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第22話:記憶喪失
【103】記憶喪失(6)
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「.....っ。」
俺は重い瞼をあけて目を覚ます。
すると、見慣れない天井が目の前に広がった。
「ここは?」
辺りを見回す。
ここは俺の部屋じゃない。
多分、学校の医務室だ。
俺はどうやら、医務室のベッドで眠っていたらしい。
でも何でこんなところいるんだ?
冷静に直前の記憶を振り返ってみる。
確か放課後に、ホリーに因縁をつけていたレオンを見かけたから、間に入ってレオンと口喧嘩をしたな。
それで、レオンが無理矢理ホリーに水晶石の魔法を使おうとして、それを止めようとしたら頭が痛くなって....気づいたらここで寝ていたってわけか。
「あっ!フレイくん、起きた?」
「お前、記憶は大丈夫か?」
医務室に入ってきたのは、タクトとライラだった。
「記憶、ですか?多分、大丈夫だと思いますが。」
「ホント?良かった!思い出せて。」
「思い出すって、何をですか?」
「え?なにって、記憶のことだよ。フレイくん、ここ数日、記憶喪失だったじゃん。」
なんだソレは。
初耳だ。
「ここ数日って、どういうことですか?僕はレオン卿が持っていた水晶石の魔法を喰らって、今まで眠っていたのではないのですか?」
「あの後、フレイくんはすぐに目覚めたよ?もしかしてフレイくん、目覚めた後のことを覚えていないの?」
「はい。全く。」
じゃあ今日はいつなんだ?
俺が眠っている間に、何が起きた?
「おいおい。まさか今度は『記憶喪失中の記憶』がないのかよ。面倒臭えな。」
「そもそも『記憶喪失』とは、どういうことですか?レオン卿に魔法をかけられてから今までに何があったか、教えてくれませんか?」
「いいよ。あの時、レオンくんは記憶を消す魔法を使っいたんだ。そのせいでフレイくんの記憶が無くなったんだけど、その反動かレオンくんも記憶喪失になったんだ。」
アイツ、ヒトにかけた魔法に自分もかかったのか。
自業自得だな。
「記憶喪失の時のフレイは結構面白かったぞ。なんせ、カタリーナにベタ惚れだったからな。『趣味は何ですか?』とか、『好きな食べ物は?』とか、普段のお前からじゃ想像できない言動ばっかで、今思い出しても笑えるぜ。」
うわー。
俺、そんなこと言っていたのか。
想像しただけで鳥肌が立つ。
「しかも何回『カタリーナちゃんはレックス殿下の婚約者だよ』って言っても、全然聞かなくて困ってたの。殿下もカタリーナちゃんも『記憶が戻ればきっと止めてくれるだろう』って諦めてたし。」
そんなの聞いたら、あの2人に会いづらいじゃないか。
「そういえば、お前の記憶が無い間に、実技テストがあったぞ。」
「えぇ?!」
まさかの出来事に、思わず大きな声が出た。
「で、でも実技テストって来週じゃ...」
「あー、それな。シヴァ先生の勘違いだったらしいぜ。」
シヴァの馬鹿野郎!
嘘だろ?じゃあ実技テストをやったってことは、俺の実力もバレたってことか?
この前、試しに学生用魔物転送装置を稼働したら強い魔物がうじゃうじゃ召喚された。
あの装置は実力に見合った魔物が召喚されるらしいから、召喚された魔物を見られたら一発で俺の実力がバレる。
でもって実力がバレたら自動的に、俺が宮藤迅だということもバレてしまう。
「そ、それで....僕の評価は?」
「お前の評価か?B+だったぞ。全然戦えてなかったから評価が下がったけど、ブラッディスカーレットドラゴンを召喚するなんて、すげぇじゃねえか。」
「....え?魔物って、それだけですか?他には?」
「それだけって、お前なぁ。ブラッディスカーレットドラゴンを1匹召喚するだけでも凄いんだぞ?それ以上を求めんなよ。まともに戦えないお前がブラッディスカーレットドラゴンを召喚しただけでも凄いことなんだぞ?」
意外な結果に、ホッと胸を撫で下ろす。
なぜだか知らないが魔物は1体しか召喚されなかったため、そこそこの評価に落ち着いたようだ。
これがもし記憶喪失によるものだったら、レオンには少しだけ感謝しないとな。
「あっ、そうそう!実技テストで思い出したけど、重要なことが判明したんだよ!」
「重要なこと、ですか?」
「うん。実はね....なんと、クドージンさんの正体はレオンくんだったんだよ!」
はぁ?
何を馬鹿なことを言ってんだ、コイツは。
「そうなんですね。」
「あ!信じてないね。でも本当なんだよ?実技テストの時も、ありえなかったんだから。」
「アイツ、実技テストで凄い数のドラゴンを召喚したんだぜ。しかも一瞬でぶっ倒すし。記憶がなくてもアイツは滅茶苦茶な奴だぜ。評価もアイツだけS+だったしな。」
レオンはそんなに凄い技を繰り出したのか。
だから2人はレオンを俺だと勘違いしている、と。
....まぁ、訂正しない方が都合が良いし、適当に話を合わせるか。
「それは凄いですね。僕も是非、見たかったです。」
「今のフレイくんも、見たらきっと驚いたと思うよ。」
「だな。記憶が無い時のフレイも、かなり混乱していたからな。」
俺が混乱するレベルって。
...もしかしてレオンの奴、本当に凄いのか?
「だから俺達は、アイツがクドージンだって確信して、話しかけたんだ。それで色々話した後、カタリーナが『クドージンは魔法が得意なんだから、魔法で思い出したら?』って言ったんだ。それでレオンが、自分とフレイの記憶を魔法で蘇らせたら、2人とも倒れて今に至るってわけだ。」
なるほどな。
つまりレオンの魔法が中途半端だったせいで、記憶を取り戻す代わりに、記憶喪失だった時の記憶が無くなったわけか。
「フレイくんがこうってことは、レオンくんも記憶喪失中の記憶が無くなっているのかな?」
「そうかもな。どうする?アイツに『お前の正体知ってるぜ』って言うか?」
「言わない方がいいんじゃない?レオンくんだって、正体を知られたのは不本意だったと思うし。それにきっと、いつか自分から正体を打ち明けてくれるよ。」
残念だが、そんな予定は一切ない。
「そうだな。アイツが記憶喪失中の時みたいに、もう少し素直になったら教えてくれるかもな。」
素直じゃなくて悪かったな。
「記憶喪失中のクドージンさんって、いつもとちょっと雰囲気が違ったよね。『たとえ辛い記憶があっても私達を思い出したい』って言ってくれた時は、心にジーンときたよ。」
「俺も。記憶が無くてもアイツは心のどこかで、俺達のことを大切な仲間だと思ってくれてるんだなって感じたぜ。」
レオンとそんな臭い三文芝居をやっていたのか。
きっと記憶がある時にその光景を見ていたら、滑稽で笑い転げていただろうな。
『辛い記憶があってもみんなのことを思い出したい』?
レオンがそう思えたのは所詮、最初から恵まれた家で生まれたからだろ。
俺みたいなクソ以下の記憶があったら、絶対にそうは思わない。
....だけど。
このクソみたいな記憶が綺麗さっぱりなくなる代わりに、父さん達やみんなのことも全部忘れてしまうのだったら。
それはそれで、嫌だとも思った。
俺は重い瞼をあけて目を覚ます。
すると、見慣れない天井が目の前に広がった。
「ここは?」
辺りを見回す。
ここは俺の部屋じゃない。
多分、学校の医務室だ。
俺はどうやら、医務室のベッドで眠っていたらしい。
でも何でこんなところいるんだ?
冷静に直前の記憶を振り返ってみる。
確か放課後に、ホリーに因縁をつけていたレオンを見かけたから、間に入ってレオンと口喧嘩をしたな。
それで、レオンが無理矢理ホリーに水晶石の魔法を使おうとして、それを止めようとしたら頭が痛くなって....気づいたらここで寝ていたってわけか。
「あっ!フレイくん、起きた?」
「お前、記憶は大丈夫か?」
医務室に入ってきたのは、タクトとライラだった。
「記憶、ですか?多分、大丈夫だと思いますが。」
「ホント?良かった!思い出せて。」
「思い出すって、何をですか?」
「え?なにって、記憶のことだよ。フレイくん、ここ数日、記憶喪失だったじゃん。」
なんだソレは。
初耳だ。
「ここ数日って、どういうことですか?僕はレオン卿が持っていた水晶石の魔法を喰らって、今まで眠っていたのではないのですか?」
「あの後、フレイくんはすぐに目覚めたよ?もしかしてフレイくん、目覚めた後のことを覚えていないの?」
「はい。全く。」
じゃあ今日はいつなんだ?
俺が眠っている間に、何が起きた?
「おいおい。まさか今度は『記憶喪失中の記憶』がないのかよ。面倒臭えな。」
「そもそも『記憶喪失』とは、どういうことですか?レオン卿に魔法をかけられてから今までに何があったか、教えてくれませんか?」
「いいよ。あの時、レオンくんは記憶を消す魔法を使っいたんだ。そのせいでフレイくんの記憶が無くなったんだけど、その反動かレオンくんも記憶喪失になったんだ。」
アイツ、ヒトにかけた魔法に自分もかかったのか。
自業自得だな。
「記憶喪失の時のフレイは結構面白かったぞ。なんせ、カタリーナにベタ惚れだったからな。『趣味は何ですか?』とか、『好きな食べ物は?』とか、普段のお前からじゃ想像できない言動ばっかで、今思い出しても笑えるぜ。」
うわー。
俺、そんなこと言っていたのか。
想像しただけで鳥肌が立つ。
「しかも何回『カタリーナちゃんはレックス殿下の婚約者だよ』って言っても、全然聞かなくて困ってたの。殿下もカタリーナちゃんも『記憶が戻ればきっと止めてくれるだろう』って諦めてたし。」
そんなの聞いたら、あの2人に会いづらいじゃないか。
「そういえば、お前の記憶が無い間に、実技テストがあったぞ。」
「えぇ?!」
まさかの出来事に、思わず大きな声が出た。
「で、でも実技テストって来週じゃ...」
「あー、それな。シヴァ先生の勘違いだったらしいぜ。」
シヴァの馬鹿野郎!
嘘だろ?じゃあ実技テストをやったってことは、俺の実力もバレたってことか?
この前、試しに学生用魔物転送装置を稼働したら強い魔物がうじゃうじゃ召喚された。
あの装置は実力に見合った魔物が召喚されるらしいから、召喚された魔物を見られたら一発で俺の実力がバレる。
でもって実力がバレたら自動的に、俺が宮藤迅だということもバレてしまう。
「そ、それで....僕の評価は?」
「お前の評価か?B+だったぞ。全然戦えてなかったから評価が下がったけど、ブラッディスカーレットドラゴンを召喚するなんて、すげぇじゃねえか。」
「....え?魔物って、それだけですか?他には?」
「それだけって、お前なぁ。ブラッディスカーレットドラゴンを1匹召喚するだけでも凄いんだぞ?それ以上を求めんなよ。まともに戦えないお前がブラッディスカーレットドラゴンを召喚しただけでも凄いことなんだぞ?」
意外な結果に、ホッと胸を撫で下ろす。
なぜだか知らないが魔物は1体しか召喚されなかったため、そこそこの評価に落ち着いたようだ。
これがもし記憶喪失によるものだったら、レオンには少しだけ感謝しないとな。
「あっ、そうそう!実技テストで思い出したけど、重要なことが判明したんだよ!」
「重要なこと、ですか?」
「うん。実はね....なんと、クドージンさんの正体はレオンくんだったんだよ!」
はぁ?
何を馬鹿なことを言ってんだ、コイツは。
「そうなんですね。」
「あ!信じてないね。でも本当なんだよ?実技テストの時も、ありえなかったんだから。」
「アイツ、実技テストで凄い数のドラゴンを召喚したんだぜ。しかも一瞬でぶっ倒すし。記憶がなくてもアイツは滅茶苦茶な奴だぜ。評価もアイツだけS+だったしな。」
レオンはそんなに凄い技を繰り出したのか。
だから2人はレオンを俺だと勘違いしている、と。
....まぁ、訂正しない方が都合が良いし、適当に話を合わせるか。
「それは凄いですね。僕も是非、見たかったです。」
「今のフレイくんも、見たらきっと驚いたと思うよ。」
「だな。記憶が無い時のフレイも、かなり混乱していたからな。」
俺が混乱するレベルって。
...もしかしてレオンの奴、本当に凄いのか?
「だから俺達は、アイツがクドージンだって確信して、話しかけたんだ。それで色々話した後、カタリーナが『クドージンは魔法が得意なんだから、魔法で思い出したら?』って言ったんだ。それでレオンが、自分とフレイの記憶を魔法で蘇らせたら、2人とも倒れて今に至るってわけだ。」
なるほどな。
つまりレオンの魔法が中途半端だったせいで、記憶を取り戻す代わりに、記憶喪失だった時の記憶が無くなったわけか。
「フレイくんがこうってことは、レオンくんも記憶喪失中の記憶が無くなっているのかな?」
「そうかもな。どうする?アイツに『お前の正体知ってるぜ』って言うか?」
「言わない方がいいんじゃない?レオンくんだって、正体を知られたのは不本意だったと思うし。それにきっと、いつか自分から正体を打ち明けてくれるよ。」
残念だが、そんな予定は一切ない。
「そうだな。アイツが記憶喪失中の時みたいに、もう少し素直になったら教えてくれるかもな。」
素直じゃなくて悪かったな。
「記憶喪失中のクドージンさんって、いつもとちょっと雰囲気が違ったよね。『たとえ辛い記憶があっても私達を思い出したい』って言ってくれた時は、心にジーンときたよ。」
「俺も。記憶が無くてもアイツは心のどこかで、俺達のことを大切な仲間だと思ってくれてるんだなって感じたぜ。」
レオンとそんな臭い三文芝居をやっていたのか。
きっと記憶がある時にその光景を見ていたら、滑稽で笑い転げていただろうな。
『辛い記憶があってもみんなのことを思い出したい』?
レオンがそう思えたのは所詮、最初から恵まれた家で生まれたからだろ。
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