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第21話:種命地とダイフク会長
【96】種命地とダイフク会長(4)
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「では、もう一つ、質問よろしいでしょうか。」
「はい。」
そう言って、ダイフク会長は俺達に尋ねた。
「なぜ貴女は、先程から時々、喋っている内容と口の動きが合っていないのですか?」
「っ?!」
しまった。
センガにかけた魔法は、言葉を翻訳させるだけで、口の動きまでは変えていない。
「貴女は今までに、日本語を含めた3言語を話されていました。日本語とエフィリア語は、言葉も口の動きも合っていましたが、もう一つの言語は合っていませんでした。言葉だけ聞くとエフィリア語に聞こえましたが、口の動きは全く違います。一体、どこの言語を喋っているのでしょうか?どうしてエフィリア語のように聞こえるのでしょうか?」
この質問は、どう答えるのが正解だ?
シヴァとゼルを見ると、2人も返答に困っているようだった。
すると、シヴァは深いため息をついてから、小型魔道具のスイッチをオンにして喋り始めた。
「あ~あ。せっかく楽しくお喋りしていたのに、なんでそんな野暮なこと聞くの?ザボエル・ヨーグマン所長。」
「なっ?!」
さっきまで冷静だったダイフク会長は、シヴァの言葉に分かりやすいくらい取り乱していた。
「何故貴様が私の名を知っている?答えろ!」
ダイフク会長はまるで別人かの様に、威圧的な表情と口調へと変わる。
「そーそー!やっぱりヨーグマン所長はそうでなくっちゃ!筋トレとお笑いが趣味?商会が大きくなったのはみんなのおかげ?そんなの、所長のキャラじゃないでしょ。」
「貴様!人を馬鹿にしたようなその態度...!もしかしてシルバー・ブレインか!」
「ありゃ?バレちゃった?」
バレちゃった?じゃねーよ!
コイツ、もう隠す気ねーな。
「貴様も生きていたとは...。どこまで私をこけにすれば気が済むのだ。」
「貴様『も』ってことは、やっぱりサラちゃんも生きているんだ!」
「ハッ!おめでたい奴だ。私は一言も『サラ・リンカネーションは生きている』とは言っていないぞ。」
「でもさっき『貴様も』って言ってたじゃん!」
「それは『私も生きていたが貴様もか』という意味でだ。勝手に勘違いするな。」
ダイフク会長...いや、ザボエルは、俺達を馬鹿にするように薄ら笑いをする。
その顔が気に食わなかったのか、ゼルは小さく舌打ちをすると小型魔道具のスイッチを押して、口撃をした。
「そうだよな。お前が生きていたのは意外だったよ。教団から命の器を盗み出した上に、肝心の命の器をどっかに逃がしちゃったんだからさ。よく教団の連中に殺されずに済んだね。」
するとザボエルは薄ら笑いを止めて、鬼のような形相で睨みつけてきた。
「私より先に教団を追放された貴様が、なぜそれを知っている!正直に答えろ!」
「さぁねぇ。所長がボクの質問に答えてくれたら、お返しに答えてあげてもいいかなー♪」
「ふざけるな!」
キレたザボエルはセンガの胸ぐらを掴んだ。
だが、その怒りは何故かすぐに静まり、ザボエルは耳に手を当てて考え事を始めた。
何やってんだ、コイツ。
そしてしばらくすると、ザボエルは再び喋り出した。
「いきなり暴力的なことをして、申し訳ありません。改めて自己紹介致します。
今、話している私は、ショージ・ダイフクと申します。
そして知っての通り、あなた方の目の前にいる人物はザボエル・ヨーグマンです。」
....そういうことか。
つまりは、ダイフク会長側も俺達と同じことをしていたってワケか。
ザボエルもセンガも影武者。
本当に喋っている奴は、どこか別の場所にいる。
きっとザボエルも、センガと同じような魔道具を身につけて、ダイフク会長に指示された通りに喋っているのだろう。
「なるほど!そりゃ納得だ。まさかヨーグマン所長が不気味なくらい別人だった理由は、本当に別人だったからだなんて、おったまげだよ。」
シヴァはセンガを通して、ダイフク会長達にそう言った。
「私もあなた方には驚かされました。まさか私達と同じように、遠隔で会話をしてくる方がいるとは。」
「ありゃりゃ。そんなことまでお見通し?ダイフク会長は察しがいいね。」
「ということはやはり、千賀さんは影武者だったのですね。確かな根拠は無いので少々自信がありませんでしたが、正解でしたか。」
要はかまをかけられて、まんまと白状してしまったってことか。
「ダイフク会長は、どこから僕達が影武者を使っていると勘づいていたのですか?」
ゼルはセンガの口を借りて質問した。
「強いて言えば、最初にお会いした時から、でしょうか。あなた方から頂いた手紙の文字と、千賀さんの第一印象が違っていたため、違和感を持ちました。手紙の文字は....その、失礼ではありますが教養の無い男性が書かれたような印象でした。漢字は極端に少なく、自分の名前すら平仮名でしたので、あるいは子供が書いたのかとも思ったのです。」
『教養の無い男性』で悪かったな!!
「ですが実際の千賀さんは、知性感じる大人の女性でした。そのため、手紙を書いた人物と千賀さんは別人なのではと薄々感じていました。」
シヴァは小型魔道具のスイッチを押すのをやめて、俺に話しかけてきた。
「あーあ。クドージンくん、センガちゃんが会いに行くって分かってるんだから、もうちょっと『知性ある女性』っぽい文章を書いてよ。」
「カンジ?というものを多く書くことはできなかったのですか?」
「うっせぇな!漢字だろうが平仮名だろうが、伝わればそれでいいだろ!平仮名ばっかりだからって、お前らもダイフク会長も馬鹿にしやがって。第一センガ・マキナなんて特殊な名前、漢字で適当に当て字だなんて無理だろ普通。せめて山田太郎とか田中花子とか、もうちょっと分かりやすい名前にしろよ!」
「...言いたいことは分かりませんが、とにかくすみませんでした。」
そんな俺達をよそに、センガはセンガで何かを話している。
「カンジとヒラガナというのは、一体どういったものなのでしょうか?」
「漢字と平仮名は日本語の文字の種類の一つです。正確に言えば、漢字は中国から日本に入ってきた文字なのですが、私は言語学者ではないので詳細はうまく説明できる自信はありません。ちなみに日本には、漢字と平仮名以外にも、片仮名という文字の種類も存在しますよ。」
「そうなのですか。一つの言語で文字の種類が3つもあるなんて、ニホン語は奥が深いですね。」
「そういう千賀さんは、先程から何語を話されているのですか?」
「私ですか?私は今、華葉語を話しています。」
「華葉語、というのは、どこの言語でしょうか?」
するとシヴァは慌てて小型魔道具のスイッチを押し、センガ達の会話を止めに入った。
「ちょーっと、ストップストップ!ダイフク会長、サラッとボク達の情報を聞き出そうとしないでよ。ボク達だって、キミらに聞きたいことが色々あるんだから、そんなに知りたかったら、お互いに情報を出し合おうよ。」
「それは失礼しました。ではお互いに、相手の質問に1つ答えたら、自分たちも1つ相手に質問に答えてもらえる権利を得る、というのはどうでしょう?これならフェアだと思いますが。」
「いいねソレ♪その話、乗った!」
「では、お先に質問をどうぞ。」
するとシヴァは、迷うことなくある質問をした。
「ダイフク会長の身近に、サラ・リンカネーションはいるの?」
ダイフク会長は言葉に詰まっているのか、返答が少し遅い。
「すみません。その質問にお答えするのは難しいです。」
そんな答え、アリかよ。
期待外れの答えに、俺達は肩を落とす。
「それ、答えになってないでしょ!そんなので、そっちの質問に答えるのはズルくない?」
「はい。ですので、今の質問のように、答えられなかった分に関してはカウントしない方針で構いません。」
「そっか。だったらもう一回質問!サラ・リンカネーションは生きてる?」
「その質問も難しいのでパスします。」
全然、答える気がないだろ。
「他に質問はありませんか?」
どうせ質問したところで、まともな答えが返ってくる気がしない。
シヴァも、一番聞きたかった質問を却下されて、質問する気が無くなってしまったようだ。
そんな中、ゼルは何としてでも情報を聞き出そうと、諦めずに質問した。
「ダイフク会長。今まで話した内容について、どれが嘘でどれが本当か、教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「ちょっとズルい質問のように感じますが、良いでしょう。お教えします。」
それは答えるのかよ。
「私、つまりザボエルさんではなくダイフク・ショージのことですが、私が日本からの転生者というのは本当です。前世で大福商事の社長だったことも、風呂場で半身浴中に亡くなったのも事実です。約15年前に起業したのも、筋トレとお笑いが趣味なのも、魔道具を作ってくれた技術者関係の話も全て本当です。
ただ一つ、私の現世での名前に関しては、ザボエルさんの情報をあたかも私のことのように説明していました。
あなた方も知っての通り、ザボエルさんは教団から追われる身です。ですから本名を隠すために、私の前世の名前を貸していました。
ちなみに現世での私の名前は秘密です。」
これが本当なら、ダイフク会長は比較的正直に話してくれていた方なのかもしれない。
「では今度は私から質問致します。あなた方が今まで話した内容の正誤を教えてください。」
うわっ。同じ質問を返してきやがった。
その質問に真っ先に答えたのは、センガだった。
「今、この場にいる私自身がセンガ・マキナという名前なのは本当です。私が日本から転移してきたという話は嘘で、遠隔で私を操作している仲間がそう話しました。」
「だろうな。異世界間を移動できる技術を、貴様ら如きが持っているはずがない。」
ダイフク会長、いきなり口が悪くなったな。
と一瞬思ったが、今話したのはザボエルの方か。
「それから、私が華葉語を話していることや、趣味・家族構成に関する話も本当です。あとは、ニホン語で話されていた質問に関しては、私の仲間が回答しました。」
「『20XX年生まれっていうのは、センガじゃなくて俺のことだ。』」
俺はセンガの口を借りて補足した。
「なるほど。では千賀さんのお仲間に、日本人がいるのですね。それから、ザボエルさんの知り合いもいるのですよね。....あなた方は一体、何人いらっしゃるのですか?」
「私の仲間は、私を省いて3人います。ダイフク会長の仰る通り、1人はニホン人、もう1人はザボエルさんの知り合いです。ダイフク会長達は、会長とザボエルさんの2人だけという認識でよろしいのでしょうか?」
「はい、私とザボエルさんだけという認識で間違いありません。」
せっかく1回質問できるチャンスをもらったのに、センガのくだらない質問のせいで無くなってしまった。
「ヨーグマン所長とダイフク会長が知り合った経緯は?」
質問する気力が湧いたのか、シヴァは再びダイフク会長に尋ねた。
「ザボエルさんが教団から逃げのびてドーワ侯国で倒れているところを、私とソラさん...もとい現世での私の兄弟が見つけました。ソラさんとザボエルさんは知り合いだったこともあり、ザボエルさんの身元を私達が保護する代わりに、ザボエルさんには私のビジネスに協力していただく関係になりました。」
「へぇ~。所長、悪運が強いじゃん♪ソラって人に感謝しなきゃね♪」
「悪運の強さに関しては、貴様も大概だがな。」
拾ってもらった相手が金持ちだなんて、運が良すぎだろ。
「今度は私達が質問する番ですね。センガさんのお仲間には日本人がいるとのことですが、その方は前にこの場で、私もといザボエルさんに会いに来られたことはありますか?」
「あるぜ。一応な。」
「そう、ですか。」
期待外れな答えだったのか、ダイフク会長はそれ以上追究してこない。
「じゃあ次は僕から質問!ザボエルはシ..ルバーさんを追放してから、教団を追放されるまでの間、教団で何をしていた?
お前はシルバーさんから、異界穴研究を横取りしたんだろ。それなのに命の器が必要だった理由は何だ?」
「口の利き方を弁えろ。貴様のその質問は2回分だが、この後貴様らは我々の質問に2回答える気はあるのか?」
「あぁ。勿論さ。」
「だったら答えてやろう。」
ザボエルは、俺達が把握していない奴自身の空白の期間について語り始めた。
「はい。」
そう言って、ダイフク会長は俺達に尋ねた。
「なぜ貴女は、先程から時々、喋っている内容と口の動きが合っていないのですか?」
「っ?!」
しまった。
センガにかけた魔法は、言葉を翻訳させるだけで、口の動きまでは変えていない。
「貴女は今までに、日本語を含めた3言語を話されていました。日本語とエフィリア語は、言葉も口の動きも合っていましたが、もう一つの言語は合っていませんでした。言葉だけ聞くとエフィリア語に聞こえましたが、口の動きは全く違います。一体、どこの言語を喋っているのでしょうか?どうしてエフィリア語のように聞こえるのでしょうか?」
この質問は、どう答えるのが正解だ?
シヴァとゼルを見ると、2人も返答に困っているようだった。
すると、シヴァは深いため息をついてから、小型魔道具のスイッチをオンにして喋り始めた。
「あ~あ。せっかく楽しくお喋りしていたのに、なんでそんな野暮なこと聞くの?ザボエル・ヨーグマン所長。」
「なっ?!」
さっきまで冷静だったダイフク会長は、シヴァの言葉に分かりやすいくらい取り乱していた。
「何故貴様が私の名を知っている?答えろ!」
ダイフク会長はまるで別人かの様に、威圧的な表情と口調へと変わる。
「そーそー!やっぱりヨーグマン所長はそうでなくっちゃ!筋トレとお笑いが趣味?商会が大きくなったのはみんなのおかげ?そんなの、所長のキャラじゃないでしょ。」
「貴様!人を馬鹿にしたようなその態度...!もしかしてシルバー・ブレインか!」
「ありゃ?バレちゃった?」
バレちゃった?じゃねーよ!
コイツ、もう隠す気ねーな。
「貴様も生きていたとは...。どこまで私をこけにすれば気が済むのだ。」
「貴様『も』ってことは、やっぱりサラちゃんも生きているんだ!」
「ハッ!おめでたい奴だ。私は一言も『サラ・リンカネーションは生きている』とは言っていないぞ。」
「でもさっき『貴様も』って言ってたじゃん!」
「それは『私も生きていたが貴様もか』という意味でだ。勝手に勘違いするな。」
ダイフク会長...いや、ザボエルは、俺達を馬鹿にするように薄ら笑いをする。
その顔が気に食わなかったのか、ゼルは小さく舌打ちをすると小型魔道具のスイッチを押して、口撃をした。
「そうだよな。お前が生きていたのは意外だったよ。教団から命の器を盗み出した上に、肝心の命の器をどっかに逃がしちゃったんだからさ。よく教団の連中に殺されずに済んだね。」
するとザボエルは薄ら笑いを止めて、鬼のような形相で睨みつけてきた。
「私より先に教団を追放された貴様が、なぜそれを知っている!正直に答えろ!」
「さぁねぇ。所長がボクの質問に答えてくれたら、お返しに答えてあげてもいいかなー♪」
「ふざけるな!」
キレたザボエルはセンガの胸ぐらを掴んだ。
だが、その怒りは何故かすぐに静まり、ザボエルは耳に手を当てて考え事を始めた。
何やってんだ、コイツ。
そしてしばらくすると、ザボエルは再び喋り出した。
「いきなり暴力的なことをして、申し訳ありません。改めて自己紹介致します。
今、話している私は、ショージ・ダイフクと申します。
そして知っての通り、あなた方の目の前にいる人物はザボエル・ヨーグマンです。」
....そういうことか。
つまりは、ダイフク会長側も俺達と同じことをしていたってワケか。
ザボエルもセンガも影武者。
本当に喋っている奴は、どこか別の場所にいる。
きっとザボエルも、センガと同じような魔道具を身につけて、ダイフク会長に指示された通りに喋っているのだろう。
「なるほど!そりゃ納得だ。まさかヨーグマン所長が不気味なくらい別人だった理由は、本当に別人だったからだなんて、おったまげだよ。」
シヴァはセンガを通して、ダイフク会長達にそう言った。
「私もあなた方には驚かされました。まさか私達と同じように、遠隔で会話をしてくる方がいるとは。」
「ありゃりゃ。そんなことまでお見通し?ダイフク会長は察しがいいね。」
「ということはやはり、千賀さんは影武者だったのですね。確かな根拠は無いので少々自信がありませんでしたが、正解でしたか。」
要はかまをかけられて、まんまと白状してしまったってことか。
「ダイフク会長は、どこから僕達が影武者を使っていると勘づいていたのですか?」
ゼルはセンガの口を借りて質問した。
「強いて言えば、最初にお会いした時から、でしょうか。あなた方から頂いた手紙の文字と、千賀さんの第一印象が違っていたため、違和感を持ちました。手紙の文字は....その、失礼ではありますが教養の無い男性が書かれたような印象でした。漢字は極端に少なく、自分の名前すら平仮名でしたので、あるいは子供が書いたのかとも思ったのです。」
『教養の無い男性』で悪かったな!!
「ですが実際の千賀さんは、知性感じる大人の女性でした。そのため、手紙を書いた人物と千賀さんは別人なのではと薄々感じていました。」
シヴァは小型魔道具のスイッチを押すのをやめて、俺に話しかけてきた。
「あーあ。クドージンくん、センガちゃんが会いに行くって分かってるんだから、もうちょっと『知性ある女性』っぽい文章を書いてよ。」
「カンジ?というものを多く書くことはできなかったのですか?」
「うっせぇな!漢字だろうが平仮名だろうが、伝わればそれでいいだろ!平仮名ばっかりだからって、お前らもダイフク会長も馬鹿にしやがって。第一センガ・マキナなんて特殊な名前、漢字で適当に当て字だなんて無理だろ普通。せめて山田太郎とか田中花子とか、もうちょっと分かりやすい名前にしろよ!」
「...言いたいことは分かりませんが、とにかくすみませんでした。」
そんな俺達をよそに、センガはセンガで何かを話している。
「カンジとヒラガナというのは、一体どういったものなのでしょうか?」
「漢字と平仮名は日本語の文字の種類の一つです。正確に言えば、漢字は中国から日本に入ってきた文字なのですが、私は言語学者ではないので詳細はうまく説明できる自信はありません。ちなみに日本には、漢字と平仮名以外にも、片仮名という文字の種類も存在しますよ。」
「そうなのですか。一つの言語で文字の種類が3つもあるなんて、ニホン語は奥が深いですね。」
「そういう千賀さんは、先程から何語を話されているのですか?」
「私ですか?私は今、華葉語を話しています。」
「華葉語、というのは、どこの言語でしょうか?」
するとシヴァは慌てて小型魔道具のスイッチを押し、センガ達の会話を止めに入った。
「ちょーっと、ストップストップ!ダイフク会長、サラッとボク達の情報を聞き出そうとしないでよ。ボク達だって、キミらに聞きたいことが色々あるんだから、そんなに知りたかったら、お互いに情報を出し合おうよ。」
「それは失礼しました。ではお互いに、相手の質問に1つ答えたら、自分たちも1つ相手に質問に答えてもらえる権利を得る、というのはどうでしょう?これならフェアだと思いますが。」
「いいねソレ♪その話、乗った!」
「では、お先に質問をどうぞ。」
するとシヴァは、迷うことなくある質問をした。
「ダイフク会長の身近に、サラ・リンカネーションはいるの?」
ダイフク会長は言葉に詰まっているのか、返答が少し遅い。
「すみません。その質問にお答えするのは難しいです。」
そんな答え、アリかよ。
期待外れの答えに、俺達は肩を落とす。
「それ、答えになってないでしょ!そんなので、そっちの質問に答えるのはズルくない?」
「はい。ですので、今の質問のように、答えられなかった分に関してはカウントしない方針で構いません。」
「そっか。だったらもう一回質問!サラ・リンカネーションは生きてる?」
「その質問も難しいのでパスします。」
全然、答える気がないだろ。
「他に質問はありませんか?」
どうせ質問したところで、まともな答えが返ってくる気がしない。
シヴァも、一番聞きたかった質問を却下されて、質問する気が無くなってしまったようだ。
そんな中、ゼルは何としてでも情報を聞き出そうと、諦めずに質問した。
「ダイフク会長。今まで話した内容について、どれが嘘でどれが本当か、教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「ちょっとズルい質問のように感じますが、良いでしょう。お教えします。」
それは答えるのかよ。
「私、つまりザボエルさんではなくダイフク・ショージのことですが、私が日本からの転生者というのは本当です。前世で大福商事の社長だったことも、風呂場で半身浴中に亡くなったのも事実です。約15年前に起業したのも、筋トレとお笑いが趣味なのも、魔道具を作ってくれた技術者関係の話も全て本当です。
ただ一つ、私の現世での名前に関しては、ザボエルさんの情報をあたかも私のことのように説明していました。
あなた方も知っての通り、ザボエルさんは教団から追われる身です。ですから本名を隠すために、私の前世の名前を貸していました。
ちなみに現世での私の名前は秘密です。」
これが本当なら、ダイフク会長は比較的正直に話してくれていた方なのかもしれない。
「では今度は私から質問致します。あなた方が今まで話した内容の正誤を教えてください。」
うわっ。同じ質問を返してきやがった。
その質問に真っ先に答えたのは、センガだった。
「今、この場にいる私自身がセンガ・マキナという名前なのは本当です。私が日本から転移してきたという話は嘘で、遠隔で私を操作している仲間がそう話しました。」
「だろうな。異世界間を移動できる技術を、貴様ら如きが持っているはずがない。」
ダイフク会長、いきなり口が悪くなったな。
と一瞬思ったが、今話したのはザボエルの方か。
「それから、私が華葉語を話していることや、趣味・家族構成に関する話も本当です。あとは、ニホン語で話されていた質問に関しては、私の仲間が回答しました。」
「『20XX年生まれっていうのは、センガじゃなくて俺のことだ。』」
俺はセンガの口を借りて補足した。
「なるほど。では千賀さんのお仲間に、日本人がいるのですね。それから、ザボエルさんの知り合いもいるのですよね。....あなた方は一体、何人いらっしゃるのですか?」
「私の仲間は、私を省いて3人います。ダイフク会長の仰る通り、1人はニホン人、もう1人はザボエルさんの知り合いです。ダイフク会長達は、会長とザボエルさんの2人だけという認識でよろしいのでしょうか?」
「はい、私とザボエルさんだけという認識で間違いありません。」
せっかく1回質問できるチャンスをもらったのに、センガのくだらない質問のせいで無くなってしまった。
「ヨーグマン所長とダイフク会長が知り合った経緯は?」
質問する気力が湧いたのか、シヴァは再びダイフク会長に尋ねた。
「ザボエルさんが教団から逃げのびてドーワ侯国で倒れているところを、私とソラさん...もとい現世での私の兄弟が見つけました。ソラさんとザボエルさんは知り合いだったこともあり、ザボエルさんの身元を私達が保護する代わりに、ザボエルさんには私のビジネスに協力していただく関係になりました。」
「へぇ~。所長、悪運が強いじゃん♪ソラって人に感謝しなきゃね♪」
「悪運の強さに関しては、貴様も大概だがな。」
拾ってもらった相手が金持ちだなんて、運が良すぎだろ。
「今度は私達が質問する番ですね。センガさんのお仲間には日本人がいるとのことですが、その方は前にこの場で、私もといザボエルさんに会いに来られたことはありますか?」
「あるぜ。一応な。」
「そう、ですか。」
期待外れな答えだったのか、ダイフク会長はそれ以上追究してこない。
「じゃあ次は僕から質問!ザボエルはシ..ルバーさんを追放してから、教団を追放されるまでの間、教団で何をしていた?
お前はシルバーさんから、異界穴研究を横取りしたんだろ。それなのに命の器が必要だった理由は何だ?」
「口の利き方を弁えろ。貴様のその質問は2回分だが、この後貴様らは我々の質問に2回答える気はあるのか?」
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「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
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かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
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