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第26話:短期留学
【120】短期留学(5)
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カフェで解散した後。
私達女子グループは、マイクさんに案内してもらいながら、ハピネス通りへやってきた。
ハピネス通りにあるお店はどこもオシャレで、1軒1軒入っていたら、とても今日中に買い物は終わらないと思う。
カタリーナちゃんも、アリーシャさんも、目をキラキラさせながら服をみて回っていた。
「わぁ!この服、かわいい!でもこっちも素敵!」
「でしょ?ここのお店、素敵な服がいっぱいあって、いつも買い物の時困っちゃうのよ。それに私みたいな幼児体型でも着れる服が多いから、重宝してるの♪」
確かに、小さい女の子向けの服も何着か売ってある。
そのどれもが、お姫様みたいに豪華で可愛らしい。
「確かに可愛い服が多いですが、私のように背の高い女性でも着れる服は無さそうですね。」
アリーシャさんは可愛い服を眺めながら、残念そうにしていた。
アリーシャさんはマイクさんと正反対で、男性並みに背が高い。
背が低いと苦労しそうだけど、背が高すぎても大変なんだろうな。
「それなら、もう少し先へ行ったところにある『ワイルド・レディ』っていうお店がオススメよ♪あそこのお店は、大柄な獣人女性向けの服を主に取り扱っているの。」
「大柄な獣人、ですか...。」
アリーシャさんはその言葉が引っかかったのか、表情が少し固くなっていた。
「もちろん、獣人じゃなくても着れる服は沢山あるわよ。獣人以外の背の高い女性で、あそこのお店を愛用している人はたくさんいるし。」
「そう、なのですね。それは楽しみです。」
「それじゃあ、このお店の後はワイルド・レディでアリーシャ様の服を買いましょうよ!アリーシャ様はとっても美しいから、どんな服でも似合いますよ♪」
そうして私達は、両手に抱えきれないくらいの服を買った後、マイクさんオススメのカフェで休憩した。
「はぁ~!買った買った。」
「思わず沢山買っちゃったけど、持って帰る時どうしよう。」
「それなら、寮の押入れから荷物を家に届けられるわよ♪送料はかかっちゃうけど、押入れに入れて操作パネルで配送先を指定したら、後日家に届けてもらえるの。知ってた?」
あの便利な押入れって、そんなこともできちゃうんだ。
ドーワ侯国は色んなものが便利すぎて、このままずっと住みたくなっちゃう。
「ホント、ドーワ侯国って便利すぎよね。日本超えてるわ。」
「えっ、日本?」
カタリーナちゃんの口からぽろっと出た言葉に、マイクさんは瞬時に反応した。
「ねぇ、カタリーナちゃんって....もしかして日本人なの?!」
「え?あっ、うん。一応、日本からの転生者よ。マイクさんは日本が何か知っているの?」
「もちろんよ!だって私も日本人だもの。といっても『元』だけどね。」
「えぇ?!マイクさんも?」
まさかクドージンさんやダイフク会長以外にも、ニホンからの転生者がいるなんて。
もしかしたら私達が知らないだけで、世の中にはニホンからの転生者はもっといるのかな?
そこからは、カタリーナちゃんとマイクさんの前世トークが始まった。
「まさかダイフク会長以外にも同郷の人に会えるなんて、世界は狭いわね。カタリーナちゃんは日本ではどんな人だったの?」
「私は生前、桜井千佳という名前のしがないOLをやってたわ。豹堂県紫陽花市出身で、実家に住みながら隣町の卸売会社で働いてたの。」
「貴女も紫陽花市出身?私もよ!ダイフク会長もそうだったし、ホント、世界は狭いわね。」
「マイクさんも?だったら、もしかしたら生前、会っていたかもしれないわね。」
「そうかもね♪ちなみに私の生前の名前は、飯田宗次郎よ。生物学的には70超えのおじさんだったんだけど、面識はあったかしら?」
....えっ?
「「「えぇぇぇ!!!」」」
マイクさんの言葉に、カタリーナちゃんはもちろん、黙って聞いていた私やアリーシャさんも、驚いて思わず大きな声が出た。
「マイクさんって、おじさんだったの?!」
「えっ?でもさっき、一緒に可愛い服を買いに行きましたよね?今の性別に合わせた行動をされてるってことですか?」
「いいえ。一応、今も生物学的に言えば男よ。でも今の姿に生まれ変わる前は、女の子に転生していたのよ?それも、とびっきりの美少女に。でも、どっかの馬鹿が龍脈を封印したせいで、また男に転生しちゃったの。もう、嫌になっちゃう。」
どういうこと?
理解が追いつかない。
そんな私達の様子を見て、マイクさんは悲しそうな顔をして笑った。
「そうよね。普通は私みたいな人って、気持ち悪いわよね。」
「い、いえ!そんなつもりでは....。」
「いいのよ。無理に受け入れようとしなくても。LGBTだとか何とか綺麗事を言っていても、本心では私みたいな人間は受け入れてもらえないって、薄々勘づいてはいたから。」
確かに驚いたのは事実だけど、マイクさんを傷つけるつもりはなかった。
LGBTが何かは知らないけど、きっとマイクさんはLGBTのことで沢山傷ついてきたんだろうな。
私は、マイクさんを傷つけたさっきの自分の行動が恥ずかしくなった。
「そんなことないわ!可愛い服を着たい気持ちに、男も女も、子どもも大人も関係ないわ!マイクさんはマイクさんよ!」
カタリーナちゃんの励ましに、マイクさんは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、カタリーナちゃん。生前の私にも、そう言ってくれる人が少しでも居たら、後悔しない生き方ができたかもしれないわ。」
「マイクさんは生前、どんな方だったのですか?」
「私は60代までは、どこにでもいる普通のサラリーマンだったわ。結婚して、子宝に恵まれて、子供達もみんな社会人になって。よくある普通の家庭を演じてた。」
「演じてた?」
「えぇ。私、子どもの頃からお人形遊びとか、メイクとかが好きだったの。可愛い服を着るのも好きだった。でも、それが原因で親には怒られるし、クラスメイトにはいじめられた。だから、好きなものを全部諦めて、周りが求めるような男らしい自分を演じてきたの。
そしたら、誰もいじめてこなくなったし、人並みの幸せも手に入れることができた。でも、歳を重ねるごとに『自分の人生はつまらない』って思うようになっていって、それと反比例するように『もっと好きなことを自由に楽しみたかった』って思いが強くなっていったの。
それで、我慢できなくなってお化粧してみたら、家族にバレてね。妻にも子どもにも『気持ち悪い』って言われて出ていかれたの。」
「そんな...。」
当時のことを語るマイクさんの目は、とても悲しそうだった。
「でもそれ以上にショックだったのは、化粧をしても、可愛い服を着ても、可愛くなれない自分だった。スキンケアなんて男はしたらダメだと思って生きてきたから、その頃には肌はボロボロのしわくちゃ。化粧のノリも悪いし、何より化粧をしたところで、若い子みたいにはなれない。仮に整形したところで、マシにはなっても若くはなれない。そんな自分の姿を見て、とっても後悔したわ。『なんで若いうちからオシャレを楽しまなかったんだろう』って。
だから私、今世では好きなものは諦めないって決めたの。周りに気遣って、後悔する生き方はもう御免よ。」
そう言って笑うマイクさんは、さっきまでとは打って変わって、晴れ晴れとした表情をしていた。
「だからみんなに、人生の先輩としてアドバイスするわ。自分の気持ちに正直に生きなさい。どうせ周りに気遣って無難に生きてても、ダメな時はダメだし、最終的にはみんないつか死ぬんだからさ。自分の気持ちに蓋をして生きていたら、晩年になって後悔するわよ!」
今のマイクさんが言うと、説得力がありすぎる。
「自分の気持ちに正直に、ですか....。」
アリーシャさんはその言葉を、噛み締めるかのように呟いた。
「アリーシャさん、何か心当たりがあるの?」
「えっ?!いえ、別になんでもありませんわ!」
とは言うものの、この慌てっぷりを見れば図星だと一発でわかる。
「もしかして、例の片思いの相手ですか?」
「まぁ!」
カタリーナちゃんの指摘は正解みたい。
アリーシャさんは顔から湯気が出そうなくらい、真っ赤になった。
好きな人がいたんだ、アリーシャさん。
「アリーシャ様、前に話されてましたよね。お相手は確か、燃えるような赤い髪と瞳の持ち主で、アリーシャ様より大きくて、名前が.....あーっ!!」
するとカタリーナちゃんは、何かに気づいたかのように大声を出した。
「アラン様って、もしかして、あのアラン様のことですか?!」
「........はい。」
アリーシャさんは観念したかのように、顔を伏せて恥ずかしそうにしながら、白状した。
まさかアリーシャさんの好きな人がアラン様だったなんて。
二人は接点が無さそうだけど、アリーシャさんが好きになったキッカケは何だったんだろう?
「アリーシャ様とアラン様、すっごくお似合いですよ!アラン様って、背が高くてカッコイイですよね。でも、お二人は一体どこで知り合ったのですか?」
「そ、それは....お願いです、詮索しないでください!」
よほど言いたくないのか、アリーシャさんは強い口調で話すのを拒否した。
「なるほど、読めたわよ。アリーシャちゃん、アラン様が魔王陛下だから、軽々しく想いを伝えられずに悶々としているのね。」
「はい。それもあります。」
「それ『も』か。じゃあそれに加えて両親が反対している、とか?」
「はい。」
そんなことまでわかるんだ。
マイクさんは、なんでもお見通しだ。
「そっか。アリーシャちゃんは想いを伝えたくても伝えられない状況なんだね。そういう状況って、なかなか辛いよね。」
「....でも、マイクさんのお話を聞いていて思いました。『この気持ちを閉じ込めたままにするのはやめよう』って。私は私なりに、いつかアラン様に想いを伝えようと思います。マイクさん、お話ありがとうございました。」
アリーシャさんはスッキリした顔で、微笑みながらお礼をした。
「アドバイスが参考になったようで良かったわ♪アリーシャちゃんの気持ち、伝わるといいわね。」
「えぇ。」
その後、他愛もない会話をしながらカフェでくつろいでいると、気がつけば夜になっていた。
「あら、もうこんな時間?楽しい時間は過ぎるのが早いわね。じゃあみんな、寮まで送っていくわ。」
お会計を済ませて外に出ると、緑のスカーフを巻いた厳つい男の人達が、お店の周りでたむろしていた。
私達女子グループは、マイクさんに案内してもらいながら、ハピネス通りへやってきた。
ハピネス通りにあるお店はどこもオシャレで、1軒1軒入っていたら、とても今日中に買い物は終わらないと思う。
カタリーナちゃんも、アリーシャさんも、目をキラキラさせながら服をみて回っていた。
「わぁ!この服、かわいい!でもこっちも素敵!」
「でしょ?ここのお店、素敵な服がいっぱいあって、いつも買い物の時困っちゃうのよ。それに私みたいな幼児体型でも着れる服が多いから、重宝してるの♪」
確かに、小さい女の子向けの服も何着か売ってある。
そのどれもが、お姫様みたいに豪華で可愛らしい。
「確かに可愛い服が多いですが、私のように背の高い女性でも着れる服は無さそうですね。」
アリーシャさんは可愛い服を眺めながら、残念そうにしていた。
アリーシャさんはマイクさんと正反対で、男性並みに背が高い。
背が低いと苦労しそうだけど、背が高すぎても大変なんだろうな。
「それなら、もう少し先へ行ったところにある『ワイルド・レディ』っていうお店がオススメよ♪あそこのお店は、大柄な獣人女性向けの服を主に取り扱っているの。」
「大柄な獣人、ですか...。」
アリーシャさんはその言葉が引っかかったのか、表情が少し固くなっていた。
「もちろん、獣人じゃなくても着れる服は沢山あるわよ。獣人以外の背の高い女性で、あそこのお店を愛用している人はたくさんいるし。」
「そう、なのですね。それは楽しみです。」
「それじゃあ、このお店の後はワイルド・レディでアリーシャ様の服を買いましょうよ!アリーシャ様はとっても美しいから、どんな服でも似合いますよ♪」
そうして私達は、両手に抱えきれないくらいの服を買った後、マイクさんオススメのカフェで休憩した。
「はぁ~!買った買った。」
「思わず沢山買っちゃったけど、持って帰る時どうしよう。」
「それなら、寮の押入れから荷物を家に届けられるわよ♪送料はかかっちゃうけど、押入れに入れて操作パネルで配送先を指定したら、後日家に届けてもらえるの。知ってた?」
あの便利な押入れって、そんなこともできちゃうんだ。
ドーワ侯国は色んなものが便利すぎて、このままずっと住みたくなっちゃう。
「ホント、ドーワ侯国って便利すぎよね。日本超えてるわ。」
「えっ、日本?」
カタリーナちゃんの口からぽろっと出た言葉に、マイクさんは瞬時に反応した。
「ねぇ、カタリーナちゃんって....もしかして日本人なの?!」
「え?あっ、うん。一応、日本からの転生者よ。マイクさんは日本が何か知っているの?」
「もちろんよ!だって私も日本人だもの。といっても『元』だけどね。」
「えぇ?!マイクさんも?」
まさかクドージンさんやダイフク会長以外にも、ニホンからの転生者がいるなんて。
もしかしたら私達が知らないだけで、世の中にはニホンからの転生者はもっといるのかな?
そこからは、カタリーナちゃんとマイクさんの前世トークが始まった。
「まさかダイフク会長以外にも同郷の人に会えるなんて、世界は狭いわね。カタリーナちゃんは日本ではどんな人だったの?」
「私は生前、桜井千佳という名前のしがないOLをやってたわ。豹堂県紫陽花市出身で、実家に住みながら隣町の卸売会社で働いてたの。」
「貴女も紫陽花市出身?私もよ!ダイフク会長もそうだったし、ホント、世界は狭いわね。」
「マイクさんも?だったら、もしかしたら生前、会っていたかもしれないわね。」
「そうかもね♪ちなみに私の生前の名前は、飯田宗次郎よ。生物学的には70超えのおじさんだったんだけど、面識はあったかしら?」
....えっ?
「「「えぇぇぇ!!!」」」
マイクさんの言葉に、カタリーナちゃんはもちろん、黙って聞いていた私やアリーシャさんも、驚いて思わず大きな声が出た。
「マイクさんって、おじさんだったの?!」
「えっ?でもさっき、一緒に可愛い服を買いに行きましたよね?今の性別に合わせた行動をされてるってことですか?」
「いいえ。一応、今も生物学的に言えば男よ。でも今の姿に生まれ変わる前は、女の子に転生していたのよ?それも、とびっきりの美少女に。でも、どっかの馬鹿が龍脈を封印したせいで、また男に転生しちゃったの。もう、嫌になっちゃう。」
どういうこと?
理解が追いつかない。
そんな私達の様子を見て、マイクさんは悲しそうな顔をして笑った。
「そうよね。普通は私みたいな人って、気持ち悪いわよね。」
「い、いえ!そんなつもりでは....。」
「いいのよ。無理に受け入れようとしなくても。LGBTだとか何とか綺麗事を言っていても、本心では私みたいな人間は受け入れてもらえないって、薄々勘づいてはいたから。」
確かに驚いたのは事実だけど、マイクさんを傷つけるつもりはなかった。
LGBTが何かは知らないけど、きっとマイクさんはLGBTのことで沢山傷ついてきたんだろうな。
私は、マイクさんを傷つけたさっきの自分の行動が恥ずかしくなった。
「そんなことないわ!可愛い服を着たい気持ちに、男も女も、子どもも大人も関係ないわ!マイクさんはマイクさんよ!」
カタリーナちゃんの励ましに、マイクさんは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、カタリーナちゃん。生前の私にも、そう言ってくれる人が少しでも居たら、後悔しない生き方ができたかもしれないわ。」
「マイクさんは生前、どんな方だったのですか?」
「私は60代までは、どこにでもいる普通のサラリーマンだったわ。結婚して、子宝に恵まれて、子供達もみんな社会人になって。よくある普通の家庭を演じてた。」
「演じてた?」
「えぇ。私、子どもの頃からお人形遊びとか、メイクとかが好きだったの。可愛い服を着るのも好きだった。でも、それが原因で親には怒られるし、クラスメイトにはいじめられた。だから、好きなものを全部諦めて、周りが求めるような男らしい自分を演じてきたの。
そしたら、誰もいじめてこなくなったし、人並みの幸せも手に入れることができた。でも、歳を重ねるごとに『自分の人生はつまらない』って思うようになっていって、それと反比例するように『もっと好きなことを自由に楽しみたかった』って思いが強くなっていったの。
それで、我慢できなくなってお化粧してみたら、家族にバレてね。妻にも子どもにも『気持ち悪い』って言われて出ていかれたの。」
「そんな...。」
当時のことを語るマイクさんの目は、とても悲しそうだった。
「でもそれ以上にショックだったのは、化粧をしても、可愛い服を着ても、可愛くなれない自分だった。スキンケアなんて男はしたらダメだと思って生きてきたから、その頃には肌はボロボロのしわくちゃ。化粧のノリも悪いし、何より化粧をしたところで、若い子みたいにはなれない。仮に整形したところで、マシにはなっても若くはなれない。そんな自分の姿を見て、とっても後悔したわ。『なんで若いうちからオシャレを楽しまなかったんだろう』って。
だから私、今世では好きなものは諦めないって決めたの。周りに気遣って、後悔する生き方はもう御免よ。」
そう言って笑うマイクさんは、さっきまでとは打って変わって、晴れ晴れとした表情をしていた。
「だからみんなに、人生の先輩としてアドバイスするわ。自分の気持ちに正直に生きなさい。どうせ周りに気遣って無難に生きてても、ダメな時はダメだし、最終的にはみんないつか死ぬんだからさ。自分の気持ちに蓋をして生きていたら、晩年になって後悔するわよ!」
今のマイクさんが言うと、説得力がありすぎる。
「自分の気持ちに正直に、ですか....。」
アリーシャさんはその言葉を、噛み締めるかのように呟いた。
「アリーシャさん、何か心当たりがあるの?」
「えっ?!いえ、別になんでもありませんわ!」
とは言うものの、この慌てっぷりを見れば図星だと一発でわかる。
「もしかして、例の片思いの相手ですか?」
「まぁ!」
カタリーナちゃんの指摘は正解みたい。
アリーシャさんは顔から湯気が出そうなくらい、真っ赤になった。
好きな人がいたんだ、アリーシャさん。
「アリーシャ様、前に話されてましたよね。お相手は確か、燃えるような赤い髪と瞳の持ち主で、アリーシャ様より大きくて、名前が.....あーっ!!」
するとカタリーナちゃんは、何かに気づいたかのように大声を出した。
「アラン様って、もしかして、あのアラン様のことですか?!」
「........はい。」
アリーシャさんは観念したかのように、顔を伏せて恥ずかしそうにしながら、白状した。
まさかアリーシャさんの好きな人がアラン様だったなんて。
二人は接点が無さそうだけど、アリーシャさんが好きになったキッカケは何だったんだろう?
「アリーシャ様とアラン様、すっごくお似合いですよ!アラン様って、背が高くてカッコイイですよね。でも、お二人は一体どこで知り合ったのですか?」
「そ、それは....お願いです、詮索しないでください!」
よほど言いたくないのか、アリーシャさんは強い口調で話すのを拒否した。
「なるほど、読めたわよ。アリーシャちゃん、アラン様が魔王陛下だから、軽々しく想いを伝えられずに悶々としているのね。」
「はい。それもあります。」
「それ『も』か。じゃあそれに加えて両親が反対している、とか?」
「はい。」
そんなことまでわかるんだ。
マイクさんは、なんでもお見通しだ。
「そっか。アリーシャちゃんは想いを伝えたくても伝えられない状況なんだね。そういう状況って、なかなか辛いよね。」
「....でも、マイクさんのお話を聞いていて思いました。『この気持ちを閉じ込めたままにするのはやめよう』って。私は私なりに、いつかアラン様に想いを伝えようと思います。マイクさん、お話ありがとうございました。」
アリーシャさんはスッキリした顔で、微笑みながらお礼をした。
「アドバイスが参考になったようで良かったわ♪アリーシャちゃんの気持ち、伝わるといいわね。」
「えぇ。」
その後、他愛もない会話をしながらカフェでくつろいでいると、気がつけば夜になっていた。
「あら、もうこんな時間?楽しい時間は過ぎるのが早いわね。じゃあみんな、寮まで送っていくわ。」
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