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第24話:推薦試験
【112】推薦試験(3)
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魔導宮の食堂にて。
ここの料理は割とうまい。
少なくとも、学校の学食よりかは上だ。
ドーワ侯国から取り入れたのか、日本食があるのも面白い。
普段、日本食を食べる機会がないから、俺はカツ丼と鰻重とすき焼き定食を頼んだ。
料理は想像通りの味で、不満はない。
不満があるとすれば、それは....。
「フレイくんって、あの聖女セージャ様の甥だったんだね!どおりであの実力も納得だわ。」
「俺、セージャ様と同い年だけど、実力は天と地ほどの差があるぞ。そんな俺でも、王宮じゃ上位の魔法使いなんだ。だから君は、そんな叔母さんのことを誇りなよ。」
コイツらだ。
コイツらがいちいち話しかけてくるせいで、なかなか食事が進まない。
今のペースで話しかけられたら午後の試験までに食べきれない。
「さっきの試験を見た限り、君の才能はセージャ様を凌駕しているのではないか?君なら王宮専属の魔法使いどころか、国から称号を貰えるかもしれないな。」
「それは言い過ぎですよ。セージャ叔母さんは10歳で王立ディシュメイン魔法学園を卒業したそうですが、僕は卒業試験に受かりませんでしたから。」
「それはセージャ様が異常なだけよ。あの試験はここにいる人間でもギリギリ合格できるかどうかってレベルの試験だから。5歳や10歳で合格できる方がおかしいのよ。」
「まぁ、君の魔法の才能も、それと同じぐらい異常だけどな。君は一体、誰からあんな魔法を教わったんだ?」
俺は家庭教師の名前を言おうとした。
が、俺の中であまりにも印象が薄かったからか、名前が思い出せない。
「すみません、名前を忘れてしまいました。ですが、確かセージャ叔母さんを指導していた人と同じらしいです。」
「セージャ様の家庭教師って、噂じゃあの人よね?」
「多分な。俺も家庭教師はあの人だったけど、超スパルタで正直、何度も死にかけたぜ。でもそのお陰で今があるんだけどな。」
「え?あの人って、そんなに厳しい人だったのですか?全然印象にありませんでした。」
「印象に無いって....。君、火の魔力を感じ取るために炎の中に入れられたり、水の魔力を操れるように水中に鎮められたりとかした記憶は無いの?」
「はい、全然。というより、それって下手をすれば死にますよね?そんなことをして大丈夫なのですか?」
「全然、大丈夫じゃねえよ!ってか、君、本当にスパルタ指導された記憶がないの?」
「はい。そもそも指導らしい指導を受けた記憶もありませんので。基本的に、家庭教師の先生に言われた魔法を僕が出す、という流れでした。」
俺がそう言うと、全員が一斉に固まった。
どうしたんだ?と思いつつも、今が料理をかっ込むチャンスだと思い、俺は急いで食べる。
「...え、じゃあ、君があれ程の魔法が使えるのは、元から??」
カツ丼を口いっぱいに入れた時に話しかけられたので、俺は首を縦に振って答えた。
「セージャ様も異常だったけれど、君の方がもっと異常だわ。生まれつきであれだけの魔法が使えるなんて、化け物よ。」
「ハハハ、化け物だなんて大袈裟ですね。あ、もうすぐ午後の試験が始まるので、食べるのに集中してもいいですか?」
「あぁ、もちろんだ。」
俺は残っていた、すき焼き定食と鰻重を急いで食べた。
「しっかし、とんだ新人が入ってきたよな。俺ら、あっという間に抜かされるんじゃないか?」
「まだ彼が合格したと決まったわけじゃないぞ。」
「いやいや、合格確実でしょ。それこそ、筆記試験を白紙で出さない限り、落ちるはずないわ。」
まぁ、合格しても辞退するけどな。
「そういえば、学校に通っている間に合格した場合って、どうなるんだ?」
「それは当然、学校をやめることになるだろう。王宮専属の魔法使いとして認められれば、王立ディシュメイン魔法学園の卒業資格も出るからな。」
「じゃあ、合格したら学校のお友達とはお別れね。」
「まぁ遅かれ早かれ、いつかはみんな卒業して別々の道を歩むことには変わらないだろ。彼の場合、それが少し早まるだけだ。」
みんな、いつかは別れる...?
その言葉は、俺の頭にズシンと錘のように乗っかってきた。
卒業して、みんな別々の道を歩み始めたら、もう二度と会えないのか?
タクトとライラはキョウシュー帝国に帰って、ホリーもドーワ侯国へ帰って、ゼルはシヴァの汚屋敷で暮らして、カタリーナと殿下は結婚して....。
それから各々、自分の道を歩んで、そのままずっと互いの道が交わることなく一生が終わるのだろうか?
そんなこと、考えたくもない。
昼食を全て平らげた俺は、その嫌な気持ちを誤魔化すように、何となく質問してみた。
「皆さんは、学校を卒業した後は、学校の友達とはもう会ってないのですか?」
「えっ?そうだなぁ。言われてみれば、ここ数年誰とも会ってねぇや。っていうか、みんな仕事で忙しくて会うヒマない。」
「私も仕事が忙しいのもあるが、私が地元を出て働いているから、というのもあるな。私は元々この国人間ではないので、旧友に会いに行くとなると出国しなければならないからな。距離的に、気軽には会いに行けないな。」
「私はみんなと価値観が合わなくなって、いつのまにか疎遠になったわ。みんな結婚して子供がいるんだけど、私は仕事一筋だから、子育ての話題をされても話についていけないし。」
まともに会っている奴は誰もいないのか?
仕事で忙しかったり、遠いところに住んでいたり、価値観が変わったりしたら、そんなにあっさり会わなくなるものなのか?
「皆さんは、学校の友達と疎遠になって、寂しくないのですか?」
「別に。だって今は職場の仲間がいるしな。」
「学生時代の友達より、今の友達の方が価値観合うから、話してて楽しいしね。」
「いきなり会わなくなったわけではないからな。自然と会う機会が減っていっただけだから、寂しいという感じは無いな。」
俺も、みんなと会わなくなっても、いつかは何とも思わなくなるのだろうか。
今の繋がりが全く無くなっても、平然としていられるのだろうか。
「....どうすれば、そんな風に割り切ることができるのですか?」
「『割り切る』って、難しいことを聞くわね。別に最初から『学校を卒業したら友達終了!』ってしていたわけじゃないのよ?段々と会う機会が減っていって、気づいたら会わなくなっていただけよ。」
「親や兄弟と離れて暮らすの同じだ。子供の頃は親兄弟に精神的に依存しているから、『いつかは親兄弟と離れ離れになる』という現実を想像したくなかっただろう?でも大人になって、独り立ちして、それぞれの道を歩み始める頃には、そこまで寂しい気持ちにはならなかったな。なんせその頃には、『いつかは別々の道を歩む』という現実を受け入れていたからな。」
「....みんな、ずっと一緒には、いられないのですか?」
「フフフッ。可愛いことを言うのね。『みんなずっと一緒』は、難しいんじゃないかしら。家族も友達も、どれだけ大切でもいつかは死んで別れるのよ?でも、だからこそ、今みんなと過ごす時間を大切にすればいいのよ。それに、別れもあれば出会いもあるんだから、別れを嘆くより新しい出会いを歓迎しましょうよ。」
いつかは死に別れる。
想像しただけで、胸の中に不快感が広がっていった。
「あっ!フレイくん、もうそろそろ試験が始まるんじゃない?」
「えっ?....あ!」
時計を見ると、試験開始3分前になっていた。
「急がないと!....すみません、お先に失礼します!」
「おう!頑張ってこいよ!」
「貴方なら絶対、合格できるわ!」
「また会えるのを楽しみにしているぞ!」
俺は駆け足で試験会場へ向かった。
試験会場にはギリギリ間に合い、何とか筆記試験は受けることができた。
だけど、さっきまでの会話のことで頭がいっぱいで、全然問題に集中できなかった。
気づけば1問も解くことなく、試験時間が終了していた。
俺は真っ白なテスト用紙を提出すると、学校の寮へと帰った。
寮に帰ってからも、あの時の会話のことが頭から離れなかった。
やがて『考えたところで不安は消えないし解決もしない』ということに気づいて、無理矢理考えるのをやめた。
ここの料理は割とうまい。
少なくとも、学校の学食よりかは上だ。
ドーワ侯国から取り入れたのか、日本食があるのも面白い。
普段、日本食を食べる機会がないから、俺はカツ丼と鰻重とすき焼き定食を頼んだ。
料理は想像通りの味で、不満はない。
不満があるとすれば、それは....。
「フレイくんって、あの聖女セージャ様の甥だったんだね!どおりであの実力も納得だわ。」
「俺、セージャ様と同い年だけど、実力は天と地ほどの差があるぞ。そんな俺でも、王宮じゃ上位の魔法使いなんだ。だから君は、そんな叔母さんのことを誇りなよ。」
コイツらだ。
コイツらがいちいち話しかけてくるせいで、なかなか食事が進まない。
今のペースで話しかけられたら午後の試験までに食べきれない。
「さっきの試験を見た限り、君の才能はセージャ様を凌駕しているのではないか?君なら王宮専属の魔法使いどころか、国から称号を貰えるかもしれないな。」
「それは言い過ぎですよ。セージャ叔母さんは10歳で王立ディシュメイン魔法学園を卒業したそうですが、僕は卒業試験に受かりませんでしたから。」
「それはセージャ様が異常なだけよ。あの試験はここにいる人間でもギリギリ合格できるかどうかってレベルの試験だから。5歳や10歳で合格できる方がおかしいのよ。」
「まぁ、君の魔法の才能も、それと同じぐらい異常だけどな。君は一体、誰からあんな魔法を教わったんだ?」
俺は家庭教師の名前を言おうとした。
が、俺の中であまりにも印象が薄かったからか、名前が思い出せない。
「すみません、名前を忘れてしまいました。ですが、確かセージャ叔母さんを指導していた人と同じらしいです。」
「セージャ様の家庭教師って、噂じゃあの人よね?」
「多分な。俺も家庭教師はあの人だったけど、超スパルタで正直、何度も死にかけたぜ。でもそのお陰で今があるんだけどな。」
「え?あの人って、そんなに厳しい人だったのですか?全然印象にありませんでした。」
「印象に無いって....。君、火の魔力を感じ取るために炎の中に入れられたり、水の魔力を操れるように水中に鎮められたりとかした記憶は無いの?」
「はい、全然。というより、それって下手をすれば死にますよね?そんなことをして大丈夫なのですか?」
「全然、大丈夫じゃねえよ!ってか、君、本当にスパルタ指導された記憶がないの?」
「はい。そもそも指導らしい指導を受けた記憶もありませんので。基本的に、家庭教師の先生に言われた魔法を僕が出す、という流れでした。」
俺がそう言うと、全員が一斉に固まった。
どうしたんだ?と思いつつも、今が料理をかっ込むチャンスだと思い、俺は急いで食べる。
「...え、じゃあ、君があれ程の魔法が使えるのは、元から??」
カツ丼を口いっぱいに入れた時に話しかけられたので、俺は首を縦に振って答えた。
「セージャ様も異常だったけれど、君の方がもっと異常だわ。生まれつきであれだけの魔法が使えるなんて、化け物よ。」
「ハハハ、化け物だなんて大袈裟ですね。あ、もうすぐ午後の試験が始まるので、食べるのに集中してもいいですか?」
「あぁ、もちろんだ。」
俺は残っていた、すき焼き定食と鰻重を急いで食べた。
「しっかし、とんだ新人が入ってきたよな。俺ら、あっという間に抜かされるんじゃないか?」
「まだ彼が合格したと決まったわけじゃないぞ。」
「いやいや、合格確実でしょ。それこそ、筆記試験を白紙で出さない限り、落ちるはずないわ。」
まぁ、合格しても辞退するけどな。
「そういえば、学校に通っている間に合格した場合って、どうなるんだ?」
「それは当然、学校をやめることになるだろう。王宮専属の魔法使いとして認められれば、王立ディシュメイン魔法学園の卒業資格も出るからな。」
「じゃあ、合格したら学校のお友達とはお別れね。」
「まぁ遅かれ早かれ、いつかはみんな卒業して別々の道を歩むことには変わらないだろ。彼の場合、それが少し早まるだけだ。」
みんな、いつかは別れる...?
その言葉は、俺の頭にズシンと錘のように乗っかってきた。
卒業して、みんな別々の道を歩み始めたら、もう二度と会えないのか?
タクトとライラはキョウシュー帝国に帰って、ホリーもドーワ侯国へ帰って、ゼルはシヴァの汚屋敷で暮らして、カタリーナと殿下は結婚して....。
それから各々、自分の道を歩んで、そのままずっと互いの道が交わることなく一生が終わるのだろうか?
そんなこと、考えたくもない。
昼食を全て平らげた俺は、その嫌な気持ちを誤魔化すように、何となく質問してみた。
「皆さんは、学校を卒業した後は、学校の友達とはもう会ってないのですか?」
「えっ?そうだなぁ。言われてみれば、ここ数年誰とも会ってねぇや。っていうか、みんな仕事で忙しくて会うヒマない。」
「私も仕事が忙しいのもあるが、私が地元を出て働いているから、というのもあるな。私は元々この国人間ではないので、旧友に会いに行くとなると出国しなければならないからな。距離的に、気軽には会いに行けないな。」
「私はみんなと価値観が合わなくなって、いつのまにか疎遠になったわ。みんな結婚して子供がいるんだけど、私は仕事一筋だから、子育ての話題をされても話についていけないし。」
まともに会っている奴は誰もいないのか?
仕事で忙しかったり、遠いところに住んでいたり、価値観が変わったりしたら、そんなにあっさり会わなくなるものなのか?
「皆さんは、学校の友達と疎遠になって、寂しくないのですか?」
「別に。だって今は職場の仲間がいるしな。」
「学生時代の友達より、今の友達の方が価値観合うから、話してて楽しいしね。」
「いきなり会わなくなったわけではないからな。自然と会う機会が減っていっただけだから、寂しいという感じは無いな。」
俺も、みんなと会わなくなっても、いつかは何とも思わなくなるのだろうか。
今の繋がりが全く無くなっても、平然としていられるのだろうか。
「....どうすれば、そんな風に割り切ることができるのですか?」
「『割り切る』って、難しいことを聞くわね。別に最初から『学校を卒業したら友達終了!』ってしていたわけじゃないのよ?段々と会う機会が減っていって、気づいたら会わなくなっていただけよ。」
「親や兄弟と離れて暮らすの同じだ。子供の頃は親兄弟に精神的に依存しているから、『いつかは親兄弟と離れ離れになる』という現実を想像したくなかっただろう?でも大人になって、独り立ちして、それぞれの道を歩み始める頃には、そこまで寂しい気持ちにはならなかったな。なんせその頃には、『いつかは別々の道を歩む』という現実を受け入れていたからな。」
「....みんな、ずっと一緒には、いられないのですか?」
「フフフッ。可愛いことを言うのね。『みんなずっと一緒』は、難しいんじゃないかしら。家族も友達も、どれだけ大切でもいつかは死んで別れるのよ?でも、だからこそ、今みんなと過ごす時間を大切にすればいいのよ。それに、別れもあれば出会いもあるんだから、別れを嘆くより新しい出会いを歓迎しましょうよ。」
いつかは死に別れる。
想像しただけで、胸の中に不快感が広がっていった。
「あっ!フレイくん、もうそろそろ試験が始まるんじゃない?」
「えっ?....あ!」
時計を見ると、試験開始3分前になっていた。
「急がないと!....すみません、お先に失礼します!」
「おう!頑張ってこいよ!」
「貴方なら絶対、合格できるわ!」
「また会えるのを楽しみにしているぞ!」
俺は駆け足で試験会場へ向かった。
試験会場にはギリギリ間に合い、何とか筆記試験は受けることができた。
だけど、さっきまでの会話のことで頭がいっぱいで、全然問題に集中できなかった。
気づけば1問も解くことなく、試験時間が終了していた。
俺は真っ白なテスト用紙を提出すると、学校の寮へと帰った。
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