも、返り討ちにされるシーンに突入した。

「ハーッハッハッハ!!その程度かよ!そんな攻撃、全然痛くねぇぜ!」
「クソッ!醜い化け物めっ!」

二人の好演もあって、さっきのハプニングで悪くなってしまった客席の雰囲気はすっかり良くなり、観客は劇に引き込まれていた。

その後、タクト演じる伝説の勇者・ジャスティンが登場する。

「この世に災いをもたらす魔王めっ!この勇者ジャスティンが、正義の名の下に撃ち倒してやる!」
「やれるもんなら、やってみな!!」

そこからゼルとタクト、それから殿下の3人の歌パートに入った。
典型的な音痴だったゼルとタクトも、今では普通に聞ける程度には上達している。

その後、問題が発生することなく物語はクライマックスへと突入した。

「厄災の魔王さん。君はなぜ人々を襲うのですか?なぜ世界を滅ぼそうするのですか?」

「それはお前達人間が、そこのクソ野郎が、俺を虐げ殺そうとしたからだ!育ちのいいお前には一生理解できないだろうな。俺が今までどれほどお前達に理不尽に苦しめられたか。何度、暴力を振るわれ、涙を流したか。
こんな醜い世界、滅びた方がマシだ!」

「君が人々を襲う気持ちがよく分かった。弟を含む人間達が、君に酷いことをして申し訳ない。君が幸せになれるように努力する。君を二度と辛い目に遭わせはしない。だからどうか、僕達に償うチャンスをくれないか?」

この後の展開だと、厄災の魔王は陳腐な説得を聞き入れる流れになっているが、何度見てもここの展開は都合が良すぎてしっくりこない。

観客はこのラストに納得するのか?
だが俺の疑念に反して、物語が終わると同時に観客席から拍手が沸き上がった。

拍手喝采の中、カーテンコールへと移ろうとしたその時。
今までの演劇を台無しにするかのように、大量の岩のような重量のある物が舞台の天井から降ってきた。

舞台に立っていたキャスト全員が、降ってきたソレに押しつぶされ、その光景に客席の拍手はピタリと止まった。

さっきから何なんだよ!
舞台の天井に問題でもあるのか?
魔法で舞台の天井を確認すると、怪しい男二人がコソコソしているのを見つけた。

とりあえずコイツらはこのまま監視するとして、先に舞台の方を何とかするか。
このままだと俺達の演劇が大失敗で終わってしまう。

そこで、さっきのゼルの対応を見習って、『これはあくまで舞台演出だ』と観客達に思わせることにした。

俺は舞台上に厄災の魔王の分身を作ると、天井から降ってきた物体の上に登らせた。

「ハーッハッハッハ!俺がお前ら人間どもを許すわけねーだろ!見事に騙されて、ザマァねえぜ!」
分身がそう言うと、客席のざわめきが無くなり、不穏な空気が少しマシになった。

「痛てて...。」
ちょうどそのタイミングで、運良く軽傷で済んでいたタクトが這い上がって分身の方を見た。

「勇者め、しぶとい奴だ。大人しく死んでいればいいものを。」
「テメェ、よくもっ!!」

タクトは、持っていた剣のレプリカを俺に投げつけた。
これは都合がいい。
俺はあえて剣を避けずに刺さったフリをして、そのまま分身に死んだフリをさせた。

そして音楽を流すと同時に舞台を暗転させ、あたかもこれが本当の終わりであるかのように演出した。

なんだかんだで、元よりも良い終わり方になったじゃないか。

舞台を暗転させているうちに分身を消し、天井から降ってきた物を無くし、下敷きになっていたキャスト全員を蘇らせた。

全員が起き上がったタイミングでライトアップし、再びカーテンコールを行うと、先程よりかは小さいものの拍手が起こった。

キャストは突然身に起こった出来事に戸惑いながらも、予定通りにカーテンコールの挨拶を終わらせて舞台から降りた。

さて。
ひとまず舞台は無事に終わったし、最後の後始末に移るか。

俺は舞台の天井にいた男達を監視する。
男達は言い争っていて、2人の目をよく見てみると魔人特有の黒目に赤い瞳を宿していた。

「このボケがっ!だから予定通り姫役の女だけ殺しておけば良かったんだよ!」
「うるせぇ!俺達に喧嘩を売るようなクソ演目、ぶっ潰さねぇと気が済まねぇだろ!テメェは厄災を魔王扱いするこんな劇に腹が立たねぇのかよ!」

「それとこれとは別だろ!あくまで本来の仕事を遂行しろっつってんだよ、このプッチンスライムがぁ!」
「あぁ?!上等だテメェ!ぶっ殺してやるよ!」

コイツらの話から、動機がある程度分かったことだし、さっさと殺すか。

「ごちゃごちゃうるさいですよ、お2人さん。」
俺は分身を2人の前に出すと、分身を使って2人の首を手刀で刎ねた。
2人の汚い血を全身に浴びたが、返り血がついたのは分身だからまぁいいか。

...いや、待てよ?
このままコイツらの死体を放置したら、誰かが見つけた時に大事おおごとになる。
最悪、犯人が俺だとバレたら捕まるかもしれない。

だからといって、死体を隠すベストな場所も思いつかない。
じゃあ、コイツらを生き返らせるか?
いや、劇をあれだけ滅茶苦茶にした奴らを、このまま生き返らせて見逃すのは癪だ。

...そうだ。
コイツらを拘束した上で生き返らせて、劇を台無しにした犯人としてクラスの連中へ引き渡そう。
それならまだ妥協できる。

俺は2人を生き返らせて紐でぐるぐる巻きにした後、メモを貼り付けて、誰にも見つからないように舞台裏へそっと2人を運んだ。

「みんな、お疲れ様。」
「お疲れ様です、殿下。」
程なくして、みんな舞台裏へと戻ってきた。
俺は分身を消して、みんなの様子を見ることにした。

「それにしても、さっきのアレは何だったのかしら?いきなり天井から何かが降ってきたと思ったら、気づいたら無くなってるし。」

「さっきも僕の頭に何か落ちてきたし、それと関係あるのかな?」
「...おい、見てみろよコレ!」

タクトが魔人の2人に気づくと、みんな怪訝な顔をしてソイツらの顔を覗いた。
カタリーナは貼ってあるメモに気づくと、それを手に取り読み始めた。

「これって、日本語?えっーと、なになに...?
『さっき舞台の上から物を落としてお前らを潰したのはコイツらです。好きなだけお殴りください。宮藤迅』だって。」

「ってことは、やっぱりさっきのはクドージンだったのか。あん時、アイツが犯人だと思って剣をぶん投げちまったけど、悪いことしたな。」

「そんなことがあったんだ。じゃあクドージンさんが彼らを捕まえて、下敷きになっていた僕らを助けてくれたってこと?」

「多分、そうだと思うぜ。俺が気づいた時には、まだ落ちてきた物が舞台にあったからな。で、舞台が一旦暗くなった後にお前らが起きて、明かりがついたら舞台が元通りになってたし。」

「だったら宮藤くんもつれないわね。いつも助けられてばかりで全然お礼できていないんだから、せめて『ありがとう』の一言だけでも言わせてくれてもいいのに。」

「そうだね。僕も何度か彼に助けられているし、ちゃんと彼にお礼をしたいよ。そういえば彼で思い出したけど、ゼルくんはいつになったら元の姿に戻してもらえるんだろう?」

「え?!あっ!そ、そうだね。いつになったら僕、元に戻れるんだろう?もしかして忘れられているのかも。」

「ったく、アイツもいい加減だな。姿を変えるんだったら最後まで責任取れよ。」

「忘れられたんだったら仕方ないさ。この後、シヴァ先生に頼んで元の姿に戻してもらうよ。それより、この2人どうする?」

「とりあえずシヴァ先生に事情を説明して引き渡すのが無難じゃねーか?お前、シヴァ先生のところへ行くんだったら、ついでにコイツら持っていってくれよ。」

「わかった。」
ゼルは男2人を持ち上げると、シヴァを探しに舞台裏から移動した。

これで一件落着だな。
舞台裏の様子を映している魔法を消そうと思った直前、カタリーナがレオンに話しかけているのが見えた。
アイツからレオンに話しかけるなんて珍しい。
最後にこれだけでも聞いてみるか。

「ねぇ、レオン。貴方、さっき私のことを庇ってくれたわよね?」
「はぁ?!な、何の話だ!」

「カーテンコールで天井から物が落ちてきた時よ!あの時、私に覆い被さって助けてくれようとしていたじゃない。」
「そんなこと、知らん!」
「あっそう。でも、ありがとうね。」
「っ?!」

予想外の言葉に、レオンは戸惑いながら、逃げるようにその場を去った。
カタリーナがアイツに礼を言うなんて、明日は雨が降るんじゃないか?

俺は舞台の様子を映している魔法を消すと、再び執事カフェの様子を確認した。

カフェは相変わらず繁盛しているようだ。
心なしか、ホリーもライラも疲れて覇気がない感じがする。

しばらくすると演劇組がカフェに戻ってきた。

「カタリーナちゃん、お疲れ様!」
「ライラちゃん達もお疲れ~!」
「演劇、どうだった?」

「変な人たちに劇を妨害されて大変だったわ。一応、宮藤くんのお陰で劇自体は無事に終わったけど、妨害のせいで最優秀賞は逃しちゃったわ。それでも努力賞はもらえたから、頑張った方よね。」

あの劇、賞を取ってたのか。
あれだけ滅茶苦茶になったから絶対入賞しないと思っていたが、意外だ。

「えっ?クドージンさんが居たの?!」
「えぇ。でもタクトくん以外、彼を見てないのよね。私達が倒れている間に来ていたみたいだけど、起きた時にはもう居なかったわ。」
「カタリーナちゃん達が倒れたって、どういうこと?!」

カタリーナはライラに、舞台で起こった妨害の一部始終を簡潔に説明した。

「そうだったんだ。クドージンさん、また私達を助けてくれたんだね。いつか彼に恩返ししたいよ。」
「ホントよね。いい加減、連絡先の一つでも教えてくれたら、お礼でもプレゼントでも、なんでもできるのに。」

「そうだね。連絡先を知ってたら、いつでも会いに行けるし、遊べるもんね。もっと私達に心を開いてくれたらなぁ。」
「きっとそのうち、私達の思いも伝わるわよ。」

一応、伝わっているぞ。
なんせ、聞いているからな。

その後、舞踏会は無事終了し、執事カフェの後片付けをした。
執事カフェの売り上げは全学年で堂々の一位だった。
まぁ、あれだけ人気だったら当然だな。

舞踏会が終わって、俺はこの3日間の出来事をふと思い返した。

思えばこの3日間、色々なことがあった。
母さんからセージャ叔母さんの昔話を聞いたり、フォージー夫人から王宮専属の魔法使いとして推薦されたり、劇でトラブルがあったり.....。

どれも印象的な出来事だったが、セージャ叔母さんの昔話だけは、悪い意味で頭から消えない。
あの話を聞いた時に抱いた不快感は、楽しい時ですらも、うっすら頭の片隅に残り続けている。

それでも、何日かすればその不快感は消えるだろうと、この時はまだ思っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...