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第26話:短期留学
【117】短期留学(2)
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翌日。
昨日案内された教室で、今日から授業が始まる。
教室には人間だけではなく、魔人や獣人、エルフの生徒もいた。
中には、3歳児くらいにしか見えないくらい、小柄な生徒もいた。
俺達は授業開始直前に教室へ着くと、何人かの生徒に話しかけられた。
「ねぇ!アナタ達が噂の留学生?!」
「お名前は?出身はどこ?」
「この後、ヒマ?一緒に遊びましょうよ!」
一気に質問されて戸惑いながらも、みんな質問に答えようとした。
が、授業開始のチャイムがなったので、全員大人しく席に座った。
今日からの授業は、シヴァも顧問としてサポートをするらしいが、アイツはまだ来ていない。
するとしばらくして、この学校の教師と思わしき人物が入ってきた。
「あっ!」
「アイツ...!」
入ってきたのはなんと、ホリーの姉のミラだった。
コイツの顔を見ただけでも、あの時のことを思い出して腹が立つ。
というか、なんでここにいるんだよ!
クソミラは気怠そうにしながら、渋々自己紹介を始めた。
「えーっと、留学生のみなさん、こんにちわ。魔術の教科担任をしているミラージュ・ナカレです。」
「ミラ・コトナカーレ先生ですよね!」
あまりにも適当すぎる挨拶に、ホリーは姉の尻拭いをするかのように、大きな声で訂正した。
その光景に、教室中が笑い声で溢れかえる。
そしてミラに続くように、シヴァも教室に入ってきて挨拶をした。
「ヒノモト魔術学園のみんなー!こんにちは!ボクは王立ディシュメイン魔法学園で教師をしている、シヴァ・レイブンだよ♪よろしくね~。」
さっきの自己紹介がアレだったからか、シヴァの自己紹介がまだまともに見える。
「シヴァ先生って、あの伝説の勇者パーティの1人なんですよね?!」
「先生の武勇伝、是非聞きたいでーす!」
「ねぇ、ミラ先生。シヴァ先生のお話を聞いてもいいですか?」
ここの生徒は自由だな。
ミラが同世代だからか、生徒達はフランクにミラに話しかけている。
「別にいいよ。その方がラクできるからね。それじゃあシヴァ、話し終わったら声をかけてくれ。それまで本でも読んでるよ。」
コイツもコイツで自由だな。
こんないい加減な奴が、何で教師なんかやってんだよ。
巫山戯ながらもちゃんと授業しているシヴァの方が、まだ教師としてマシだ。
「じゃあ、ミラセンセーの許可ももらったし、ボクの武勇伝でも語っちゃいますか♪みんな、ドンドン質問していいからね!」
「わーい!」
「やったぁ!」
そこからしばらく、授業そっちのけでシヴァの勇者パーティとの冒険の話で盛り上がった。
「....って感じで、最終的には厄災の魔お....じゃなかった、厄災ちゃんはボクの魔術で転生しましたとさ。めでたし、めでたし。」
ハイハイ、めでたくて良かったですねー。
今聞いても、煽られている気分になって不快な話だ。
「勇者パーティの皆さんって、凄い方達ですね!」
「まさかあの厄災が、不死の化け物だったなんて!」
「そんな相手でも倒せちゃうシヴァ先生達、カッコいいです!」
ヒノモト魔術学園の生徒達に褒められたシヴァは、いつもの飄々とした態度を崩さずに照れ笑いをした。
そしてなぜか、タクトがしたり顔でニヤついている。
「あはは、そんなに褒められちゃうと、おじさん照れちゃうよ。あ、ちなみにさっき話した勇者くん達の子も、短期留学でこっちに来ているよ♪そこの3人、自己紹介してあげて♪」
シヴァは俺とタクトとライラを指差した。
かったるい展開だな。
俺達3人はその場で立ち上がって、軽く自己紹介をした。
「俺は、伝説の勇者ユシャ・ブレイブの息子のタクトだ!」
「私は双子の妹の、ライラ・ブレイブです。ちなみに母は格闘家のロインで、勇者パーティの1人でした。」
「僕は聖女セージャ・ライトニングの甥の、フレイ・ライトニングです。」
雑に紹介しただけなのに、ヒノモト魔術学園の生徒達は俺達を見てはしゃいでいる。
「ねぇねぇ!勇者様達と血が繋がっているってことは、貴方達も相当な実力者なの?」
「当たり前じゃねえか。」
タクトは自信満々に答えた。
「タクトくんは、この前の実技テストの成績もすごく良かったもんね♪実力だけで言えば、A級冒険者に匹敵するかも。」
「へへっ!どんなもんよ!」
「ただ座学はボロボロなのが、玉に瑕だけどね♪」
シヴァにダメ出しされて、タクトはガクッと項垂れた。
「私は、残念だけどお父さんやお兄ちゃん達みたいな才能はないの。」
「ライラちゃんは、座学も普通だし魔法もあんまり使えないけど、ユシャくん譲りの優しい心はあるよ。」
シヴァの申し訳程度のフォローでも、ライラは嬉しそうにしていた。
「僕も、残念ですがセージャ叔母さんのような才能はありません。」
「いやいやいや、嘘おっしゃい!キミも、タクトくんと同じくらいか、それ以上に才能あるよ?何たってキミ、学年首席だし。それに魔法の才能が凄すぎて、王宮専属の魔法使いとして推薦されてたじゃん!」
ライラの時とは全然リアクションが違うじゃねえか。
「へぇ~!フレイくんは座学も実技も優秀なんですか?」
「そーなの!ボクが受け持つクラスで、断トツに優秀だよ♪自慢の生徒だね!」
そこまでベタ褒めされると、何だかむず痒い気持ちになる。
「それじゃあ、ボクの武勇伝はここまでにして、授業を始めようか。ミラセンセー、よろしく~!」
ミラは本を読んでてもちゃんと聞こえていたようで、本を閉じると『はぁ』と小さくため息をついて教壇に立った。
「それでは今日の授業は特別に、シヴァの武勇伝と絡めた課題を出そうじゃないか。」
「えっ?ボクの武勇伝と?」
「そうさ。さっきの話に出てきた『転生魔術』を発動させる術式を書く。それが今日の課題だ。」
「「えぇ~!!」」
無理難題な課題に、俺達どころかヒノモト魔術学園の生徒達からも大ブーイングが起こった。
だがミラはそんなことを一切気にせず、再び椅子に座って本を読み始めた。
「制限時間は20分。その後に、全員の回答をチェックする。文句を言ってるヒマがあったら、さっさと書きなよ。」
コイツ、授業する気が全くないだろ。
本当に、何でこんな奴が教師をやっているのかが、不思議でならない。
ミラにこれ以上文句を言ったところで聞き入れてもらえない、と察した俺達生徒は、渋々無茶な課題に取り掛かることになった。
...20分後。
とりあえず今ある知識で何とかソレっぽいものは書けた。
が、絶対こんなので転生させられる気がしない。
時間がきたので、俺は渋々、魔術を書いた紙をミラへ提出した。
ミラは気だるそうに、生徒たちの回答用紙を一枚ずつチェックする。
「それじゃあ、今から全員の回答の確認と解説をします。結論から言うと、正解者はいません。」
やっぱりな。
ってか俺達留学生どころか、ヒノモト魔術学園の生徒ですら解けないような課題出すなよ。
「まずは勇者の息子から。.....これは子どもの落書きか?まさかコレが魔術だとか言わないよな?仮にコレに魔力を注いだところで、何も発動しない。ただただ魔力を無駄にするだけだ。君は一から勉強し直した方がいい。」
全員の前でコケにされたタクトは、顔を真っ赤にして悔しそうにした。
「勇者の娘の方はまだマシだ。それでも残念なことに変わりないが。コレを実行したら、対象の生物は肉体ごとどこかへ吹っ飛んでいくだろうね。転生どころか魂を抽出することすら、できていない。」
タクトよりマシとはいえ、それでも辛辣なダメ出しだな。
その後も、生徒の回答に対するダメ出しがひたすら続いた。
俺は留学生の中では比較的まともな回答だったらしい。
それでも、俺が書いた魔術だと魂をどこかへ飛ばすだけで、魂と肉体の繋がりは切れてないから、魂はすぐに身体に戻ってきてしまうらしい。
俺と同じような回答をした生徒は、ヒノモト魔術学園の生徒側にも何人かいたようだ。
しかも、ヒノモト魔術学園の生徒の中には、俺以上に惜しい答えもあったようだ。
さすがは魔術中心の授業をしているだけはある。
ミラの授業は雑だが、それでも生徒達は優秀なのが課題を通して伝わってきた。
「とりあえず全員の回答の解説は終わりだね。それじゃあシヴァ、答えを教えてやってよ。」
「えぇ、ボク?!」
「当然だろ。君は一度、転生魔術を使ったことがあるんだから。その時に書いたものをそのまま再現するだけで良い。」
「で、でもボク、あの魔術を使ったのは随分昔だから、どう書いたか思い出せないヨ。」
シヴァは珍しく、額に脂汗を出して慌てている。
無理もない。
シヴァが過去に使ったのは魂を封印する魔術であって、転生させる魔術じゃないからな。
「だとしても、この程度の魔術、君なら一からでも書けるだろ?」
「そう言われたら、仕方ないね。それじゃ、書いてみるよ♪」
シヴァはチョークを握ると、黒板に転生魔術を書き始めた。
『えーっと』とブツブツ呟いて悩んではいたが、チョークを動かす手が止まることはなかった。
「完成!ミラセンセー、これでどう?」
「流石だな。生徒達よりマシなのを書くじゃないか。」
「えへへ。これでも教師だからね~♪」
「だけどこれじゃあ不十分だ。肉体と魂の繋がりは切断できているが、無理矢理転生先を指定しているせいで魂の初期化が行われないまま転生させてしまっている。こんな魔術で転生させたのだとしたら、厄災はきっと転生後も前世の記憶を覚えているだろうね。」
「ありゃ~、じゃあ失敗だね。」
シヴァは笑って誤魔化した。
「じゃあ、アイツが厄災の魔王だった時の記憶があるのも、そのせいか。」
ミラの説明を聞いたタクトは、納得したようにそう呟いた。
まぁ、俺が前世の記憶を引き継いでいる理由は別なのだが。
「仕方ない。模範解答を書いてあげるよ。シヴァの書いた魔術の、この部分はいらない。代わりに、自然の摂理と同化する魔術を組み込む。そうすることで、自然の摂理に則って魂の初期化が行われ、弊害を伴うことなく通常通りの転生ができる。」
「へぇ~。なるほど。勉強になるなぁ。」
訂正された魔術を見て、シヴァは感嘆した。
どうやらミラは、偉そうに無理難題な課題を出すだけの知識はあるようだ。
「それじゃあ次の課題だ。シヴァ、さっき君の話に出てきた厄災は、不死の生き物だと言ったね?仮に龍脈の魔力を借りれる環境下で使用すると仮定した場合、生き物を不死にさせるにはどんな魔術を書けばいいと思う?書いてみなよ。」
ミラはシヴァにチョークを渡した。
ってか、生徒そっちのけで教師に課題を出すのかよ。
「う~ん、難しい課題だね♪....でも懐かしいな、この感じ。」
シヴァは満更でもなさそうに、鼻歌を歌いながら黒板に書いた。
「はい、できたよ~♪」
「今度はシンプルで完璧じゃないか。てっきり肉体の硬度を高めたり、必要なエネルギーを自己生成したりする魔術を組み込むのかと思っていたよ。」
「最初はソレも考えたんだけどさぁ~、あらゆる『死』に対抗できる肉体を作ろうってなると、色んなパターンを網羅する必要があってキリがないじゃん?だから、キミがさっき書いた自然の摂理に干渉する魔術をみて『コレだ!』って思ったの。対象の生物を自然の摂理から外した方が、不死に近づけられるんじゃないかな~って思ってさ。」
「相変わらず君はカンが鋭いね。」
二人は楽しそうに語っているが、俺達生徒は理解が追いつかず、シヴァの書いた魔術の構造をただただ眺めるばかりだった。
すると突然、ヒノモト魔術学園の生徒の1人が手を挙げて質問した。
「ねぇ、シヴァ先生!先生って、結婚しているんですか?」
「ボク?いいや。結婚どころか、彼女もいないよ。ボクは悲しい独り身のおじさんなのさ。」
「だったら、ミラ先生はどうですか?先生達、とってもお似合いです!」
うわぁ。これが女特有の恋愛脳ってやつか。
女が何でもかんでも恋愛に結びつけたがるのは、他国でも同じらしい。
案の定、ライラやカタリーナ、アリーシャまでもがこの話題になった途端、浮き足立っていた。
「えぇ?!おじさんがミラセンセーと?いやいや、流石に歳が離れすぎでしょ!」
「シヴァ先生、愛に歳の差なんて関係ありませんよ!」
「そうですよ!大事なのは2人の気持ちです!」
ライラとカタリーナは、ヒノモト魔術学園の生徒達に追随するように、シヴァを説得するようなことを言い出す。
「それに、こんなに楽しそうなミラ先生を見るのは初めてです。ミラ先生を幸せにできるのは、きっとシヴァ先生だけですよ。」
「ミラ先生って、私達どころか自分の名前すら覚える気がないのに、シヴァ先生の名前だけはちゃんと覚えているじゃないですか。それだけミラ先生にとって、シヴァ先生は特別なんですよ。」
「ミラ先生は恋人を探しにこの学校の教師をやっているくらいですから、ミラ先生も今はフリーですよ。シヴァ先生、ミラ先生をもらってください!」
そんな理由で教師をやっていたのかよ?!
「ねぇホリーくん、本当なの?ミラさん、婚活目的で教師してるの?」
「うん。正確には『させられている』んだ。姉さんの結婚相手がなかなか決まらないことに焦った父さんが、ダイフクさんに相談したんだ。そしたらダイフクさんが経営している学校、つまりヒノモト魔術学園に行かないか?って話になったんだ。ここの学校は資産家の子息や将来有望な人が多いから、教師をしながら結婚相手を探してみたら?ってアドバイスされたらしいよ。それで父さんは結婚相手を探させるために、半強制的に姉さんをここで働かせているんだって。」
だからミラも全然、やる気がないんだな。
まぁ、あんな性格だから、結婚相手が見つからないのも無理はない。
「アハハハハ、みんな本気でボクとミラセンセーをくっつけたいみたいだね♪ボクは全然構わないんだけど、ミラセンセーは?」
「別に。適当に結婚して、適当に自由に暮らせれば、相手は誰でも良いからね。だけど、君のことは嫌いじゃないよ。」
「ミラセンセーってば、相変わらずドライだねぇ♪」
「やっぱりお二人はお似合いですよ!」
「そうだ!この短期留学中に、お二人でデートに行かれてはどうですか?」
「ハハハ、デートか。いいね♪というわけでミラセンセー、この後二人きりで一緒にお喋りしない?ちょうどキミに渡したいものもあるんだ♪」
「別に構わないよ。」
「渡したいものって、もしかして...。」
「婚約指輪だったりして?!」
「キャー!ステキ!新しいアベックの誕生ね♪」
....このくだり、いつまで続くんだ?
脳みそお花畑な恋愛トークにウンザリしていると、授業終了のチャイムが鳴った。
やっとこの茶番から解放された。
昨日案内された教室で、今日から授業が始まる。
教室には人間だけではなく、魔人や獣人、エルフの生徒もいた。
中には、3歳児くらいにしか見えないくらい、小柄な生徒もいた。
俺達は授業開始直前に教室へ着くと、何人かの生徒に話しかけられた。
「ねぇ!アナタ達が噂の留学生?!」
「お名前は?出身はどこ?」
「この後、ヒマ?一緒に遊びましょうよ!」
一気に質問されて戸惑いながらも、みんな質問に答えようとした。
が、授業開始のチャイムがなったので、全員大人しく席に座った。
今日からの授業は、シヴァも顧問としてサポートをするらしいが、アイツはまだ来ていない。
するとしばらくして、この学校の教師と思わしき人物が入ってきた。
「あっ!」
「アイツ...!」
入ってきたのはなんと、ホリーの姉のミラだった。
コイツの顔を見ただけでも、あの時のことを思い出して腹が立つ。
というか、なんでここにいるんだよ!
クソミラは気怠そうにしながら、渋々自己紹介を始めた。
「えーっと、留学生のみなさん、こんにちわ。魔術の教科担任をしているミラージュ・ナカレです。」
「ミラ・コトナカーレ先生ですよね!」
あまりにも適当すぎる挨拶に、ホリーは姉の尻拭いをするかのように、大きな声で訂正した。
その光景に、教室中が笑い声で溢れかえる。
そしてミラに続くように、シヴァも教室に入ってきて挨拶をした。
「ヒノモト魔術学園のみんなー!こんにちは!ボクは王立ディシュメイン魔法学園で教師をしている、シヴァ・レイブンだよ♪よろしくね~。」
さっきの自己紹介がアレだったからか、シヴァの自己紹介がまだまともに見える。
「シヴァ先生って、あの伝説の勇者パーティの1人なんですよね?!」
「先生の武勇伝、是非聞きたいでーす!」
「ねぇ、ミラ先生。シヴァ先生のお話を聞いてもいいですか?」
ここの生徒は自由だな。
ミラが同世代だからか、生徒達はフランクにミラに話しかけている。
「別にいいよ。その方がラクできるからね。それじゃあシヴァ、話し終わったら声をかけてくれ。それまで本でも読んでるよ。」
コイツもコイツで自由だな。
こんないい加減な奴が、何で教師なんかやってんだよ。
巫山戯ながらもちゃんと授業しているシヴァの方が、まだ教師としてマシだ。
「じゃあ、ミラセンセーの許可ももらったし、ボクの武勇伝でも語っちゃいますか♪みんな、ドンドン質問していいからね!」
「わーい!」
「やったぁ!」
そこからしばらく、授業そっちのけでシヴァの勇者パーティとの冒険の話で盛り上がった。
「....って感じで、最終的には厄災の魔お....じゃなかった、厄災ちゃんはボクの魔術で転生しましたとさ。めでたし、めでたし。」
ハイハイ、めでたくて良かったですねー。
今聞いても、煽られている気分になって不快な話だ。
「勇者パーティの皆さんって、凄い方達ですね!」
「まさかあの厄災が、不死の化け物だったなんて!」
「そんな相手でも倒せちゃうシヴァ先生達、カッコいいです!」
ヒノモト魔術学園の生徒達に褒められたシヴァは、いつもの飄々とした態度を崩さずに照れ笑いをした。
そしてなぜか、タクトがしたり顔でニヤついている。
「あはは、そんなに褒められちゃうと、おじさん照れちゃうよ。あ、ちなみにさっき話した勇者くん達の子も、短期留学でこっちに来ているよ♪そこの3人、自己紹介してあげて♪」
シヴァは俺とタクトとライラを指差した。
かったるい展開だな。
俺達3人はその場で立ち上がって、軽く自己紹介をした。
「俺は、伝説の勇者ユシャ・ブレイブの息子のタクトだ!」
「私は双子の妹の、ライラ・ブレイブです。ちなみに母は格闘家のロインで、勇者パーティの1人でした。」
「僕は聖女セージャ・ライトニングの甥の、フレイ・ライトニングです。」
雑に紹介しただけなのに、ヒノモト魔術学園の生徒達は俺達を見てはしゃいでいる。
「ねぇねぇ!勇者様達と血が繋がっているってことは、貴方達も相当な実力者なの?」
「当たり前じゃねえか。」
タクトは自信満々に答えた。
「タクトくんは、この前の実技テストの成績もすごく良かったもんね♪実力だけで言えば、A級冒険者に匹敵するかも。」
「へへっ!どんなもんよ!」
「ただ座学はボロボロなのが、玉に瑕だけどね♪」
シヴァにダメ出しされて、タクトはガクッと項垂れた。
「私は、残念だけどお父さんやお兄ちゃん達みたいな才能はないの。」
「ライラちゃんは、座学も普通だし魔法もあんまり使えないけど、ユシャくん譲りの優しい心はあるよ。」
シヴァの申し訳程度のフォローでも、ライラは嬉しそうにしていた。
「僕も、残念ですがセージャ叔母さんのような才能はありません。」
「いやいやいや、嘘おっしゃい!キミも、タクトくんと同じくらいか、それ以上に才能あるよ?何たってキミ、学年首席だし。それに魔法の才能が凄すぎて、王宮専属の魔法使いとして推薦されてたじゃん!」
ライラの時とは全然リアクションが違うじゃねえか。
「へぇ~!フレイくんは座学も実技も優秀なんですか?」
「そーなの!ボクが受け持つクラスで、断トツに優秀だよ♪自慢の生徒だね!」
そこまでベタ褒めされると、何だかむず痒い気持ちになる。
「それじゃあ、ボクの武勇伝はここまでにして、授業を始めようか。ミラセンセー、よろしく~!」
ミラは本を読んでてもちゃんと聞こえていたようで、本を閉じると『はぁ』と小さくため息をついて教壇に立った。
「それでは今日の授業は特別に、シヴァの武勇伝と絡めた課題を出そうじゃないか。」
「えっ?ボクの武勇伝と?」
「そうさ。さっきの話に出てきた『転生魔術』を発動させる術式を書く。それが今日の課題だ。」
「「えぇ~!!」」
無理難題な課題に、俺達どころかヒノモト魔術学園の生徒達からも大ブーイングが起こった。
だがミラはそんなことを一切気にせず、再び椅子に座って本を読み始めた。
「制限時間は20分。その後に、全員の回答をチェックする。文句を言ってるヒマがあったら、さっさと書きなよ。」
コイツ、授業する気が全くないだろ。
本当に、何でこんな奴が教師をやっているのかが、不思議でならない。
ミラにこれ以上文句を言ったところで聞き入れてもらえない、と察した俺達生徒は、渋々無茶な課題に取り掛かることになった。
...20分後。
とりあえず今ある知識で何とかソレっぽいものは書けた。
が、絶対こんなので転生させられる気がしない。
時間がきたので、俺は渋々、魔術を書いた紙をミラへ提出した。
ミラは気だるそうに、生徒たちの回答用紙を一枚ずつチェックする。
「それじゃあ、今から全員の回答の確認と解説をします。結論から言うと、正解者はいません。」
やっぱりな。
ってか俺達留学生どころか、ヒノモト魔術学園の生徒ですら解けないような課題出すなよ。
「まずは勇者の息子から。.....これは子どもの落書きか?まさかコレが魔術だとか言わないよな?仮にコレに魔力を注いだところで、何も発動しない。ただただ魔力を無駄にするだけだ。君は一から勉強し直した方がいい。」
全員の前でコケにされたタクトは、顔を真っ赤にして悔しそうにした。
「勇者の娘の方はまだマシだ。それでも残念なことに変わりないが。コレを実行したら、対象の生物は肉体ごとどこかへ吹っ飛んでいくだろうね。転生どころか魂を抽出することすら、できていない。」
タクトよりマシとはいえ、それでも辛辣なダメ出しだな。
その後も、生徒の回答に対するダメ出しがひたすら続いた。
俺は留学生の中では比較的まともな回答だったらしい。
それでも、俺が書いた魔術だと魂をどこかへ飛ばすだけで、魂と肉体の繋がりは切れてないから、魂はすぐに身体に戻ってきてしまうらしい。
俺と同じような回答をした生徒は、ヒノモト魔術学園の生徒側にも何人かいたようだ。
しかも、ヒノモト魔術学園の生徒の中には、俺以上に惜しい答えもあったようだ。
さすがは魔術中心の授業をしているだけはある。
ミラの授業は雑だが、それでも生徒達は優秀なのが課題を通して伝わってきた。
「とりあえず全員の回答の解説は終わりだね。それじゃあシヴァ、答えを教えてやってよ。」
「えぇ、ボク?!」
「当然だろ。君は一度、転生魔術を使ったことがあるんだから。その時に書いたものをそのまま再現するだけで良い。」
「で、でもボク、あの魔術を使ったのは随分昔だから、どう書いたか思い出せないヨ。」
シヴァは珍しく、額に脂汗を出して慌てている。
無理もない。
シヴァが過去に使ったのは魂を封印する魔術であって、転生させる魔術じゃないからな。
「だとしても、この程度の魔術、君なら一からでも書けるだろ?」
「そう言われたら、仕方ないね。それじゃ、書いてみるよ♪」
シヴァはチョークを握ると、黒板に転生魔術を書き始めた。
『えーっと』とブツブツ呟いて悩んではいたが、チョークを動かす手が止まることはなかった。
「完成!ミラセンセー、これでどう?」
「流石だな。生徒達よりマシなのを書くじゃないか。」
「えへへ。これでも教師だからね~♪」
「だけどこれじゃあ不十分だ。肉体と魂の繋がりは切断できているが、無理矢理転生先を指定しているせいで魂の初期化が行われないまま転生させてしまっている。こんな魔術で転生させたのだとしたら、厄災はきっと転生後も前世の記憶を覚えているだろうね。」
「ありゃ~、じゃあ失敗だね。」
シヴァは笑って誤魔化した。
「じゃあ、アイツが厄災の魔王だった時の記憶があるのも、そのせいか。」
ミラの説明を聞いたタクトは、納得したようにそう呟いた。
まぁ、俺が前世の記憶を引き継いでいる理由は別なのだが。
「仕方ない。模範解答を書いてあげるよ。シヴァの書いた魔術の、この部分はいらない。代わりに、自然の摂理と同化する魔術を組み込む。そうすることで、自然の摂理に則って魂の初期化が行われ、弊害を伴うことなく通常通りの転生ができる。」
「へぇ~。なるほど。勉強になるなぁ。」
訂正された魔術を見て、シヴァは感嘆した。
どうやらミラは、偉そうに無理難題な課題を出すだけの知識はあるようだ。
「それじゃあ次の課題だ。シヴァ、さっき君の話に出てきた厄災は、不死の生き物だと言ったね?仮に龍脈の魔力を借りれる環境下で使用すると仮定した場合、生き物を不死にさせるにはどんな魔術を書けばいいと思う?書いてみなよ。」
ミラはシヴァにチョークを渡した。
ってか、生徒そっちのけで教師に課題を出すのかよ。
「う~ん、難しい課題だね♪....でも懐かしいな、この感じ。」
シヴァは満更でもなさそうに、鼻歌を歌いながら黒板に書いた。
「はい、できたよ~♪」
「今度はシンプルで完璧じゃないか。てっきり肉体の硬度を高めたり、必要なエネルギーを自己生成したりする魔術を組み込むのかと思っていたよ。」
「最初はソレも考えたんだけどさぁ~、あらゆる『死』に対抗できる肉体を作ろうってなると、色んなパターンを網羅する必要があってキリがないじゃん?だから、キミがさっき書いた自然の摂理に干渉する魔術をみて『コレだ!』って思ったの。対象の生物を自然の摂理から外した方が、不死に近づけられるんじゃないかな~って思ってさ。」
「相変わらず君はカンが鋭いね。」
二人は楽しそうに語っているが、俺達生徒は理解が追いつかず、シヴァの書いた魔術の構造をただただ眺めるばかりだった。
すると突然、ヒノモト魔術学園の生徒の1人が手を挙げて質問した。
「ねぇ、シヴァ先生!先生って、結婚しているんですか?」
「ボク?いいや。結婚どころか、彼女もいないよ。ボクは悲しい独り身のおじさんなのさ。」
「だったら、ミラ先生はどうですか?先生達、とってもお似合いです!」
うわぁ。これが女特有の恋愛脳ってやつか。
女が何でもかんでも恋愛に結びつけたがるのは、他国でも同じらしい。
案の定、ライラやカタリーナ、アリーシャまでもがこの話題になった途端、浮き足立っていた。
「えぇ?!おじさんがミラセンセーと?いやいや、流石に歳が離れすぎでしょ!」
「シヴァ先生、愛に歳の差なんて関係ありませんよ!」
「そうですよ!大事なのは2人の気持ちです!」
ライラとカタリーナは、ヒノモト魔術学園の生徒達に追随するように、シヴァを説得するようなことを言い出す。
「それに、こんなに楽しそうなミラ先生を見るのは初めてです。ミラ先生を幸せにできるのは、きっとシヴァ先生だけですよ。」
「ミラ先生って、私達どころか自分の名前すら覚える気がないのに、シヴァ先生の名前だけはちゃんと覚えているじゃないですか。それだけミラ先生にとって、シヴァ先生は特別なんですよ。」
「ミラ先生は恋人を探しにこの学校の教師をやっているくらいですから、ミラ先生も今はフリーですよ。シヴァ先生、ミラ先生をもらってください!」
そんな理由で教師をやっていたのかよ?!
「ねぇホリーくん、本当なの?ミラさん、婚活目的で教師してるの?」
「うん。正確には『させられている』んだ。姉さんの結婚相手がなかなか決まらないことに焦った父さんが、ダイフクさんに相談したんだ。そしたらダイフクさんが経営している学校、つまりヒノモト魔術学園に行かないか?って話になったんだ。ここの学校は資産家の子息や将来有望な人が多いから、教師をしながら結婚相手を探してみたら?ってアドバイスされたらしいよ。それで父さんは結婚相手を探させるために、半強制的に姉さんをここで働かせているんだって。」
だからミラも全然、やる気がないんだな。
まぁ、あんな性格だから、結婚相手が見つからないのも無理はない。
「アハハハハ、みんな本気でボクとミラセンセーをくっつけたいみたいだね♪ボクは全然構わないんだけど、ミラセンセーは?」
「別に。適当に結婚して、適当に自由に暮らせれば、相手は誰でも良いからね。だけど、君のことは嫌いじゃないよ。」
「ミラセンセーってば、相変わらずドライだねぇ♪」
「やっぱりお二人はお似合いですよ!」
「そうだ!この短期留学中に、お二人でデートに行かれてはどうですか?」
「ハハハ、デートか。いいね♪というわけでミラセンセー、この後二人きりで一緒にお喋りしない?ちょうどキミに渡したいものもあるんだ♪」
「別に構わないよ。」
「渡したいものって、もしかして...。」
「婚約指輪だったりして?!」
「キャー!ステキ!新しいアベックの誕生ね♪」
....このくだり、いつまで続くんだ?
脳みそお花畑な恋愛トークにウンザリしていると、授業終了のチャイムが鳴った。
やっとこの茶番から解放された。
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僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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※カクヨムとなろうにも投稿しています
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