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第24話:推薦試験
【113】推薦試験(4)
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後日。
職員室に呼び出され、シヴァの口から推薦試験の結果が告げられた。
結果はもちろん、不合格。
当たり前だ。
いくら実技試験が良くても、筆記試験が0点の奴が合格できるわけがない。
「いやぁ~、フレイくん残念だったね。でもキミの試験を見ていた魔術師や魔法使い達からの評価はかなり高かったよ!」
「それはどうも。僕が落ちたことには変わりはありませんので。」
「そう凹まなくていいよ。試験を見ていた人達からの評価が高かったのは本当だよ?むしろ『あれ程の逸材は、例え筆記試験が0点でも合格にすべきだ!』って声も挙がっているくらいだからね。」
シヴァは珍しく、俺をフォローしてくれている。
そんなに落ち込んでいるように見えるのか?
どうせ受かったところで辞退する予定だったし、『辞退する手間が省けた』程度にしか思わない。
俺は職員室から出て教室へ戻ると、みんながワクワクしながら俺を出迎えてくれた。
「それで!結果は...どうだったの?」
ライラが代表して、俺に試験結果を聞いてきた。
「残念ながら、落ちちゃいました。」
するとみんな、自分事のように肩を落とした。
「お前だったらもしかして、って思ったんだけどなぁ~。」
「仕方ないわよ。そもそも私達の年齢で推薦試験が来ること自体、凄いことだし。」
「でも学年トップのフレイくんですら合格できないなんて、よっぽど難しい試験だったんだね。試験って、どんな内容だったの?」
ライラにそう聞かれて、試験を受けた日のことを思い出した。
「試験は実技試験と筆記試験がありました。実技試験は、言われた通りに魔法を出すだけだったので簡単だったのですが、筆記試験は正直、覚えていません。」
「えっ?どういうこと?」
「実は筆記試験の時、別のことで頭がいっぱいで、問題文が頭に入ってこなかったんです。」
「おいおい、間抜けなヤツだな。試験中なんだから違うこと考えんなよ。」
筆記テストでいつもボロボロな点を取っているタクトにだけは言われたくない。
「ねぇフレイくん。『別のことで頭がいっぱいだった』って、一体何で頭がいっぱいだったの?」
「大したことではありませんよ。ただ....。」
「ただ?」
試験を受けた日の、昼食時の会話を思い出す。
「卒業したら僕達、疎遠になるのでしょうか?」
「....え?どうしたの急に。」
「魔導宮にいた魔法使いの人達は、みんな学生時代の友人とは疎遠になったと話していました。仕事で忙しかったり、離れた場所で暮らしていたり、価値観が変わったり。いつか僕達も、そんな理由で別々の道を進んでいって、そのまま再び交わることがないまま終わるのかと思いまして。」
口に出した途端、今まで忘れようとしていた不安な気持ちが一気に溢れ出た。
「嫌な話をして、すみません。今の話はなかったことにしてください。」
「....なこと、ないよ。」
「?」
「そんなこと、ないよ!」
急に声を荒げて否定したライラに、俺は面食らった。
「私は卒業しても、みんなと会いたいよ!みんなも、そうだよね?」
「もちろんよ!」
「当たり前だろ。」
ライラの意見に賛同するみんなを見て、俺の中にあった不安が薄れていく。
「今時、卒業してもスマドがあるんだから、いつでも話せるわよ。それに忙しくても、メールでやり取りするくらいならできるしね。」
「それに僕らが卒業する頃にはきっと、テレポーターがもっと普及して、遠くに住んでいても気軽に会える世界になっているよ。何なら、僕からダイフクさんに直接お願いしておくよ。」
「それに『価値観が変わったら会わなくなる』っていうのもなぁ。今の僕らだって、価値観が全然違うけど一緒にいて楽しいじゃん。お互いを思いやる心があれば、価値観の違いって大したことじゃないと思うけどな。」
「....そう、ですよね!」
なんだ。結局卒業しても、いつでも会えるじゃないか。
こんな下らないことで、いちいち悩んでいたのが馬鹿みたいだ。
「でも、あのフレイがこんなことで悩むなんて、変わったよなぁ。いっとき、俺らのことを『友達じゃない』とか言ってなかったっけ?」
「本当にね。なんだかんだで、私達と別れるのを惜しんでくれる気持ちがあって、嬉しいよ。」
「タクトくんもライラさんも、茶化さないでくださいよ!」
「ハハッ!フレイのヤツ、照れてやんの!」
すると突然、後ろから誰かが声をかけてきた。
「そこにいるのは穢らわしい半分平民じゃないか!」
振り返ると、レオンと取り巻き連中が、俺を馬鹿にしたように笑っていた。
「もうそろそろ、推薦試験の結果が返ってきたんじゃないか?どうだったんだ、言ってみろよ?」
レオンはニヤニヤしながら、わざとらしく聞いてくる。
きっとどこかから、試験結果を聞いたのだろう。
「試験の結果ですか?まだこの学校に居たいので、あえて落ちましたよ。」
「ハハハハハッ!強がっちゃって、笑える!」
「どうせ試験はボロボロだったんだろ?ってか、余裕で合格できるんじゃなかったっけ?」
「もちろん、普通に受けていたら余裕で合格できましたよ。ですが合格しちゃったら、レオン卿を揶揄う機会が無くなっちゃうじゃないですか。合格はいつでもできますけど、レオン卿と楽しくお喋りできるのは今だけですからね。」
「とかなんとかいって。本当は普通に受けて落ちたから、適当な言い訳を並べているだけだろ。」
「そんなことありませんよ。なんせ実技試験では新記録を出しまくって、S+評価でしたから。まぁ、そのため筆記は敢えて白紙で出しましたが。」
するとレオンの取り巻き共は、デカい声で一斉に腹を抱えて笑い出した。
本当のことなのに全然信じていない。
相変わらずムカつく奴らだ。
取り巻き達が嘲笑う中、レオンは呆れた様子で俺に話しかけてきた。
「貴様なぁ。もう少しはまともな事を話せよ。この歳で、歴代の魔法使い達以上の魔法が使える者がいるはずがないだろう。仮にいたとしたら、それは厄災の魔王の生まれ変わりくらいだぞ。」
....あ!
そうか、思い出した。
敢えて試験に落ちようとしていたのは、正体を隠すためだった。
もしあのまま合格していたら、俺の実力が学校中に知れ渡っていただろう。
今は『レオン=宮藤迅』と思われているが、俺の実力が知られたら『もしかしてフレイくんが?』と疑いの目が俺に向く可能性もゼロではない。
だから結果として、落ちて正解だった。
正解だった、が、コイツらに馬鹿にされるのは腹が立つ!
腹が立つものの、実技試験の詳細を話したら正体がバレそうなので、それ以上は反論できなかった。
...今に見てろよ。
次の学年テストでまた首席になって、絶対に倍返しにしてやるからな!
職員室に呼び出され、シヴァの口から推薦試験の結果が告げられた。
結果はもちろん、不合格。
当たり前だ。
いくら実技試験が良くても、筆記試験が0点の奴が合格できるわけがない。
「いやぁ~、フレイくん残念だったね。でもキミの試験を見ていた魔術師や魔法使い達からの評価はかなり高かったよ!」
「それはどうも。僕が落ちたことには変わりはありませんので。」
「そう凹まなくていいよ。試験を見ていた人達からの評価が高かったのは本当だよ?むしろ『あれ程の逸材は、例え筆記試験が0点でも合格にすべきだ!』って声も挙がっているくらいだからね。」
シヴァは珍しく、俺をフォローしてくれている。
そんなに落ち込んでいるように見えるのか?
どうせ受かったところで辞退する予定だったし、『辞退する手間が省けた』程度にしか思わない。
俺は職員室から出て教室へ戻ると、みんながワクワクしながら俺を出迎えてくれた。
「それで!結果は...どうだったの?」
ライラが代表して、俺に試験結果を聞いてきた。
「残念ながら、落ちちゃいました。」
するとみんな、自分事のように肩を落とした。
「お前だったらもしかして、って思ったんだけどなぁ~。」
「仕方ないわよ。そもそも私達の年齢で推薦試験が来ること自体、凄いことだし。」
「でも学年トップのフレイくんですら合格できないなんて、よっぽど難しい試験だったんだね。試験って、どんな内容だったの?」
ライラにそう聞かれて、試験を受けた日のことを思い出した。
「試験は実技試験と筆記試験がありました。実技試験は、言われた通りに魔法を出すだけだったので簡単だったのですが、筆記試験は正直、覚えていません。」
「えっ?どういうこと?」
「実は筆記試験の時、別のことで頭がいっぱいで、問題文が頭に入ってこなかったんです。」
「おいおい、間抜けなヤツだな。試験中なんだから違うこと考えんなよ。」
筆記テストでいつもボロボロな点を取っているタクトにだけは言われたくない。
「ねぇフレイくん。『別のことで頭がいっぱいだった』って、一体何で頭がいっぱいだったの?」
「大したことではありませんよ。ただ....。」
「ただ?」
試験を受けた日の、昼食時の会話を思い出す。
「卒業したら僕達、疎遠になるのでしょうか?」
「....え?どうしたの急に。」
「魔導宮にいた魔法使いの人達は、みんな学生時代の友人とは疎遠になったと話していました。仕事で忙しかったり、離れた場所で暮らしていたり、価値観が変わったり。いつか僕達も、そんな理由で別々の道を進んでいって、そのまま再び交わることがないまま終わるのかと思いまして。」
口に出した途端、今まで忘れようとしていた不安な気持ちが一気に溢れ出た。
「嫌な話をして、すみません。今の話はなかったことにしてください。」
「....なこと、ないよ。」
「?」
「そんなこと、ないよ!」
急に声を荒げて否定したライラに、俺は面食らった。
「私は卒業しても、みんなと会いたいよ!みんなも、そうだよね?」
「もちろんよ!」
「当たり前だろ。」
ライラの意見に賛同するみんなを見て、俺の中にあった不安が薄れていく。
「今時、卒業してもスマドがあるんだから、いつでも話せるわよ。それに忙しくても、メールでやり取りするくらいならできるしね。」
「それに僕らが卒業する頃にはきっと、テレポーターがもっと普及して、遠くに住んでいても気軽に会える世界になっているよ。何なら、僕からダイフクさんに直接お願いしておくよ。」
「それに『価値観が変わったら会わなくなる』っていうのもなぁ。今の僕らだって、価値観が全然違うけど一緒にいて楽しいじゃん。お互いを思いやる心があれば、価値観の違いって大したことじゃないと思うけどな。」
「....そう、ですよね!」
なんだ。結局卒業しても、いつでも会えるじゃないか。
こんな下らないことで、いちいち悩んでいたのが馬鹿みたいだ。
「でも、あのフレイがこんなことで悩むなんて、変わったよなぁ。いっとき、俺らのことを『友達じゃない』とか言ってなかったっけ?」
「本当にね。なんだかんだで、私達と別れるのを惜しんでくれる気持ちがあって、嬉しいよ。」
「タクトくんもライラさんも、茶化さないでくださいよ!」
「ハハッ!フレイのヤツ、照れてやんの!」
すると突然、後ろから誰かが声をかけてきた。
「そこにいるのは穢らわしい半分平民じゃないか!」
振り返ると、レオンと取り巻き連中が、俺を馬鹿にしたように笑っていた。
「もうそろそろ、推薦試験の結果が返ってきたんじゃないか?どうだったんだ、言ってみろよ?」
レオンはニヤニヤしながら、わざとらしく聞いてくる。
きっとどこかから、試験結果を聞いたのだろう。
「試験の結果ですか?まだこの学校に居たいので、あえて落ちましたよ。」
「ハハハハハッ!強がっちゃって、笑える!」
「どうせ試験はボロボロだったんだろ?ってか、余裕で合格できるんじゃなかったっけ?」
「もちろん、普通に受けていたら余裕で合格できましたよ。ですが合格しちゃったら、レオン卿を揶揄う機会が無くなっちゃうじゃないですか。合格はいつでもできますけど、レオン卿と楽しくお喋りできるのは今だけですからね。」
「とかなんとかいって。本当は普通に受けて落ちたから、適当な言い訳を並べているだけだろ。」
「そんなことありませんよ。なんせ実技試験では新記録を出しまくって、S+評価でしたから。まぁ、そのため筆記は敢えて白紙で出しましたが。」
するとレオンの取り巻き共は、デカい声で一斉に腹を抱えて笑い出した。
本当のことなのに全然信じていない。
相変わらずムカつく奴らだ。
取り巻き達が嘲笑う中、レオンは呆れた様子で俺に話しかけてきた。
「貴様なぁ。もう少しはまともな事を話せよ。この歳で、歴代の魔法使い達以上の魔法が使える者がいるはずがないだろう。仮にいたとしたら、それは厄災の魔王の生まれ変わりくらいだぞ。」
....あ!
そうか、思い出した。
敢えて試験に落ちようとしていたのは、正体を隠すためだった。
もしあのまま合格していたら、俺の実力が学校中に知れ渡っていただろう。
今は『レオン=宮藤迅』と思われているが、俺の実力が知られたら『もしかしてフレイくんが?』と疑いの目が俺に向く可能性もゼロではない。
だから結果として、落ちて正解だった。
正解だった、が、コイツらに馬鹿にされるのは腹が立つ!
腹が立つものの、実技試験の詳細を話したら正体がバレそうなので、それ以上は反論できなかった。
...今に見てろよ。
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